メシアの生涯(19)—イエスのバプテスマ—

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イエスのバプテスマについて学ぶ

「イエスのバプテスマ」  マタ3:13~17

1.はじめに

  (1)イエスの公生涯の開始

①バプテスマのヨハネとともに始まった。

      ②神の国運動は、民族的運動となった。

      ③今日の箇所で、いよいよメシアが登場する。

    (2)イエスのバプテスマ(A.T.ロバートソンの§24)

        *マコ1:9~11

        〇マタ3:13~17

        *ルカ3:21~23

     (例話)映画「鳥」 1963年

        映画「マーニー」 1964年 ティッピー・ヘドレンとショーン・コネリー

        サイコサスペンス 主人公の登場シーン

    (3)イエスのバプテスマは、私的生活と公生涯を区分する出来事である。

      ①マタ3:13と4:12に挟まれた箇所

        *前者では、イエスはガリラヤを出、後者ではガリラヤに戻っている。

      ②2つの出来事が記されている。

*ヨハネによるバプテスマとサタンによる誘惑である。

      ③2つの出来事は、イエスのメシアとしての自己認識に深く関係している。

  2.アウトライン

    (1)イエスのバプテスマ(マタ3:13~15)

    (2)天からの承認(マタ3:16~17)

  3.メッセージのゴール

    (1)聖霊が下ったことの意味

(2)天からの声がしたことの意味

このメッセージは、イエスのバプテスマについて学ぼうとするものである。

Ⅰ. イエスのバプテスマ(マタ3:13~15)

   1.イエスの登場

  「さて、イエスは、ヨハネからバプテスマを受けるために、ガリラヤからヨルダンにお着

きになり、ヨハネのところに来られた」 (13節)

  (1)神の国運動は、民族的運動となった。

    ①エズラの時以来、あるいは、それ以上の霊的覚醒が起こった。

    ②人々は、民族的罪と個人的罪を告白し、ヨハネからバプテスマを受けた。

    ③メシア到来の希望が高まった。

④そして、神の時が満ちた。ヨハネのバプテスマの噂がナザレにまで届いた。

    (2)ガリラヤからヨルダンにお着きになり、」

       ①イエスは12歳以降も、ガリラヤのナザレに住み続けた。

        *約30年間

      ②そして、メシアとして荒野に登場する。

      ③多くの目撃者の前でという意味では、最高の舞台である。

    (3)「ヨハネからバプテスマを受けるために、」

      ①ガリラヤからヨルダンに来たことは、自発的行為である。

      ②ここで、2つの道が交差し、先の道が舞台から徐々に消えていく。

  2.ヨハネの疑問(14節)

  「しかし、ヨハネはイエスにそうさせまいとして、言った。『私こそ、あなたからバプテ

スマを受けるはずですのに、あなたが、私のところにおいでになるのですか』」 (14節)

  (1)ヨハネのバプテスマの性質

    ①罪を悔い改めた人が受けるバプテスマである。

    ②イエスには罪がないので、このバプテスマはイエスとは無関係である。

  (2)ヨハネの謙遜

    ①イエスはヨハネよりも偉大である。

    ②ヨハネはイエスの前では罪人である。

    ③それゆえ、ヨハネがイエスからバプテスマを受けるべきである。

  (3)ヘブル人の福音書(紀元2世紀の外典)

  「見よ、主の母と、主の兄弟たちが、彼に言った。『バプテスマのヨハネが罪の赦しの

  ためのバプテスマを施している。私たちも行って、彼からバプテスマを受けようでは

ないか。』しかし、主は彼らに言った。『下って行って、ヨハネからバプテスマを受け

よとは、私がどのような罪を犯したというのか。ただし、もし私がこのように言うこ

とが無知のゆえであるとするなら、それが罪である可能性はあるが』」

  ①ヘブル人の福音書は、イエスのバプテスマに関して疑問を呈している。

  ②マタイは、誰もが感じるこの疑問に答えようとしている。

    *マタ3:14~15は、マタイの福音書に特有のものである。

  3.イエスの回答(15節)

  「ところが、イエスは答えて言われた。『今はそうさせてもらいたい。このようにして、

  すべての正しいことを実行するのは、わたしたちにふさわしいのです』。そこで、ヨハネ

は承知した」 (15節)

  (1)イエスは、ヨハネの理屈を否定していない。

    ①別の理由で、バプテスマを受けるのである。

  (2)「すべての正しいことを実行する」

    ①メシアはモーセの律法を成就するために来られた。

    ②メシアは罪人の罪を贖うために来られた。

    ③イエスのバプテスマは、ヨハネのバプテスマを承認し、罪人と一体化すること。

    ④イエスは、神の御心をすべて行おうとされた。

  (3)バプテスマの本来の意味は、一体化である。

    ①布を染料液に浸けると、その色に染まる。それがバプテスマの意味である。

②ヨハネが語る神の国のメッセージとの一体化

③メシアの先駆者であるヨハネとの一体化

④罪人との一体化(罪人の一人のようになった)

「神は、罪を知らない方を、私たちの代わりに罪とされました。それは、私たち

が、この方にあって、神の義となるためです」(Ⅱコリント5:21)

Ⅱ.天からの承認(マタ3:16~17)

  1.神の御霊(16節)

  「こうして、イエスはバプテスマを受けて、すぐに水から上がられた。すると、天が

開け、神の御霊が鳩のように下って、自分の上に来られるのをご覧になった」

  (1)バプテスマそのものではなく、バプテスマの結果が記されている。

    ①ルカ3:21

    「さて、民衆がみなバプテスマを受けていたころ、イエスもバプテスマをお

受けになり、そして祈っておられると、天が開け、」(ルカ3:21)

②イエスは、そこで祈っておられた。

③バプテスマそのものに神秘的力があるのではない。

    (2)「神の御霊が鳩のように下って、」

①聖霊は、三位一体の第3位格である。

②この箇所は、ユダヤ的解釈が必要である。

③鳩の姿は、ユダヤ人たちがそれを聖霊と認識できるようにするため・

④聖霊を鳩と結びつける考え方の起源は、創世記1:2にある。

「地は形なく、むなしく、やみが淵のおもてにあり、神の霊が水のおもてを

おおっていた」(口語訳、創1:2)

  *母鳥が卵を抱くように、神の霊が地表を抱いている。

⑤後代のラビ文書では、その鳥は鳩であるとの解説がされるようになる。

  *鳩の性質は、柔和、平和、聖潔、などである。

    (3)イエスの性質がこの時から変化したわけではない。

      ①イエスは、聖霊によって誕生したお方である。

      ②最初から、その性質は聖い。

      ③これは、メシアとして公に宣言されたということである。

      ④また、イエスはメシアとしての奉仕のための力を受けた。

      「その上に、【主】の霊がとどまる。それは知恵と悟りの霊、はかりごとと

能力の霊、主を知る知識と【主】を恐れる霊である」(イザ11:2)

  2.天からの声(17節)

  「 また、天からこう告げる声が聞こえた。『これは、わたしの愛する子、わたしはこ

れを喜ぶ』」 (17節)

  (1)専門的には、これは「バット・コル」と呼ばれる現象である。

    ①中間時代のユダヤ教では、「バット・コル」は、預言者が登場しなくなっ

て以降の神との交流法であるとされた。

②ここで、神との交流が再開された。

③イエスの公生涯で、3度天からの声が聞こえてきた。

  3.イエスのバプテスマは、三位一体の神がすべてかかわった出来事となった。

    (1)御子がバプテスマを受け、御霊が鳩のように下り、父なる神が声を出された。

(2)天からの声もまた、イエスのメシア性の公の宣言である。

「これは、わたしの愛する子、わたしはこれを喜ぶ」 (17節)

  4.ルカ3:23a

  「教えを始められたとき、イエスはおよそ三十歳で、人々からヨセフの子と思われて

いた」(ルカ3:23a)

  (1)旧約聖書では、30歳は奉仕を開始する年齢であることが多い。

    ①ヨセフは、30歳でエジプトの宰相となった(創41:46)。

    ②祭司は、30歳から奉仕を始めた(民4:2)。

    ③ダビデは、30歳で王となった(2サム5:4)。

  (2)ルカはイエスの年齢を知らなかったわけではない。

    ①イエスが、公生涯に立つ準備ができていることを伝えている。

結論:

1 .聖霊が下ったことの意味

  (1)バプテスマのヨハネのバプテスマと、クリスチャンのバプテスマは違う。

  (2)クリスチャンのバプテスマは、キリストに付くバプテスマである。

  (3)バプテスマは、キリストを信じた人にすでに起こっていることの象徴である。

    ①キリストとの一体化

    ②普遍的教会の一員となっている。

  (4)キリストに起こったことは、私たちにも起こる。

    ①イエスの上に聖霊が下り、メシアの奉仕に必要な力を与えた。

    ②私たちにも同じことが起こる。

      *聖霊の内住

      *聖霊の賜物の付与

  (例話)小学校5年生で、父からご褒美を受けた。50ドル以下のもの。

2 .天からの声がしたことの意味

「これは、わたしの愛する子、わたしはこれを喜ぶ」 (17節)

  (1)詩2:7とイザ42:1の合体

    ①中間時代のユダヤ教は、この2つの箇所をメシア預言と理解していた。

  (2)詩2:7

  「わたしは【主】の定めについて語ろう。主はわたしに言われた。『あなたは、

わたしの子。きょう、わたしがあなたを生んだ』」 (詩2:7)

(3)イザ42:1

「見よ。わたしのささえるわたしのしもべ、わたしの心の喜ぶわたしが選んだ者。

わたしは彼の上にわたしの霊を授け、彼は国々に公義をもたらす」 (イザ42:1)

(4)天からの声は、イエスにメシアとしての自己認識を与えた。

  ①メシアは、根源的な意味で、神の子である。

  ②メシアは、主の僕である。

    *登場して最初にしたのは、ヨハネからバプテスマを受けることである。

(例話)代替わりした社長の息子が、最初にトイレ掃除をするようなもの。

(5)サタンの誘惑は、メシアが本当に主のしもべであるかどうかを試す。

    (6)クリスチャンの自己認識

      ①神の子

      ②キリストのしもべ

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