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申命記(3)約束の地に入る最初の試み(2)―カデシュ・バルネア事件―
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カデシュ・バルネア事件について学ぶ。
申命記3回
「約束の地に入る最初の試み(2)」
―カデシュ・バルネア事件―
申命記1:19~33
1.はじめに
(1)モーセは、カナンの地に入国する前のイスラエル人のために五書を書いた。
①彼らは、イスラエルの歴史や出エジプトの歴史を知らない世代である。
②彼らは、正しい世界観と人生観を持つ必要があった。
*自分たちは、どこから来たのか。
*自分たちにカナンの地を与えると約束してくれたのは、誰か。
*カナンの地で生きる目的は何か。
(2)申命記のアウトライン(宗主権契約の形式)
①第1の説教:歴史の回顧(1:5~4:43)
②第2の説教:契約に基づく義務(4:44~26:19)
③第3の説教:祝福と呪いの宣言(27:1~29:1)
④第4の説教:契約条項のまとめ(29:2~30:20)
(3)1章のアウトライン
①本書の目的(1:5)
②シナイ山からの出発(1:6~8)
③指導者の任命(1:9~18)
④カデシュ・バルネア事件(1:19~33)
⑤不信仰に下る裁き(1:34~46)
2.メッセージのアウトライン
(1)シナイ山からカデシュ・バルネアまで(1:19~21)
(2)偵察隊の派遣(1:22~25)
(3)不信仰の罪(1:26~33)
3.結論:同じ事実に対する2つの解釈
(1)不信仰による解釈
(2)信仰による解釈
カデシュ・バルネア事件について学ぶ。
Ⅰ.シナイ山からカデシュ・バルネアまで(1:19~21)
1.19節
私たちの神、【主】が私たちに命じられたとおりに私たちはホレブを旅立ち、あなたがたが見た、あの大きな恐ろしい荒野、すなわちアモリ人の山地への道を進み、カデシュ・バルネアまで来た。
(1)19節の記述は、8節に続くものである。
①「指導者の任命」(9〜18節)は挿入句である。
②8節の確認
見よ、わたしはその地をあなたがたの手に渡している。行け。その地を所有せよ。これは【主】があなたがたの父祖アブラハム、イサク、ヤコブに対して、彼らとその後の子孫に与えると誓った地である。」
(2)約束の地征服の最初のステップは、カデシュ・バルネアまでの行進である。
①地図の表示
②シナイ山からカデシュ・バルネアまでは、160キロ以上の旅になる。
③民は、荒野を通過するように導かれた。
*「あの大きな恐ろしい荒野」とは、水も緑もない乾燥地帯である。
(3)荒野を通過する理由は2つ考えられる。
①約束の地への渇望を与えるため
*イスラエルの民は、緑豊かで肥沃な地に憧れた。
②神への信頼を植え付けるため
*神は、荒野の旅の間、父が子を守るようにイスラエルの民を守られた。
(4)肥沃な地への渇望と神への信頼は、約束の地征服のために不可欠である。
①信仰者は、人生の荒野を通過する中で、渇望と信頼を獲得する。
2.20~21節
そのとき、私はあなたがたに言った。「あなたがたは、私たちの神、【主】が私たちに与えようとされるアモリ人の山地に来た。
見よ、あなたの神、【主】はこの地をあなたの手に渡してくださった。上れ。占領せよ。あなたの父祖の神、【主】があなたに告げられたとおりに。恐れてはならない。おののいてはならない。」
(1)カデシュ・バルネアへの途上で重要な事件が起こったが、省略されている。
①食物に関する不平とマナの供給(民11章)
②ミリアムとアロンのモーセに対する反抗(民12章)
(2)モーセは、再度【主】の命令を語った。
①「見よ、あなたの神、【主】はこの地をあなたの手に渡してくださった」
*民と契約を結んだ神である【主】は、この土地を渡してくださった。
②「上れ。占領せよ」
*この命令は、神の約束に対する応答である。
③「恐れてはならない。おののいてはならない」
*モーセは、土地の征服がいかに困難な試みであるかをよく知っていた。
*不信仰は、恐れという果実を生み出す。
Ⅱ.偵察隊の派遣(1:22~25)
1.22~23節
すると、あなたがたはみな私のもとに近寄って来て言った。「私たちより先に人を遣わし、私たちのためにその地を探らせよう。そして、私たちが上って行く道や入って行く町々について、報告を持ち帰らせよう。」
私にはこのことが良いことと思われたので、私はあなたがたの中から各部族ごとに一人ずつ、十二人を選んだ。
(1)約束の地征服の第2のステップは、偵察隊の派遣であった。
①これに関しては、民13章の説明と申1章の説明が異なる。
②民13:1~2
【主】はモーセに告げられた。
「人々を遣わして、わたしがイスラエルの子らに与えようとしているカナンの地を偵察させよ。父祖の部族ごとに一人ずつ、族長を遣わさなければならない。」
(2)民13章と申1章の矛盾の解決法
①民が偵察隊の派遣をモーセに求めた。
②モーセは、それはよいことだと考え、了承した。
③モーセが【主】にたずねてみると、【主】もそれに同意された。
(3)各部族から一人ずつ、合計12人から成る偵察隊が派遣された。
①神の御心を行うために、人間の側で準備するのは悪いことではない。
2.24~25節
彼らは出発し、山地に向かって上って行き、エシュコルの谷まで行き、そこを偵察した。
彼らはその地の果物を手に入れ、私たちのもとに持って帰って来た。そして報告をし、「私たちの神、【主】が私たちに与えようとしておられる地は良い地です」と言った。
(1)彼らは、エシュコルの谷まで行き、そこを偵察した。
①ヘブロン近郊の谷で、「ぶどうのクラスター」という意味。
②場所の特定はできないが、この辺りは今もぶどうの産地として有名である。
(2)彼らは、探ってきた地は良い地であると報告した。
①モーセは、彼らの報告の否定的な部分を意図的に省いている。
②「良い地」という表現は、申命記に10回出て来る。
*申1:25、35、3:25、4:21~22、6:18、8:7、10、9:6、11:17
③「良い地」は、イスラエルの民を励ますための言葉である。
Ⅲ.不信仰の罪(1:26~33)
1.26~27節
しかし、あなたがたは上って行こうとせず、あなたがたの神、【主】の命令に逆らった。
そして天幕の中で不平を言った。「【主】は私たちを憎んでおられるので、私たちをエジプトの地から連れ出して、アモリ人の手に渡し、私たちを根絶やしにしようとしておられるのだ。
(1)民は、その地に関する否定的な報告を聞いて落胆した。
①12人の内の10人が、否定的な報告をした。
*その地の住民がいかに恐ろしい者たちであるか(民13:28〜33)。
②それを聞いた民は、約束の地を征服する意欲を失った。
③荒野の体験が信仰を育てる機会にならないなら、それは全くの損失となる。
(2)民は、【主】の愛を憎しみと曲解した。
①【主】は私たちをエジプトの地から連れ出した。
②アモリ人(カナン人)の手に渡し、私たちを根絶やしにするためである。
③これは、神の性質と神の栄光に対する挑戦である。
2.28節
私たちはどこへ上って行くのか。私たちの兄弟たちは、『その民は私たちよりも大きくて背が高い。町々は大きく、城壁は高く天にそびえている。しかも、そこでアナク人を見た』と言って、私たちの心を萎えさせた。」
(1)偵察隊の報告の中で民を恐れさせた情報が3つある。
①その地の住民は、大きくて背が高い。
②町々は大きく、城壁は高く天にそびえている。
③そこには、アナク人がいる(民13:32~33)。
彼らは偵察して来た地について、イスラエルの子らに悪く言いふらして言った。「私たちが行き巡って偵察した地は、そこに住む者を食い尽くす地で、そこで見た民はみな、背の高い者たちだ。
私たちは、そこでネフィリムを、ネフィリムの末裔アナク人を見た。私たちの目には自分たちがバッタのように見えたし、彼らの目にもそう見えただろう。」
*ネフィリムとは、悪霊と人間の娘から生まれた超人である(創6:4)。
*アナク人は、ネフィリムの末裔と考えられていた。
*実際にネフィリムがいたということではない。
*彼らの報告は誇張であり、信用できないものである。
3.29~30節
それで私はあなたがたに言った。「おののいてはならない。彼らを恐れてはならない。
あなたがたに先立って行かれるあなたがたの神、【主】があなたがたのために戦われる。エジプトで、あなたがたの目の前で、あなたがたのためにしてくださったのと同じように。
(1)モーセは、不信仰の民に励ましの言葉を語った。
①モーセは民に、過去の歴史を思い出させた。
②【主】がエジプトで為してくださったことを思い出すなら、カナン征服戦争
にも希望が持てる。
4.31~33節
また荒野では、この場所に来るまでの全道中、あなたの神、【主】が、人が自分の子を抱くようにあなたを抱いてくださったのを、あなたがたは見ているのだ。
このようなことによっても、まだあなたがたはあなたがたの神、【主】を信じていない。
主はあなたがたが宿営する場所を探すために、道中あなたがたの先に立って行き、夜は火の中、昼は雲の中にあって、あなたがたが行くべき道を示されるのだ。」
(1)荒野の旅での神の守りが、「父親が子どもを抱くように」と表現されている。
①【主】は、人が自分の子を抱くようにイスラエルの民を抱いてくださった。
②しかし、イスラエルの民は、【主】を信じていない。
(2)シャカイナグローリーが、民のための偵察隊となった。
①主は、宿営する場所を捜すために、先立って行かれた。
②夜は火のうち、昼は雲のうちにあって、民が進んで行く道を示された。
③「捜す」(ツール)という動詞は、偵察隊の行動を示す動詞と同じもの。
*民13:2〜25に偵察隊の行動が記録されている。
④つまり、偵察隊が派遣される前から、神はその地を探り、イスラエルの民の
進む道を用意しておられたということである。
結論:同じ事実に対する2つの解釈
1.不信仰による解釈
(1)偵察の目的は、約束の地に入る方法とルートの調査である。
(2)不信仰が支配すると、約束の地に入るべきかどうかという議論になる。
(3)不信仰になると、試練を過大評価するようになる。
(4)さらに、神の性質と神の力を疑うようになる。
(5)申1:27
そして天幕の中で不平を言った。「【主】は私たちを憎んでおられるので、私たちをエジプトの地から連れ出して、アモリ人の手に渡し、私たちを根絶やしにしようとしておられるのだ。
①これは、神の性質に対する侮辱である。
②これは、神の栄光に対する侮辱である。
2.信仰による解釈
(1)試練は、自分の信仰を育てるための神の計画である。
(2)神の約束は、必ず成就する。
(3)神は、神に従う者を守り、試練に打ち勝つ力を与えてくださる。
(4)神の恵みは十分である。
①2コリ12:9
しかし主は、「わたしの恵みはあなたに十分である。わたしの力は弱さのうちに完全に現れるからである」と言われました。ですから私は、キリストの力が私をおおうために、むしろ大いに喜んで自分の弱さを誇りましょう。
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