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使徒の働き(89)―ペリクスの前に立つパウロ―
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ペリクスの裁判について学ぶ。
「ペリクスの前に立つパウロ」
使徒24:1~23
1.はじめに
(1)文脈の確認
①パウロ殺害の陰謀が発覚した。
②千人隊長は、直ちにパウロをカイザリヤに移送した。
③千人隊長は、総督ペリクス宛の手紙を用意した。
④ペリクスは、パウロを留置しておくように命じた。
⑤使23:34~35
Act 23:34 総督は手紙を読んでから、パウロに、どの州の者かと尋ね、キリキヤの出であることを知って、
Act 23:35 「あなたを訴える者が来てから、よく聞くことにしよう」と言った。そして、ヘロデの官邸に彼を守っておくように命じた。
(2)アウトライン
①パウロに対するユダヤ人たちの訴え(24:1~9)
②訴えに対するパウロの弁明(24:10~21)
③ペリクスの応答(24:22~23)
結論:復活
ペリクスの裁判について学ぶ。
Ⅰ.パウロに対するユダヤ人たちの訴え(24:1~9)
1.1~2節a
Act 24:1 五日の後、大祭司アナニヤは、数人の長老およびテルトロという弁護士といっしょに下って来て、パウロを総督に訴えた。
Act 24:2a パウロが呼び出されると、テルトロが訴えを始めてこう言った。
(1)ユダヤ人たちのパウロに対する憎しみがいかに激しかったかが分かる。
①5日後にやって来た(パウロがエルサレムを発ってから5日後)。
②大祭司アナニヤ自身と、議員たちがやって来た。
③弁護士のテルトロを伴ってきた。
*テルトロはラテン名である。
*パウロのようにヘレニストのユダヤ人である可能性が大である。
*彼は、パウロを総督に訴えるために雇われた。
*弁護士というギリシア語は、「レトロス」である。雄弁家を意味する。
④最初のパウロを捕えたエペソから来たユダヤ人たちはいなかった。
⑤また、陰謀を企てた40人のユダヤ人たちもいなかった。
2.2b~4節
Act 24:2b 「ペリクス閣下。閣下のおかげで、私たちはすばらしい平和を与えられ、また、閣下のご配慮で、この国の改革が進行しておりますが、
Act 24:3 その事実をあらゆる面において、また至る所で認めて、私たちは心から感謝しております。
Act 24:4 さて、あまりご迷惑をおかけしないように、ごく手短に申し上げますから、ご寛容をもってお聞きくださるようお願いいたします。
(1)テルトロはペリクスに対してお世辞(へつらい)の言葉を使った。
①「閣下」(クラティストス)は、ペリクスよりも高位の人に使うタイトルである。
*「尊敬するテオピロ殿」(ルカ1:3)
②「すばらしい平和を与えられ」は、半分事実である。
*しかし、その平和は恐怖政治の結果である。
③「私たちは心から感謝しております」は、お世辞である。
*その平和をパウロが乱しているという訴えをするための準備である。
(2)「ごく手短に申し上げますから、」
①当時の話し手も、話は短く終えることを約束したが、長くなることが多かった。
②今も、その状況は変わらない。
3.5~9節
Act 24:5 この男は、まるでペストのような存在で、世界中のユダヤ人の間に騒ぎを起こしている者であり、ナザレ人という一派の首領でございます。
Act 24:6 この男は宮さえもけがそうとしましたので、私たちは彼を捕らえました。
Act 24:8 閣下ご自身で、これらすべてのことについて彼をお調べくださいますなら、私たちが彼を訴えております事がらを、おわかりになっていただけるはずです。」
Act 24:9 ユダヤ人たちも、この訴えに同調し、全くそのとおりだと言った。
(1)3つの訴えがなされた(すべて政治的な意味を持っている)。
①世界中のユダヤ人の間に騒ぎを起こしている。
*ペストのような存在
②ナザレ人という一派(異端)の首領である。
*ユダヤ教はローマの公認宗教であった。
*「ナザレ人という一派」という用語を使った。
*パウロの信仰はユダヤ教とは別のもので、異端であるとの印象を与えた。
③宮さえもけがそうとした。
*「ギリシヤ人を宮の中に連れ込んで、」(使21:28)というのが騒動の原因。
*ここでは、その説明が抜けている。
*ローマ帝国は、神殿を汚した者の死刑を認めていた。
*それゆえ、パウロを死刑に処すべきであるという理屈が成り立つ。
(2)虚偽の報告
①「私たちは彼を捕らえました」は、嘘である。
*暴動を起こしたのは、ユダヤ人たちである。
②この説明は千人隊長の手紙の内容と合致するので、総督は納得したと思われる。
(3)イエスもまた同様の訴えを受けた(ルカ23:2)。
Luk 23:2 そしてイエスについて訴え始めた。彼らは言った。「この人はわが国民を惑わし、カイザルに税金を納めることを禁じ、自分は王キリストだと言っていることがわかりました。」
(4)使24:6b~8aは、信頼できる写本にはない。
「そして、私どもの律法によって裁こうとしたところ、千人隊長リシアがやって来て、
この男を無理やり私どもの手から引き離し、告発人たちには、閣下のところに来るよ
うにと命じました」(新共同訳)
(5)同席していたユダヤ人は、訴えの内容に同意した。
①彼らは、ペリクスが直ちにパウロを処刑することを期待した。
②ペリクスは、ローマに敵対する者たちを平気で十字架に付けていた。
Ⅱ.訴えに対するパウロの弁明(24:10~21)
1.10節
Act 24:10 そのとき、総督がパウロに、話すようにと合図したので、パウロはこう答えた。/「閣下が多年に渡り、この民の裁判をつかさどる方であることを存じておりますので、私は喜んで弁明いたします。
(1)パウロは、テルトロよりも誠実で真実な言葉を語った。
①ペリクスは5年以上もユダヤ総督を務めている。
②それゆえ、ユダヤ人のことに関して的確な判断をしていただけるはずである。
③これは、テルトロのイントロダクションよりも短い。
2.11~13節
Act 24:11 お調べになればわかることですが、私が礼拝のためにエルサレムに上って来てから、まだ十二日しかたっておりません。
Act 24:12 そして、宮でも会堂でも、また市内でも、私がだれかと論争したり、群衆を騒がせたりするのを見た者はありません。
Act 24:13 いま私を訴えていることについて、彼らは証拠をあげることができないはずです。
(1)1番目の訴えに対する反論(世界中のユダヤ人の間に騒ぎを起こしている)
①エルサレムに上って来てから、まだ12日しか経っていない。
②ペストのような存在になる時間的余裕はなかった。
③自分は、だれかと論争したり、群衆を騒がせたりしたことはない。
④訴えている者たちは、証拠を上げることができないはずである。
3.14~16節
Act 24:14 しかし、私は、彼らが異端と呼んでいるこの道に従って、私たちの先祖の神に仕えていることを、閣下の前で承認いたします。私は、律法にかなうことと、預言者たちが書いていることとを全部信じています。
Act 24:15 また、義人も悪人も必ず復活するという、この人たち自身も抱いている望みを、神にあって抱いております。
Act 24:16 そのために、私はいつも、神の前にも人の前にも責められることのない良心を保つように、と最善を尽くしています。
(1)2番目の訴えに対する反論(ナザレ人という一派の首領である)
①自分が信じている内容は、異端ではなく、「この道」である。
②その信仰は、旧約聖書から出たものであり、ユダヤ教と調和する。
*律法と預言者を全部信じている。
③復活の希望を抱いている。
④それゆえ、良心を保つように最善を尽くしている。
(2)大祭司アナニヤはサドカイ人であるので、復活を信じていなかった。
①パウロが訴えられているのは、宗教的な理由である。
*パウロとアナニヤは、復活に関して意見が異なる。
4.17~18節
Act 24:17 さて私は、同胞に対して施しをし、また供え物をささげるために、幾年ぶりかで帰って来ました。
Act 24:18 その供え物のことで私は清めを受けて宮の中にいたのを彼らに見られたのですが、別に群衆もおらず、騒ぎもありませんでした。ただアジヤから来た幾人かのユダヤ人がおりました。
(1)3番目の訴えに対する反論(宮さえもけがそうとした)
①エルサレムに上ったのは、同胞に施しをし、供え物をささげるためである。
②自分は神殿で騒ぎを起こしていない。
③異邦人を神殿に連れ込んでいない。
④アジアから来た幾人かのユダヤ人が自分といっしょにいた。
5.19~21節
Act 24:19 もし彼らに、私について何か非難したいことがあるなら、自分で閣下の前に来て訴えるべきです。
Act 24:20 でなければ、今ここにいる人々に、議会の前に立っていたときの私にどんな不正を見つけたかを言わせてください。
Act 24:21 彼らの中に立っていたとき、私はただ一言、『死者の復活のことで、私はきょう、あなたがたの前でさばかれているのです』と叫んだにすぎません。」
(1)最初に神殿でパウロを捕えた者たちは、ここにはいない。
①彼ら自身が総督の前で訴えるべきである。
②ローマ法では、途中で訴えを取り下げる者は厳しく罰せられた。
③彼らがいないということは、パウロを訴える理由がないということである。
(2)今パウロを訴えている者たちが、パウロの不正を証明すべきである。
①彼らは、サンヘドリンでの裁判の際に、そこにいた。
*大祭司、サドカイ人、パリサイ人
②パウロは、一言叫んだだけである。
③「死者の復活のことで、私はきょう、あなたがたの前でさばかれているのです」
④パウロは、弁明しながら伝道している。
(3)ペリクスは、微妙な立場に置かれた。
①ユダヤ人たちの神学論争に介入せねばならない。
②しかし、ユダヤ人たちの機嫌を損ねたくない。
Ⅲ.ペリクスの応答(24:22~23)
1.22~23節
Act 24:22 しかしペリクスは、この道について相当詳しい知識を持っていたので、「千人隊長ルシヤが下って来るとき、あなたがたの事件を解決することにしよう」と言って、裁判を延期した。
Act 24:23 そして百人隊長に、パウロを監禁するように命じたが、ある程度の自由を与え、友人たちが世話をすることを許した。
(1)ペリクスは、「この道」について相当詳しい知識を持っていた。
①ユダヤ人の妻ドルシラが情報源
*ヘロデ・アグリッパⅠ世の娘
②ユダヤから来たローマ人やユダヤ人も情報源
③ローマ帝国内の他の地域に住む人たちも情報源
(2)ペリクスは、ユダヤ人たちとの平和を維持しようとした。
①千人隊長が来るまで裁判を延期するという。
*しかし、ペリクスには千人隊長をカイザリヤに呼ぶつもりはない。
*千人隊長の手紙で、パウロが無罪であることを知っていた。
②裁判は無期限に延期された。
③ここから2年間の拘留生活が始まる。
(3)パウロは、ユダヤ人たちから隔離された。
①パウロには、ある程度の自由が与えられた。
②友人たちが世話をした。
*アリスタルコス、ルカ、伝道者ピリポなどであろう。
結論 :復活
Act 24:14 しかし、私は、彼らが異端と呼んでいるこの道に従って、私たちの先祖の神に仕えていることを、閣下の前で承認いたします。私は、律法にかなうことと、預言者たちが書いていることとを全部信じています。
Act 24:15 また、義人も悪人も必ず復活するという、この人たち自身も抱いている望みを、神にあって抱いております。
Act 24:16 そのために、私はいつも、神の前にも人の前にも責められることのない良心を保つように、と最善を尽くしています。
1.パウロの弁明の中心は、復活である。
(1)復活は、旧約聖書(律法と預言者)に預言されている真理である。
(2)復活をどのように理解しているかで、その人の生き方が決まる。
(3)パウロは、良心に恥じないように歩んでいる。
(4)キリスト教は、復活信仰である。
①キリストは、私の罪のために死なれたのか。
②キリストは、復活されたのか。
2.パウロは、義人の復活と悪人の復活を信じていた。
(1)パウロが義人と悪人の復活に言及するのは、新約聖書ではここだけである。
(2)義人と悪人の復活を教える聖句
①ダニ12:2
Dan 12:2 地のちりの中に眠っている者のうち、多くの者が目をさます。ある者は永遠のいのちに、ある者はそしりと永遠の忌みに。
②ヨハ5:28~29
Joh 5:28 このことに驚いてはなりません。墓の中にいる者がみな、子の声を聞いて出て来る時が来ます。
Joh 5:29 善を行った者は、よみがえっていのちを受け、悪を行った者は、よみがえってさばきを受けるのです。
3.聖書は、第一の復活と第二の復活を区別している。
(1)第一の復活(黙20:5〜6)
①第一の復活に与るのは、信者だけである。
②第一の復活には順番がある。
*初穂としてのキリストの復活
*携挙の時点での教会の聖徒たちの復活
*千年王国開始時点での旧約の聖徒たちと大患難時代の殉教者たちの復活
③「この人々に対しては、第二の死は、なんの力も持っていない。彼らは神とキ
リストとの祭司となり、キリストとともに、千年の間王となる」
④第二の死とは、永遠の滅びのことである。
⑤キリストを信じる者は、肉体の死は経験するが、永遠の滅びに入ることはない。
(2)第二の復活(黙20:13~15)
①信者でない人々の復活は、第二の復活と呼ばれる。
②第二の復活は千年王国の終わりに起こる。
③第一の復活と第二の復活の間には、千年間の隔たりがある。
④第二の復活も、順を追って起こる。
*反キリストの復活
*白い御座のさばきの前のあらゆる時代の未信者たちの復活
*反キリストの復活と未信者たちの復活の間には、千年間の隔たりがある。
⑤第一の復活は、神からの栄誉と祝福を受けるためのものである。
⑥第二の復活は、神からの裁きを受けるためのものである。
⑦未信者の肉体とたましいとが合体して白い御座のさばきを受ける。
⑧キリストの贖いのわざを受け入れるかどうかが、その人の永遠の運命を変える。
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