十字架のことば(6)—第5のことば:苦痛の叫び—

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このメッセージでは...

「わたしは渇く」このことばの現代的意味について考えます。

十字架のことば(6)

―第5のことば:苦痛の叫び―

ヨハ19:28~29

「この後、イエスは、すべてのことが完了したのを知って、聖書が成就するために、『わたしは渇く』と言われた。そこには酸いぶどう酒のいっぱい入った入れ物が置いてあった。そこで彼らは、酸いぶどう酒を含んだ海綿をヒソプの枝につけて、それをイエスの口もとに差し出した」

  1.はじめに

(1)「十字架のことば」には7つある。

  ①前半:午前9時から正午までの間の3時間

    *3つのことば

    *他人に関するものである。

②後半:正午から午後3時までの間の3時間

    *4つのことば

    *自分に関するものである。

(2)第1のことばは、赦しの祈りである。

「父よ。彼らをお赦しください。彼らは、何をしているのか自分でわからないのです」

(ルカ23:34)

(3)第2のことばは、救いを約束することばである。

「まことに、あなたに告げます。あなたはきょう、わたしとともにパラダイスにいま

す」 (ルカ23:43)

(4)第3のことばは、愛のことばである。

「女の方。そこに、あなたの息子がいます」 (ヨハ19:26)

「そこに、あなたの母がいます」 (ヨハ19:27)

(5)第4のことばは、絶望の叫びである。

「エリ、エリ、レマ、サバクタニ」

「わが神、わが神。どうしてわたしをお見捨てになったのですか」 (マタ27:46)

(6)第5のことばは、苦痛の叫びである。

「わたしは渇く」 (ヨハ19:28)

  ①第4のことばは、魂の苦痛を表現することばである。

  ②第5のことばは、肉体の苦痛を表現することばである。

  2.アウトライン

    (1)イエスは、人間性を持っておられた。

    (2)イエスは、メシア預言を成就された。

    (3)イエスは、私たちの身代わりとなられた。

  3.結論:このことばの現代的意味について考える。

このメッセージは、第5のことばの意味について考えるものである。

Ⅰ.イエスは、人間性を持っておられた。

   1.イエスの2面性

    (1)イエスは神であり、人である。

      ①これは、使徒たちの教えであり、教会の伝統である。

      ②これ以外の教えは、異端的教えである。

    (2)第5のことばは、イエスが人間性を持っておられたことを示している。

  2.十字架刑の痛み

    (1)種々の痛みがある。

      ①傷による痛みと熱

      ②呼吸ができないこと

      ③しかし、「渇き」こそが最大の痛みである。

    (例話)マムルーク朝時代(13~16C)、ダマスコで青年将校が十字架に付けられた。

        金曜日に十字架に付けられ、日曜日の午後に死んだ。

        最初の日は、水を求め続けた。それ以降静かになり、左右を見渡していた。

    (2)兵士たちは、「苦みを混ぜたぶどう酒」(マタ27:34)を与えようとした。

      ①イエスはそれを拒否した。

      ②意識がはっきりした状態で、メシアとしての役割を果たそうとされた。

    (3)兵士たちは、イエスに「酸いぶどう酒」を与えた。

      ①イエスはそれを受けた。

      ②これは、ワインビネガーと水を混ぜたもので、兵士たちの飲み物であった。

      ③喉を潤し、最後のことばを大声で発音するためであろう。

Ⅱ.イエスは、メシア預言を成就された。

  「この後、イエスは、すべてのことが完了したのを知って、聖書が成就するために、『わ

たしは渇く』と言われた」 (ヨハ19:28)

  1.「すべてのことが完了したのを知って」

     (1)イエスの意識は明瞭である。

      ①「苦みを混ぜたぶどう酒」(鎮痛剤)を拒否しておられた。

    (2)完了したとは

①十字架上の1~4のことばが終わった。

        ・イエスは、人々のための祈りを終えた。

      ②より広く見ると、イエスの生涯すべてが従順な歩みであった。

      ③イエスは、ご自分の死が贖罪のために死であることを知っておられた。

  2.「聖書が成就するために」

(1)訳文の比較

    「この後、イエスは、すべてのことが今や成し遂げられたのを知り、『渇く』と言わ

    れた。こうして、聖書の言葉が実現した」 (新共同訳)

      ①機械的に、あるいは演技として、「わたしは渇く」と言われたのではない。

      ②「渇き」は現実のものであり、この叫びは真実なものである。

      ③その結果、メシア預言が成就したのである。

    (2)イエスの生涯において、数々のメシア預言が成就した。

      ①ここでは、「渇き」に関する預言が成就した。

  3.詩22:15

  「私の力は、土器のかけらのように、かわききり、私の舌は、上あごにくっついています。

あなたは私を死のちりの上に置かれます」

  (1)第4のことばは、詩22:1からの引用であった。

「わが神、わが神。どうしてわたしをお見捨てになったのですか」(マタ27:46)

    ①この詩篇は、最後は勝利のことばで終わっている。

②イエスは、第5のことばでも、詩22篇を引用している。

  4.詩69:21

  「彼らは私の食物の代わりに、苦味を与え、私が渇いたときには酢を飲ませました」

     (1)この詩篇は、メシアの受難の詩篇である(作者はダビデ)。

      ①これ以外に、詩69篇が引用されている箇所がヨハネの福音書に2箇所ある。

      ②ヨハ2:17と15:25である。

    (2)ヨハ2:17

    「弟子たちは、『あなたの家を思う熱心がわたしを食い尽くす』と書いてあるのを思

い起こした」

   ①これは、詩69:9のことである。

(3)ヨハ15:25

「これは、『彼らは理由なしにわたしを憎んだ』と彼らの律法に書かれていることば

が成就するためです」

   ①これは、詩69:4のことである。

  5.「酸いぶどう酒を含んだ海綿をヒソプの枝につけて」

     (1)ここでヒソプが出て来るのはおかしいと考える学者もいる。

      ①ヒソプは短い枝である。

      ②しかし、短くても目的に合っている(イエスの体はさほど高くない所にあった)。

    (2)出12:22

    「ヒソプの一束を取って、鉢の中の血に浸し、その鉢の中の血をかもいと二本の門柱

につけなさい。朝まで、だれも家の戸口から外に出てはならない」

       ①ヒソプは、過越の祭りの際の儀式で用いられている。

      ②イエスが「神の小羊」として死のうとしていることを示している。

      ③過越の祭りは、イエスの死によって成就した。

Ⅲ.イエスは、私たちの身代わりとなられた。

   1.大いなるパラドックス

    (1)命の水の提供者が、渇きで苦しまれた。

      ①ヨハ4:14では、「永遠のいのちへの水」がサマリヤの女に提示された。

      ②ヨハ7:38~39では、仮庵の祭りの時に、「生ける水の川」が約束された。

    (2)イエスは、「命の水」の源であると同時に、渇きを覚えるお方である。

      ①イエスの二面性(神であり人である)が現れている。

  2.神の怒りの杯

  「そこで、イエスはペテロに言われた。『剣をさやに収めなさい。父がわたしに下さった

杯を、どうして飲まずにいられよう』」 (ヨハ18:11)

  (1)イエスは十字架上で、神の怒りの杯を飲み干された。

    ①この時点が、イエスの「辱め」のどん底であった。

    ②下りきった先には、上りが待っている。

  (2)ロマ4:25

  「主イエスは、私たちの罪のために死に渡され、私たちが義と認められるために、よ

みがえられたからです」

結論:このことばの現代的意味

  1.「キリストにあって」という概念

    (1)これを「位置的真理」という。

    (2)イエスをメシア(キリスト)と信じる人は、「キリストのうちにある」。

    (3)ロマ8:1

    「こういうわけで、今は、キリスト・イエスにある者が罪に定められることは決して

ありません」

(4)2コリ5:17

「だれでもキリストのうちにあるなら、その人は新しく造られた者です。古いものは

過ぎ去って、見よ、すべてが新しくなりました」

(5)キリストの受難と復活は、私が体験したこととなっている。

  ①すでに起こった。

  ②やがて完成する。

  2.大祭司という概念

    (1)神と私たちの間に立つ仲介者

    (2)ヘブ4:15~16

    「私たちの大祭司は、私たちの弱さに同情できない方ではありません。罪は犯されま

せんでしたが、すべての点で、私たちと同じように、試みに会われたのです。ですか

ら、私たちは、あわれみを受け、また恵みをいただいて、おりにかなった助けを受け

るために、大胆に恵みの御座に近づこうではありませんか」

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