ルカの福音書(14)ヨハネのメッセージ3:7~20

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ヨハネのメッセージについて学ぶ。

ルカの福音書 14回

ヨハネのメッセージ

ルカ3:7~20

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①イエスの公生涯は、バプテスマのヨハネの登場から始まる。

  ②ヨハネは、「荒野で叫ぶ者の声」として、メシア到来のために人々の心を整えた。

(2)バプテスマのヨハネの奉仕(3:1~20)

  ①ヨハネの奉仕の始まり(1~6節)

  ②ヨハネのメッセージ(7~18節)

  ③ヨハネの奉仕の終わり(19~20節)

2.アウトライン

(1)ヨハネのメッセージ(7~14節)

(2)ヨハネの役割(15~18節)

(3)ヨハネの奉仕の終わり(19~20節)

3.結論

(1)バプテスマのヨハネの奉仕の姿勢

(2)紀元1世紀の宗教改革

(3)イエスの弟子のライフスタイル

ヨハネのメッセージについて学ぶ。

Ⅰ.ヨハネのメッセージ(7~14節)

1.7節

Luk 3:7
ヨハネは、彼からバプテスマを受けようとして出て来た群衆に言った。「まむしの子孫たち。だれが、迫り来る怒りを逃れるようにと教えたのか。

(1)群衆がヨハネからバプテスマを受けようとして出て来た。

  ①彼らは、霊的指導者たちの誤った教えに惑わされているかわいそうな民である。

  ②ヨハネが始めた「神の国運動」は、民族的運動となりつつある。

  ③しかし、彼らの中には、真の悔い改めに興味のない者たちがいた。

    *出エジプトの時も、多くの異邦人が混じり込んでいた。

  ④その彼らに、ヨハネは警告を発した。

(2)「まむしの子孫たち」

  ①イスラエルには20種類以上の毒蛇がいる。

  ②この比喩は、ほとんど「サタンの子孫たち」と言うに等しい。

  ③ヨハ8:44

Joh 8:44
あなたがたは、悪魔である父から出た者であって、あなたがたの父の欲望を成し遂げたいと思っています。悪魔は初めから人殺しで、真理に立っていません。彼のうちには真理がないからです。悪魔は、偽りを言うとき、自分の本性から話します。なぜなら彼は偽り者、また偽りの父だからです。

  ④「だれが、迫り来る怒りを逃れるようにと教えたのか」

  ⑤「私はそんなことは教えていない」という意味である。

  2.8節

Luk 3:8
それなら、悔い改めにふさわしい実を結びなさい。『われわれの父はアブラハムだ』という考えを起こしてはいけません。言っておきますが、神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子らを起こすことができるのです。

(1)洗礼によって自動的に罪が赦されるわけではない。

  ①悔い改めとは、心の方向転換である。

  ②真の悔い改めは、信仰の実によって証明される(ヤコブ書のテーマ)。

  ③ルカは、道徳的行為を重視している。

(2)「『われわれの父はアブラハムだ』という考えを起こしてはいけません」

  ①当時のユダヤ教は、アブラハムの子孫なら神の国に入れると教えていた。

  ②ヨハネは、ユダヤ人であることが救いの保証になるわけではないと教えた。

  ③ヨハ8:39

Joh 8:39
彼らはイエスに答えて言った。「私たちの父はアブラハムです。」イエスは彼らに言われた。「あなたがたがアブラハムの子どもなら、アブラハムのわざを行うはずです。

(3)「神はこれらの石ころからでも、アブラハムの子らを起こすことができるのです」

   ①石は、異邦人を指す比ゆ的言葉である。

  ②当時、ユダヤ人は異邦人を見下していた。

  ③ユダヤ人はメシアを拒否するが、異邦人の中から多くの信者が出るようになる。

  3.9節

Luk 3:9 斧もすでに木の根元に置かれています。だから、良い実を結ばない木はすべて切り倒されて、火に投げ込まれます。」

(1)これは、最後の裁きではなく、迫り来る裁きを描写する比ゆ的ことばである。

  ①ここでの裁きは、神の国が到来したことに関する裁きである。

  ②斧もすでに木の根元に置かれている。枯れ木は切り倒される。

  ③裁きが近いことを示す比ゆ的ことばである。

  ④この裁きは、紀元70年に成就した。

  4.10節

Luk 3:10 群衆はヨハネに尋ねた。「それでは、私たちはどうすればよいのでしょうか。」

(1)群衆は心を刺され、具体的助言を求めた。

  ①悔い改めの表現として、何を為すべきか。

  ②これは、真剣な問いかけである。

  ③ヨハネは、各人の弱点に応じて、具体的助言を与える。

  5.11節

Luk 3:11
ヨハネは答えた。「下着を二枚持っている人は、持っていない人に分けてあげなさい。食べ物を持っている人も同じようにしなさい。」

(1)貪欲な者には、気前良くなるように勧めた。

  ②上着(ヒマティオン)ではなく、下着(キトン)が取り上げられている。

  ③下着を2枚持っている人は、2枚いっしょに着ることが多かった。

  ④ヨハネは、より重要性の低い物に言及している。上着は当然である。

  ⑤ヨハネは、食事も含めて、隣人愛の実践を説いた。

  6.12~13節

Luk 3:12 取税人たちもバプテスマを受けにやって来て、ヨハネに言った。「先生、私たちはどうすればよいのでしょうか。」

Luk 3:13 ヨハネは彼らに言った。「決められた以上には、何も取り立ててはいけません。」

(1)取税人には、正直に仕事をするように勧めた。

  ①彼らは、入札によって、ローマから徴税権を得ていた。

  ②税額は前納であるため、それ以降の徴収が乱暴なものになる。

  ③特に通行税を徴収する人たちに問題があった。

  ④「決められたもの以上には、何も取り立ててはいけません」

  6.14節

Luk 3:14
兵士たちもヨハネに尋ねた。「この私たちはどうすればよいのでしょうか。」ヨハネは言った。「だれからも、金を力ずくで奪ったり脅し取ったりしてはいけません。自分の給料で満足しなさい。」

(1)兵士たちには、満足するように勧めた。

  ①彼らは、ローマ兵ではなく、ユダヤ人兵士である。

  ②ヘロデ・アンティパスに雇われていた兵士たちであろう。

  ③彼らは、取税人の仕事が円滑に進むように、取税人の護衛をしていた。

  ④中には悪質な兵士がいて、脅迫によって金品を奪っていた。

  ⑤自分に与えられている力を、利得のために用いてはならない。

  ⑥与えられているもので満足する。

Ⅱ.ヨハネの役割(15~18節)

1.15節

Luk 3:15
人々はキリストを待ち望んでいたので、みなヨハネのことを、もしかするとこの方がキリストではないか、と心の中で考えていた。

(1)ヨハネが語る神の国とメシアに関するメッセージが、民衆に大きな影響を与えた。

  ①ヨハネは、ダビデの家系ではない。祭司の息子なので、レビ族である。

  ②ヨハネは、メシアが行うはずの奇跡を行っていない。

  ③にもかかわらず、民衆はヨハネがメシアではないかと考えた。

  2.16~17節

Luk 3:16
そこでヨハネは皆に向かって言った。「私は水であなたがたにバプテスマを授けています。しかし、私よりも力のある方が来られます。私はその方の履き物のひもを解く資格もありません。その方は聖霊と火で、あなたがたにバプテスマを授けられます。

Luk 3:17
また手に箕を持って、ご自分の脱穀場を隅々まで掃ききよめ、麦を集めて倉に納められます。そして、殻を消えない火で焼き尽くされます。」

(1)ヨハネは、自分を奴隷以下の立場に置いた。

  ①ユダヤ人の奴隷は、主人に仕えるが、履き物のひもを解くことはしなかった。

  ②それは、異邦人の奴隷の役割であった。

  ③ラビは無料で教え、生徒はラビに献身的に仕えた。

  ④そのような生徒でも、ラビの履き物のひもを解くことはしなかった。

(2)ヨハネは、自分が施しているバプテスマとメシアのバプテスマを比較した。

  ①ヨハネのバプテスマは、水のバプテスマである。

  ②メシアのバプテスマは、聖霊と火のバプテスマである。

    *聖霊のバプテスマは、使2:1~4で成就した。

    *火のバプテスマは、再臨のメシアによる裁きである(マラ3:2~3)

Mal 3:2
だれが、この方の来られる日に耐えられよう。/だれが、この方の現れるとき立っていられよう。/まことに、この方は、精錬する者の火、/布をさらす者の灰汁のようだ。

Mal 3:3
この方は、銀を精錬する者、/きよめる者として座に着き、/レビの子らをきよめて、/金や銀にするように、彼らを純粋にする。/彼らは【主】にとって、/義によるささげ物を献げる者となる。

(3)聖霊のバプテスマの特徴

  ①キリストのみからだなる教会にバプテスマされる。

  ②聖霊の内住が始まる。

  ③御霊の賜物が与えられる。

3.18節

Luk 3:18 このようにヨハネは、ほかにも多くのことを勧めながら、人々に福音を伝えた。

(1)これは、ヨハネの奉仕のまとめである。

  ①福音とは、「神の国の福音」である。

  ②イエスの死と復活以降に伝えられる福音とは異なる。

  ③ルカは、「神の国は近づいた」というメッセージをここでは紹介していない。

  ④ルカ4:43~44で「神の国の福音」ということばが出てくる。

Luk 4:43
しかしイエスは、彼らにこう言われた。「ほかの町々にも、神の国の福音を宣べ伝えなければなりません。わたしは、そのために遣わされたのですから。」

Luk 4:44 そしてユダヤの諸会堂で、宣教を続けられた。

Ⅲ.ヨハネの奉仕の終わり(19~20節)

1.19~20節

Luk 3:19 しかし領主ヘロデは、兄弟の妻ヘロディアのことと、自分が行った悪事のすべてをヨハネに非難されたので、

Luk 3:20 すべての悪事にもう一つ悪事を加え、ヨハネを牢に閉じ込めた。

(1)ルカは、イエスの公生涯に入る前に、ヨハネの物語を終えている。

  ①ヨハネとイエスの対比が終わる。

  ②ヨハネの受難は、イエスの受難の予表となっている。

(2)ヨハネの厳しいことばに反発したヘロデ・アンティパスは、ヨハネを投獄した。

  ①長い説明は、マタ14:4~12、マコ6:17~29にある。

  ②ヨハネの死については、先に行ってから説明される(9:7~9、19~20)。

(3)ヨハネの奉仕の期間は約3年である。

  ①1年間は自由で、2年間は獄中にあり、その後斬首された。

結論

  1.バプテスマのヨハネの奉仕の姿勢

(1)ルカは一貫して、イエスが主であり、ヨハネが従であることを伝えた。

(2)ヨハネは一貫して、自分が「荒野で叫ぶ者の声」であることを認識していた。

  ①私ではなく、あの方が栄えるべきである。

  ②私のバプテスマよりも、あの方のバプテスマの方が優れている。

(3)私たちが最も恐るべきこととは何か。

  ①神のために何もしない生活を送ること

  ②神の働きを妨害すること

  2.紀元1世紀の宗教改革

(1)ルカの福音書には、「パリサイ人やサドカイ人」への言及がない。

(2)「『われわれの父はアブラハムだ』という考えを起こしてはいけません」

  ①これは、パリサイ的ユダヤ教を否定することばである。

  ②ユダヤ人たちはローマの支配下にあった。

  ③さらに、一般民衆は、パリサイ的ユダヤ教の支配下にあった。

  ④ヨハネが始めた神の国運動は、霊的革命である。

  ⑤形式的信仰から聖書信仰への回帰である。

  ⑥支配者層との対立が、ヨハネの死とメシアの死をもたらすことになる。

  ⑦メシアの死によって、この霊的革命は普遍的性格を持ち始める。

  ⑧キリスト教とは、普遍的ユダヤ教のことである。

  3.イエスの弟子のライフスタイル

(1)ヨハネは、職場放棄や、荒野での生活を推奨したわけではない。

  ①置かれている生活の場で、メシアの弟子として生きよと励ました。

  ②クリスチャンのライフスタイルとは、この世でメシアの弟子として生きること。

(2)信仰は、行いによって表現される。

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