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サムエル記第一(19)「サウルの最初の勝利」1サム11:1~15
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命題:神は、ご自身が選んだ指導者を力づけ、民に救いをもたらされる。この箇所を三つに区分して学ぶと、それがよく分かる。
サムエル記第一(19)
「サウルの最初の勝利」
1サム11:1~15
1.文脈の確認
Ⅰ.王政に向けた準備(1~9章)
Ⅱ.サウルの治世(10~31章)
A.サウルの確立(10~14章)
1.サウルを王として選ぶイスラエル(10章)
2.サウルの最初の勝利(11章)
2.注目すべき点
(1)アンモン人ナハシュは、イスラエルに対して屈辱的な要求を突きつけた。
(2)サウルは、イスラエル十二部族を一つにまとめる王として行動した。
(3)この勝利によって、サウルの王権が実質的に確立した。
命題:神は、ご自身が選んだ指導者を力づけ、民に救いをもたらされる。
この箇所を三つに区分して学ぶと、それがよく分かる。
Ⅰ.救いを必要とする民(1~5節)
1.1節
1Sa 11:1
さて、アンモン人ナハシュが上って来て、ヤベシュ・ギルアデに対して陣を敷いた。ヤベシュの人々はみな、ナハシュに言った。「私たちと契約を結んでください。そうすれば、あなたに仕えます。」
(1)「アンモン人ナハシュ」とは誰か。
①アンモン人は、ロトとその娘から出た民族である(創19:38)。
②その領土はヨルダン川東岸、ギルアデの東側にあった。
③士師時代にもイスラエルと戦っている(士10~11章)。
④「ナハシュ」という名は「蛇」を意味する。
(2)「上って来て」の意味
①必ずしも北上したという意味ではない。
②軍隊が攻撃のために進軍して来る場合にも用いられる。
(3)「私たちと契約を結んでください」の意味
①ヤベシュの住民は、「属国となって仕えます」と申し出ているのである。
②戦う前から降伏を申し出るほどに、絶望的な状況にあった。
(4)士師記21章とのつながり
①ヤベシュ・ギルアデは、ベニヤミン族と特別な関係を持っていた。
②部族存続のために、ヤベシュ・ギルアデの娘たちが妻として与えられた。
③サウルにとって、血縁的につながりの深い町であった。
*ペリシテ人はサウルの遺体をベテ・シャンの城壁にさらした。
*ヤベシュの勇士たちは、遺体を取り戻した(1サム31:11~13)。
2.2~3節
1Sa 11:2
アンモン人ナハシュは彼らに言った。「次の条件でおまえたちと契約を結ぼう。おまえたち皆の者の右の目をえぐり取ることだ。それをもってイスラエル全体に恥辱を負わせよう。」
1Sa 11:3
ヤベシュの長老たちは彼に言った。「イスラエルの国中に使者を遣わすため、七日の猶予を与えてください。もし、私たちを救う者がいなければ、あなたのところに出て行きます。」
(1)右の目をえぐり取る。
①古代の兵士は、左手に盾を持ち、右目で盾の外側を見ながら戦った。
(2)イスラエル全体への屈辱となる。
①「イスラエルには、自分たちの同胞を救う力がない」という事実を公然と示す。
②「こんな者にわれわれを救えるのか」(10:27)という問いが試される。
(3)「七日間の猶予」の意味
①各地に使者を送り、救援軍を募る必要があった。
②もし誰も助けに来なければ、イスラエル全体の無力さが証明されることになる。
③「救う者はいるのか」という問いが、11章全体を貫いている。
3.4~5節
1Sa 11:4 使者たちはサウルのギブアに来て、これらのことばを民の耳に語った。民はみな、声をあげて泣いた。
1Sa 11:5
ちょうどそのとき、サウルが牛を追って畑から帰って来た。サウルは言った。「民が泣いているが、いったい何が起こったのか。」彼らは、ヤベシュの人々のことばを彼に告げた。
(1)使者たちは、ベニヤミン領のギブアに来た。
①「サウルのギブア」は、サウルの故郷である(10:26)。
②使者は、サウル個人にではなく、まず「民」に事情を告げた。
③「民はみな、声をあげて泣いた」
④王が必要となる最初の危機が訪れたのである。
(3)サウルは畑から帰って来た。
①サウルは王に選ばれた後も、これまでの日常生活を続けていたのであろう。
②サウルは、「民はどうして泣いているのか」と尋ねる。
③そしてナハシュの要求を知った。
(4)5節と6節の間に「神の霊」が置かれている。
①5節=人間の無力
②6節=神の霊による力
③7~11節=神が与える勝利
Ⅱ.救いのために用いられる王(6~11節)
1.6節
1Sa 11:6 サウルがこれらのことばを聞いたとき、神の霊がサウルの上に激しく下った。彼の怒りは激しく燃え上がった。
(1)「神の霊がサウルの上に激しく下った」
①10:6では、サムエルが、「【主】の霊があなたの上に激しく下り……あなたは
新しい人に変えられます」と預言していた。
②旧約時代における聖霊の働きは、新約時代の「内住」とは区別する必要がある。
③ここでは、神が特定の使命を遂行させるために、サウルを特別に力づけている。
④士師たちの場合とよく似ている(士3:10、6:34、11:29、14:6)。
(2)「彼は激しく怒った」
①これは自己中心的な怒りではなく、義憤である。
②10:27では、自分が侮辱されたが、サウルは黙っていた。
③11:2、6では、神の民が侮辱されたので、サウルは激しく怒った。
(3)この節は後のサウルとの対比にもなる。
①彼は、神の霊によって力づけられ、神の民のために怒り、勇敢に行動する。
②サウルの怒りは次第に「自己中心的な怒り」へと変質していく。
2.7~8節
1Sa 11:7
彼は一くびきの牛を取り、それを切り分け、使者に託してイスラエルの国中に送り、「サウルとサムエルに従って出て来ない者の牛は、このようにされる」と言った。【主】の恐れが民に下って、彼らは一斉に出て来た。
1Sa 11:8 サウルはベゼクで彼らを数えた。すると、イスラエルの人々は三十万人、ユダの人々は三万人であった。
(1)「一くびきの牛を取り、それを切り分けた」
①畑で使っていたと思われる牛を切り分け、その肉をイスラエル全土に送った。
②「サウルとサムエルに従って出て来ない者の牛は、このようにされる」
③これは非常に強烈な召集命令である。初めて王としての権威を公に行使した。
(2)士師記19章との類似
①レビ人が、殺されたそばめの遺体を十二に切り分け、イスラエル全土に送った
②ただし大きな違いがある。
*士19章では、イスラエル内部の罪によって内戦が起こった。
*1サム11章では、外敵からイスラエルを救うために民が一致する。
(3)「サウルとサムエルに従って」
①預言者の霊的権威のもとで、王サウルが政治的・軍事的指導力を発揮している。
②13章で、サムエルの指示を待てずに越権行為をすることとの対比にもなる。
(4)「【主】の恐れが民に下った」
①民が集まった最終的な理由は、「【主】の恐れ」が彼らに下ったからである。
②ここにも神の主権的な働きがある。
(5)サウルは、集まった民をベゼクで数える。
①ベゼクは、ヨルダン川西側でヤベシュ・ギルアデへ向かうのに適した場所。
②イスラエルとユダが区別して数えられている。
*イスラエルの人々――30万人
*ユダの人々――3万人
③これは、後の南北王国分裂を考えると興味深い表現である。
3.9~10節
1Sa 11:9
彼らは、やって来た使者たちに言った。「ヤベシュ・ギルアデの人にこう言いなさい。明日、日が高くなるころ、あなたがたに救いがある。」使者たちは帰って行って、ヤベシュの人々に告げたので、彼らは喜んだ。
1Sa 11:10 ヤベシュの人々は言った。「私たちは、明日、あなたがたのところに出て行きます。あなたがたの良いと思うように私たちにしてください。」
(1)「明日、日が高くなるころ、あなたがたに救いがある」
①サウルたちはヤベシュから来た使者に、「救いがある」と伝える。
*3節――「救う者がいるだろうか」
*9節――「あなたがたに救いがある」
*13節――「【主】がイスラエルに救いを行われた」
②ヤベシュの人々はこの知らせを聞いて喜ぶ。
(2)翌日、ヤベシュの人々はナハシュに告げる。
①しかし、ことばには意図的な曖昧さがある。
②ナハシュが勝利を確信しているその時、神はすでに救援軍を備えておられた。
4.11節
1Sa 11:11
翌日、サウルは兵を三組に分け、夜明けの見張りの時に陣営に突入し、昼までアンモン人を討った。生き残った者は散り散りになり、二人の者がともにいることはなかった。
(1)翌日は、アンモン人が予想した降伏の日ではなく、神の救いの日となった。
①「明日、日が高くなるころ、あなたがたに救いがある」が、そのまま実現した。
(2)サウルは民を三組に分けた。
①この戦術は士7:16のギデオンを思い起こさせる。
②「夜明けの見張りの時」は、午前2時から6時ごろに当たる。
③アンモン人がまだ十分な戦闘態勢を整えていない時に奇襲攻撃をかけた。
④約束どおり、昼までに救いが実現した。
⑤最初の勝利は、神の力づけ、サウルの従順、民の一致によってもたらされた。
Ⅲ.救いを与えた【主】(12~15節)
1.12~13節
1Sa 11:12
民はサムエルに言った。「『サウルがわれわれを治めるのか』と言ったのはだれでしたか。その者たちを引き渡してください。彼らを殺します。」
1Sa 11:13 サウルは言った。「今日はだれも殺されてはならない。今日、【主】がイスラエルにおいて勝利をもたらしてくださったのだから。」
(1)民は、「サウルを王として認めなかった者たちを処刑しよう」と言い出す。
①勝利によって民のサウルに対する評価が一変した。
②彼らはサウルではなく、サムエルに処刑を求めた。
(2)サウルは復讐を拒否した。
①サウルは、「今日はだれも殺されてはならない」と言う。
②「今日は」が二度繰り返されている点に注目すべきである。
③この日は、復讐の日ではなく、救いの日なのである。
2.14~15節
1Sa 11:14 サムエルは民に言った。「さあ、われわれはギルガルに行って、そこで王政を樹立しよう。」
1Sa 11:15
民はみなギルガルに行き、ギルガルで、【主】の前にサウルを王とした。彼らはそこで、【主】の前に交わりのいけにえを献げた。サウルとイスラエルのすべての者は、そこで大いに喜んだ。
(1)イスラエル全体がサウルを王として受け入れる。
①サムエルは、この機会を逃さず王政を確立しようとする。
②ギルガルは、イスラエルが【主】との関係を確認した場所(ヨシ4:19)。
③「【主】の前にサウルを王とした」
④サウルは、神によって選ばれ、神の権威のもとで民を治める王である。
(2)「交わりのいけにえを献げた」
①この即位式は、単なる政治集会ではなく、礼拝を伴った喜びの祝祭だった。
②サウルとイスラエルのすべての者は、大いに喜んだ。
結論:今日の信者への適用
1.神は、召した者に必要な力を与えてくださる。
(1)危機の知らせを聞いたとき、「神の霊が彼の上に激しく下った」(6節)。
(2)今日の信者には聖霊が内住しておられる。
(3)「何ができるか」ではなく、「神は私を通して何をなさろうとしているのか」。
2.自分への侮辱には寛容であり、神のことには熱心である。
(1)サウルは、自分の名誉には寛容であり、委ねられた使命には熱心だった。
(2)これは今日の信者、特に指導的立場にある者にとって重要な原則である。
3.勝利したときこそ、栄光を神に帰す。
(1)サウルは、「私がイスラエルを救った」とは言わなかった。
(2)彼は、自分は神に用いられた器にすぎないことを知っていた。
(3)「これは【主】がしてくださったことである」と言えるのは、霊的成熟のしるし。




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