私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
ローマ人への手紙(49)—二重国籍者への勧め(1)—
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信者と国家の関係について学ぶ。
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「二重国籍者への勧め(1)」
1.はじめに
(1)文脈の確認
①1~8章が教理
②9~11章がイスラエルの救い
③12~16章が適用
(2)これまでに学んだ12章の内容
①献身の勧め(1~2節)
②謙遜の勧め(3~8節)
③愛の勧め(9~16節)
アンケートの紹介
(3)13章は、二重国籍者への勧めである。
①国家との関係(1~7節)
②愛の律法(8~10節)
③決断の時(11~14節)
*以上の勧めは、「生けるいけにえ」になった人に対するものである。
*勧めの内容は容易に理解できる。
*その周辺の情報や議論が、重要である。
2.アウトライン
命令:権威への服従(1節a)
理由①(1b~2節)
理由②(3~4節)
理由③(5~7節)
3.メッセージのゴール
(1)権威への抵抗の可能性
このメッセージは、信者と国家の関係について学ぼうとするものである。
命令:権威への服従
1.1節a
「人はみな、上に立つ権威に従うべきです」
(1)12:1は、勧告であった。
「そういうわけですから、兄弟たち。私は、神のあわれみのゆえに、あなたがたにお
願いします」
(2)ここでは、「従う」は、現在形、受動態、命令形である。
「Let every soul be in subjection to the higher powers.」
(3)「人はみな」は、「プシケイ」(魂)であって、霊ではない。
①信者も未信者も、この命令に従うべきであるということ。
(4)「従う」は、「ヒュポタソウ」という動詞。39回出てくる。
①テト3:1 信者の政治権力への従順
「あなたは彼らに注意を与えて、支配者たちと権威者たちに服従し、従順で、す
べての良いわざを進んでする者とならせなさい」
②コロ3:18 妻の夫への従順
「妻たちよ。主にある者にふさわしく、夫に従いなさい」
③1ペテ5:5 若者の長老への従順
「同じように、若い人たちよ。長老たちに従いなさい。みな互いに謙遜を身に着
けなさい。神は高ぶる者に敵対し、へりくだる者に恵みを与えられるからです」
④共通しているのは、神の権威への服従であり、祝福のためである。
2.ローマ帝国内でのキリスト教会
(1)皇帝はいつでも、誰の命でも奪うことができた。
①マタ2:16~18 ヘロデ大王は、ベツレヘムにいた2歳以下の子を殺した。
②マコ6:14~29 30年後、ヘロデの息子ヘロデ・アンテパスは、バプテスマの
ヨハネを殺した。
③帝国内では、人の運命は不安定なものであった。
(2)新約聖書と初代教会に関係のある皇帝
①アウグスト(BC27~AD14年)
*ルカ2:1 全世界の住民登録を命じた皇帝
②テベリオ(ティベリウス)(14~37年)
*ルカ3:1
「皇帝テベリオの治世の第十五年、ポンテオ・ピラトがユダヤの総督、ヘロ
デがガリラヤの国主、その兄弟ピリポがイツリヤとテラコニテ地方の国主、
ルサニヤがアビレネの国主であり、アンナスとカヤパが大祭司であったころ、
神のことばが、荒野でザカリヤの子ヨハネに下った」
③カリギュラ(37~41年)
*キリストの復活と教会誕生の数年後に皇帝になった。
*ローマに信者はいたであろうが(使2:10)、迫害はなかった。
*ユダヤ教は公認宗教であり、キリスト教はその一派とみなされた。
*エルサレム神殿に自分の像を建てようとしたが、ユダヤ人の反対に会った。
*即位の半年後に気が狂い、親戚のほとんどを殺した。
*食事をしながら人々を拷問にかけ、殺した。
*愛馬をカウンセラーにした。
*自分を神と宣言し、諸神殿を建てたが、近衛兵によって殺害された。
④クラウデオ(クラウディウス)(41~54年)
*カリギュラの叔父
*48年、妻のメッサリーナを殺し、姪の小アグリッピナ(カリグラの妹)
と再婚。54年に、彼女によって毒殺された。
*49年、ユダヤ人をローマから追放した。
*使18:2
「ここで、アクラというポント生まれのユダヤ人およびその妻プリスキラに
出会った。クラウデオ帝が、すべてのユダヤ人をローマから退去させるよう
に命令したため、近ごろイタリヤから来ていたのである。パウロはふたりの
ところに行き、」
⑤ネロ(54~68年)
*パウロがロマ書を書いたのは、ネロの時代である。57年頃。
*15歳で皇帝になり、22歳で母を殺した。
*3年後に離婚し、妻を殺した。
*64年のローマの大火の責任を、クリスチャンに負わせた。
(5)パウロは、不信者の政府、神なき組織にも従うように命じている。
理由①:すべての権威は神によって立てられているから
1.1b節
「神によらない権威はなく、存在している権威はすべて、神によって立てられたものです」
(1)箴8:15
「わたしによって、王たちは治め、君主たちは正義を制定する」
(2)ヨハ19:11
「イエスは答えられた。『もしそれが上から与えられているのでなかったら、あなたに
はわたしに対して何の権威もありません。ですから、わたしをあなたに渡した者に、
もっと大きい罪があるのです』」
(3)いかなる方法で権威が誕生したのかは、問題ではない。
①現代の民主主義国家では、選挙という方法が取られる。
②国家権力は、民に安全と祝福をもたらすための神の方法である。
2.2節
「したがって、権威に逆らっている人は、神の定めにそむいているのです。そむいた人は
自分の身にさばきを招きます」
(1)権威に逆らうことは、神の定めにそむくことである。
(2)そむいた人は、自分の身にさばきを招く。
①定冠詞の「the」がない。
②必ずしも終末的なさばきではない。
理由②:自分自身の祝福のため
1.3節
「支配者を恐ろしいと思うのは、良い行いをするときではなく、悪を行うときです。権威
を恐れたくないと思うなら、善を行いなさい。そうすれば、支配者からほめられます」
(1)支配者が神の意図に従って政治(統治)を行うことを前提に話している。
①悪人は、支配者を恐れる。
②善人は、恐れる必要はなく、支配者の保護を受ける。
2.4節
「それは、彼があなたに益を与えるための、神のしもべだからです。しかし、もしあなた
が悪を行うなら、恐れなければなりません。彼は無意味に剣を帯びてはいないからです。
彼は神のしもべであって、悪を行う人には怒りをもって報います」
(1)不信者であっても、神のしもべとしての役割を果たしている。
①「神のしもべ」という言葉は、「神」に強調がある。
(2)「剣」とは、執行する力である。
①12:19の復讐禁止命令と矛盾しない。
②個人的復讐は、憎しみから出る。公の報いは、善と平和を保持するためのもの。
理由③:自分自身の良心のため
1.5節
「ですから、ただ怒りが恐ろしいからだけでなく、良心のためにも、従うべきです」
(1)良心の問題として、権威に服従する。
①キリストに弟子にとって、最も大切な行動原理となる。
②後になって心が痛むようなことはしないということである。
2.6~7節
「同じ理由で、あなたがたは、みつぎを納めるのです。彼らは、いつもその務めに励んで
いる神のしもべなのです。あなたがたは、だれにでも義務を果たしなさい。みつぎを納め
なければならない人にはみつぎを納め、税を納めなければならない人には税を納め、恐れ
なければならない人を恐れ、敬わなければならない人を敬いなさい」
(1)権威に従順である3つの例
①「みつぎ(貢)」(tribute)とは、人頭税。
②「税」(custom)とは、物品税。
③「敬意」とは、心の税と考えるとよい。
結論:権威への抵抗の可能性
1.権威は神によって立てられていることを再確認する。
(1)ダニ2:21
「神は季節と時を変え、王を廃し、王を立て、知者には知恵を、理性のある者には知
識を授けられる」
(2)ダニ2:31~35
「王さま。あなたは一つの大きな像をご覧になりました。見よ。その像は巨大で、そ
の輝きは常ならず、それがあなたの前に立っていました。その姿は恐ろしいものでし
た。その像は、頭は純金、胸と両腕とは銀、腹とももとは青銅、すねは鉄、足は一部
が鉄、一部が粘土でした。あなたが見ておられるうちに、一つの石が人手によらずに
切り出され、その像の鉄と粘土の足を打ち、これを打ち砕きました。そのとき、鉄も
粘土も青銅も銀も金もみな共に砕けて、夏の麦打ち場のもみがらのようになり、風が
それを吹き払って、あとかたもなくなりました。そして、その像を打った石は大きな
山となって全土に満ちました」
①純金の頭:バビロン帝国
②銀の胸と両腕:メド・ペルシヤ連合帝国
③青銅の腹ともも:アレクサンドロスのギリシア帝国
④第4の帝国:帝国主義(ローマ帝国以上のもの)
*統一王国の時代
*二国に分裂した時代
*十国に分裂した時代
⑤山:メシア的王国
*人手によらない
*切り出された一つの石は、メシアである。
2.権威は、神によって与えられた使命から逸脱する可能性がある。
(1)「権威」とは、「エクスーシア」である。
①エペ2:2
「そのころは、それらの罪の中にあってこの世の流れに従い、空中の権威を持つ
支配者として今も不従順の子らの中に働いている霊に従って、歩んでいました」
②堕天使と関連した言葉である。
③サタンは、権威が神に反抗した究極の例である。
(2)そのような場合、権威に従うなら、それは信者の使命を放棄したことになる。
①ポーランドのクリスチャンたちは、ユダヤ人をかくまわなかった。
②ヒトラーは、ロマ書13章を根拠に、教会に国家への従順を要求した。
3.聖書に記された権威に反抗した例
(1)出1:15~17 神を恐れたユダヤ人の助産婦たち
(2)使4:19~20
「ペテロとヨハネは彼らに答えて言った。『神に聞き従うより、あなたがたに聞き従
うほうが、神の前に正しいかどうか、判断してください。私たちは、自分の見たこと、
また聞いたことを、話さないわけにはいきません』」
(3)使5:29
「ペテロをはじめ使徒たちは答えて言った。『人に従うより、神に従うべきです』」
4.パウロの心
(1)教会を支配する論理を、敵に与えるために書いたのではない。
(2)彼の心の中にあった確信
①宣教のための秩序
②地上の支配者は過ぎ去る。
③しかし、信者に与えられたメッセージは、永遠に続く。
④ペテロは、ネロの迫害によりローマで殉教した(エウセビオス『教会史』)。
⑤パウロもまた、67年頃、ネロの迫害によって殉教したと言われている。
⑥「生きたささげもの」となった。
(3)コンスタンチヌス帝の時(313年のミラノ勅令)に、キリスト教が公認。
①これが教会にとってよかったかどうかは、分からない。
5.私たちへの適用
(1)地上の権威に従う。
(2)しかし、その権威が神に反抗する場合は、声を上げ、抵抗する。
(例話)杉原千畝氏
(例話)デートリッヒ・ボンヘッファー
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