パートⅡ.旧約時代4章 カインとアベル

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カインとアベルについて学ぶ。

パートⅡ.旧約時代

4章 カインとアベル

イントロダクション

  1.「神の国と悪魔の国の葛藤」というテーマは、聖書の歴史哲学の中心である。

(1)今私たちは、このテーマを基に聖書を読み解く作業を行っている。

  2.パートⅠ.葛藤の舞台設定(1~3章)の復習

    (1)サタンは、悪魔の国を造るという目的をある程度達成したかに見える。

    (2)神は、直ちにサタンを滅ぼすこともできたが、そうはしなかった。

    (3)神は、創世記3章15節で福音の原型を示された。

  3.パートⅡ.旧約時代(4~17章)

    4章 カインとアベル

4.アウトライン

    (1)最初の殺人者カイン

    (2)セツの誕生

    (3)エノシュの誕生

    (4)堕天使と人間の娘の雑婚

カインとアベルについて学ぶ。

Ⅰ.最初の殺人者カイン

  
1.女から誕生する人物の誰かが、「女の子孫」であり贖い主である。

    (1)サタンは「女の子孫」の出現を大いに恐れた。

①その人物が現れたなら、サタンの野望は打ち砕かれてしまう。

      ②そこでサタンは、女から誕生する人物の抹殺を計画した。

      ③旧約聖書は、サタンによるメシア到来の妨害の記録として読める。

    (2)アダムとエバに2人の息子が与えられた。

①カインとアベルがそれである。

②成長するに従って、2人の性質が明らかになってきた。

*兄のカインは、神に対して反抗的な性質を持っていた。

*弟のアベルは、神を慕い求める性質を持っていた。

      ③アダムとエバは、アベルこそ「女の子孫」だと思ったことだろう。

  2.サタンは「女の子孫」を抹殺するために行動を起こした。

①サタンは、アベルは「女の子孫」そのものではないかと考えた。

②あるいは、「女の子孫」を輩出する家系に連なる人物ではないかと考えた。

③そこでサタンは、神に反抗的なカインを用いてアベルを抹殺しようとした。

      ⑤ヨハネの福音書8章44節

Joh 8:44
あなたがたは、悪魔である父から出た者であって、あなたがたの父の欲望を成し遂げたいと思っています。悪魔は初めから人殺しで、真理に立っていません。彼のうちには真理がないからです。悪魔は、偽りを言うとき、自分の本性から話します。なぜなら彼は偽り者、また偽りの父だからです。

  3.カインとアベルの対比(創4章)

    (1)共通点

      ①彼らはともに罪人であった。

②ともに、人類の堕落後、エデンの園の外で生まれた。

③ともに同じ両親から生まれ、同じ環境で育てられた。

    (2)相違点

①カインのささげ物は、信仰によるものではなかった。

②アベルのささげ物は、血のささげ物であった。

③「しばらく時が過ぎて」(創4:3)とある。

*その間、人口が増加した。

*神からささげ物に関する啓示があった。

*アベルのささげ物は、この啓示に応答する信仰に基づいたもの。

    (3)創世記4章の段階で、人間の前には2つの道が開けていたことが分かる。

①カインの道(神に反抗する道)とアベルの道(神に従う道)

    (4)最初の殺人

①カインは、アベルを人目につかない所に誘い、そこで彼を殺した。

②これは、人類史上最初の殺人であり、兄弟殺しである。

③新約聖書では、アベルの死は「義人の死」と解説されている。

*マタ23:35、ルカ11:51、1ヨハ3:12

④神はカインに、「あなたの弟アベルは、どこにいるのか」と問われた。

*これは、罪の告白を導き出すための質問である。

⑤カインは、「私は知りません」と答えた。

*これは、人間が嘘をついた最初の事例である。

⑥カインは、「私は弟の番人なのでしょうか」と応じた。

*彼は、神の質問は的を射たものではないと反論している。

    (5)サタンは、アベル殺害によって、「女の子孫」の到来を阻止しようとした。

      ①それに対する神からの対抗策は、セツの誕生である。

Ⅱ.セツの誕生

  1.創世記4章25節

Gen 4:25
アダムは再び妻を知った。彼女は男の子を産み、その子をセツと名づけた。カインがアベルを殺したので、彼女は「神が、アベルの代わりに別の子孫を私に授けてくださいました」と言った。

    (1)セツは、アベルの代わりとしてアダムとエバに与えられた息子である。

      ①セツには、「定める」、「土台」などの意味がある。

②アダムとエバは、セツからメシアを輩出する家系が始まると考えた。

③「別の子孫」は、ヘブル語では「別の種」ということばである。

*「種(ゼラー)」は「女の子孫」の「子孫」と同じことばである。

    (2)この段階でのエバの理解

      ①アベルに代わる息子が与えられた。

②その息子は、「女の子孫」を輩出する家系の始まりとなる。

③エバは霊的に成長し、神の計画をより深く理解するようになっていた。

Ⅲ.エノシュの誕生

  
1.創世記4章26節

Gen 4:26 セツにもまた、男の子が生まれた。セツは彼の名をエノシュと呼んだ。そのころ、人々は【主】の名を呼ぶことを始めた。

    (1)セツにも男の子が生まれた。彼はその子をエノシュと名づけた。

①エノシュには、「朽ちる人」という意味がある。

②セツは、人間存在のはかなさや限界を理解した人であった。

③詩篇103篇15節

Psa 103:15 人 その一生は草のよう。/人は咲く。野の花のように。

    (2)そのころ、人々は【主】の名を呼ぶことを始めた。

①これは、定期的な公の礼拝が始まったという意味である。

②セツの家系に属する人たちの中に、霊的覚醒が起こったことが分かる。

③これは、サタンにとっては歓迎できない状況であった。

Ⅳ.堕天使と人間の娘の雑婚

  1.別の戦略

    (1)「女の子孫」を輩出する人物を殺しても、神は代わりの人物を立てるだろう。

①この戦略は無効なので、新しい戦略を考える必要がある。

      ②新しい戦略とは、神に反抗的なカインの子孫たちを大いに増すこと。

③彼らを通して、セツの子孫たちに悪影響を与えること。

    (2)創世記4章16~22節

Gen 4:16 カインは【主】の前から出て行って、エデンの東、ノデの地に住んだ。

Gen 4:17 カインはその妻を知った。彼女は身ごもってエノクを産んだ。カインは町を建てていたので、息子の名にちなんで、その町をエノクと名づけた。

Gen 4:18 エノクにはイラデが生まれた。イラデはメフヤエルを生み、メフヤエルはメトシャエルを生み、メトシャエルはレメクを生んだ。

Gen 4:19 レメクは二人の妻を迎えた。一人の名はアダ、もう一人の名はツィラであった。

Gen 4:20 アダはヤバルを産んだ。ヤバルは天幕に住む者、家畜を飼う者の先祖となった。

Gen 4:21 その弟の名はユバルであった。彼は竪琴と笛を奏でるすべての者の先祖となった。

Gen 4:22 一方、ツィラはトバル・カインを産んだ。彼は青銅と鉄のあらゆる道具を造る者であった。トバル・カインの妹はナアマであった。

      ①カインの子孫たちは、先進的な文明を築き始めた。

②その文明は、神に敵対的であり、一夫多妻と暴力を特徴としていた。

    (3)創世記4章23~24節

Gen 4:23
レメクは妻たちに言った。/「アダとツィラよ、私の声を聞け。/レメクの妻たちよ、私の言うことに耳を傾けよ。/私は一人の男を、私が受ける傷のために殺す。/一人の子どもを、私が受ける打ち傷のために。

Gen 4:24 カインに七倍の復讐があるなら、/レメクには七十七倍。」

      ①アダムから7代目のレメクは、神に敵対的な文明の化身のような人物。

②彼は、人類史上初めて、ふたりの妻をめとった。

③妻の名は、アダ(装飾、飾るなどの意)とツィラ(きらきら輝くの意)。

*ともに、性的快楽を示唆した名前である。

④またレメクは、暴力的な人物であった。

    (5)カインの子孫との交流により、セツの子孫の中に背教が広がっていった。

①これは由々しき事態であるが、サタンはさらに強烈な手を打った。

②それが、堕天使と人間の女の雑婚である。

  2.堕天使と人間の女との雑婚

    (1)創世記6章1~2節

Gen 6:1 さて、人が大地の面に増え始め、娘たちが彼らに生まれたとき、

Gen 6:2 神の子らは、人の娘たちが美しいのを見て、それぞれ自分が選んだ者を妻とした。

      ①これは、堕天使と人間の娘の雑婚の記録である。

②「神の子ら」(ベネイ・ハエロヒム)ということば

*ヘブル語聖書では、常に天使を指す(良い天使も堕天使も指す)。

*ヨブ1:6、2:1、38:7参照

③新約聖書では、「神の子」は天使以外のものも指す。

*アダムや信者

*イエス・キリストもまた「神の子」である。

*イエスの場合は「そのひとり子」と呼ばれる。

*それは、イエスが永遠に存在していることを示している。

④堕天使と人間の娘の雑婚という解釈は、昔からあるユダヤ人の解釈である。

⑤ユダヤ人の歴史家ヨセフスの「ユダヤ古代史」(紀元173年)

*「神の子ら」(ベネイ・ハエロヒム)を「天使」と解釈している。

⑥「人の娘たち」とは、人間の女のことである。

*この中には、カインの系列の女も、セツの系列の女も含まれている。

⑦堕天使たちは、「それぞれ自分が選んだ者を妻とした」。

*これは、堕天使と人間の雑婚を表している。

    (2)なぜサタンは、堕天使と人間の女の雑婚という策略を採用したのか。

①人間の女の中にある「神のかたち」を破壊するためである。

②異常な人間を誕生させ、「女の子孫」の誕生を妨害しようとした。

結論

  1.サタンは、アベルを殺し、「女の子孫」の家系を断ち切ろうとした。

  2.しかし神は、アベルに代わる人物として、セツを誕生させた。

  3.セツにエノシュという息子が誕生した。

  4.セツ-エノシュという家系は、霊的覚醒を体験する信仰者の家系である。

  5.カインの子孫は、神に敵対する文明を築いていった。

  6.サタンは、人間の「かたち」を歪めるために、堕天使を人間の娘の雑婚を推進した。

  7.これは「女の子孫」の誕生を阻止するためにサタンの策略である。

  8.それに対する神の対抗策は、地球を覆う大洪水である。

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