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使徒の働き(13)―ペテロの第2のメッセージ(1)―
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ペテロの第2回目のメッセージの前半を学ぶ。
「ペテロの第2のメッセージ(1)」
使徒3:12~16
1.はじめに
(1)ペンテコステの日に教会が誕生した。
①ペテロの第1回目のメッセージにより、3,000人ほどの人たちが弟子となった。
②初代教会は、暖かさと畏怖の念が共存する群れであった。
③3:1~4:31まで、教会への最初の迫害が記録されている。
④「使徒たちによって多くの不思議としるしが行われた」(2:43)
⑤そのひとつの例が、生まれつき足の不自由な人の癒しである。
*これは、迫害が始まるきっかけとなった奇跡である。
*これは、ペテロに2回目のメッセージを語る機会を与えた奇跡である。
*その結果、5,000人ほどの人たちが信じるようになる。
(2)前回学んだ内容
①癒された男が、ペテロとヨハネにすがりつき、大声で神を賛美した。
②多くの人たちがいっせいにソロモンの廊にいる彼らのところにやって来た。
③ペテロは、この機会を利用してメッセージを語った。
*ユダヤ人がユダヤ人に向けてメッセージを語っている。
*旧約聖書を用いた伝道メッセージである。
④ペテロの第2回目のメッセージを2回に分けて学ぶ。
(3)メッセージのアウトライン
①癒しの理由(12~13節a)
②罪の糾弾(13b~15節a)
③信仰の力(15b~16節)
結論:
(1)「イスラエル人たち」という呼びかけ
(2)「イスラエル」という名前にふさわしくない行為
ペテロの第2回目のメッセージの前半を学ぶ。
Ⅰ.癒しの理由(12~13節a)
1.12節
Act 3:12 ペテロはこれを見て、人々に向かってこう言った。「イスラエル人たち。なぜこのことに驚いているのですか。なぜ、私たちが自分の力とか信仰深さとかによって彼を歩かせたかのように、私たちを見つめるのですか。
(1)ペテロは、キリストを証しする機会が再びやって来たことを認識した。
①「イスラエル人たち」という呼びかけ。正式な呼びかけの言葉である。
(2)この癒しは、人間の力や信仰深さによるものではない。
①ユダヤ人の認識では、奇跡を行う人はその敬虔さのゆえにそれを行うとされた。
*神は、彼らの願いを無視できないのだ。
*この理解では、人間の側の信仰深さや敬虔さが強調されている。
②ルカは、使徒たちは普通の人たちであることを強調している。
*「なぜ、私たちを見つめるのですか」
*同じ動詞が、使3:4で用いられていた。
*復活したイエスが、このことを行なっておられるのだ。
2.13節a
Act 3:13a アブラハム、イサク、ヤコブの神、すなわち、私たちの父祖たちの神は、そのしもべイエスに栄光をお与えになりました。
(1)「アブラハム、イサク、ヤコブの神」
①ユダヤ人が日々の祈りで唱える御名である。
②神が「アブラハム契約の神」であることが強調されている。
(2)「私たちの父祖たちの神」
①聴衆の多くが、先ほどまで唱えていた御名である。
②これは、ユダヤ人にとってはなじみ深い御名である。
③「アミダー(Amidah)」という立祷の中に出て来る。
*18祈祷文(Shmoneh Esreh)
④出3:13
Exo 3:13 モーセは神に申し上げた。「今、私はイスラエル人のところに行きます。私が彼らに『あなたがたの父祖の神が、私をあなたがたのもとに遣わされました』と言えば、彼らは、『その名は何ですか』と私に聞くでしょう。私は、何と答えたらよいのでしょうか。」
⑤「私たちの父祖たちの神」とは、アブラハム契約の神である。
(3)「そのしもべイエス」
①イエスは、「【主】(ヤハウェ)のしもべ」として地上に下ったお方である。
*イエスは、アブラハム契約の成就として来られた。
②「【主】のしもべ」という概念は、ユダヤ人たちにはよく知られていた。
③イザヤ書には、「【主】のしもべ」に関する預言が多く含まれていた。
*イザ42:1、49:6~7、52:13、53:11
④これらの預言は、以下のことを示している。
*【主】のしもべの使命
*【主】のしもべの受難
*【主】のしもべの高揚
⑤マタ12:15~21
Mat 12:15 イエスはそれを知って、そこを立ち去られた。すると多くの人がついて来たので、彼らをみないやし、
Mat 12:16 そして、ご自分のことを人々に知らせないようにと、彼らを戒められた。
Mat 12:17 これは、預言者イザヤを通して言われた事が成就するためであった。
Mat 12:18 「これぞ、わたしの選んだわたしのしもべ、/わたしの心の喜ぶわたしの愛する者。/わたしは彼の上にわたしの霊を置き、/彼は異邦人に公義を宣べる。
Mat 12:19 争うこともなく、叫ぶこともせず、/大路でその声を聞く者もない。
Mat 12:20 彼はいたんだ葦を折ることもなく、/くすぶる燈心を消すこともない、/公義を勝利に導くまでは。
Mat 12:21 異邦人は彼の名に望みをかける。」
(4)「そのしもべイエスに栄光をお与えになりました」
①イエスは十字架に付けられた(聴衆がみんな知っている事実)。
②そのイエスが復活し、天に上げられた。
Ⅱ.罪の糾弾(13b~15節a)
1.13節b
Act 3:13b あなたがたは、この方を引き渡し、ピラトが釈放すると決めたのに、その面前でこの方を拒みました。
(1)ここから、ユダヤ人の罪の糾弾が始まる。
①罪とは、イエスを拒否したことである。
②ピラトは、イエスを釈放すると決めていた。
③しかしユダヤ人たちは、イエスを拒んだ。
2.14~15節a
Act 3:14 そのうえ、このきよい、正しい方を拒んで、人殺しの男を赦免するように要求し、
Act 3:15 いのちの君を殺しました。
(1)「きよい方」(the Holy One)
①ダビデの預言(詩16:10)から出た言葉である。
Psa 16:10 まことに、あなたは、私のたましいを/よみに捨ておかず、/あなたの聖徒に墓の穴をお見せにはなりません。
②この聖句は、第1回目のメッセージでペテロが引用したものである。
*イエスの復活の証明
③ユダヤ教の文献では、「きよい方」とは神を指す。
④「きよい方」は、キリストの神性を示している。
(2)「正しい方」(the Righteous One)
①イザヤの預言(イザ53:11)から出た言葉である。
Isa 53:11 彼は、自分のいのちの/激しい苦しみのあとを見て、満足する。/わたしの正しいしもべは、/その知識によって多くの人を義とし、/彼らの咎を彼がになう。
②「正しい方」は、キリストの罪なき人性を示している。
(3)「いのちの君」
①イエスは、いのちの創造主である。
②イエスは、いのちの源である。
③イエスは、私たちに永遠のいのちを与えてくださるお方である。
(4)ユダヤ人の罪とは
①祭りが終わっているので、聴衆はほとんどがエルサレムの住民である。
②彼らもまた、イエスを拒み、バラバを赦免するように要求した。
*バラバは、「人殺しの男」である。革命家を擁護する人たちを一蹴した。
③ユダヤ人たちは、人殺しを助け、いのちを与えてくださる方を殺した。
*ここには、大いなるアイロニー(皮肉)がある。
Ⅲ.信仰の力(15b~16節)
1.15節b
しかし、神はこのイエスを死者の中からよみがえらせました。私たちはそのことの証人です。
(1)神の計画は、人間の想像を超えたものである。
①神は、イエスを死者の中から復活させた。
②ペテロとヨハネは、そのことの証人である。
2.16節
Act 3:16 そして、このイエスの御名が、その御名を信じる信仰のゆえに、あなたがたがいま見ており知っているこの人を強くしたのです。イエスによって与えられる信仰が、この人を皆さんの目の前で完全なからだにしたのです。
(1)聴衆は、その日、復活のイエスの力の証人となった。
①「御名」は、その人の実体を表わす。
②この男が癒されたのは、復活のイエスの力による。
(2)「その御名を信じる信仰のゆえに」
①この男は、イエスの御名を信じたのである。
②イエスがメシアであることを信じた。
結論:
1.「イスラエル人たち」という呼びかけ
(1)訳文の比較
①「イスラエル人たち」(新改訳)
②「イスラエルの皆さん」(新改訳2017)
③「イスラエルの人たち」(新共同訳)(口語訳)
④「イスラエルの人々」(文語訳)
⑤「men of Israel」(ASV)
(2)これは、正式な呼びかけの言葉である。
①集まって来た男性たちへの呼びかけの言葉
*婦人たちは、午後3時の祈りの時間に神殿に上ることはほとんどなかった。
②「イスラエル」とは、契約の民に与えられた名称である。
*彼らは、ヤコブの子孫たちである。
*バビロン捕囚以降、ユダヤ人という名前が一般的になった。
*本来は、彼らは契約の民イスラエルである。
③ここでペテロは、意図的に融和的な名称を用いている。
④それが、「兄弟たち」という普段の呼びかけに変わる(17節)。
2.「イスラエル」という名前にふさわしくない行為
(1)ペテロは、彼らの4つの罪を指摘した。
①イエスを引き渡した(裁判のために異邦人に引き渡した)。
②ピラトが釈放すると決めたのに、その面前でイエスを拒んだ。
③きよい、正しい方を拒んで、人殺しの男を赦免するように要求した。
④いのちの君を殺した。
(2)しかし神は、イエスを擁護された。
①神はイエスを死者の中から復活させた。
②神はご自身のしもべに栄光を与えた。
(3)今もイスラエルの人々は、イエスを拒否している。
①「アミダー(Amidah)」(18祈祷文)(Shmoneh Esreh)は、19祈祷文になった。
②イエスを信じる者を会堂から排除するために、12番目が追加された。
「背教者からすべての希望を取り去り給え。分派を作る者は、直ちに滅ぶべし」
(4)回心とは、本来の姿に戻ることである。
①ユダヤ人にとっては、イエスをメシアとして信じることである。
②異邦人にとっては、イエス・キリストを通して父なる神に立ち返ることである。
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