ルカの福音書(15)イエスのバプテスマとイエスの系図3:21~38

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イエスのバプテスマとイエスの系図について学ぶ。

ルカの福音書 15回

イエスのバプテスマとイエスの系図

ルカ3:21~38

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①イエスの公生涯は、バプテスマのヨハネの登場から始まる。

  ②ヨハネは、「荒野で叫ぶ者の声」として人々の心を整えた。

  ③イエスが登場し、ヨハネからバプテスマを受ける。

  ⑤次に、イエスの系図が紹介される。

2.アウトライン

(1)イエスのバプテスマ(21~22節)

(2)イエスの系図(23~38節)

3.結論

(1)イエスの祈りの生活

(2)イエスの系図の神学的意味

イエスのバプテスマとイエスの系図について学ぶ。

Ⅰ.イエスのバプテスマ(21~22節)

1.21~22節

Luk 3:21
さて、民がみなバプテスマを受けていたころ、イエスもバプテスマを受けられた。そして祈っておられると、天が開け、

Luk 3:22 聖霊が鳩のような形をして、イエスの上に降って来られた。すると、天から声がした。「あなたはわたしの愛する子。わたしはあなたを喜ぶ。」

(1)ここで、主役はヨハネからイエスに移行する。

  ①バプテスマがイエスの公生涯の始まりとなる。

  ②この時点では、すでに多くの人々がヨハネからバプテスマを受けていた。

  ③イエスのバプテスマは、ヨハネの奉仕のクライマックスである。

  ④並行箇所と比較すると、ルカの記録は非常に短い。

  ⑤ルカは、バプテスマそのものよりも、2つの重要な点を伝えようとしている。

    *イエスに、聖霊の力が与えられた。

    *イエスに、父なる神の承認が与えられた。

(2)聖霊が下ったことの意味

  ①イエスの上に聖霊が下り、メシアとしての奉仕に必要な力を与えた。

  ②クリスチャンも、聖霊によってクリスチャン生活に必要な力を受ける。

    *聖霊の内住

    *聖霊の賜物

(3)父なる神からの声(バット・コル)

  ①ルカ3:22(父なる神は30年間イエスを観察し、イエスを喜ばれた)

  ②ルカ9:35(ペテロが3つの仮庵を立てることを提案した時)

  ③ヨハ12:20~28(ギリシア人がイエスと面会することを求めた時)

  ④「あなたはわたしの愛する子。わたしはあなたを喜ぶ」(22節)

    *詩2:7とイザ42:1の合体

    *中間時代のユダヤ教は、この2つの箇所をメシア預言と理解していた。

  ⑤天からの声は、イエスにメシアとしての自己認識を与えた。

  ⑥メシアは、根源的な意味で、神の子である。

  ⑦メシアは、主のしもべである。

    *登場して最初に行ったのは、ヨハネからバプテスマを受けることである。

    *サタンは、イエスが本当に主のしもべであるかどうかを試す。

  ⑧クリスチャンの自己認識

    *神の子

    *キリストのしもべ

(4)ルカだけが、バプテスマの直後にイエスが祈ったことを記している。

  ①ルカは、人の子イエスを描こうとしている。父なる神への全き信頼。

Ⅱ.イエスの系図(23~38節)

1.系図の重要性

(1)身元証明

  ①イスラエルに帰還しようとする人は、自らのユダヤ性を証明する必要がある。

  ②現代のユダヤ人は、系図を持っていない。

  ③ほとんどの場合、ラビの推薦状がその役割を果たす。

(2)土地の所有権の証明

  ①部族、氏族、家族に応じて、土地が分割された。

(3)祭司職の証明

  ①アロンの家系であることが、祭司の条件である。

  ②歴代誌の系図は、その視点が反映されたものである。

(4)王位の証明

  ①イスラエルの王は、イスラエル人でなければならない(申17:15)。

  ②ダビデ以降は、ダビデの家系でなければならない(2サム7:16)。

  ③ヘロデ大王は、エドム人であったために、正統性がない。

    *マタ2:2~3

Mat 2:2 「ユダヤ人の王としてお生まれになった方は、どこにおられますか。私たちはその方の星が昇るのを見たので、礼拝するために来ました。」

Mat 2:3 これを聞いてヘロデ王は動揺した。エルサレム中の人々も王と同じであった。

(5)メシア性の証明

  ①メシアは、アブラハムの子孫、ダビデの子孫でなければならない。

2.23節

Luk 3:23イエスは、働きを始められたとき、およそ三十歳で、 ヨセフの子と考えられていた。ヨセフはエリの子で、さかのぼると、

(1)「イエスは、」(And Jesus himself)

  ①イエスのご人格に注意を向けさせる代名詞(autos)(himself)が使われている。

(2)「働きを始められたとき、」

①訳文の比較

      「教えを始められたとき、イエスはおよそ三十歳で、」(新改訳)

      「イエスは、働きを始められたとき、およそ三十歳で、」(新改訳2017)

      「イエスが宣教を始められたときはおよそ三十歳であった」(新共同訳)

      「イエスが宣教をはじめられたのは、年およそ三十歳の時であって、」(口語訳)

  ②直訳は、「始められたとき、」である。

  ③イエスはおよそ30歳でメシアとしての奉仕を開始された。

  ④ルカは、イエスの年齢に幅を持たせている。

  ⑤「30歳」は、祭司としての働きを開始する年齢である。

(3)ルカの系図は、イエスの母マリアの系図である。

  ①ルカ1~2章は、ヨセフよりもマリアが主役である。

  ②女性の名は通常系図には出ないので、マリアの夫ヨセフの名が登場している。

  ③この系図は、イエスから始まり、アブラハムを経て、最後はアダムに至る。

  ④ルカの福音書は、異邦人のために書かれた福音書である。

  ⑤ルカは、イエスが全人類の救い主であることを示そうとしている。

(4)「ヨセフの子と考えられていた。ヨセフはエリの子で、さかのぼると、」

  ①ルカの福音書の読者は、ヨセフがイエスの義父であることをすでに知っている。

  ②原文は、「son of Joseph」である。定冠詞の「the」が付いていない。

  ③それ以降は、「the (son) of Eli」と定冠詞の「the」が付いている。

  ④学者の説明では、「定冠詞」がない場合は、系図から外れている。

  ⑤エリは、ヨセフの実父ではなく、義理の父である。つまり、マリアの父である。

  ⑥イエスは、肉体的にはマリアの子である。

  ⑦イエスは、肉体的にアブラハムの子孫、ダビデの子孫である。

3.24~38節

(1)マタイの系図

   ①イエスの系図を3つに区分し、記憶しやすいようにした。

  ②区切りは、ダビデ(人物)とバビロン捕囚(出来事)である。

  ③14×3=42であるが、登場するのは41人である。

  ④ダビデの名が、第一区分の最後と、第二区分の最初に出てくる。

  ⑤系図の中に省略がある。旧約聖書では一般的。

(2)ルカの系図

  ①イエスからアダムまで、77人が登場する。

  ②ルカは銘記していないが、7人×11区分という編集意図がある。

  ③上から順に見てみると、区分の終わりか初めに重要な人物が登場している。

  ④アブラハムは、3区分目の最後に登場している。

  ⑤ダビデは、5区分目の最後に登場している。

  ⑥ルカもまた、既存の系図を利用して、自らの意図に沿って編集した。

結論

1.イエスの祈りの生活

    *イエスの祈りの生活は、ルカの福音書の主要テーマである。

(1)ルカ3:21(バプテスマを受けたとき)

(2)ルカ5:16(名声が広まったとき)

Luk 5:16
だが、イエスご自身は寂しいところに退いて祈っておられた。

(3)ルカ6:12(12使徒の選抜のとき)

Luk 6:12
そのころ、イエスは祈るために山に行き、神に祈りながら夜を明かされた。

(4)ルカ9:18(弟子たちから信仰告白を引き出す前に)

Luk 9:18 さて、イエスが一人で祈っておられたとき、弟子たちも一緒にいた。イエスは彼らにお尋ねになった。「群衆はわたしのことをだれだと言っていますか。」

(5)ルカ9:28~29(変貌山にて)

Luk 9:28
これらのことを教えてから八日ほどして、イエスはペテロとヨハネとヤコブを連れて、祈るために山に登られた。

Luk 9:29
祈っておられると、その御顔の様子が変わり、その衣は白く光り輝いた。

(6)ルカ11:1(主の祈りを教える前に)

Luk 11:1 さて、イエスはある場所で祈っておられた。祈りが終わると、弟子の一人がイエスに言った。「主よ。ヨハネが弟子たちに教えたように、私たちにも祈りを教えてください。」

(7)ルカ22:31~32(ペテロのために)

Luk 22:31
シモン、シモン。見なさい。サタンがあなたがたを麦のようにふるいにかけることを願って、聞き届けられました。

Luk 22:32 しかし、わたしはあなたのために、あなたの信仰がなくならないように祈りました。ですから、あなたは立ち直ったら、兄弟たちを力づけてやりなさい。」

(8)ルカ22:40~41(ゲツセマネの園にて)

Luk 22:40
いつもの場所に来ると、イエスは彼らに、「誘惑に陥らないように祈っていなさい」と言われた。

Luk 22:41
そして、ご自分は弟子たちから離れて、石を投げて届くほどのところに行き、ひざまずいて祈られた。

2.ルカの系図の神学的意味

(1)ルカの系図は、イエスからアダムまで遡っている。

(2)ルカの系図は、イエス・キリストが全人類の救い主であることを示している。

(3)逆に見ると、アダムが初めであり、イエスが最後である。

  ①最初のアダムは、不従順なアダム。

  ②最後のアダムは、従順なアダム。

(4)クリスチャンは、最初のアダムから分離し、最後のアダムにつながった。

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