サムエル記第一(2)「ハンナの祈り」1サム1:9~18

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命題:イスラエルの民は、霊的刷新を必要としていた。この個所に記された3つの対比が、そのことを示している。

サムエル記第一(2)

「ハンナの祈り」

1サム1:9~18

1.文脈の確認

Ⅰ.王政に向けた準備(1~9章)

A.サムエルの誕生と幼少期(1章)

  1.サムエルの家族(1:1~8)

  2.ハンナの祈り(1:9~18)

  3.サムエルの誕生(1:19~28)

2.注目すべき点

(1)士師の時代の末期、イスラエルは政治的にも霊的にも、混乱状態にあった。

(2)新しい時代を導くのは、預言者サムエルである。

(3)前回は、神の御業は小さなことから始まるということを学んだ。

(4)今回は、サムエル誕生の経緯について学ぶ。

命題:イスラエルの民は、霊的刷新を必要としていた。

この個所に記された3つの対比が、そのことを示している。

Ⅰ.立ち上がる女vs.座っている祭司(9節)

1.9節

1Sa 1:9 シロでの飲食が終わった後、ハンナは立ち上がった。ちょうどそのとき、祭司エリは【主】の神殿の門柱のそばで、椅子に座っていた。

  (1)この物語は、士師の時代の終わりに位置づけられている。

  ①イスラエルは道徳的にも霊的にも混乱した状態にあった。

  ②「人々は皆、自分の目に正しいと見えることを行っていた」

  ③そのような時代に、神は新しい器を準備しておられた。

(2)「ハンナは立ち上がった」

  ①これは単なる動作ではない。

  ②彼女は、祈る決断、神のもとへ出て行く決断を下した。

(3)「祭司エリは【主】の神殿の門柱のそばで、椅子に座っていた」

  ①「座っていた」は、ある種の受動性や無感覚さを象徴している。

  ②形式的には正しい場所にいながら、神の臨在に対しては無感覚である。

  ③これは、当時の祭司制度全体の霊的な鈍さを象徴している。

(4)教訓

  ①神は、信仰によって「立ち上がる者」を用いられる。

  ②時代を変えるのは、地位や資格ではなく、信仰と行動である。

Ⅱ.祈る女vs.鈍感な祭司(10~13節)

1.10節

1Sa 1:10 ハンナの心は痛んでいた。彼女は激しく泣いて、【主】に祈った。

(1)ハンナという一人の信仰者の涙と祈りが、歴史の流れを変える。

  ①「心の痛み」と「涙の祈り」は、苦難の中で希望を見いだすヘブル的信仰の型。

  ②詩6篇、42篇

(2)激しく泣く祈りは、メシアの系譜の起点となった。

  ①ハンナの涙

  ②サムエル誕生

  ③預言者制度の幕開け

  ④ダビデ王朝

  ⑤メシアの系譜

2.11節

1Sa 1:11
そして誓願を立てて言った。「万軍の【主】よ。もし、あなたがはしための苦しみをご覧になり、私を心に留め、このはしためを忘れず、男の子を下さるなら、私はその子を一生の間、【主】にお渡しします。そしてその子の頭にかみそりを当てません。」

(1)この請願は、万軍の【主】への呼びかけである。

  ①サムエルの誕生は、イスラエルの霊的・軍事的刷新の第一歩となる。

  ②この請願は、神の主権への信頼の表明である。

(2)ナジル人の請願に似ている。

  ①「頭にかみそりを当てません」は、ナジル人の外的しるしの一つである。

  ②期間限定ではなく、「一生」という点で、この請願は特異なものである。

  ③祈りの質の転換が見られる。

    *神の栄光のために子を求めた。

    *サムエルは、預言者・祭司・士師として霊的刷新をもたらす。。

(3)教訓

  ①神の栄光をゴールとする祈りは、聞き届けられる。

  ②神の主権的働きと、それに応答する人間の信仰は、両立する必要がある。

3.12~13節

1Sa 1:12 ハンナが【主】の前で長く祈っている間、エリは彼女の口もとをじっと見ていた。

1Sa 1:13 ハンナは心で祈っていたので、唇だけが動いて、声は聞こえなかった。それでエリは彼女が酔っているのだと思った。

(1)ハンナの祈りの革新性

  ①個人が神に直接、静かに祈るというスタイルは斬新である。

  ②「心で祈っていた」は、旧約時代では極めて異例な表現である。

  ③沈黙の祈りは、人には理解されにくいが、神には届く。

(2)エリの誤解

  ①当時の祭司制度は、霊的識別力を失っていた。

  ②祭司エリは、ハンナが酔っていると誤解した。

  ③祈る者vs.見る者の対比は、鮮明である。

  ④時代は、新しい啓示の受け手となる預言者を必要としていた。

Ⅲ.全的信頼vs.部分的理解(14~18節)

1.14~16節

1Sa 1:14 エリは彼女に言った。「いつまで酔っているのか。酔いをさましなさい。」

1Sa 1:15
ハンナは答えた。「いいえ、祭司様。私は心に悩みのある女です。ぶどう酒も、お酒も飲んではおりません。私は【主】の前に心を注ぎ出していたのです。

1Sa 1:16 このはしためを、よこしまな女と思わないでください。私は募る憂いと苛立ちのために、今まで祈っていたのです。」

(1)「いつまで酔っているのか」

  ①叱責的ニュアンスが込められている。

  ②「あなたの上からぶどう酒を取り去れ」(直訳)

  ③これは、霊的リーダーによる権威の誤用である。

  ④エリは、神の宮で起きている真実な霊的行動を見抜けなかった。

  ⑤神の宮の管理者が、儀式的・外面的役割しか果たしていない。

  ⑥霊的リーダーの腐敗と信仰者の叫びの対比は、鮮烈である。

(2)「いいえ、祭司様」

  ①「いいえ、わが主よ」と丁寧なことばで応じた。

  ②「私は【主】の前に心を注ぎ出していたのです」

  ③液体をこぼすように、心の奥底まで神に明け渡していた。

  ④レビ人でも預言者でもない、ただの苦しむ信者の個人的な祈り

  ⑤自己の最も深い部分を差し出すのは、詩篇の祈りの型である。

(3)「このはしためを、よこしまな女と思わないでください」

  ①「ベリヤアルの娘」(ならず者の女)

  ②ハンナは自分のことを「はしため」と称した。

  ③彼女は、道徳的攻撃に対して明確に反論した。

  ④エリの誤解の深刻さが浮き彫りになる。

(4)教訓

  ①いわれのない批判を受けたなら、丁寧なことばで応じる。

  ②道徳的攻撃に対しては、明確に、毅然とした態度で反論する。

2.17節

1Sa 1:17 エリは答えた。「安心して行きなさい。イスラエルの神が、あなたの願ったその願いをかなえてくださるように。」

(1)エリの態度は一変した。

  ①霊的鈍感さからの部分的回復

  ②「安心して行きなさい」→「平安(シャローム)のうちに帰りなさい」

  ③神の祝福を代弁する者へと変えられた。

  ④神は、不完全な者をも用いられる。

3.18節

1Sa 1:18
彼女は、「はしためが、あなたのご好意を受けられますように」と言った。それから彼女は帰って食事をした。その顔は、もはや以前のようではなかった。

(1)へりくだったことばで、エリに別れを告げた。

  ①彼女は、通常の生活に戻った。

  ②食事をした。顔は以前のようではなかった。

  ③心の状態が変化したのである。

  ④祈りの答えは得ていないが、エリのことばを答えの保証として受け取った。

(2)教訓

  ①平穏な日常生活の回復は、内面の平安から始まる。

  ②神のことばに全的信頼を置くなら、内面の平安が与えられる。

結論:今日の信者への適用

1.立ち上がる

(1)信仰の停滞を拒否する。

(2)心の一新によって、信仰的な行動を開始する。

2.心を注ぎ出す

(1)形式ではなく、真実な心で神に向かう。

(2)形式的な祈りを捨て、誠実な祈りを献げる。

3.委ねる

(1)神の栄光を第一に願う。

(2)祈りの答えを神に献げる決心をする。

4.平安に生きる

(1)答えを見ずとも神を信頼する。

(2)万軍の【主】に不可能はない。

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