私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
メシアの生涯(38)—断食論争—
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クリスチャン生活の特権について学びます。
「断食論争」
§048 マコ2:18~22、マタ9:14~17、ルカ5:33~39
1.はじめに
(1)メシア運動を吟味する3つの段階
①観察
②審問
③決定
(2)前回の「罪を赦す権威」の箇所を境に、審問の段階に入る。
①この時期、イエスは公生涯の重要な時期に入っていた。
②パリサイ人たちとの論争が始まる。
③テーマは、口伝律法に関するものである。
④パリサイ的ユダヤ教は、口伝律法に聖書と同等か、それ以上の権威を認めた。
⑤口伝律法は、人々の生活を束縛していた。
(例話)感謝祭(11月第4木曜日)での食前の祈り
(3)A.T.ロバートソンの調和表
イエスは、3つのたとえ話を用いて、弟子たちを弁護する。(§48)
マコ2:18~22、マタ9:14~17、ルカ5:33~39
2.アウトライン(ルカ5:33~39)
(1)断食に関する質問
①誰が質問をしたのか(Who)。
②断食とは何か(What)。
③なぜ質問をしたのか(Why)。
(2)4つのたとえ話による回答
①花婿の友人のたとえ
②新しい着物と古い着物のたとえ
③ぶどう酒と皮袋のたとえ
④古いぶどう酒のたとえ
3.メッセージのゴール
(1)新約とパリサイ的ユダヤ教の関係
(2)クリスチャンの特権
(3)ロマ書7章と8章
このメッセージは、クリスチャン生活の特権について学ぼうとするものである。
Ⅰ.断食に関する質問
1.誰が質問をしたのか(Who)。
「彼らはイエスに言った。『ヨハネの弟子たちは、よく断食をしており、祈りもしていま
す。また、パリサイ人の弟子たちも同じなのに、あなたの弟子たちは食べたり飲んだりし
ています』」 (33節)
(1)恐らくマタイが、ユダヤ教が教える断食日に宴会を開いたのであろう。
①イエスとその弟子たちが招かれた。
②非常に楽しい雰囲気の宴会であった。
(2)マコ2:18
「ヨハネの弟子たちとパリサイ人たちは断食をしていた。そして、イエスのもとに来
て言った。『ヨハネの弟子たちやパリサイ人の弟子たちは断食するのに、あなたの弟子
たちはなぜ断食しないのですか』」
①審問の段階に入っている。
②質問したのは、ヨハネの弟子たちとパリサイ人たち。
③両者はともに、古い時代に属していた。
2.断食とは何か(What)。
(1)旧約聖書が命じる断食の日は、たった1日である。
①贖罪の日だけである。
(2)捕囚期以降、自発的に4回の断食が加わる。
①ゼカ8:19
「万軍の【主】はこう仰せられる。『第四の月の断食、第五の月の断食、第七の月
の断食、第十の月の断食は、ユダの家にとっては、楽しみとなり、喜びとなり、
うれしい例祭となる。だから、真実と平和を愛せよ』」
②【主】は、断食をするかどうかにこだわっておられない。
③メシア的王国の約束を信じて、真実と平和を求めよという命令が下った。
(3)イエス時代になると、パリサイ人たちは、週に2回断食をした。
①水さえ飲まない断食である。
②月曜と木曜に断食をした。
③師は、弟子たちの行動に責任を持つ。
3.なぜ質問をしたのか(Why)。
はじめに
①紀元1Cのユダヤ教では、口伝律法が聖書以上に権威を持つようになっていた。
②イエスとパリサイ人の論争は、この口伝律法に関するものである。
③パリサイ人たちは、イエスもまた口伝律法に従うことを期待した。
(1)ソフリム学派(前450年~前30年)
①捕囚から帰還した時期の律法学者エズラの活躍
*彼がソフリム学派を設立した。
*ソフリムとは、書記(律法学者)のことである。
*目的は、モーセの律法を教え、再び捕囚が起こらないようにするため。
②モーセの律法は、613の命令から成る。
*その周りに「垣根」を作れば、民は律法違反の罪を犯すことがなくなる。
*その「垣根」が、ラビ的律法である。
*過半数が賛成した時に、それは、全世界のユダヤ人が守るべき律法となる。
③「子やぎを、その母親の乳で煮てはならない」(出23:19、34:26、申14:21)
*カナン人たちは、初子のやぎを母の乳で煮て、バアルに捧げていた。
*この命令は、カナン人の偶像礼拝からイスラエルの民を守るものとなった。
*前1400年ごろの律法の目的が、前400年ごろには忘れ去られていた。
*その結果、肉と乳製品を分けて食べるべきだという律法ができた。
*これが、今日の食物規定(コシェル規定)の中心である。
(2)タナイム学派(前30年~220年)
①第2の学派である。
*タナイムとは、教師のことである。
②彼らは、ソフリム学派の律法を、聖書と同等か、それ以上のものと見なした。
③220年までは、すべてが口伝律法であった。
④彼らは、神はモーセに2種類の律法を与えたと教えた。
*成文法(613の律法)
*口伝律法
⑤今日のユダヤ教も、この考え方を踏襲している。
⑥口伝律法を暗記している人たちを、律法学者という。
*イエスの時代、口伝律法は完成途上にあった。
*メシアは、口伝律法に従うはずだという期待があった。
*しかしイエスは、一貫して口伝律法に反対した。
*バプテスマのヨハネの弟子たちは、口伝律法の断食の教えに従っていた。
⑦紀元300年ごろに、ユダ・ハナシの命令によって、口伝律法が文字化された。
*約650年にわたるラビ的律法が、成文法となった。
⑧ソフリム学派とタナイム学派の口伝律法をミシュナという。
*ミシュナは、ヘブル語で約1500ページである。
(3)アモライム学派(紀元220年~500年)
①アモライムとは、アラム語で教師という意味である。
②アモライム学派は、ゲマラという注解書を残した。
*ゲマラは、百科事典のブリタニカほどのサイズがある。
③タルムード
*ミシュナ+ゲマラ=タルムード
*口伝律法、パリサイ的律法=ミシュナ
Ⅱ.4つのたとえ話による回答
1.花婿の友人のたとえ
「イエスは彼らに言われた。『花婿がいっしょにいるのに、花婿につき添う友だちに断食
させることが、あなたがたにできますか。しかし、やがてその時が来て、花婿が取り去ら
れたら、その日には彼らは断食します』」 (34~35節)
(1)結婚式に行くのは、ごちそうに与るためであって、断食するためではない。
①ユダヤの婚礼は、7日間続いた。
②その間、断食、喪に服す行為、重労働などは禁じられた。
(2)しかし、イエスが去ってからは、彼らは断食するようになる。
①十字架の預言がここにある。
2.新しい着物と古い着物のたとえ
「イエスはまた一つのたとえを彼らに話された。『だれも、新しい着物から布切れを引き裂いて、古
い着物に継ぎをするようなことはしません。そんなことをすれば、その新しい着物を裂くことにな
るし、また新しいのを引き裂いた継ぎ切れも、古い物には合わないのです』」 (36節)
(1)新しい布切れは、洗うと縮む。
①新しい布切れを古い着物に縫い付けることはしない。
②それをすると、新しい着物も、古い着物も、ともにだめになる。
3.ぶどう酒と皮袋のたとえ
「また、だれも新しいぶどう酒を古い皮袋に入れるようなことはしません。そんなことを
すれば、新しいぶどう酒は皮袋を張り裂き、ぶどう酒は流れ出て、皮袋もだめになってし
まいます。新しいぶどう酒は新しい皮袋に入れなければなりません」 (37~38節)
(1)当時は、ぶどう酒は皮袋に入れて、ロバやラクダに乗せて運んだ。
(2)古い革袋は、長く使用されて、伸びきっている。
①そこに新しいぶどう酒を入れたなら、発酵力が強いので、皮袋は破裂する。
②新しい革袋の場合は、弾力性に富むので、持ちこたえることができる。
4.古いぶどう酒のたとえ
「また、だれでも古いぶどう酒を飲んでから、新しい物を望みはしません。『古い物は良
い』と言うのです」 (39節)
(1)ぶどう酒は、古いものほど良い味がある。
①ここでの「古いぶどう酒」は、2つの解釈が可能である。
(2)それは、パリサイ的ユダヤ教のことである。
①パリサイ人たちは、パリサイ的ユダヤ教を好み、イエスの教えを拒否する。
(3)それは、モーセの律法を正しく解釈するユダヤ教のことである。
①その場合は、パリサイ的ユダヤ教が新しいぶどう酒となる。
②イエスがメシアであるという教えは、古いぶどう酒である。
③イエスの弟子たちが味わっているのは、よい味のぶどう酒である。
④その彼らに、新しいぶどう酒(パリサイ的ユダヤ教)を強要すべきではない。
結論
1.新約とパリサイ的ユダヤ教の関係
はじめに
①4つのたとえ話は、すべて新約とパリサイ的ユダヤ教の関係を論じたもの。
②両者を合体させたり、調和させたりすることは不可能である。
(1)花婿とは、イエスのことである。
①メシアが到来した今は、婚礼の時である。
(2)新約は、新しい着物である。
①これをもって、パリサイ的ユダヤ教の繕いをすることは不可能である。
②新約は、それ全体が新しい着物である。
③イエスの教えは、新しい着物である。
④エレ31:31~37に新約の預言がある。
(3)新約は、新しいぶどう酒である。
①パリサイ的ユダヤ教は、古いぶどう酒である。
②新約は、パリサイ的ユダヤ教の中には収まり切らない。
(4)新約は、実は古いぶどう酒でもある。
①イエスは、モーセの律法の正しい解釈を教えるために来られた。
②イエスは、モーセの律法の成就として来られた。
2.クリスチャンの責務と特権
(例話)Dr. John Mason Good (May 25, 1764 – January 2, 1827)
著名な英国人の学者(薬学、宗教、自然科学) 「The book of nature」
「私は、クリスチャンの義務や教理を守ってきたが、特権に関しては、十分に体
験してこなかった」
(1)イエスは、ご自分の働きの期間を、婚礼の期間にたとえたのである。
①最初のしるしは、カナの婚礼で起こった。
②荒野での40日間の断食以外に、イエスが断食をしたという記録はない。
3.ロマ書7章と8章
(1)律法に束縛されたクリスチャン生活(ロマ書7章クリスチャン)
(2)聖霊に導かれたクリスチャン生活(ロマ書8章クリスチャン)
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