サムエル記第一(4)「ハンナの賛歌」1サム2:1~10

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命題:ハンナの賛歌は感謝と預言を含む。この賛歌の3つのステップを学ぶとそれが分かる。

サムエル記第一(4)

「ハンナの賛歌」

1サム2:1~10

1.文脈の確認

Ⅰ.王政に向けた準備(1~9章)

  A.サムエルの誕生と幼少期(1章)

  B.ハンナの賛歌(2:1~10)

2.注目すべき点

(1)士師記の時代の末期、イスラエルは政治的にも霊的にも、混乱状態にあった。

(2)新しい時代を導くのは、預言者サムエルである。

(3)ハンナは、信仰によって息子を得た。

(4)乳離れした息子を【主】に委ねたハンナは、賛歌を詠んだ。

(5)神から預言的な内容を含むことばを与えられ、それを賛歌として語った。

命題:ハンナの賛歌は感謝と預言を含む。

この賛歌の3つのステップを学ぶとそれが分かる。

Ⅰ.個人的な救いの喜び(1~2節)

1.1節

1Sa 2:1

ハンナは祈った。/「私の心は【主】にあって大いに喜び、/私の角は【主】によって高く上がります。/私の口は敵に向かって大きく開きます。/私があなたの救いを喜ぶからです。

(1)段階的対句

  ①心が大いに喜ぶ(内面の喜び)

    *主語は「私の心」であり、全人的喜びを表現している。

  ②角が高く上げる(力の回復)

    *主語は「私の角」であり、力と尊厳の回復を示している。

  ③口が大きく開く(勝利の表現)

    *主語は「私の口」であり、それが大きく開くのは勝利の宣言・賛美の比ゆ。

    *「敵」は、ペニンナを含む、ハンナを軽蔑した人々である。

  ④救いを喜ぶ(理由の明示)

    *主語は「私」であり、神の介入による完全な介入を喜ぶ。

    *「救い」=「イェシュア」

    *終末的救いをも指し示すことばとして旧約全体で用いられる。

(2)個人的経験が、イスラエルの歴史的経験の型となっている。

  ①不妊=民の無力さ

  ②出産=神の介入による回復

  ③敵に対する勝利=終末における神の民の勝利

2.2節

1Sa 2:2

【主】のように聖なる方はいません。/まことに、あなたのほかにはだれもいないのです。/私たちの神のような岩はありません。

(1)3重の類義的対句

  ①聖なる神(性質)

    *神の聖性は比類なく、被造物から完全に区別されていることを宣言。

  ②あなた以外にいない(唯一性)

    *ユダヤ人の信仰告白の土台である。

    *「シェマー」(申6:4)の延長線上にある表現。

  ③イスラエルの神のような岩はない(守りと信実)

    *「岩」は、堅固さ・安定・避け所・契約的忠実さを象徴している。

    *申32章や詩篇でくり返されることばである。

Ⅰ.個人的な救いの喜び(1~2節)

Ⅱ.逆転の法則(3~8節)

1.3節

1Sa 2:3

おごり高ぶって、/多くのことを語ってはなりません。/横柄なことばを口にしてはなりません。/まことに【主】は、すべてを知る神。/そのみわざは測り知れません。

(1)2部構成の対句

  ①禁止命令(前半2行):高慢なことばを語るな。

  ②理由(後半2行):神は知識の神であり、行いを評価する。

    *【主】は、完全で誤りなき洞察を持つ方である。

    *「人の行いを量られます」(共同訳)=公平な裁きを意味する。

    *高慢なことばや態度は、神の義によって必ず裁かれる。

2.4節

1Sa 2:4 勇士が弓を砕かれ、/弱い者が力を帯びます。

(1)反意的対句

  ①勇士の弓は砕かれる。

    *人間の力に依存する者の限界を示す。

    *神に敵対する勢力(終末的には諸国民)の武力も最終的には砕かれる。

  ②弱い者が力を得る。

    *ペニンナという「強者」に苦しめられたが、神の介入によって回復。

    *個人的な経験は、普遍的適用を持つ。

3.5節

1Sa 2:5満ち足りていた者がパンのために雇われ、/飢えていた者に、飢えることがなくなります。/不妊の女が七人の子を産み、/子だくさんの女が、打ちしおれてしまいます。

(1)2組の反意的対句

  ①満ち足りた者vs.飢えていた者

    *経済的・生活状況の逆転

    *神の主権的介入による

  ②不妊の女vs.多くの子を持つ女

    *家庭・名誉の逆転

    *不妊の女はイスラエルの象徴。

    *7人の子(完全さ・充足)は、終末的イスラエルの民の繁栄。

    *多くの子を持つ女が衰える=神に敵対する諸国が没落する預言。

4.6節

1Sa 2:6【主】は殺し、また生かします。/よみに下し、また引き上げます。

(1)2組の反意的対句

  ①【主】は殺すvs.【主】は生かす。

    *人間や偶像には命を与えたり奪ったりする権限はない。

    *死の時と方法も、命の始まりも、神の主権の下にある。

  ②よみに下すvs.引き上げる。

    *「よみに下し、また引き上げる」は病からの回復だけでなく、復活を含む。

    *終末における義人の復活も、この神の権威の現れ。

(2)イスラエルの歴史的・預言的適用

  ①死と再生は、国としてのイスラエルの滅亡と回復にも当てはまる。

  ②バビロン捕囚や諸国への離散からの回復は、この逆転の法則の歴史的実例。

  ③患難期からの回復とメシア的王国への復興を指し示す。

5.7節

1Sa 2:7【主】は貧しくし、また富ませ、/低くし、また高くします。

(1)2組の反意的対句

  ①貧しくするvs.富ませる

    *経済的逆転

  ②低くする vs.高くする

    *地位・名誉の逆転

    *富や地位は人間の努力や偶然ではなく、神の主権的決定によることを強調。

(2)地位の変化も神の支配下にある。

  ①人の昇進や降格、国家の栄枯盛衰も神の摂理の一部。

  ②諸国民が低められ、イスラエルが高められる預言的パターンに重なる。

6.8節

1Sa 2:8

主は、弱い者をちりから起こし、/貧しい者をあくたから引き上げ、/高貴な者とともに座らせ、/彼らに栄光の座を継がせます。/まことに、地の柱は【主】のもの。/その上に主は世界を据えられました。

(1)前半(人間の領域)と後半(宇宙的領域)の二部構成

  ①人間社会における逆転(4つの対句)

    *弱い者をちりから起こし、

    *貧者をあくたから引き上げ、

    *貴族と同席させ、

    *栄光の座を与える。

  ②神の主権と創造主としての権威(2つの対句)

    *地の柱は【主】のもの。

    *その上に主は世界を据えられた。

(2)イスラエルの回復の型

  ①諸国の中で卑しめられていた状態から、メシア的王国における高貴な地位へ

  ②最終的には、栄光の座を与えられる。

Ⅰ.個人的な救いの喜び(1~2節)

Ⅱ.逆転の法則(3~8節)

Ⅲ.メシア的預言(9~10節)

1.9節

1Sa 2:9

主は敬虔な者たちの足を守られます。/しかし、悪者どもは、闇の中に滅び失せます。/人は、自分の能力によっては勝てないからです。

(1)対照的対句

  ①義人の保護vs.悪者の滅び

    *足を守るとは、信仰の歩みを守ること。

    *闇の名に滅び失せるとは、現世的裁きと終末的裁きの両方にかかる。

  ②その根拠:人間の力は勝利の条件にならない(結論)。

(2)イスラエルへの適用

  ①歴史的にイスラエルは軍事的には弱かったが、神の介入によって勝利してきた。

  ②患難期においても、神が彼らを守って勝利に導く。

2.10節

1Sa 2:10

【主】は、はむかう者を打ち砕き、/その者に天から雷鳴を響かせられます。/【主】は地の果ての果てまでさばかれます。/主が、ご自分の王に力を与え、/主に油注がれた者の角を/高く上げてくださいますように。」

(1)4つの動きで構成されている。

  ①敵の粉砕(はむかう者を打ち砕く)

  ②天からの裁き(雷鳴による威嚇)

  ③全地的統治(地の果てまで裁く)

  ④メシア的王の高揚(メシアの角を上げる)

(2)メシア的王の予告

  ①サムエル記の冒頭の時点では、まだ歴史的には登場していない。

  ②「メシア」(油注がれた者)ということばは、終末的支配者の予告。

  ③「地の果ての果てまで」は、メシア的王国の広がりの予告。

  ④「角」(1節)で始まり、「角」(10節)で終わる。

  ⑤ハンナの賛歌は、ルカ1章のマリアの賛歌に影響を与えた。

結論:今日の信者への適用

1.神の主権を信頼する姿勢(1~2節)

(1)ハンナは、自分が経験した解放を「主の救い」と認めた。

(2)祝福や勝利は、神の恵みによるものである。

(3)「聖なる方」「唯一の神」「岩」という三重の告白が重要である。

2.高慢を退け、謙遜に歩む(3節)

(1)神は心の動機まで見抜き、正しく評価される。

(2)成功時にも謙遜を保ち、すべてのことを神の栄光のために行う(1コリ10:31)。

3.神の逆転の法則を覚える(4~8節)

(1)個人的な逆転の法則

(2)普遍的な逆転の法則

4.メシア到来と最終的な勝利の希望(9~10節)

(1)ハンナの賛歌は、終末的希望を詠っている。

(2)現在の試練や争いも、最終的には、メシアの完全な支配の下で解決される。

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