ルカの福音書(13)ヨハネの奉仕の始まり3:1~6

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ヨハネの奉仕の始まりについて学ぶ。

ルカの福音書 13回

ヨハネの奉仕の始まり

ルカ3:1~6

1.はじめに

(1)文脈の確認

   ①イエスの成長

    *ナザレでの子ども時代

    *12歳でのエルサレム訪問

    *公生涯までの生活

  ②イエスの公生涯は、バプテスマのヨハネの登場から始まる。

(2)バプテスマのヨハネの奉仕(3:1~20)

  ①ヨハネの奉仕の始まり(1~6節)

  ②ヨハネのメッセージ(7~18節)

  ③ヨハネの奉仕の終わり(19~20節)

2.アウトライン

(1)時代背景(1~2節)

(2)ヨハネの活動(3節)

(3)イザヤ書40章3~5節の成就(4~6節)

3.結論

(1)福音の歴史性

(2)忍耐の必要性

ヨハネの奉仕の始まりについて学ぶ。

Ⅰ.時代背景(1~2節)

1.1~2節a

Luk 3:1 皇帝ティベリウスの治世の第十五年、ポンティオ・ピラトがユダヤの総督であり、ヘロデがガリラヤの領主、その兄弟ピリポがイトラヤとトラコニテ地方の領主、リサニアがアビレネの領主、

Luk 3:2a アンナスとカヤパが大祭司であったころ、

    はじめに

  ①ルカは、支配者の統治年によって年代を確定している。

  ②これは、当時の歴史家たちが採用した一般的な手法である。

  ③ルカは、合計7人の支配者を列挙している。

    *皇帝1人、総督1人、領主(国主)3人、大祭司2人

(1)「皇帝ティベリウスの治世の第十五年」

  ①ティベリウスは、アウグストゥスの後を継いだ皇帝である。

  ②紀元11年から2年間、アウグストゥスと共同統治を行った。

  ③ティベリウスの治世の第15年とは、恐らく紀元26年であろう。

  ④ティベリウスは、悪名高い皇帝である。

  ⑤次に彼が選んだ皇帝はカリギュラで、さらに悪名高い。

  ⑥ティベリアという町

    *ヘロデ・アンティパスがティベリウスに献上した町である(20年)。

    *墓地の上に建てられたので、ユダヤ人たちはこの町には住まなかった。

    *異邦人の町なので、イエスがここを訪問したという記録はない。

    *ヨハ6:23にのみ出てくる。

  ⑦バル・コクバの乱(132~135年)以降の町の歴史

    *サンヘドリンは、セフォリスとベテ・シャメシュからこの町に移動した。

    *ラビ・シメオン・バル・ヨカイが、この町を清めた(135~145年)。

    *その結果、ユダヤ人が25,000人居住するようになった。

    *それ以降の数世紀、ユダヤ教神学の中心地となる。

    *エルサレム、ヘブロン、ツファットに次ぐ第4の聖地となった。

    *エルサレム・タルムードと旧約聖書のマソラ本文は、ここで確定された。

(2)「ポンティオ・ピラトがユダヤの総督」

  ①彼は、5代目のユダヤ総督である(紀元26~36年)。

  ②ユダヤ人に対しては敵対的であった。

  ③1961年、カイサリアで彼の名を刻んだ記念碑が発掘された。

   「ユダヤ総督ポンティオ・ピラトは、皇帝ティベリウスをたたえ、神殿をカイサ

リアの住民に捧げる」

    *この神殿は、エルサレムの神殿と同じサイズである。

(3)「ヘロデがガリラヤの領主」

  ①このヘロデは、ヘロデ大王の息子、ヘロデ・アンティパスのことである。

  ②彼は、ガリラヤの領主(国主)であった(前4~紀元36年)。

    *彼は、ティベリアからガリラヤ地方を統治した。

  ③領主(国主)は、王よりもランクの低い地位のことである。

  ④彼は、バプテスマのヨハネを投獄する人物である。

(4)「その兄弟ピリポがイトラヤとドラコニテ地方の領主」

  ①ヘロデ・ピリポは、アンテパスの腹違いの兄弟である。

  ②彼は、ガリラヤの北部に領地を持った(前4~紀元34年)。

(5)「リサニアがアビレネの領主」

  ①リサニアに関する情報はほとんどない。

  ②アビレネは、さらに北方の地区で、ダマスコの北西に位置する。

(6)と(7)「アンナスとカヤパが大祭司であったころ」

  ①アンナスは、元大祭司である(紀元6~15年)。

    *ローマが彼を退任させた。

  ②引退しても、大祭司は終身職であるため、大祭司という称号が付く。

  ③カヤパは、アンナスの義理の息子である(紀元18~36年)。

  ④実権はアンナスが握っていた。

    *これらの情報は、ルカの福音書の信頼性を確立するためのものである。

        (ILL)手編みのセーターのほつれ

  2.2b節

Luk 3:2b 神のことばが、荒野でザカリヤの子ヨハネに臨んだ。

(1)ルカは、1章で説明した内容を前提に、この箇所を書いている。

  ①ヨハネは、祭司ザカリヤの息子である。

  ②ヨハネは、荒野で隠れた生活をしていた(ルカ1:80)。

Luk 1:80 幼子は成長し、その霊は強くなり、イスラエルの民の前に公に現れる日まで荒野にいた。

(2)公の活動は、およそ30歳から開始した。

  ①旧約時代、祭司は30歳から奉仕を始める。

  ②祭司の息子ヨハネは、30歳で活動を開始した。

(3)「神のことばが、ヨハネに臨んだ」

  ①神は、霊的指導者たちを迂回して、ヨハネを通して民に語りかけた。

    *歴史上、リバイバルは周辺の人々から起こった。

  ②神は、イスラエルの指導者たちを喜んではおられない。

  ③ルカは、ヨハネを預言者として紹介する。

  ④ルカ1:76の成就

Luk 1:76 幼子よ、あなたこそ/いと高き方の預言者と呼ばれる。/主の御前を先立って行き、その道を備え、

  ⑤預言者の召命の例(エレ1:1~2)

Jer 1:1 ベニヤミンの地、アナトテにいた祭司の一人、ヒルキヤの子エレミヤのことば。

Jer 1:2 このエレミヤに【主】のことばがあった。ユダの王、アモンの子ヨシヤの時代、その治世の第十三年のことである。

  ⑥ホセ1:1、ミカ1:1、ハガ1:1など参照

  ⑦バプテスマのヨハネは、旧約時代最後の預言者である。

Ⅱ.ヨハネの活動(3節)

1.3節

Luk 3:3 ヨハネはヨルダン川周辺のすべての地域に行って、罪の赦しに導く悔い改めのバプテスマを宣べ伝えた。

(1)ヨハネは、ただちに行動を起こした。

  ①ヨルダン川周辺のすべての地域に行った。

  ②彼は、自らの奉仕をエリヤのそれに重ねている。

  ③彼は、霊的覚醒をもたらすメッセージを語った。

    *それが悔い改めのバプテスマである。

(2)「罪の赦しに導く悔い改めのバプテスマ」

  ①バプテスマによって罪が赦されるという意味ではない。

  ②これは、罪の赦しに関係したバプテスマ、という意味である。

  ③悔い改めとは、心の方向転換のことである。

  ④悔い改めと罪の赦しが、バプテスマに先行する。

(3)バプテスマの意味

  ①基本的意味は、一体化である(浸礼である)。

    *バプテスマのヨハネとの一体化

    *彼が語るメッセージ(悔い改めの必要性)との一体化

    *彼が示すメシアを受け入れる。

  ②ユダヤ教の洗礼との比較

    *清めのための洗礼(洗い)とは異なる。

      ・自分で水に入る。

      ・繰り返し実行する。

      ・クムランのエッセネ派の洗礼も、これと同じである。

    *異邦人がユダヤ教に改宗する際の洗礼とも異なる。

      ・自分で水に入る。

    *ヨハネの洗礼の新しさ

      ・ユダヤ人に悔い改めのバプテスマを命じた。

      ・他の人によって洗礼が施される。

      ・内面の変化が前提になっている。

  ③クリスチャンの洗礼

    *内面の変化(新生体験)が前提になっている。

    *洗礼は救いの条件ではない。

    *他の人によって施される。

    *一度限りでよい。

Ⅲ.イザヤ書40章3~5節の成就

1.4~6節

Luk 3:4 これは、預言者イザヤのことばの書に書いてあるとおりである。/「荒野で叫ぶ者の声がする。/『主の道を用意せよ。/主の通られる道をまっすぐにせよ。

Luk 3:5 すべての谷は埋められ、/すべての山や丘は低くなる。/曲がったところはまっすぐになり、/険しい道は平らになる。

Luk 3:6 こうして、すべての者が神の救いを見る。』」

     (1)ヨハネの奉仕は、イザ40:3~5の成就である。

  ①ヨハネは、荒野で叫ぶ者の声である。

    *彼は、神の御心を代弁する「声」である。

  ②彼は、文字どおり荒野で声を上げた。

  ③比ゆ的には、当時のイスラエルの民の霊的状態は、荒野であった。

  ④いのちがないので、実を結ぶことのない状態である。

  ⑤彼は、イスラエルの民の間で声を上げた。

(2)ヨハネは、メシアを受け入れるための霊的覚醒の必要性を説いた。

  ①当時は、王が来られる前に道路を整備し、通行が容易になるようにした。

      (ILL)みゆき通り:天皇の行幸のために準備した道

  ②ヨハネは、文字どおりの道路工事を求めたのではない。

  ③荒野に道を造るとは、霊的準備のことである。

(3)メシアが到来した結果、以下のことが起こる。

  ①「すべての谷は埋められ、」

    *謙遜になり、真に悔い改めた人は、罪赦され満足を得る。

   ②「すべての山や丘は低くなる」

    *傲慢な者(律法学者やパリサイ人)は、辱められる。

  ③「曲がったところはまっすぐになり、」

    *正直でない者(取税人)は、正直者となる。

   ④「険しい道は平らになる」

    *粗野な性格の者(兵士や乱暴者)は、穏やかな性格に変えられる。

(5)「こうして、すべての者が神の救いを見る」

  ①ルカは、福音の普遍性を意識している。

  ②ユダヤ人も異邦人も、救いに与る。

  ③初臨の際には、多くの異邦人が救われる。

  ④再臨の際には、すべてのユダヤ人が救われる。

 

結論

  1.福音の歴史性

(1)ルカは、救済の歴史を世界史の中に位置づけようとした。

  ①ルカ1:5

Luk 1:5 ユダヤの王ヘロデの時代に、アビヤの組の者でザカリヤという名の祭司がいた。彼の妻はアロンの子孫で、名をエリサベツといった。

  ②ルカ3:1~2

(2)年代を特定するためには、ティベリウス治世の第15年だけで十分である。

  ①それ以外の5つの年代は、広い政治的文脈を提供している。

  ②イエスの公生涯は、非常に複雑な政治状況の中で始まった。

(3)イエスの公生涯は、バプテスマのヨハネの登場から始まる。

  ①使1:22

Act 1:22 すなわち、ヨハネのバプテスマから始まって、私たちを離れて天に上げられた日までの間、いつも私たちと行動をともにした人たちの中から、だれか一人が、私たちとともにイエスの復活の証人とならなければなりません。」

  ②使10:37、13:24~25参照

(4)福音記者たちは、正直に、率直に、事実をそのまま書いている。

  ①私たちも、著者の意図をそのまま受け取ればよい。

 

2.忍耐の必要性

(1)マラキからバプテスマのヨハネまで、約400年以上が経過している。

  ①バプテスマのヨハネの誕生から、約30年が経過している。

(2)詩37:7~11

Psa 37:7 【主】の前に静まり 耐え忍んで主を待て。/その道が栄えている者や/悪意を遂げようとする者に腹を立てるな。

Psa 37:8 怒ることをやめ 憤りを捨てよ。/腹を立てるな。それはただ悪への道だ。

Psa 37:9 悪を行う者は断ち切られ/【主】を待ち望む者 彼らが地を受け継ぐからだ。

Psa 37:10 もうしばらくで 悪しき者はいなくなる。/その居所を調べても そこにはいない。

Psa 37:11 しかし 柔和な人は地を受け継ぎ/豊かな繁栄を自らの喜びとする。

(3)1ペテ1:12

1Pe 1:12 彼らは、自分たちのためではなく、あなたがたのために奉仕しているのだという啓示を受けました。そして彼らが調べたことが今や、天から遣わされた聖霊により福音を語った人々を通して、あなたがたに告げ知らされたのです。御使いたちもそれをはっきり見たいと願っています。

  ①預言者たちは、自らの預言したことの成就を見ることなしに死んでいった。

(4)私たちへの教訓

  ①忍耐は、神の主権への応答である。

  ②祈りの答えは、「イエス」と「ノー」以外に、「待て」もある。

  ③それでも、私たちは神を信じる。

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