ガラテヤ人への手紙(10)神の時は満ちた ーディスペンセーションに基づく議論ー

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ディスペンセーションに基づく議論について学ぶ。

ガラテヤ10回
「神の時は満ちた」
-ディスペンセーションに基づく議論-
ガラ4:1~11

 

1.はじめに
(1)ガラテヤ人への手紙の位置づけ
①ガラテヤ地方の諸教会は、律法主義者の教えの影響を受けた。
②パウロは、律法主義者の教えに反論する必要を感じ、この書簡を書いた。

 

(2)ガラテヤ人への手紙のアウトライン
①個人的弁明:パウロの使徒職(1:1~2:21)
②教理的教え:信仰義認(3:1~4:31)
③実践的教え:キリスト者の自由(5:1~6:18)

 

(3)文脈の確認
①3~4章は、ガラテヤ人たちに対する教理的教えである。
*パウロは、旧約聖書から論じる。
*律法主義者たちが誇りとしていた旧約聖書を用いて彼らを論駁する。
②4章の内容
*ディスペンセーションに基づく議論(1~11節)
*感情に基づく議論(12~20節)
*比喩に基づく議論(21~31節)
③今回は、ディスペンセーションに基づく議論(1~11節)を取り上げる。
④ディスペンセーションの定義
「神の計画が進展していく過程において出現する、明確に区分可能な神の経綸」

 

2.メッセージのアウトライン
(1)ローマ法の規定(1~2節)
(2)霊的適用(3~7節)
(3)パウロの心配(8~11節)

 

3.結論
(1)成人になる年齢
(2)現代の律法

 

ディスペンセーションに基づく議論について学ぶ。
Ⅰ.ローマ法の規定(1~2節)
1.1~2節
Gal 4:1 つまり、こういうことです。相続人は、全財産の持ち主なのに、子どもであるうちは奴隷と何も変わらず、
Gal 4:2 父が定めた日までは、後見人や管理人の下にあります。
(1)パウロは、律法をいろいろな人物にたとえている。
①監獄の獄吏(3:22)
②養育係(3:24)
③ここでは、後見人と管理人にたとえられる。
④以上の3つのたとえの目的は、かつての霊的幼子の状態と、今の霊的成人
になった状態を対比させることである。

 

(2)「つまり、こういうことです」
①パウロは、2つの言葉を使い分けている。
②「ヒュイオス」は、成人である。
③「ネイピオス」は、未成年である。
*「言葉を話さない」という意味である。
*知的に、道徳的に、未熟な年齢である。
④キリスト・イエスにある者は、霊的成人(ヒュイオス)である。
⑤律法の下にいる者は、霊的幼子(ネイピオス)である。
⑥未成年の相続人は、以下のような状態に置かれている。
*彼は、法的には全財産の持ち主である。
*しかし、財産を運用する自由がないので、実体は奴隷と変わらない。
*成人するまでは、後見人や管理人の下に置かれる。
*後見人は、「これをせよ」「これをしてはならない」と指図する。
*管理人は、未成年の相続人の財産を守る。
*後見人と管理人は、同一人物であることが多かった。
*父方の最も近い親戚に当たる男性が、その役を担うことが多かった。

 

(3)「父が定めた日までは」
①ローマ法では、子どもが成人する日は父によって決められる。
*通常は15歳。
②トーガを着せる儀式が成人式となる。

 

Ⅱ.霊的適用(3~7節)
1.3節
Gal 4:3 同じように私たちも、子どもであったときには、この世のもろもろの霊の下に奴隷となっていました。
(1)パウロは、ローマ法の規定を信者に適用する。
①信者の過去の地位と、キリストの十字架以降の地位を対比させている。
②これは、信者になる前となった後の対比ではない。
③古いディスペンセーションと新しいディスペンセーションの対比である。
④つまりこれは、個人的救いへの言及ではなく、救済史への言及である。
⑤かつてユダヤ人たちは、「この世のもろもろの霊」の下に奴隷となっていた。

 

(2)「この世のもろもろの霊」とは何か。
①むしろ、「この世の基本原理」と訳すべきであろう。
*英語では「rudiments」(ASV)である。
*基本原理とは、ユダヤ教の幼稚な教えである。
②ユダヤ教の律法は、霊的真理を教えるための視聴覚教材である。
③割礼、諸々の儀式、食物規定などがそれである。
*子どもが、絵を通して実際の物体について学ぶことに似ている。
*ユダヤ教は影であり、キリスト教が実体である。
④ユダヤ人たちは、ユダヤ教の幼稚な教えの下で奴隷となっていた。
⑤キリストが来られて、奴隷となっている人たちを解放されたのである。

 

2.4節
Gal 4:4 しかし時が満ちて、神はご自分の御子を、女から生まれた者、律法の下にある者として遣わされました。
(1)「時が満ちて」
①父なる神が、相続人が成人となるために定めていた時が来たという意味。
②この言葉は、ディスペンセーションが新しくなったことを示している。
③神は、歴史の支配者であり、すべてのことに時を定めておられる。
④携挙や再臨も、神が定めた時に起こる。

 

(2)「神はご自分の御子を、女から生まれた者、」
①イエスは、神の御子(神性を持っておられる)である。
②イエスが単なる人なら、「女から生まれた者」という表現は無意味である。
③この表現は、神の御子の受肉を表わしている。
*神の子が、人となられた。

 

(3)「律法の下にある者として遣わされました」
①イエスは、人としては、ユダヤ人として誕生された。
②それゆえ、律法の下に置かれた。
③イエスは、ご自分が定めた律法の下にご自分を置かれた。
*それは、律法の素晴らしさをご自身の生涯を通して示すためである。
*また、律法の呪いをご自身の身に受けるためである。

 

3.5節
Gal 4:5 それは、律法の下にある者を贖い出すためであり、私たちが子としての身分を受けるためでした。
(1)律法は、その命令に違反した者に死を要求する。
①「私たち」とは、ユダヤ人である。
②私たちが子としての身分を受けるために、代価が払われた。

 

(2)イエスは、人類の一員、ユダヤ民族の一員として来られ、律法が要求する代
価を支払ってくださった。
①神の子の死は、すべての人の罪を贖うために十分である。
②神の子は、人間の子として死に、人間の子が神の子になれるようにされた。

 

(3)信者は、イエスを信じた瞬間に成人として神の家族に受け入れられる。
①子として養子に迎えられる。
②養子とは、別の親の子を自分の子として迎えた場合に使う言葉である。
③聖書では、養子という言葉は、成人した子に与えられる特権に与ることに強
調点がある。

 

4.6~7節
Gal 4:6 そして、あなたがたが子であるので、神は「アバ、父よ」と叫ぶ御子の御霊を、私たちの心に遣わされました。
Gal 4:7 ですから、あなたはもはや奴隷ではなく、子です。子であれば、神による相続人です。
(1)「私たち」から「あなたがた」に変わっている。
①父なる神は、信じた者に御子を遣わしただけでなく、御霊も遣わされた。
*救いには、三位一体の神全体が関わっている。
*聖霊は、すべての信者に与えられる賜物である。
②聖霊は信者の心に内住し、神の子とされていることを確信させてくださる。
③信者は、聖霊に導かれて、「アバ、父よ」と祈るようになる。
*「アバ」は、アラム語で父という意味である。
*小さな子どもが父親に呼びかけるときに使う言葉である。
④ロマ8:15
Rom 8:15 あなたがたは、人を再び恐怖に陥れる、奴隷の霊を受けたのではなく、子とする御霊を受けたのです。この御霊によって、私たちは「アバ、父」と叫びます。
⑤これは、信者と父なる神との親密さを示す呼びかけである。
⑦奴隷は、家の主人に対してこの呼びかけを使うことができない。

 

(2)「あなたがた」(6節)から「あなた」(7節)への変化がある。
①複数形から単数形への変化は、この真理の個人的適用を示している。
②すべての信者は、奴隷ではなく、子である。
③神の家族においては、子とされたことは相続人になったことである。

 

Ⅲ.パウロの心配(8~11節)
1.8節
Gal 4:8 あなたがたは、かつて神を知らなかったとき、本来神ではない神々の奴隷でした。
(1)ここでパウロは、論理的説明を一旦中止して、自らの感情を表に出す。
①信者になる前のガラテヤ人たちは、偶像の奴隷であった。
②彼らは、ゼウスやヘルメスなどの偶像を礼拝していた(使14:11~13)。

 

2.9節
Gal 4:9 しかし、今では神を知っているのに、いや、むしろ神に知られているのに、どうして弱くて貧弱な、もろもろの霊に逆戻りして、もう一度改めて奴隷になりたいと願うのですか。
(1)しかし、偶像礼拝者であった彼らに、大きな転機がやって来た。
①彼らは、真の神を知るようになった。
*これは、人間の視点から見た救いである。
②いや、むしろ神に知られるようになった。
*これは、神の視点から見た救いである。
③ここでの「知る」という動詞は、親密な関係、個人的な関係を表わしている。

 

(2)にもかかわらず、ガラテヤの信者たちは後戻りしている。
①人を奴隷にする宗教に後戻りしている。
②「弱くて貧弱な」
*弱いとは、義認も聖化も与えないということ。
*貧弱とは、相続遺産がないということ。
③「もろもろの霊」
*もろもろの霊とは、ユダヤ教の基本原理のことである(3節)。

 

3.10~11節
Gal 4:10 あなたがたは、いろいろな日、月、季節、年を守っています。
Gal 4:11 私は、あなたがたのために労したことが無駄になったのではないかと、あなたがたのことを心配しています。
(1)ガラテヤの信者たちは、ユダヤ教の暦を守っていた。
①いろいろな日とは、安息日である。
②月とは、新月の祝いである。
③季節とは、過越の祭り、ペンテコステ、仮庵の祭りなどである。
*レビ23章の7つの祭り
④年 とは、安息年、ヨベルの年などである。

 

(2)彼らは、これらを守れば、神から特別な祝福が与えられと思っていた。
①その考え方が間違っていることは、すでにパウロが論じてきた通りである。
②業が救いや聖化に貢献するなら、人には自分を救う力があることになる。
③これは、神への絶対的な信頼を破壊する考え方である。

 

(3)パウロは、自分の労苦が無に帰することを心配している。
①それは、ガラテヤ人たちのための心配である。

 

結論:
1.成人になる年齢
(1)ガラ4:2
Gal 4:2 父が定めた日までは、後見人や管理人の下にあります。
①「父が定めた日までは」
②成人する日は、ユダヤ文化、ギリシア文化、ローマ文化と異なる。
*ユダヤ文化では13歳。
*ギリシア文化では18歳。
*ローマ文化では14歳~17歳。
③ローマ法では、子どもが成人する日は父によって決められる。
④トーガを着せる儀式が成人式となる。

 

(2)今日のユダヤ教の教え
①40歳になるまで、雅歌とエゼキエル書1書を読むことが許可されない。
②雅歌は、青年には性的刺激が強すぎると考えられている。
③エゼキエル1章は、シャカイナグローリーを描写した箇所である。
*タルムードの逸話:そこを読もうとした青年は、火で焼き尽くされた。
④つまり、律法の下にある人は、40歳までは成人とは見なされないのである。
*13歳のバール・ミツバは、「律法の子」となる儀式に過ぎない。

 

(3)ガラ4:6~7
Gal 4:6 そして、あなたがたが子であるので、神は「アバ、父よ」と叫ぶ御子の御霊を、私たちの心に遣わされました。
Gal 4:7 ですから、あなたはもはや奴隷ではなく、子です。子であれば、神による相続人です。

 

2.現代の律法
(1)メシアニックジューと律法
①律法を行うことによって神に喜ばれようとしているなら、間違っている。
②聖霊に導かれて律法を行っているなら、問題はない。
③人間の思いなのか、聖霊の導きなのか、判断するのは極めて難しい。

 

(2)異邦人と律法
①メシアニックジューの場合と同じことが言える。
②ユダヤの祭りを祝う場合の注意点
*キリスト教のユダヤ的ルーツを学ぶことは、よいことである。
*キリストについて学ぶことも、よいことである。
*祭りを祝うことが自らの霊性を高めると考えるのは、間違っている。

 

(3)キリスト教の中にある現代の律法
①儀式を行うことによって聖めや祝福を得ようとする間違いが、多数ある。
②人間が定めた祭司制度や祭司の衣服(ユダヤ教の伝統からの借用)
③安息日の遵守を強調すること(土曜日から日曜日に変更されている)
④聖所、ローソク、聖水、などなど。
⑤これらの現代の律法を見て、パウロは、なんと言うだろうか。
⑥現代の律法は、恵みと信仰による聖化、聖霊による聖化を妨げる。

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