メシアの生涯(15)—エジプトからナザレへ—

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このメッセージでは...

イエスが預言を成就する方であることを学ぶ。

「エジプトからナザレへ」  マタ2:13~23

1.はじめに

  (1)文脈の確認

①皇帝アウグストによる人口調査の勅令

②ベツレヘム滞在中の出産

③羊飼いたちへの告知

④エルサレム上り(誕生後の40日間の出来事)

⑤東方の博士たちの訪問(イエスの誕生が公けに影響を持ち始める)

    (2)今日の箇所は3つの物語に分れる。

      ①ベツレヘムの幼子の虐殺

      ②ベツレヘムからエジプトへ

      ③エジプトからナザレへ

        *共通した要素

        *最後に「〇〇と言われた事が成就するためであった」となる。

    (3)マタ1~2章には、このパターンが5つ出て来る。

      ①マタ1:22~23(イザ7:14)

      「このすべての出来事は、主が預言者を通して言われた事が成就するためであっ

た。『見よ、処女がみごもっている。そして男の子を産む。その名はインマヌエル

と呼ばれる』(訳すと、神は私たちとともにおられる、という意味である)

②マタ2:5~6(ミカ5:2)

「彼らは王に言った。『ユダヤのベツレヘムです。預言者によってこう書かれてい

るからです。「ユダの地、ベツレヘム。あなたはユダを治める者たちの中で、決し

て一番小さくはない。わたしの民イスラエルを治める支配者が、あなたから出る

のだから」』」

    (4)以上2つの例は、最も分かりやすい。

      ①メシア預言の直接引用とその成就

②きょう取り上げる③~⑤のパターンは、現代人には難解である。

③解釈学の原則

  *字義通り

  *意味はひとつ

④きょう取り上げる③~⑤のパターンは、ユダヤ的に解釈する必要がある。

⑤イエス時代のユダヤ教のラビたちの旧約聖書引用法

  *直接引用とその成就

  *その箇所の解釈ではなく、適用である。

  *きょうの③~⑤のパターンは、すべて適用である。

⑥マタイは、5つの引用によってイエスのメシア性を証明しようとした。

  2.アウトライン

    (1)ベツレヘムの幼子の虐殺(13~15節)

    (2)ベツレヘムからエジプトへ(16~18節)

    (3)エジプトからナザレへ(19~23節)

  3.メッセージのゴール(3つの対比)

    (1)ヘロデ王とサタン

    (2)イエスとモーセ

    (3)イエスと私たち信者

このメッセージは、イエスがメシア預言を成就する方であることを学ぼうとするものである。

Ⅰ.ベツレヘムの幼子の虐殺(13~15節)

   1.13~15節a

  「彼らが帰って行ったとき、見よ、主の使いが夢でヨセフに現れて言った。『立って、幼子

とその母を連れ、エジプトへ逃げなさい。そして、私が知らせるまで、そこにいなさい。

ヘロデがこの幼子を捜し出して殺そうとしています』。そこで、ヨセフは立って、夜のうち

に幼子とその母を連れてエジプトに立ちのき、 ヘロデが死ぬまでそこにいた」

    (1)東方の博士たちが帰って行ったとき

      ①事態は刻々変化している。

      ②再び天使が夢でヨセフに現れた。

    (2)「幼子とその母を連れ」

      ①「あなたの息子」とは言わない。ヨセフは義父である。

      ②語順は、イエス、マリアである。イエスがこの物語の中心にいる。

    (3)「エジプトに逃げなさい」

      ①ベツレヘムからエジプトまでは、100キロメートルを超える距離。

      ②当時エジプトは、ローマの属州であった。ヘロデは手が出せない。

      ③旧約時代から、エジプトは逃れの地であった。

      ④紀元1世紀の頃、エジプトには100万人ほどのユダヤ人共同体があった。

      ⑤彼らは数世紀にわたってエジプトに住み、神殿やシナゴーグを所有していた。

      ⑥ヨセフの一家は、同胞の間に住むことができた。

      ⑦メシアが約束の地を離れたのは、この時だけである。

      ⑧かつて、イスラエルの民を奴隷にした国が、メシアに逃れの場を提供した。

    (4)「そこで、ヨセフは立って、夜のうちに幼子とその母を連れてエジプトに立ちの

き、 ヘロデが死ぬまでそこにいた」

  ①ヨセフはすぐに行動を起こした。従順な態度。

  ②密かにベツレヘムを脱出した。

  2.15節b

  「これは、主が預言者を通して、『わたしはエジプトから、わたしの子を呼び出した』と言

われた事が成就するためであった」

  (1)マタ2:15は、ホセ11:1を引用している。

    ①ホセ11:1は、預言ですらない。

    ②出エジプトの出来事によって表現されたイスラエルへの神の愛を示している。

  (2)マタイは歴史的事件を取り上げ、それを「型(タイプ)」として説明している。

    ①「型(タイプ)」があるなら、「本体(オリジナル)」もある。

    ②出エジプトとは、イスラエルの民(神の子)がエジプトから救出された事件。

    ③「本体(オリジナル)」は、御子イエスの救出である。

    ④「エジプト」とは「ヘロデの脅威」のこと。

Ⅱ.ベツレヘムからエジプトへ(16~18節)

   1.16節

  「その後、ヘロデは、博士たちにだまされたことがわかると、非常におこって、人をやっ

て、ベツレヘムとその近辺の二歳以下の男の子をひとり残らず殺させた。その年齢は博士

たちから突き止めておいた時間から割り出したのである」

  (1)ヘロデは騙されたと感じた。

    ①博士たちは、神のことばに従っただけ。

  (2)怒りの力

    ①必要以上の悪を働いている。

    ②2歳以下の男の子を殺した。

    ③ベツレヘムとその近辺は、小さな村落である。

    ④殺された人数は、20人前後であろう。

2.17~18節

「そのとき、預言者エレミヤを通して言われた事が成就した。『ラマで声がする。泣き、そ

して嘆き叫ぶ声。ラケルがその子らのために泣いている。ラケルは慰められることを拒ん

だ。子らがもういないからだ』」

  (1)マタ2:18は、エレ31:15を引用している。

    ①エレ31:15もまた、預言ではない。

  (2)実際の歴史的事件を取り上げ、それを適用(類似点が一つあればOK)している。

    ①ユダヤ人の息子たちが、バビロンに連行されようとしている。

    ②ラマ(エルサレムの北)は、最初の集合地点。そこからバビロンに向かう。

    ③母親たちがラマで嘆いている。

    ④ラケルは、イスラエルの母の象徴。

      *ヤコブ(イスラエル)の最愛の妻。

      *ラマの近くに葬られた(現在のラケルの墓は違う)。

      *ヨセフとベニヤミンは、ラケルの息子たち。

      *彼らは、エジプトで死んだ者と見なされた。

    ⑤ベツレヘムの母親たちは、自分の息子を失い、嘆き悲しんでいる。

      *相違点は多い。ラマとベツレヘム、捕囚と殺害。

      *息子を失ったという意味では、同じ。

Ⅲ.エジプトからナザレへ(19~23節)

  1.19~23節a

  「ヘロデが死ぬと、見よ、主の使いが、夢でエジプトにいるヨセフに現れて、言った。

『立って、幼子とその母を連れて、イスラエルの地に行きなさい。幼子のいのちをつ

けねらっていた人たちは死にました』。そこで、彼は立って、幼子とその母を連れて、

イスラエルの地に入った。しかし、アケラオが父ヘロデに代わってユダヤを治めてい

ると聞いたので、そこに行ってとどまることを恐れた。そして、夢で戒めを受けたの

で、ガリラヤ地方に立ちのいた。そして、ナザレという町に行って住んだ」

  (1)ルカ2:39との比較

  「さて、彼らは主の律法による定めをすべて果たしたので、ガリラヤの自分たち

の町ナザレに帰った」

  ①ルカの説明は、実に簡潔である。

(2)再度、天使が夢に現れる。

  ①ヘロデは死んだ。

  ②イスラエルの地に帰還せよ。

(3)ヘロデの死後の状態

  ①ヘロデ・ピリポは、テラコニテ地方の国主。

  ②ヘロデ・アンテパスは、ガリラヤの国主。

  ③アケラオは、ユダヤ、サマリヤ、イドマヤを支配。

    *父に似た残忍な人物である(3千人を殺した)。

    *紀元6年にローマに行き、王の称号を得ようとした。

    *ユダヤ人たちからの直訴があり、彼は退けられた。

    *これ以降、ユダヤはローマの属州となる。

    *総督がローマからやって来て、統治する。

(4)ヨセフは、アケラオを恐れた。

  ①イスラエルに地に入ったが、ベツレヘムに住むことを恐れた。

  ②ヨセフは、ベツレヘムに永住するつもりだったと思われる。

  ③ヨセフが不安に思ったことは、的外れではなかった。

  ④再度夢で語りかけを受けた(天使という言葉が省略されている)。

  ⑤ガリラヤ地方なら、アンテパスの支配下にあり、まだ安全である。

  ⑥故郷のナザレに行って住んだ。

  2.23節b

  「これは預言者たちを通して『この方はナザレ人と呼ばれる』と言われた事が成就す

るためであった」

  (1)マタ2:23は、「預言者たち」の預言である。

    ① 「この方はナザレ人と呼ばれる」という預言は旧約聖書にはない。

  (2)これは、メシア預言を要約した引用法である。

    ①預言者が複数形である。

    ②ナザレ人の意味が重要である。

    「彼はナタナエルを見つけて言った。『私たちは、モーセが律法の中に書き、

預言者たちも書いている方に会いました。ナザレの人で、ヨセフの子イエス

です』。ナタナエルは彼に言った。『ナザレから何の良いものが出るだろう』。

ピリポは言った。『来て、そして、見なさい』」(ヨハ1:46~47)

    ③紀元1世紀のユダヤ人の認識。北は愚か、南は賢い。

  「金持ちになりたければガリラヤへ、賢くなりたければエルサレムへ」

    ④イエスは、さげすまれた寒村ナザレで育った。

    ⑤その背後にあるのは、イザ52~53章のイメージ。

    ⑥エルサレム神殿崩壊(70年)以降、ユダヤ教の中心はガリラヤに。

結論:メッセージのゴール(3つの型)

  1.ヘロデ王とサタン

    (1)ベツレヘムの幼子の虐殺は、歴史家の記録に残っていない。

      ①ベツレヘムは辺境の地。

      ②20人くらいの幼子は、取るに足りない。

      ③ヘロデの残虐行為は想像を絶する。

      ④妹のサロメに遺言を残した。

        *ユダヤ人の指導者たちを競技場に集めておき、自分が死んだら殺せ。

        *ユダヤ人たちが、自分の死を喜ぶことのないように。

    (2)ヘロデの性格と行動は、極めてサタン的である。

      ①ともに侵入者である。

      ②ともにメシアに敵対している。

      ③ともに神の民を破壊しようとしている。

  2.イエスとモーセ

    (1)両者の間には、相関関係がある。

①ともに、幼児期に死の危険に直面したが、神の介入によって助かった。

②ともに、神の民を救うために働いた。

  *モーセは、イスラエルの民をエジプトから解放した。

  *イエスがもたらすものは、霊的出エジプトである。

③律法に関して

  *モーセは律法の仲介者となった。モーセの律法。

  *イエスは、公生涯においてモーセの律法を解き明かされた。

    ・山上の垂訓

    ・新しいモーセ

  *イエスは、メシアの律法を与えてくださった。

  3.イエスと私たち信者

    (1)イエスに従う者は、イエスが歩まれた道を歩む。

      ①苦難、拒否、最後は死。

      ②しかし、神の計画はさらにその先に進む。

      ③それは、復活と高揚である。

    (2)ヘブ12:2~3

    「信仰の創始者であり、完成者であるイエスから目を離さないでいなさい。イエスは、

ご自分の前に置かれた喜びのゆえに、はずかしめをものともせずに十字架を忍び、神

の御座の右に着座されました。あなたがたは、罪人たちのこのような反抗を忍ばれた

方のことを考えなさい。それは、あなたがたの心が元気を失い、疲れ果ててしまわな

いためです」

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