出エジ29　出エジプト記20章１節～17節

「シナイ契約（2）」

１．文脈の確認

（1）シナイ契約は宗主契約である。

　　①当時の政治的な契約形式を採用している。

　　②この契約によって、神はイスラエルの民を正式な契約関係へと招かれた。

（2）シナイ契約の構造

　　①この契約を結ぶ王の名（20：１）

　　②この契約を結ぶに至った歴史的経緯（20：２）

　　③両者が同意する条項（命令と祝福）（20：３～17）

　　④挿入句（20：18～26）

　　⑤基本条項に付加された諸条項（21：１～23：33）

　　⑥契約の書を朗読する時と、それを保管する場所（24：７、25：16）

　　⑦証人として神々が呼ばれる（24：４、12の石の柱）

　　⑧祝福と呪い（23：20～33）

　　２．アウトライン

（1）両者が同意する条項（命令と祝福）（20：３～17）の後半

（2）第５戒～第10戒を扱う。

　　３．きょうのメッセージは、私たちに何を教えているか。

（1）第５戒～第10戒の現代的適用

このメッセージは、モーセの律法を人類救済計画の中に正しく位置づけるためのものである。

Ⅰ．第５戒（20：12）

　　
「あなたの父と母を敬え。あなたの神、【主】が与えようとしておられる地で、あなたの

齢が長くなるためである」

　　（1）両親を敬うことは、神の立てた秩序と権威に従うことである。

　　（2）両親を敬うことは、謙遜を学ぶことである。

　　①自分だけで立っている人はいない。

　　②傲慢は破滅をもたらす。

（3）この戒めには約束がともなっている。

　　①個人的な長寿というよりも、約束の地で長く住むという約束。

　　（4）イエスによる引用

　　①マタ15：４

　　「神は『あなたの父と母を敬え』、また『父や母をののしる者は死刑に処せられ

　　る』と言われたのです」

　　②マコ７：10

Ⅱ．第６戒（20：13）

「殺してはならない」

（1）命の尊厳を教えたもの

　　①個人的な理由で、故意に殺すこと。

　　②自殺もこれに含まれる。

（2）この戒めに含まれないもの

　　①レビ20：10

　　「人がもし、他人の妻と姦通するなら、すなわちその隣人の妻と姦通するなら、

　　姦通した男も女も必ず殺されなければならない」

　　②民35：16～21

　　「血の復讐をする者は、自分でその殺人者を殺してもよい。彼と出会ったときに、

　　彼を殺してもよい」（19節）

＊故意に殺人を犯した者を殺してもよい。

＊過失の場合は、犯人は逃れの町に逃げ込むことができる。

　　③申13：15（新共同訳13：16）

　　「あなたは必ず、その町の住民を剣の刃で打たなければならない。その町とそこ

　　にいるすべての者、その家畜も、剣の刃で聖絶しなさい」

＊偶像礼拝を扇動した者への裁き

＊【主】が命じる戦争における殺人

　　（3）第６戒を基に死刑廃止論を展開するのは的外れである。

Ⅲ．第７戒（20：14）

「姦淫してはならない」

（1）結婚関係の尊厳を教えたもの

（2）すべての性的罪を含む。

（3）結婚している人が犯す罪は、相手に対する裏切りとなる。

Ⅳ．第８戒（20：15）

「盗んではならない」

（1）私有財産の尊厳を教えたもの

（2）神は私たちが所有している物まで評価し、認めておられる。

（3）盗むことは、自分には自分の思い通りに生きる権利があると言うのと同じ。

Ⅴ．第９戒（20：16）

「あなたの隣人に対し、偽りの証言をしてはならない」

「隣人に関して偽証してはならない」（新共同訳）

　　（1）真実の大切さを教えたもの

　　（2）嘘をつくかどうかは、個人的なことである。

（3）ここでは、隣人に関する偽証が問題になっている。

　　①法廷での偽証から、偽りの噂話まで含む。

　　②偽証を拒否することは、無私の行為、隣人の価値を守る行為である。

Ⅵ．第10戒（20：17）

「あなたの隣人の家を欲しがってはならない。すなわち隣人の妻、あるいは、その男奴隷、

女奴隷、牛、ろば、すべてあなたの隣人のものを、欲しがってはならない」

　　（1）心の問題を扱っている。

　　①貪欲という罪

　　②他人が持っている物を手に入れたなら、幸せになるという誤解

（2）神はすべての必要を満たしてくださるという信仰を否定する行為である。

（3）この戒めを守ることができるなら、十戒すべてを守ることができる。

結論：このメッセージは、モーセの律法を人類救済計画の中に正しく位置づけるためのものである。

　　１．
第５戒の適用

（1）エペ６：１～３

「子どもたちよ。主にあって両親に従いなさい。これは正しいことだからです。『あ

なたの父と母を敬え』。これは第一の戒めであり、約束を伴ったものです。すなわち、

『そうしたら、あなたはしあわせになり、地上で長生きする』という約束です」

　　①第一の戒めとは、約束が伴った第一の戒めという意味

（2）第５戒はキリストの律法の中に含まれている。

　　①「【主】が与えようとしている地で」→「地上で」

（3）エペ６章の文脈から学ぶこと

　　①結婚生活はキリストと教会の関係の投影である。

②親子関係もまた、主への献身の投影（表れ）でなければならない。

③子どもは神への献身の表れとして両親を敬う。

④両親もまた神への献身の表れとして子どもたちを訓練する。

　　２．第６戒の適用

（1）マタ５：21～22

「昔の人々に、『人を殺してはならない。人を殺す者はさばきを受けなければならな

い』と言われたのを、あなたがたは聞いています。しかし、わたしはあなたがたに言

います。兄弟に向かって腹を立てる者は、だれでもさばきを受けなければなりません。

兄弟に向かって『能なし』と言うような者は、最高議会に引き渡されます。また、『ば

か者』と言うような者は燃えるゲヘナに投げ込まれます」

　　①パリサイ人の口伝律法と、イエスの律法解釈の違い

　　②モーセの律法は、心の在り方を問題にしている。

　　　　（2）Ⅰヨハ３：15

「兄弟を憎む者はみな、人殺しです。いうまでもなく、だれでも人を殺す者のうちに、

永遠のいのちがとどまっていることはないのです」

　　３．第７戒の適用

（1）ヘブ13：４

「結婚がすべての人に尊ばれるようにしなさい。寝床を汚してはいけません。なぜな

ら、神は不品行な者と姦淫を行う者とをさばかれるからです」

　　４．第８戒の適用

（1）エペ４：28

「盗みをしている者は、もう盗んではいけません。かえって、困っている人に施しを

するため、自分の手をもって正しい仕事をし、ほねおって働きなさい」

　　５．第９戒の適用

（1）ヤコ４：11

「兄弟たち。互いに悪口を言い合ってはいけません。自分の兄弟の悪口を言い、自分

の兄弟をさばく者は、律法の悪口を言い、律法をさばいているのです。あなたが、も

し律法をさばくなら、律法を守る者ではなくて、さばく者です」

　　６．第10戒の適用

（1）コロ３：５

「ですから、地上のからだの諸部分、すなわち、不品行、汚れ、情欲、悪い欲、そし

てむさぼりを殺してしまいなさい。このむさぼりが、そのまま偶像礼拝なのです」

　　①第10戒はむさぼりの罪である。それはそのまま偶像礼拝である。

　　②第10戒は第１戒と第２戒につながる。

　　７．まとめ

（1）第５戒～第10戒は、人と人との関係を規定する。

①古代世界で極めて稀な道徳法である。

②異教の神々は気まぐれで、不道徳で、信頼できない。

③イスラエルの民においては、神への信仰の表現が道徳的行為となる。

④十戒の中で第４戒（安息日）以外はすべてキリストの律法に再度出てくる。

⑤神が人を扱われるように、人は隣人を扱うべきである。

（2）キリストの律法の本質（ロマ13：８～10）

　「だれに対しても、何の借りもあってはいけません。ただし、互いに愛し合うこと

については別です。他の人を愛する者は、律法を完全に守っているのです。『姦淫す

るな、殺すな、盗むな、むさぼるな』という戒め、またほかにどんな戒めがあっても、

それらは、『あなたの隣人をあなた自身のように愛せよ』ということばの中に要約さ

れているからです。愛は隣人に対して害を与えません。それゆえ、愛は律法を全うし

ます」