使徒の働き(54)―エルサレム会議(4)―

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エルサレム会議について学ぶ。

「エルサレム会議(4)」

使徒15:22~35

 

1.はじめに

(1)エルサレム会議のテーマ

①異邦人は、先ずユダヤ教に改宗する必要があるのか。

②あるいは、信仰と恵みによって異邦人のままで救われるのか。

(2)これまでの会議の議事進行

①双方が意見を述べ、議論を重ねた。

②ペテロが、コルネリオの救いに関して証言した。

③パウロとバルナバが第一次伝道旅行について証言した。

④ヤコブがアモス書を引用し、異邦人も信仰と恵みによって救われると論じた。

⑤ヤコブは、異邦人信者が配慮すべき4つの禁止令を提案した。

(3)エルサレム会議は、教会史の中で最も重要な会議である。

①この会議での決定が、それ以降の教会の発展に大きな影響を与えた。

 

2.アウトライン

(1)書簡を届ける人々(22節)

(2)書簡の内容(23~29節)

(3)書簡を受け取った人々(30~35節)

 

結論:エルサレム会議の意義

エルサレム会議について学ぶ。

 

Ⅰ.書簡を届ける人々(22節)

1.22節

Act 15:22 そこで使徒たちと長老たち、また、全教会もともに、彼らの中から人を選んで、パウロやバルナバといっしょにアンテオケへ送ることを決議した。選ばれたのは兄弟たちの中の指導者たちで、バルサバと呼ばれるユダおよびシラスであった。

(1)エルサレム教会は、代表団をアンテオケ教会に派遣することにした。

①エルサレム会議の結論が出たので、それを伝えるための代表団である。

②派遣されたのは、2人のユダヤ人信者(エルサレム教会の指導者たち)である。

③彼らは、手紙に書かれた内容が真実であることを証言する証人となる。

*当時は、一般的に言葉による証言の方がより信頼された。

④エルサレム会議での決議は、教会史の中で最も重要なものである。

*彼らは、自分たちにとって不利になるかもしれない異邦人伝道を認めた。

(2)バルサバと呼ばれるユダ

①「バルサバ」は「安息日の息子」という意味である。

②彼は、預言者であった(使15:32)。

③使1:23に、「バルサバと呼ばれ別名をユストというヨセフ」が登場する。

Act 1:23 そこで、彼らは、バルサバと呼ばれ別名をユストというヨセフと、マッテヤとのふたりを立てた。

④バルサバは、「バルサバと呼ばれ別名をユストというヨセフ」の弟かもしれない。

⑤彼は、エルサレム教会の中のヘブル語を話すユダヤ人信者の代表である。

(3)シラス

①パウロと同じように、ローマの市民権を持っていた(使16:37)。

②ラテン名は、シルワノである。

③彼もバルサバと同じように、エルサレム教会の指導者であり、預言者であった。

④彼は、エルサレム教会の中のギリシア語を話すユダヤ人信者の代表である。

⑤ルカは、後に重要な役割を果たす人物を自然な流れの中で紹介する。

⑥シラスは、第二次伝道旅行でパウロの同労者として活躍するようになる。

*2コリ1:19

2Co 1:19 私たち、すなわち、私とシルワノとテモテとが、あなたがたに宣べ伝えた神の子キリスト・イエスは、「しかり」と同時に「否」であるような方ではありません。この方には「しかり」だけがあるのです。

*1テサ1:1

1Th 1:1 パウロ、シルワノ、テモテから、父なる神および主イエス・キリストにあるテサロニケ人の教会へ。恵みと平安があなたがたの上にありますように。

*2テサ1:1

2Th 1:1 パウロ、シルワノ、テモテから、私たちの父なる神および主イエス・キリストにあるテサロニケ人の教会へ。

2Th 1:2 父なる神と主イエス・キリストから、恵みと平安があなたがたの上にありますように。

⑦シラスは、ペテロの書記でもあった。

 

*1ペテ5:12

1Pe 5:12 私の認めている忠実な兄弟シルワノによって、私はここに簡潔に書き送り、勧めをし、これが神の真の恵みであることをあかししました。この恵みの中に、しっかりと立っていなさい。

Ⅱ.書簡の内容(23b~29節)

1.23節

Act 15:23 彼らはこの人たちに託して、こう書き送った。「兄弟である使徒および長老たちは、アンテオケ、シリヤ、キリキヤにいる異邦人の兄弟たちに、あいさつをいたします。

(1)書簡の宛先

①アンテオケ、シリア、キリキヤ

②キリキヤは、シリアの西側の地区である。

③紀元72年までローマは、シリアとキリキヤを1つの州としていた。

④教会はアンテオケだけでなく、シリアとキリキヤにも存在していた。

⑤ルカは、シリアとキリキヤでの伝道については何も記録していない。

2.24~25節

Act 15:24 私たちの中のある者たちが、私たちからは何も指示を受けていないのに、いろいろなことを言ってあなたがたを動揺させ、あなたがたの心を乱したことを聞きました。

Act 15:25 そこで、私たちは人々を選び、私たちの愛するバルナバおよびパウロといっしょに、あなたがたのところへ送ることに衆議一決しました。

(1)ユダヤ主義者たちの教えを否定した。

①彼らは、非公認の教師たちである。

②彼らは、「あなたがたを動揺させ、あなたがたの心を乱した」

③彼らは、救われるためには割礼を受ける必要があると教えた。

(2)正式な代表団をエルサレム教会から派遣することにした。

①バルナバとパウロに対する敬意

「私たちの愛するバルナバおよびパウロ」

*バルナバとパウロが使徒であることは、エルサレム教会が認めていた。

②バルナバとパウロといっしょに、代表団を派遣する。

③彼らは、エルサレム会議において全会一致で決まったことを伝える。

 

3.26~27節

Act 15:26 このバルナバとパウロは、私たちの主イエス・キリストの御名のために、いのちを投げ出した人たちです。

Act 15:27 こういうわけで、私たちはユダとシラスを送りました。彼らは口頭で同じ趣旨のことを伝えるはずです。

「私たちの主イエス・キリストの御名のために、いのちを投げ出した人たち」

*これは、バルナバとサウロのことか、あるいは、ユダとシラスのことか。

②(新改訳)は、「バルナバとパウロ」という名前を入れている。

③(リビングバイブル)の訳が参考になる。

「代表のユダとシラスは、主イエス・キリストのために、いのちを危険にさらし

てきた人たちです」

④エルサレム教会は、最高の人材を派遣している。

⑤彼らは、口頭で手紙の内容と同じ趣旨のことを伝えるはずである。

⑥申19:15

Deu 19:15 どんな咎でも、どんな罪でも、すべて人が犯した罪は、ひとりの証人によっては立証されない。ふたりの証人の証言、または三人の証人の証言によって、そのことは立証されなければならない。

 

4.28~29節

Act 15:28 聖霊と私たちは、次のぜひ必要な事のほかは、あなたがたにその上、どんな重荷も負わせないことを決めました。

Act 15:29 すなわち、偶像に供えた物と、血と、絞め殺した物と、不品行 とを避けることです。これらのことを注意深く避けていれば、それで結構です。以上。」

(1)全会一致の決定を導いたのは、聖霊である。

①異邦人の救いに「重荷」は必要ではない。

②つまり、異邦人は救われるためにユダヤ教に改宗する必要はないということ。

(2)ただし、ユダヤ人信者への配慮として、以下の4つを避けるように。

①偶像に供えた物

②血

③絞め殺した物

④不品行

(3)手紙の最後は、「以上」ではおかしい。

①ギリシア語の「エロウステ」は、「Farewell」である(常套句)。

②「祝福を祈ります」(新改訳2017)

③「健康を祈ります」(新共同訳)

④「なんぢら健(すこや)かなれ」(文語訳)

 

Ⅲ.書簡を受け取った人々(30~35節)

1.30~31節

Act 15:30 さて、一行は送り出されて、アンテオケに下り、教会の人々を集めて、手紙を手渡した。

Act 15:31 それを読んだ人々は、その励ましによって喜んだ。

(1)一行はアンテオケに着き、教会全体が集まる集会を開催した。

①手紙を読んだとは、公の場での朗読のことである。

(2)手紙の内容を理解した人たちは、喜んだ。

①そこには、励ましの言葉があった。

②異邦人は恵みと信仰のみによって救われるという公の決定があった。

 

2.32~33節

Act 15:32 ユダもシラスも預言者であったので、多くのことばをもって兄弟たちを励まし、また力づけた。

Act 15:33 彼らは、しばらく滞在して後、兄弟たちの平安のあいさつに送られて、彼らを送り出した人々のところへ帰って行った。

(1)手紙の朗読に続いて、説教による励ましがあった。

①ユダとシラスは預言者であった。

②彼らは、長い説教によって異邦人信者たちを励まし、力づけた。

(2)しばらく滞在して後、彼らはエルサレムに戻って行った。

①34節は底本から抜けている。

②「しかし、シラスだけは、引きつづきとどまることにした」(口語訳)

 

3.35節

Act 15:35 パウロとバルナバはアンテオケにとどまって、ほかの多くの人々とともに、主のみことばを教え、宣べ伝えた。

(1)パウロとバルナバは、アンテオケにとどまった。

①この時期は、アンテオケ教会で伝道が大いに進んだ時期である。

②彼ら以外にも、福音を教え、伝える人たちは多くいた。

(2)パウロとバルナバは、春が来て伝道旅行に出発する準備をしていたはずである。

 

結論:エルサレム会議の意義

1.聖霊がこの会議を導かれた。

(1)使15:28

Act 15:28 聖霊と私たちは、次のぜひ必要な事のほかは、あなたがたにその上、どんな重荷も負わせないことを決めました。

(2)聖霊によって全会一致に導かれた。

①議事進行の過程で聖霊が介入されたという説明はない。

②しかし、出席者たちは聖霊の導きを強く感じていた。

(3)ここには、聖霊の導きに関する通常のパターンが見られる。

①ドラマチックな現象が起こっているわけではない。

②出席者たちは、自由に意見を述べ、何が神の御心であるかを探った。

③聖霊に満たされた人たちは、会議の中に聖霊の臨在を感じていた。

④聖霊の導きに従順になれば、意見の一致に至ることを知っていた。

(4)問うべき質問

①超自然的な現象がないと、聖霊の導きを認識できないのか。

②人間が準備したり、考えたり、発言したりすると、聖霊の導きを妨げることに

なるのか。

③聖霊は、みことばとは無関係に働かれるのか。

 

2.異邦人伝道を認定したが、そこから来る分裂を回避することができた。

(1)この会議以降、教会は2つの分野の伝道に取り組むことになる。

①ユダヤ人伝道

②異邦人伝道

(2)宣教の2つの分野

①国内宣教と海外宣教ではない。

②ユダヤ人伝道と異邦人伝道である。

 

3.福音の真理が確認され、保持された。

(1)救いは、恵みにより、信仰によって与えられる。

①ユダヤ人も異邦人も、同じ方法によって救われる。

(2)この決定は、ユダヤ人信者をラビ的ユダヤ教から切り離した。

①とは言え、彼らには律法を守る自由はある。

(3)律法は、救いのためにも聖化のためにも、必要とはされていない。

①救いと聖化のために必要なのは、恵みと信仰である。

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