十字架のことば(7)—第6のことば:勝利の叫び—

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十字架のことば(7)

―第6のことば:勝利の叫び―

ヨハ19:29~30

「そこには酸いぶどう酒のいっぱい入った入れ物が置いてあった。そこで彼らは、酸いぶどう酒を含んだ海綿をヒソプの枝につけて、それをイエスの口もとに差し出した。イエスは、酸いぶどう酒を受けられると、『完了した』と言われた。そして、頭をたれて、霊をお渡しになった」

  1.はじめに

*「十字架のことば」には7つある。

  ①前半:午前9時から正午までの間の3時間

    *3つのことば

②後半:正午から午後3時までの間の3時間

    *4つのことば

(1)赦しの祈り

「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです」

(ルカ23:34)

(2)救いを約束することば

「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいま

す」 (ルカ23:43)

(3)愛のことば

「女の方。そこに、あなたの息子がいます」 (ヨハ19:26)

「そこに、あなたの母がいます」 (ヨハ19:27)

(4)絶望の叫び

「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」

「わが神、わが神。どうしてわたしをお見捨てになったのですか」 (マタ27:46)

(5)苦痛の叫び

「わたしは渇く」 (ヨハ19:28)

  ①第4のことばは、魂の苦痛を表現することばである。

  ②第5のことばは、肉体の苦痛を表現することばである。

(6)勝利の叫び

「完了した」 (ヨハ19:30)

    *イエスは、酸いぶどう酒を受けた。

      ・ワインビネガーと水を混ぜた飲料

      ・最後の言葉を明瞭に発音できるように、イエスはこれを受けた。

    *「完了した」は、ギリシア語で「テテレスタイ」という一語である。

      ・この言葉は、商業用語である。

      ・納税したことを証明する領収書が発見された。パピルス。

・そこに、「テテレスタイ」と書かれていた。

・「全額支払い済み」という意味である。

・イエスは、どういう意味でこの言葉を語ったのか。

・訳文の比較

  「完了した」(新改訳)

  「成し遂げられた」(新共同訳)

  「すべてが終わった」(口語訳)

  「事(こと)畢(をは)りぬ」(文語訳)

  「何もかもなしとげた」(リビングバイブル)

  2.アウトライン

    (1)父から受けた使命が完了した。

    (2)旧約聖書の祭儀法が完了した。

    (3)私たちの救いが完了した。

  3.結論:このことばの現代的意味について考える。

このメッセージは、第6のことばの意味について考えるものである。

Ⅰ.父から受けた使命が完了した。

   1.能動的な使命

    (1)マタ5:17~18

    「わたしが来たのは律法や預言者を廃棄するためだと思ってはなりません。廃棄する

ためにではなく、成就するために来たのです。まことに、あなたがたに告げます。天

地が滅びうせない限り、律法の中の一点一画でも決してすたれることはありません。

全部が成就されます」

      ①イエスは、モーセの律法を全面的に受け入れていた。

②イエスとパリサイ人の論争は、口伝律法に関するものであった。

    (2)イエスは、一度もモーセの律法を破ったことはない。

      ①荒野での悪魔の誘惑の例

      ②もしイエスが律法に違反したことがあるなら、メシアとして失格である。

  2.受動的な使命

    (1)1ペテ2:22

    「キリストは罪を犯したことがなく、その口に何の偽りも見いだされませんでした」

    (2)イザ53:9

    「彼の墓は悪者どもとともに設けられ、彼は富む者とともに葬られた。彼は暴虐を行

わず、その口に欺きはなかったが」

    (3)受難の僕としての使命

      ①ゲツセマネの園での祈り

      ②弟子たちに見捨てられる。

      ③イスカリオテのユダの裏切りに会う。

      ④そして今、十字架上で苦しんでいる。

Ⅱ.旧約聖書の祭儀法が完了した。

  1.ヘブ10:1~4

  「律法には、後に来るすばらしいものの影はあっても、その実物はないのですから、律法

は、年ごとに絶えずささげられる同じいけにえによって神に近づいて来る人々を、完全に

することができないのです。もしそれができたのであったら、礼拝する人々は、一度きよ

められた者として、もはや罪を意識しなかったはずであり、したがって、ささげ物をする

ことは、やんだはずです。ところがかえって、これらのささげ物によって、罪が年ごとに

思い出されるのです。雄牛とやぎの血は、罪を除くことができません」

(1)モーセの律法には、非常に複雑で詳細な祭儀法が含まれている。

  ①それは、イスラエルの民に、魂の解放を与えるための恵みの方法であった。

(2)しかし、いけにえは「後に来るすばらしいものの影」である。

  ①それは、一時的なものである。

  ②それは、イスラエルの民の罪を一時的に覆うだけで、根本的な解決ではない。

  ③従って、繰り返し捧げる必要がある。

(3)本体は、メシアである。

  ①メシアのいのちは、完全なささげ物である。

  ②一度限りのささげ物である。

  ③メシアの死によって、旧約聖書の祭儀法はすべて完了した。

  2.イエスの確信

    (1)イエスはまだ死んでいないが、その心には以下のような確信があった。

      ①呪われた死を遂げること(過越の祭りの成就)

      ②墓に葬られること

      ③三日目によみがえること(初穂の祭りの成就)

      ④40日後に昇天すること

(2)復活は、イエスの死が父なる神に受け入れられたことを示している。

Ⅲ.イエスは、私たちの身代わりとなられた。

   1.2コリ5:21

  「神は、罪を知らない方を、私たちの代わりに罪とされました。それは、私たちが、この

方にあって、神の義となるためです」

   (1)2つの転嫁

①私たちの罪は、イエスの上に転嫁された。

②イエスの義は、私たちの上に転嫁された。

    (2)条件は、「この方にあって」である。

      ①イエスをメシアとして受け入れることが、救いの条件である。

  2.ヨハ19:30

  「イエスは、酸いぶどう酒を受けられると、『完了した』と言われた。そして、頭をたれ

て、霊をお渡しになった」

   (1)イエスの死の特殊性

①その死は、自発的なものであった。

②その死は、イエスの神性を示している。

  3.ヨハ10:11

  「わたしは、良い牧者です。良い牧者は羊のためにいのちを捨てます」

   4.ヨハ10:14

  「わたしは良い牧者です。わたしはわたしのものを知っています。また、わたしのものは、

わたしを知っています」

   5.ヨハ10:17~18

  「わたしが自分のいのちを再び得るために自分のいのちを捨てるからこそ、父はわたしを

愛してくださいます。だれも、わたしからいのちを取った者はいません。わたしが自分か

らいのちを捨てるのです。わたしには、それを捨てる権威があり、それをもう一度得る権

威があります。わたしはこの命令をわたしの父から受けたのです」

結論:このことばの現代的意味

  1.救いは、いつの時代でも、「信仰により、恵みによる」

  2.新約時代になり、キリストの福音の全貌が啓示された。

    ①キリストは、私たちの罪のために死なれた。

    ②キリストは、墓に葬られた。

    ③キリストは、三日目に甦られた。

  3.キリストを信じるとは、3つのことが完了したことを認めることである。

    ①父なる神の御心は成就した。

    ②旧約聖書の祭儀法は成就した。

    ③私たちの救いも成就した。

  4.信仰以外に、救いの条件を加える必要はない。

    ①義認も、聖化も、栄化も、すべて恵みによる。

    ②今こそ、聖書的キリスト教に立ち返る時である。

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