ルカの福音書(19)シモンの姑の癒し4:38~44

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イエスの権威について学ぶ。

ルカの福音書 19回

シモンの姑の癒し

ルカ4:38~44

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①悪魔の誘惑に勝ったイエスは、聖霊の力によってガリラヤ伝道を開始した。

  ②ナザレを訪問したが、ナザレの人々はイエスを信じなかった。

  ③イエスはカペナウムに下り、そこを宣教の拠点とした。

    *約2年半、ガリラヤを巡回したり、エルサレムに上ったりした。

  ④イエスの権威は、悪霊の追い出しと病の癒しによって証明される。

(2)ルカは、交差対句法を用いている。

  ①悪霊の追い出し(31~37節)

  ②病の癒し(38~39節)

  ③病の癒し(40節)

  ④悪霊の追い出し(41節)

2.アウトライン

(1)シモンの姑の癒し(38~39節)

(2)多くの病人の癒し(40~41節)

(3)宣教の拡がり(42~44節)

3.結論

(1)シモンについて

(2)シモンの姑について

イエスの権威について学ぶ。

Ⅰ.シモンの姑の癒し(38~39節)

1.38節

Luk 4:38

イエスは立ち上がって会堂を出て、シモンの家に入られた。シモンの姑がひどい熱で苦しんでいたので、人々は彼女のことをイエスにお願いした。

(1)第1の奇跡に続いて、第2の奇跡がすぐに起こる。

  ①イエスは説教を終えて立ち上がり、会堂を出た。

  ②会堂からシモンの家までは、徒歩で1~2分の距離である。

  ③ルカは、シモンが誰であるかを紹介していない。

    *読者は、すでにシモンのことを知っていたからであろう。

  ④シモンの家が、カペナウムでのイエスの拠点となる。

(2)会堂での礼拝を終えると、帰宅して食卓に着くのが当時の習慣である。

  ①ルカ14:1

Luk 14:1 ある安息日のこと、イエスは食事をするために、パリサイ派のある指導者の家に入られた。そのとき人々はじっとイエスを見つめていた。

(3)奴隷がいない庶民の家では、婦人が食卓で仕える。

  ①ところが、シモンの姑が病気であった。

  ②医者のルカだけが、「ひどい熱で苦しんでいた」と記している。

  ③これは、医学用語である。恐らく慢性的熱病であろう。

(4)人々の間に、イエスに対する信仰が芽生えていた。

  ①会堂で、イエスによる悪霊の追い出しを目撃した。

  ②「人々は彼女のことをイエスにお願いした」

2.39節

Luk 4:39
イエスがその枕元に立って熱を叱りつけられると、熱がひいた。彼女はすぐに立ち上がって彼らをもてなし始めた。

(1)床に敷物を置き、その上に寝るのが当時の習慣である。

  ①イエスは、医師が患者を診断する時の姿勢を取った。

(2)訳語の比較

    「その枕元に立って」(新改訳2017)

    「枕もとに立って」(新共同訳)

    「その傍らに立ちて」(文語訳)

    「And he stood over her」(ASV)

    「So he bent over her」(NIV)

  ①イエスは、慈悲深い偉大な医者である。

(3)癒しの方法

  ①「熱を叱りつけられると」

  ②悪霊の追い出しの場合と同様に、ことばによる癒しである。

  ③人でなく、病に命じている箇所は、ここだけである。

    *病の擬人化である。

(4)イエスの権威が証明された。

  ①癒しは直ちに起こり、なんの後遺症も、疲れも残さなかった。

  ②「彼女はすぐに立ち上がって彼らをもてなし始めた」

  ③悪霊の追い出しの場合も、解放された人はなんの害も受けなかった。

Ⅱ.多くの病人の癒し(40~41節)

1.40節

Luk 4:40

日が沈むと、様々な病で弱っている者をかかえている人たちがみな、病人たちをみもとに連れて来た。イエスは一人ひとりに手を置いて癒やされた。

(1)ここまでで、2人の人が癒された。

  ①ここから、大ぜいの人の癒しが始まる。

(2)日が沈んだ。

  ①安息日が終わったという意味であるが、ルカは、安息日には触れていない。

  ②安息日に病人を運ぶことは、律法違反である。

  ③安息日に癒しを行うのも、律法違反である。

  ④イエスは、パリサイ的律法を無視して、安息日に癒しを行うようになる。

  ⑤いろいろな病気の人たちが、イエスのもとに連れて来られた。

  ⑥悪霊の追い出しと、熱病の癒しが、町全体に口コミで伝わっていたからである。

(3)イエスが採用した癒しの方法

  ①イエスは、一人ひとりを大切に扱われた。

  ②手を置いて癒すのは、旧約聖書にはないが、新約聖書ではよくある。

  ③儀式的な按手ではなく、愛のある按手である。

  ④神の御手とは、神の力の比ゆ的表現である。

  ⑤イエスによる癒しは、肉体的、精神的、霊的な領域に及ぶ。

2.41節

Luk 4:41

また悪霊どもも、「あなたこそ神の子です」と叫びながら、多くの人から出て行った。イエスは悪霊どもを叱って、ものを言うのをお許しにならなかった。イエスがキリストであることを、彼らが知っていたからである。

(1)交差対句法が明確に見られる。

  ①ルカは、病と悪霊憑きを区別している。

(2)悪霊どもの知識の進展が見られる。

  ①「神の聖者」

  ②「神の子」=「キリスト(メシア)」

  ③知っていることと、その権威に服従することとは、別物である。

(3)イエスは、悪霊の証言を認めない。

  ①悪霊と関連があるかのような印象を与えたくない。

    *悪魔は嘘つきである。

  ②イエスは、人々から神の子と認められるために地上に来られた。

Ⅲ.宣教の拡がり(42~44節)

1.42節

Luk 4:42

朝になって、イエスは寂しいところに出て行かれた。群衆はイエスを捜し回って、みもとまでやって来た。そして、イエスが自分たちから離れて行かないように、引き止めておこうとした。

(1)イエスは、祈りの時間を必要とした。

  ①前夜の興奮状態や多忙な状態から、自分を取り戻す必要があった。

  ②次に何をすべきか、父なる神の導きを必要とした。

  ③狭い空間に大勢の人が住んでいたので、寂しいところを見つける必要があった。

  ④マコ1:35

Mar 1:35 さて、イエスは朝早く、まだ暗いうちに起きて寂しいところに出かけて行き、そこで祈っておられた。

(2)群衆は、イエスがいなくなったので、捜し回った。

  ①見つけるまで諦めないという意志が見える。

  ②イエスをカペナウムに引き止めておこうとした。

2.43~44節

Luk 4:43

しかしイエスは、彼らにこう言われた。「ほかの町々にも、神の国の福音を宣べ伝えなければなりません。わたしは、そのために遣わされたのですから。」

Luk 4:44
そしてユダヤの諸会堂で、宣教を続けられた。

(1)イエスの使命意識

  ①ほかの町々にも、神の国の福音を宣べ伝える義務がある。

    *十字架の福音ではなく、神の国の福音である。

  ②そのために、父なる神から派遣されている。

    *イエスは、父なる神から人類に遣わされた大使である。

(2)イエスは、ユダヤの諸会堂で神の国の福音を宣べ伝えた。

  ①狭義のユダヤは、イスラエルの地の南部である。

  ②広義のユダヤは、ガリラヤ地方も含むイスラエルの地全体である。

    *ここでは広義の意味が正解である。

(3)今回学んだ箇所を、今の私たちの生活に適用してはならない。

  ①イエスの教えが主であり、奇跡は従である。

  ②イエスの教えが正しいことを証明するために、奇跡が行われた。

  ③使徒の働きでも、同じパターンが続く。

結論

1.シモンについて

    
(1)マコ1:29の情報では、4人の名前が出て来る。

Mar 1:29
一行は会堂を出るとすぐに、シモンとアンデレの家に入った。ヤコブとヨハネも一緒であった。

  ①ルカは、シモンの名前だけを書いている。

  ②ルカの福音書では、6:14でペテロという名に変わっている。

Luk 6:13
そして、夜が明けると弟子たちを呼び寄せ、その中から十二人を選び、彼らに使徒という名をお与えになった。

Luk 6:14
すなわち、ペテロという名を与えられたシモンとその兄弟アンデレ、そしてヤコブ、ヨハネ、ピリポ、バルトロマイ、

 
  ③シモンは欠点の多い人物であったが、イエスは彼の可能性を見ておられた。

(2)シモンには妻がいた。

  ①妻の父が亡くなったので、妻の母を自分の家に引き取ったのであろう。

  ②1コリ9:5

1Co 9:5
私たちには、ほかの使徒たち、主の兄弟たちや、ケファのように、信者である妻を連れて歩く権利がないのですか。

  ③ペテロは独身であったという教えは、聖書的ではない。

(3)シモンには、家があり、職業があり、家族がいた。

  ①彼は、カペナウムのユダヤ人共同体に根を張った真面目な漁師であった。

 

2.シモンの姑について

(1)ルカは、婦人の尊厳を認め、高く評価している。

  ①エリサベツ(バプテスマのヨハネの母)

  ②マリア(イエスの母)

  ③アンナ(女預言者)

  ④ペテロの姑

(2)ルカ8:1~3

Luk 8:1
その後、イエスは町や村を巡って神の国を説き、福音を宣べ伝えられた。十二人もお供をした。

Luk 8:2
また、悪霊や病気を治してもらった女たち、すなわち、七つの悪霊を追い出してもらったマグダラの女と呼ばれるマリア、

Luk 8:3

ヘロデの執事クーザの妻ヨハンナ、スザンナ、そのほか多くの女たちも一緒であった。彼女たちは、自分の財産をもって彼らに仕えていた。

(3)ルカ23:49

Luk 23:49

しかし、イエスの知人たちや、ガリラヤからイエスについて来ていた女たちはみな、離れたところに立ち、これらのことを見ていた。

(4)ルカ23:55~56

Luk 23:55

イエスとともにガリラヤから来ていた女たちは、ヨセフの後について行き、墓と、イエスのからだが納められる様子を見届けた。

Luk 23:56
それから、戻って香料と香油を用意した。そして安息日には、戒めにしたがって休んだ。

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