60分でわかる新約聖書(19)ヘブル人への手紙

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ヘブル人への手紙について学ぶ。

60分でわかる新約聖書(19)「ヘブル人への手紙」

 

1.はじめに
(1)ヘブル人への手紙の位置づけ
①最初は説教のようであるが、最後は書簡のように終わる。
②著者と受取人が記されていない。
③ある難解な聖句が誤って解釈されている。

 

2.アウトライン
(1)著者は誰か。
(2)受取人は誰か。
(3)内容は何か。
(4)難解な聖句とはどれか。

 

ヘブル人への手紙から教訓を学ぶ。
Ⅰ.著者は誰か。
1.いくつかの名が上げられてきた。
①パウロ
②ルカ(パウロがヘブル語で書いたものを、ルカがギリシア語に翻訳した)
③バルナバ、アポロ、ピリポ、ヨハネ、マルコ

 

2.確実に言えること
(1)著者は、ユダヤ人である。
①ロマ3:2によれば、ユダヤ人には神のことばが委ねられている。
②ユダヤ人でなければ、旧約聖書やユダヤ的習慣をここまで知り得ない。

 

(2)著者は、第2世代のメシアニック・ジューである。
①ヘブ2:3~4
こんなにすばらしい救いをないがしろにした場合、私たちはどうして処罰を逃れることができるでしょう。この救いは、初めに主によって語られ、それを聞いた人たちが確かなものとして私たちに示したものです。
そのうえ神も、しるしと不思議と様々な力あるわざにより、また、みこころにしたがって聖霊が分け与えてくださる賜物によって、救いを証ししてくださいました。
②これは、パウロの著作説を否定するものではない。

 

3.パウロが著者である可能性は高い。
(1)テモテと交流がある。
①ヘブ13:23
私たちの兄弟テモテが釈放されたことを、お知らせします。もし彼が早く来れば、私は彼と一緒にあなたがたに会えるでしょう。

 

(2)手紙の最後に出て来る祝祷は、パウロ書簡に特徴的なものである。
①ヘブ13:25
恵みがあなたがたすべてとともにありますように。

 

(3)ペテロの証言(2ペテ3:15~16)
また、私たちの主の忍耐は救いであると考えなさい。愛する、私たちの兄弟パウロも、自分に与えられた知恵にしたがって、あなたがたに書き送ったとおりです。
その手紙でパウロは、ほかのすべての手紙でもしているように、このことについて語っています。その中には理解しにくいところがあります。無知な、心の定まらない人たちは、聖書の他の箇所と同様、それらを曲解して、自分自身に滅びを招きます。
①ペテロは、ディアスポラのユダヤ人たちに2通の手紙を書いた。
②パウロも、同じグループに手紙を書いた。
③ペテロは、パウロの手紙を聖書の一部だと認めている。
④聖書の一部が失われることはない。
⑤以上のことから、その書簡はヘブル人への手紙であると類推される。
⑥文章のスタイルがパウロのものではないと反論する人もいる。
⑦受取人やテーマが異なれば、文体は変化する。

 

4.執筆時期
(1)紀元70年に神殿が滅びる前に書かれたと思われる。
①神殿崩壊への言及がない。
*神殿で祭儀が行われていたことが前提となっている。
②テモテはまだ生きていた(ヘブ13:23)。

 

Ⅱ. 受取人は誰か。
1.著者と同様に、第2世代のユダヤ人信者たちである。
(1)旧約聖書からの引用が多いのは、そのためである。

 

2.彼らは、迫害と誤った教理に直面し、ユダヤ教に回帰しようとしていた。
(1)イエス・キリストの福音に関して、疑問を抱き始めた。
①神のことばから離れたので、霊的成長がない。
②霊的幼子の状態から抜け出す必要があった。
③異邦人信者と違って、ユダヤ人信者にはユダヤ教に回帰する心配があった。

 

(2)著者と受取人との間には、交流があった。
①受取人は、ある特定のグループのユダヤ人信者である。
②ヘブ13:19、23
私があなたがたのもとに早く戻れるように、なおいっそう祈ってくださるよう、お願いします。
私たちの兄弟テモテが釈放されたことを、お知らせします。もし彼が早く来れば、私は彼と一緒にあなたがたに会えるでしょう。

 

Ⅲ.内容は何か。
1.福音の優位性を示す3つのポイント
(1)優れたお方(1~6章)
①預言者よりも優れたお方
②天使よりも優れたお方
③モーセよりも優れたお方
④アロンよりも優れたお方

 

(2)優れた祭司(7~10章)
①アロン系の祭司ではなく、メルキゼデク系の祭司
②旧い契約ではなく、新しい契約
③地上の聖所ではなく、天の聖所
④動物のいけにえではなく、御子の犠牲

 

(3)優れた原理(11~13章)
①信仰の例
②信仰による忍耐
③信仰の証拠

 

2.信仰の成長を促す5つの奨励
(1)テーマの進展に沿って、5つの奨励が挿入される。
①みことばから逸れないように(2:1~4)
②みことばを疑わないように(3:7~4:13)
③みことばを聞くことに鈍くならないように(5:11~6:20)
④確信を投げ捨てないように(10:26~39)
⑤不信仰に対する警告(12:14~19)

 

Ⅳ.難解な聖句とはどれか。
1.ヘブ6:4~6
一度光に照らされ、天からの賜物を味わい、聖霊にあずかる者となって、
神のすばらしいみことばと、来たるべき世の力を味わったうえで、
堕落してしまうなら、そういう人たちをもう一度悔い改めに立ち返らせることはできません。彼らは、自分で神の子をもう一度十字架にかけて、さらしものにする者たちだからです。

 

2.種々の解釈がある。
(1)解釈①:クリスチャンも救いを失うことがある。
①これは、種々の解釈の中で最も非聖書的なものである。
②救いは神の御業であるので、一度救われた人が救いを失うことはない。

 

(2)解釈②:ここに書かれている人たちは、最初から救われていなかった。
①文脈から見て、彼らは救われている。
②彼らは、クリスチャンとしての霊的体験をしている。

 

(3)解釈③:ここに書かれていることは、仮定のことである。
①「もし堕落してしまうなら」という意味である。
②しかし、ギリシア語の原文には「もし」という言葉はない。

 

(4)解釈④:ここに書かれていることは、報酬を失うという意味である。
①この解釈には、多少の真理が含まれているが、それだけではない。

 

(5)解釈⑤:著者の意図だと思われる解釈
①彼らは、救いを経験した信者たちである。
*「一度光に照らされ、」
*「天からの賜物を味わい、」
*「聖霊にあずかる者となって、」
②彼らには、2つの選択肢がある。
*一時ユダヤ教に回帰し、迫害が去った後、再び救われようとする。
・これは不可能である(It is impossibleが文頭に出てくる)。
・「自分で神の子をもう一度十字架にかけて」
・キリストが地上に戻ってきて十字架にかかることはあり得ない。
・「恥辱を与える」
・キリストの贖いの御業は不完全だったと表明することになる。
・それゆえ、前進するという選びしかない。
*もうひとつの選択肢は、ユダヤ教に回帰し、紀元70年の裁きを受ける。
・この裁きは肉体的裁きである。
・これによって、救いを失うわけではない。

 

結論
(1)この手紙の受取人たちは、霊的に問題を抱えていた。
①霊的成長がない。
②ユダヤ教への回帰を考えていた。
③神のことばに対する信頼を失っていた。

 

(2)彼らを励ます聖句
①ヘブ6:1~3
ですから私たちは、キリストについての初歩の教えを後にして、成熟を目指して進もうではありませんか。死んだ行いからの回心、神に対する信仰、
きよめの洗いについての教えと手を置く儀式、死者の復活と永遠のさばきなど、基礎的なことをもう一度やり直したりしないようにしましょう。
神が許されるなら、先に進みましょう。

 

(3)キリストの内により優れた祝福がある。
①ヘブ12:2
信仰の創始者であり完成者であるイエスから、目を離さないでいなさい。この方は、ご自分の前に置かれた喜びのために、辱めをものともせずに十字架を忍び、神の御座の右に着座されたのです。
②ヘブ13:8
イエス・キリストは、昨日も今日も、とこしえに変わることがありません。

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