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使徒の働き(72)―スケワの7人の息子たち―
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第三次伝道旅行について学ぶ。
「スケワの7人の息子たち」
使徒19:13~20
1.はじめに
(1)第三次伝道旅行が始まった。
①使18:23~21:17(紀元53年の春から56年の春)
②第三次伝道旅行の中心地は、エペソである。
*ルカは、自由人としてのパウロの伝道活動の集大成を記している。
*パウロは、約3年の間エペソに留まった。
*教会史におけるエペソ伝道の重要性を見落としてはならない。
(2)エペソでのパウロの奉仕(サンドイッチ形式の記述)
①12人の弟子たちのエピソード(1~7節)
②エペソでの奉仕(8~12節)
③スケアの7人の息子たち(13~20節)
*このエピソードは、エペソを覆っていた霊的暗黒を示している。
*また、イエス・キリストと福音の力を示している。
(3)スケアの7人の息子たち(13~20節)
①パウロの奇跡の模倣(13~14節)
②悪霊の逆襲(15~16節)
③このエピソードの結末(17~20節)
結論:
(1)パウロの悪霊との対決
(2)罪や悪習慣との決別
スケアの7人の息子たちのエピソードについて学ぶ。
Ⅰ.パウロの奇跡の模倣(13~14節)
1.13~14節
Act 19:13
ところが、諸国を巡回しているユダヤ人の魔よけ祈祷師の中のある者たちも、ためしに、悪霊につかれている者に向かって主イエスの御名をとなえ、「パウロの宣べ伝えているイエスによって、おまえたちに命じる」と言ってみた。
ところが、諸国を巡回しているユダヤ人の魔よけ祈祷師の中のある者たちも、ためしに、悪霊につかれている者に向かって主イエスの御名をとなえ、「パウロの宣べ伝えているイエスによって、おまえたちに命じる」と言ってみた。
Act 19:14 そういうことをしたのは、ユダヤの祭司長スケワという人の七人の息子たちであった。
(1)「ところが」
①重要な接続詞である。
*ギリシア語で「デ」である。
*英語で、「but」「then」である。
②この出来事は、神がパウロを通して行われた良き奇跡との対比になっている。
③ペテロに起ったのと同じことがパウロにも起っている。
*使8:18~19(サマリアの魔術師シモン)
Act 8:18 使徒たちが手を置くと御霊が与えられるのを見たシモンは、使徒たちのところに金を持って来て、
Act 8:19 「私が手を置いた者がだれでも聖霊を受けられるように、この権威を私にも下さい」と言った。
④ここでは、パウロの奇跡をコピーしようとする者が現れた。
⑤ユダヤ人の巡回魔除け祈祷師の中のある者たちがそれを行った。
(2)「主イエスの御名をとなえ、」
①ユダヤ教の中にも、悪霊の追い出しを行なう者がいた。
*いわば、当時のユダヤ教のカルト教団である。
②彼らは、イエスの御名に魔術的な力が宿っていると誤解した。
*イエスの御名を唱えただけで、悪霊は出て行くと思った。
③おまじないの中で魔術的な名前を唱えることは、当時よく見られた現象である。
*特にエペソでは、それが活発に行われていた。
④当時の人々は、ユダヤ人を恐れていた。
*ユダヤ人が発音しない「神の御名」が、ユダヤ人の力の源であると考えた。
*また、「神の御名」がビジネスで成功する秘訣であると考えた。
(3)ルカ9:49~50のエピソード
Luk 9:49
ヨハネが答えて言った。「先生。私たちは、先生の名を唱えて悪霊を追い出している者を見ましたが、やめさせました。私たちの仲間ではないので、やめさせたのです。」
ヨハネが答えて言った。「先生。私たちは、先生の名を唱えて悪霊を追い出している者を見ましたが、やめさせました。私たちの仲間ではないので、やめさせたのです。」
Luk 9:50 しかしイエスは、彼に言われた。「やめさせることはありません。あなたがたに反対しない者は、あなたがたの味方です。」
①これは、12弟子の競争心を暴露した出来事である。
②イエスの弟子のひとりが、イエスの御名によって悪霊の追い出しをしていた。
*弟子集団の端にいた者であろう。
*あるいは、バプテスマのヨハネの弟子であった可能性もある。
③12使徒たちは、自分たち以外の者がイエスの御名を唱えることに反対した。
④イエスは、「あなたがたに反対しない者は、あなたがたの味方です」
と言われた。
⑤エペソでのエピソードは、これとは根本的に異なる。
⑥エペソで主イエスの御名を唱えたのは、不信者たちである。
(4)「そういうことをしたのは、ユダヤの祭司長スケワという人の七人の息子たち
であった」
①スケワは「自称祭司長」であって、本物でない。
*「祭司長」と名乗る方が権威付けになったのであろう。
*魔術を行っていたので、エルサレムから追放された可能性がある。
*アジア州を巡る旅で、エペソに来たのであろう。
②彼らは、悪霊につかれた人の家に行き、ためしに、主イエスの御名によって
悪霊を追い出そうとした。
③「パウロの宣べ伝えているイエスによって、おまえたちに命じる」と言った。
Ⅱ.悪霊の逆襲(15~16節)
1.15~16節
Act 19:15 すると悪霊が答えて、「自分はイエスを知っているし、パウロもよく知っている。けれどおまえたちは何者だ」と言った。
Act 19:16
そして悪霊につかれている人は、彼らに飛びかかり、ふたりの者を押さえつけて、みなを打ち負かしたので、彼らは裸にされ、傷を負ってその家を逃げ出した。
そして悪霊につかれている人は、彼らに飛びかかり、ふたりの者を押さえつけて、みなを打ち負かしたので、彼らは裸にされ、傷を負ってその家を逃げ出した。
(1)悪霊から答があった。
①「悪霊につかれている者」は、実際に悪霊につかれていた。
②悪霊は知的活動をしている。
(2)イエスとパウロは、「the Jesus」と「the Paul」である。
①お前が口にしているイエスとパウロという意味がある。
②ここでルカは、2つの動詞を使い分けている。
③イエスに関して「知っている」は、ギノスコウという動詞である。
*これは、体験的知識である。
④パウロに関して「知っている」は、エピスタマイという動詞である。
*これは、理解している、聞き及んでいるという意味での知識である。
⑤(口語訳)
Act 19:15 すると悪霊がこれに対して言った、「イエスなら自分は知っている。パウロもわかっている。だが、おまえたちは、いったい何者だ」。
(3)「けれどおまえたちは何者だ」
①「おまえたち」という言葉に強調点がある。
②悪霊は、スケアの7人の息子たちを見下している。
③名前を聞いているのではなく、「何様だと思っているのだ」という意味である。
(4)「ふたりの者を押さえつけて、みなを打ち負かしたので、」
①「皆を押さえつけ、打ち負かしたので、」(新改訳2017)
②「アンフォテロン」という言葉は、「ふたり」とも「皆」とも訳せる。
③「生兵法は大怪我の基」ということわざ通りのことが起った。
*悪霊につかれた人は、超自然的な力を発揮し、反撃した。
*7人の悪霊追い出し人は、裸にされ、傷を負ってその家を逃げ出した。
*命が助かっただけも、まだましである。
Ⅲ.このエピソードの結末(17~20節)
1.17節
Act 19:17 このことがエペソに住むユダヤ人とギリシヤ人の全部に知れ渡ったので、みな恐れを感じて、主イエスの御名をあがめるようになった。
(1)この出来事は、エペソに住むユダヤ人とギリシア人の全部に知れ渡った。
①神への畏怖の念が湧いてきた。
②主イエスの御名があがめられた。
③当然、多くの者が信仰に入った。
2.18~19節
Act 19:18 そして、信仰に入った人たちの中から多くの者がやって来て、自分たちのしていることをさらけ出して告白した。
Act 19:19 また魔術を行っていた多くの者が、その書物をかかえて来て、みなの前で焼き捨てた。その値段を合計してみると、銀貨五万枚になった。
(1)信者の中から多くの者が、罪の告白をした。
①エペソでは、信仰に入ってからも悪習慣との決別が出来ていなかった。
②多くの者たちが、黒魔術やオカルトに関わっていたことを白日の下にさらした。
③この現象は、魔術と深い係わりのあったエペソならではのものである。
④魔術の世界の常識は、「呪文は秘密にしておかなければ効果がなくなる」
である。
⑤秘密の呪文や呪縛の言葉を手に入れるために、多額の費用を払って、
パピルス製の巻き物や書物を買った。
(2)秘密の呪文を公にしたとたんに、それらの呪文は効力を失う。
①効力がなくなった巻き物や書物を所有していても意味がない。
②多くの者は、それを群衆が見守る中で焼き捨てた。
③焼き捨てた書物の価値は、銀貨5万枚にも及んだ。
④ローマのデナリ銀貨ではなくギリシアのドラクマ銀貨であろう。
*銀貨5万枚は、5万日の労賃に相当する。
*1ドラクマを現在の1万円と考えると、5万ドラクマは5億円に相当する。
3.20節
Act 19:20 こうして、主のことばは驚くほど広まり、ますます力強くなって行った。
(1)これは第6番目の教会成長レポートである。
①使2:47、6:7、9:31、12:24、16:5
②使16:5は、マケドニア人の幻の箇所である。
*そこから使19:20のエペソでの奉仕までがひとくくりになっている。
結論:
1.パウロの悪霊との対決
*ルカは、パウロの悪霊との対決を3回記録している。
(1)使13:6~12第一次伝道旅行において、キプロス島を訪問した。
①偽預言者でバル・イエスというユダヤ人の魔術師に出会った。
*彼は、魔術師エルマとも呼ばれた。
②魔術師エルマは、地方総督セルギオ・パウロを信仰の道から遠ざけようとした。
③パウロが彼を叱責すると、彼の目が見えなくなった。
④驚嘆した総督は、信仰に入った。
(2)使16:16~18第二次伝道旅行において、ピリピを訪問した。
①占いの霊につかれた若い女奴隷の妨害を受けた。
②それが幾日も続いたので、パウロは彼女から悪霊を追い出した。
③彼女の主人たちから訴えられたパウロは、投獄された。
④そのことが、看守一家の救いにつながった。
(3)使19:13~20第三次伝道旅行において、エペソを訪問した。
①パウロの奇跡をコピーしようとする者たちが現れた。
(4)まとめ
①3回の伝道旅行それぞれにおいて、悪霊との対決があった。
②パウロは、悪霊との戦いを前面に押し出して伝道しているわけではない。
③悪霊から先制攻撃があり、それに対応している。
④最後は、イエス・キリストが勝利される。
2.罪や悪習慣との決別
(1)クリスチャンになっても、古いものを捨てきれないことがよくある。
①エペソでは、魔術やオカルトの世界から救われた人たちが多くいた。
②彼らは、かつての悪習慣から抜け出せないでいた。
③この世(エペソ)の価値観に沿って生きていたのである。
④スケアの7人の息子たちのエピソードをきっかけに、彼らは古い生活と
決別する決心をした。
(2)私たちへの適用
①男女関係や性道徳はどうか。
②偶像礼拝や占いはどうか。
③拝金主義はどうか。
④交友関係はどうか。
(ILL)断捨離。「友人」も断捨離の対象にできる。
「思い切って友人を断捨離して新しい人生を始めましょう」
⑤ロマ13:12
Rom 13:12 夜はふけて、昼が近づきました。ですから、私たちは、やみのわざを打ち捨てて、光の武具を着けようではありませんか。
Rom 13:13 遊興、酩酊、淫乱、好色、争い、ねたみの生活ではなく、昼間らしい、正しい生き方をしようではありませんか。
Rom 13:14 主イエス・キリストを着なさい。肉の欲のために心を用いてはいけません。
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