メシアの生涯(57)—他者を裁くこと、祈りと黄金律—

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このメッセージは、他者を裁くこと、祈りと黄金律について学ぼうとするものである。

「他者を裁くこと、祈りと黄金律」

§054 マタ7:1~12

1.はじめに

    (1)山上の垂訓の構成

        *ATロバートソンは、8つに区分している。

      ①八福の教え(5:3~12)

      ②メシアの義とパリサイ人の義(5:13~20)

      ③メシアの義の6つの例(5:21~48)

      ④義の実行の3つの例(6:1~18)

      ⑤神への献身(6:19~34)

      ⑥他者を裁くこと(7:1~6)

      ⑦祈りと黄金律(7:7~12)

      ⑧たとえ話による結論(7:13~8:1)

    (2)きょうは、⑥と⑦を取り上げる。

  ①文脈を確認する必要がある。

  ②山上の垂訓は、メシアによるモーセの律法の解釈である。

      ③イエスは特に、口伝律法(ミシュナ)を否定された。

  2.アウトライン

    (1)他者を裁くこと(1~6節)

    (2)祈り(7~11節)

    (3)黄金律(12節)

  3.結論:現代的適用

このメッセージは、他者を裁くこと、祈りと黄金律について学ぼうとするものである。

Ⅰ.他者を裁くこと(1~6節)

   はじめに「裁く」という言葉について

    (1)ギリシア語では、「クリノウ」という動詞である。

      ①分別する、より分ける、差別する、という意味。

      ②英語の「critic」という言葉はここから来ている。

    (2)「クリノウ」することは必要である。

      ①しかし、あらかじめ判断を下しておくこと(prejudgment)は、不当である。

      ②これは、偏見(pre-judice)である。

      ③イエスが戒めているのは、習慣的なあら捜しや鋭くて不当な批判である。

  1.1~2節 裁きに関する一般原則

  「さばいてはいけません。さばかれないためです。あなたがたがさばくとおりに、あなた

がたもさばかれ、あなたがたが量るとおりに、あなたがたも量られるからです」

   (1)イエスは山上の垂訓において、口伝律法(ミシュナ)を否定しておられた。

    ①パリサイ人たちは、モーセの律法の外側に多くの規則や伝統を作り上げた。

    ②口伝律法の目的は、人々がモーセの律法に違反しないようにするためであった。

    ③イエス時代になると、口伝律法が人々を束縛していた。

  (2)「裁くな」という命令は、口伝律法に基づいて裁くなという意味である。

    ①当時は、口伝律法にどれくらい従っているかで、その人の霊性が評価された。

    ②これは、聖書の教えを逸脱した行為であった。

    ③口伝律法で人を裁くなら、同じ口伝律法で裁かれる。

  (3)すべての裁きは、聖書に基づいて行われるべきである。

2.3~5節 援助者の心構え

「また、なぜあなたは、兄弟の目の中のちりに目をつけるが、自分の目の中の梁には気が

つかないのですか。兄弟に向かって、『あなたの目のちりを取らせてください』などとど

うして言うのですか。見なさい、自分の目には梁があるではありませんか。偽善者よ。ま

ず自分の目から梁を取りのけなさい。そうすれば、はっきり見えて、兄弟の目からも、ち

りを取り除くことができます」

  (1)「裁くな」という命令は、普遍的なものではない。

    ①口伝律法による裁きは禁止されている。

    ②聖書に基づいた裁きは、どうしても必要である。

      *その場合、霊的な洞察力や知恵が必要となる。

  (2)誇張法による教え

    ①他者を助けようとする必要が出て来た。

    ②兄弟の目に「ちり」を見つけた。

    ③しかし、助けようとする人の目には「梁」が入っている。

    ④その人は、偽善者である。

3.6節 援助すべきかどうかの判断

「聖なるものを犬に与えてはいけません。また豚の前に、真珠を投げてはなりません。そ

れを足で踏みにじり、向き直ってあなたがたを引き裂くでしょうから」

   (1)他者を助けようとするとき、それを好まない人もいる。

  (例話)福音に耳を傾けない家族、親戚、友人

    ①時が来ていない。

    ②愛と祈りの実践

  (2)絵画的例話

    ①聖なるもの、真珠とは、福音、聖書に基づく助言などを指す。

    ②犬、豚とは、粗野な人、肉的な人を指す。

      *聖書時代は、犬の評価はこのようなものであった。

      *犬は凶暴で、野犬化し、人の肉を食べたり、血をなめたりする。

      *豚はユダヤ人が忌み嫌うものであった。

      「美(うるは)しき婦(をんな)のつつしみなきは金(きん)の環(わ)の豕(ぶた)

の鼻(はな)にあるが如(ごと)し」(箴11:22)

Ⅱ.祈り(7~11節)

  1.7~8節 祈りの原則

  「求めなさい。そうすれば与えられます。捜しなさい。そうすれば見つかります。たたき

なさい。そうすれば開かれます。だれであれ、求める者は受け、捜す者は見つけ出し、た

たく者には開かれます」

     (1)祈りの必要性

      ①山上の垂訓の教えは、神の助けがなければ実行不可能である。

      ②それゆえ、祈りの必要性が生じる。

    (2)祈りの型は、すでに「主の祈り」で教えられていた。

      ①ここでは、父なる神が私たちの祈りを歓迎する方であることが示される。

      ②ここでの祈りは、「同じ言葉を繰り返す」祈りではない。

      ③「求めなさい」、「捜しなさい」、「たたきなさい」は、すべて現在形。

      ④これは、継続する動作を示している。

    (3)イエスの御名による祈りは、まだ教えられていない。

      ①この時代は、まだ律法の時代であった。

  2.9~11節 祈りが聞かれるという保証

  「あなたがたも、自分の子がパンを下さいと言うときに、だれが石を与えるでしょう。ま

た、子が魚を下さいと言うのに、だれが蛇を与えるでしょう。してみると、あなたがたは、

悪い者ではあっても、自分の子どもには良い物を与えることを知っているのです。とすれ

ば、なおのこと、天におられるあなたがたの父が、どうして、求める者たちに良いものを

下さらないことがありましょう」

   (1)小から大への議論

    ①地上の父と天の父の対比

    (2)地上の父は、子どもに良いものを与える。

      ①パンと石の対比

      ②魚と蛇の対比

      ③卵とさそりの対比(ルカ11:12)

    (3)もし子どもが危ないものを求めたなら、それは与えない。

    (4)地上の父が子どもをこれほど愛しているなら、天の父はなおさら私たちを愛して

ください。

Ⅲ.黄金律(12節)

   1.12節

  「それで、何事でも、自分にしてもらいたいことは、ほかの人にもそのようにしなさい。

これが律法であり預言者です」

   (1)ここで黄金律が登場する理由

    ①父なる神の愛が啓示された。

    ②黄金律は、イエスをメシアと信じた者が目標とすべき行動原理である。

  (2)レビ19:18

  「復讐してはならない。あなたの国の人々を恨んではならない。あなたの隣人をあな

た自身のように愛しなさい。わたしは【主】である」

(3)イエスよりも100年ほど前のラビ・ヒレル

  ①ユダヤ教への改宗希望者が、律法全体を教えて欲しいと願った。

  ②ヒレルは、「自分がされたくないことを、人にするな」と答えた。

  ③これは、黄金律の受動的実践である。

④イエスは、黄金律の能動的実践を説かれた。

    (4)「これが律法であり預言者です」

      ①黄金律が、旧約聖書の精神の要約である。

結論:

  1.裁きについて

    (1)「さばいてはいけません」というのは、普遍的な命令ではない。

      ①イエスは、口伝律法を基にした裁きを否定した。

      ②裁いてはならない場合と、裁きが必要な場合とがある。

    (2)裁いてはならない場合

      ①動機を裁いてはならない。神だけが知っておられる。

      ②見かけで裁いてはならない。

「あなたがたの会堂に、金の指輪をはめ、りっぱな服装をした人が入って来、ま

たみすぼらしい服装をした貧しい人も入って来たとします。あなたがたが、りっ

ぱな服装をした人に目を留めて、『あなたは、こちらの良い席におすわりなさい』

と言い、貧しい人には、『あなたは、そこで立っていなさい。でなければ、私の

足もとにすわりなさい』と言うとすれば、あなたがたは、自分たちの間で差別を

設け、悪い考え方で人をさばく者になったのではありませんか」(ヤコ2:1~4)

③グレイゾーンに関して、人を裁いてはならない。

「あなたがたは信仰の弱い人を受け入れなさい。その意見をさばいてはいけませ

ん。何でも食べてよいと信じている人もいますが、弱い人は野菜よりほかには食

べません。食べる人は食べない人を侮ってはいけないし、食べない人も食べる人

をさばいてはいけません。神がその人を受け入れてくださったからです。あなた

はいったいだれなので、他人のしもべをさばくのですか。しもべが立つのも倒れ

るのも、その主人の心次第です。このしもべは立つのです。なぜなら、主には、

彼を立たせることができるからです。ある日を、他の日に比べて、大事だと考え

る人もいますが、どの日も同じだと考える人もいます。それぞれ自分の心の中で

確信を持ちなさい」(ロマ14:1~5)

④他のクリスチャンたちの奉仕を裁いてはならない。

    (3)裁きが必要な場合

      ①教会内の罪

      「あなたがたの間に不品行があるということが言われています。しかもそれは、

異邦人の中にもないほどの不品行で、父の妻を妻にしている者がいるとのことで

す。それなのに、あなたがたは誇り高ぶっています。そればかりか、そのような

行いをしている者をあなたがたの中から取り除こうとして悲しむこともなかっ

たのです。私のほうでは、からだはそこにいなくても心はそこにおり、現にそこ

にいるのと同じように、そのような行いをした者を主イエスの御名によってすで

にさばきました」(1コリ5:1~3)

②教会内の争い

      「あなたがたの中には、仲間の者と争いを起こしたとき、それを聖徒たちに訴え

ないで、あえて、正しくない人たちに訴え出るような人がいるのでしょうか。あ

なたがたは、聖徒が世界をさばくようになることを知らないのですか。世界があ

なたがたによってさばかれるはずなのに、あなたがたは、ごく小さな事件さえも

さばく力がないのですか。私たちは御使いをもさばくべき者だ、ということを、

知らないのですか。それならこの世のことは、言うまでもないではありませんか」

(1コリ6:1~3)

      ③教理上の間違い

      「みことばを宣べ伝えなさい。時が良くても悪くてもしっかりやりなさい。寛容

を尽くし、絶えず教えながら、責め、戒め、また勧めなさい。というのは、人々

が健全な教えに耳を貸そうとせず、自分につごうの良いことを言ってもらうため

に、気ままな願いをもって、次々に教師たちを自分たちのために寄せ集め、真理

から耳をそむけ、空想話にそれて行くような時代になるからです」

(2テモ4:2~4)

      (例話)ある婦人からの質問

      「最近ARAMAIC ENGLISH NEW TESTAMENTを読んでいるのですが、その中ですべて

神を信じる者は豚肉を食べてはいけないという解説がありました。私自身あまり

肉類を食べないのもあって、以前はレビ記に出てくる食物規定を深く考えること

なく読んでいたのですが、今回豚肉の件から、では海の中にいるものでも鱗、ひ

れのないものは食べてはいけない…いかやタコが含まれているのでこれらを好

んで食べる日本人信者には大変なチャレンジですよねえ。…」

回答:「Netzarim movement」、訳すと、「ナザレ派運動」

  2.祈りについて

    (1)これはブランクチェックではない。

      ①聞かれない祈り

      「あなたがたは、ほしがっても自分のものにならないと、人殺しをするのです。

うらやんでも手に入れることができないと、争ったり、戦ったりするのです。あ

なたがたのものにならないのは、あなたがたが願わないからです。願っても受け

られないのは、自分の快楽のために使おうとして、悪い動機で願うからです」

(ヤコ4:2~3)

  ②聞かれる祈り

「何事でも神のみこころにかなう願いをするなら、神はその願いを聞いてくださ

るということ、これこそ神に対する私たちの確信です」(1ヨハ5:14)

  3.黄金律について

    (1)クリスチャン生活は、禁止事項に囲まれた生活ではない。

      ①イエスの教えは、ラビ・ヒレルの教えとは異なり、積極的なものであった。

      ②この教えが普遍的に実行されるようになれば、世の中は変わる。

      ③国同士の関係、会社、学校、家庭、そして教会における人間関係

    (2)恵みの時代の生活原則

    「それは、肉に従って歩まず、御霊に従って歩む私たちの中に、律法の要求が全うさ

れるためなのです」(ロマ8:4)

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