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メシアの生涯(7)—イエス誕生の告知—
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イエス誕生の告知から、メシアについて学ぶ。
「イエス誕生の告知」
ルカ1:26~38
1.はじめに
(1)3つの告知
①ザカリヤへの告知(ルカ)
②マリアへの告知(ルカ)
③ヨセフへの告知(マタ)
(2)ルカにある告知の特徴
①私的情報
②天使は、「ガブリエル」と呼ばれている。
③マリアの視点から書かれている。
(3)ザカリヤへの告知とマリアへの告知には、相関関係がある。
①構成方法が似ている。
②内容が似ている。
2.アウトライン
(1)背景(舞台)(26~27節)
(2)告知(28~38節)
*旧約聖書のパターンが見られる。
*それをモデルとして最初の告知が書かれた。
*最初の告知をモデルとして次の告知が書かれた。
①天使の出現
②見た人の恐れ
③励ましの言葉(恐れるな)
④神からのメッセージ
⑤不信仰の言葉としるしの要求
⑥神からのしるし
3.メッセージのゴール
(1)マリアに関する誤解
(2)処女降誕の重要性
このメッセージは、イエス誕生の告知から、メシアについて学ぼうとするものである。
Ⅰ.背景(舞台)(26~27節)
1.26節
「ところで、その六か月目に、御使いガブリエルが、神から遣わされてガリラヤのナザレ
という町のひとりの処女のところに来た」
(1)エリサベツが妊娠6ヶ月を迎えた時
①これもまた、2つの告知物語を関連させる言葉である。
(2)ガリラヤのナザレという町
①異邦人で、パレスチナの地理を知らない人のために書かれている。
②前回の舞台は、エルサレムの神殿であり、ユダの山地であった。
③ますます、あり得ない事が始まろうとしているという雰囲気である。
④ナザレは、旧約聖書にも、タルムードにも出てこない町である。
(3)ひとりの処女
①今回の主人公
②天使ガブリエルの再登場
2.27節
「この処女は、ダビデの家系のヨセフという人のいいなずけで、名をマリヤといった」
(1)処女の名は、マリア。
①ヘブル語でミリアムである。
②当時の女性の婚約年齢は、13歳くらい。15歳を超えることはないだろう。
(2)当時のユダヤ人の結婚の習慣
①花婿の父親が、嫁を探すところから始まる(息子の意見は、多少反映される)。
②いい娘がいたら、その父親に申し込みをする(娘の意見は無視される)。
③正式な合意があれば、花嫁の父親に花嫁料を払う。
④花婿が同意書を出し、正式な婚約関係が成立する。
⑤同居は、さらに1年ほど先のことになるが、法的には結婚関係とみなされる。
⑥もし花嫁が他の男と関係を持てば、姦淫の罪を犯したことになる。
⑦婚約関係の破棄は、離婚によってのみ可能になる。
(3)ダビデの家系のヨセフ
①マタイの福音書の系図で、ヨセフがダビデの家系であることを確認した。
②ルカの福音書の系図では、マリアもまたダビデの家系である。
③メシア誕生の前提条件である。
Ⅱ.告知(28~38節)
1.天使の出現(28節)
「御使いは、入って来ると、マリヤに言った。『おめでとう、恵まれた方。主があなたとと
もにおられます』」
(1)同じ天使ガブリエルが登場している。
①ザカリヤの場合よりも、記述が単純である。
(2)「おめでとう、恵まれた方」
①「おめでとう」は、シャロームであろう。
②マリアが選ばれたのは、100パーセント神の恵みである。
③マリアの側に何かの理由があったわけではない。
④英語で「highly favored one」である。
⑤カトリックのブルガタ訳(ラテン語訳)では、「full of grace」になっている。
2.見た人の恐れ(29節)
「しかし、マリヤはこのことばに、ひどくとまどって、これはいったい何のあいさつかと
考え込んだ」
(1)ザカリヤとマリアの違い
①ザカリヤの場合は、「不安を覚え、恐怖に襲われた」(12節)とあった。
②マリアの場合は、「とまどって、考え込んだ」とある。
3.励ましの言葉(恐れるな)(30節)
「すると御使いが言った。『こわがることはない。マリヤ。あなたは神から恵みを受けたの
です』」
(1)ザカリヤとマリアの違い
①ともに、「こわがることはない」で始まる。
②ザカリヤの場合は、願いが聞かれたという言葉が続く。
③マリアの場合は、「あなたは神から恵みを受けたのです」となる。
*メシアの母となる特権
4.神からのメッセージ(31~34節)
(1)31節
「ご覧なさい。あなたはみごもって、男の子を産みます。名をイエスとつけなさい」
①天使は、イザ7:14をほぼそのまま引用している。
「それゆえ、主みずから、あなたがたに一つのしるしを与えられる。見よ。処女
がみごもっている。そして男の子を産み、その名を『インマヌエル』と名づける」
②ザカリヤにはヨハネという名が、マリアにはイエスという名が示された。
③イエスは、「イェシュア」(主は救い)である。
*ルカの福音書でこの名は初めて登場。
*ユダヤ人伝道では「イエス(Jesus)」より「イェシュア(Yeshua)」使用。
(2)32~33節
「その子はすぐれた者となり、いと高き方の子と呼ばれます。また、神である主は彼
にその父ダビデの王位をお与えになります。彼はとこしえにヤコブの家を治め、その
国は終わることがありません」
①「すぐれた者となり」
*偉大な者となる。
*ヨハネの場合は、「主の御前にすぐれた者となる」(15節)であった。
*イエスの優位性が示されている。
②「いと高き方の子と呼ばれます」
*ヘブル語で「ハ・エルヨン」(神の御名)である。
*ヘブル語的には、子とは父と同等である(子は父のコピーである)。
*イエスの神性が示されている。
③「父ダビデの王位をお与えになります」
*2サム7:12~17にあるダビデ契約の成就。
*イエスがユダヤ人のメシアとして来られたことを示している。
④「彼はとこしえにヤコブの家を治め、」
*ヤコブの家とは、イスラエルの民である。
*これもまた、イエスがユダヤ人のメシアであることを示している。
⑤「その国は終わることがありません」
*イエスの再臨と千年王国(メシア的王国)出現によって、成就する。
5.不信仰の言葉としるしの要求(34節)
「そこで、マリヤは御使いに言った。『どうしてそのようなことになりえましょう。私はま
だ男の人を知りませんのに』」
(1)ザカリヤとマリアの違い
①ザカリヤの場合は、不信仰の言葉を語った。
②マリアの場合は、どうしたらそれが実現するのかを尋ねている。
(2)「男の人を知りませんのに」
①知るとは、体験すること。
②ヨセフと実質的な結婚生活に入っていない。
③ヨハネの誕生は奇跡的なことであったが、イエスの誕生はそれ以上のもの。
④ザカリヤへの告知とマリアへの告知は、ここで大きく道が分かれる。
6.神からのしるし(35~38節)
(1)35節
「御使いは答えて言った。『聖霊があなたの上に臨み、いと高き方の力があなたをおお
います。それゆえ、生まれる者は、聖なる者、神の子と呼ばれます』」
①ヘブル的対句法がある。
*聖霊があなたの上に臨み、
*いと高き方の力があなたをおおいます。
②もうひとつのヘブル的対句法がある。
*聖なる者、
*神の子と呼ばれます。
③異教の神話にあるような、神と人との結婚ではない。
(2)36~37節
「ご覧なさい。あなたの親類のエリサベツも、あの年になって男の子を宿しています。
不妊の女といわれていた人なのに、今はもう六か月です。神にとって不可能なことは
一つもありません」
①マリアに「しるし」が与えられた。
*願っていないのに。
*この「しるし」には、叱責の意味はない。
②親戚のエリサベツの妊娠が、「しるし」である。
③神には不可能はない(エリサベツ以外にも、先例がある)。
④創18:14
「【主】に不可能なことがあろうか。わたしは来年の今ごろ、定めた時に、あなた
のところに戻って来る。そのとき、サラには男の子ができている」
(3)38節
「マリヤは言った。『ほんとうに、私は主のはしためです。どうぞ、あなたのおことば
どおりこの身になりますように』。こうして御使いは彼女から去って行った」
①少女マリアの信仰は、信者の模範である。
*払うべき犠牲の大きさを知りながら、従順に従った。
(例話)今日のメシアニック・ジュー
②天使は、その使命を終えた。
結論:
1.マリアに関する誤解
(1)無原罪の御宿り(Immaculate Conception)
①イエスのことではなく、マリアの誕生に関することである。
②マリアは、神から恵みを受け、特別な方法で用いられた。
③しかし、マリアもまた罪赦された罪人であった。
④マリアは、十字架のそばに立っていた(ヨハ19:25)。
⑤マリアは、聖霊降臨の前に、使徒たちとともに祈っていた(使1:14)
(2)マリアの処女性
①マリアは、イエスを宿す前も後も、処女であった。
②しかし、イエスを出産してからは、ヨセフとの結婚関係に入った。
③マタ1:25
「そして、子どもが生まれるまで彼女を知ることがなく、その子どもの名をイエ
スとつけた」
④マタ13:55
「この人は大工の息子ではありませんか。彼の母親はマリヤで、彼の兄弟は、ヤ
コブ、ヨセフ、シモン、ユダではありませんか」
(3)マリアの偶像化
①ルカ11:27~28
「イエスが、これらのことを話しておられると、群衆の中から、ひとりの女が声
を張り上げてイエスに言った。『あなたを産んだ腹、あなたが吸った乳房は幸い
です』。しかし、イエスは言われた。『いや、幸いなのは、神のことばを聞いてそ
れを守る人たちです』」
②マリアは、ペンテコステ以降は登場しない。
③マリアの死や、昇天については何も書かれていない。
④マリアが祈りの仲介者であることも書かれていない。
2.処女降誕の重要性
(1)字義通りに読むことが重要である。
①受肉の出来事には、このような奇跡がともなうことは当然である。
(2)イエスの2面性(神性と人間性を持つ)
①イエスは、初めから神である。
②イエスは、マリアから人間性を得た。
(3)原罪
①通常の結婚ではない。私たちは、両親から原罪を継承している。
②マリアの原罪は、継承しなかったのか。
③35節
「聖霊があなたの上に臨み、いと高き方の力があなたをおおいます。それゆえ、
生まれる者は、聖なる者、神の子と呼ばれます」
④聖霊による処女懐胎は、原罪を持たない人間の誕生に必要なものであった。
(4)最後のアダム
①1コリ15:22
「すなわち、アダムにあってすべての人が死んでいるように、キリストによって
すべての人が生かされるからです」
②1コリ15:45
「聖書に『最初の人アダムは生きた者となった』と書いてありますが、最後のア
ダムは、生かす御霊となりました」
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