ローマ人への手紙(30)—現在の苦難(1)—

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このメッセージでは...

被造物のうめきの原因と解決について学ぶ。
チャート「神の義の啓示」

「現在の苦難(1)―被造物のうめき―」

1.はじめに

(1)救いの3つの側面は、すべて信仰により、恵みによって達成される。

  ①義認(過去形)

  ②聖化(現在進行形)

  ③栄化(未来形)

(2)きょうの箇所から「栄化」のテーマに入る。

  ①ロマ8:18~27で3つの「うめき」が記されている。

    *被造物のうめき(8:17~22)

    *神の子たちのうめき(8:23~25)

    *御霊のうめき(8:26~27)

  ②今回は、被造物のうめきを取り上げる。

  ③次回は、神の子たちのうめき、御霊のうめき、を取り上げる。

2.東日本大震災に関連して

4月22日、ローマ法王ベネディクト16世が、イタリア国営テレビのカトリック教徒向

  け番組に出演し、東日本大震災を体験した7歳の日本人少女(イタリア人の父、日本人の母を持つ千葉市の少女。自宅近くが液状化の被害を受けた)の質問に答えた。

「私は今、とても怖いです。大丈夫だと思っていた私の家がとても揺れたり、私と同じ

  年ぐらいの子供がたくさん死んだり、公園に遊びに行けないからです。なんでこんなに悲

  しいことにならないといけないのですか」

「私も同じように『なぜ』と自問しています。答えは見つかりませんが、神はあなたと

  ともにあります。この痛みは無意味ではありません。私たちは苦しんでいる日本の子供た

  ちとともにあります。ともに祈りましょう」

  3.私たちの心構え

    (1)キリスト教を世界観、歴史観として理解する必要がある。

    (2)ロマ書8章は、実にタイムリーな箇所である。

  4.アウトライン

    (1)パウロの資格(18節)

    (2)被造物のうめきの原因(19~20節)

    (3)被造物のうめきの解決(21~22節)

  3.メッセージのゴール

  (1)被造世界は、どこに向かっているのか。

  (2)それでは、私たちはいかに生きるべきか。

このメッセージは、被造物のうめきの原因と解決について学ぼうとするものである。

Ⅰ.
パウロの資格(18節)

  1.18節

  「今の時のいろいろの苦しみは、将来私たちに啓示されようとしている栄光に比べれば、

取るに足りないものと私は考えます」

  (1)クリスチャン生活における苦難を否定していない。

    ①「いろいろの苦しみ」(複数形)

    ②苦難は不信仰のしるしでも、神から見放されていることのしるしでもない。

  (2)パウロは比較を行っている。

    ①現在の苦難と将来私たちに啓示されようとしている栄光の比較

    ③栄光があまりにも素晴らしいので、比較する価値すらない。

  (3)「私は考えます」(ロギゾマイ)

    ①ロマ6:11に出てきた。

「このように、あなたがたも、自分は罪に対しては死んだ者であり、神に対して

はキリスト・イエスにあって生きた者だと、思いなさい」

②「思いなさい」という現在形の命令形。

③基本的な意味は、算数の用語。よく計算して、答えを出しなさい。

    ④感情ではなく、知的理解である。

2.パウロの資格

  (1)パウロほど苦難を経験した人はいない。

    ①本からの知識によってではなく、体験から語っている。

    (例話)文芸春秋(8月号):松本清張の講演

菊池寛と夏目漱石、芥川龍之介の対比。菊池寛は、パウロ的人物である。

  (2)2コリ6:3~5

  「私たちは、この務めがそしられないために、どんなことにも人につまずきを与えな

いようにと、あらゆることにおいて、自分を神のしもべとして推薦しているのです。

すなわち非常な忍耐と、悩みと、苦しみと、嘆きの中で、また、むち打たれるときに

も、入獄にも、暴動にも、労役にも、徹夜にも、断食にも、」

(3)2コリ11:23~28

「彼らはキリストのしもべですか。私は狂気したように言いますが、私は彼ら以上に

そうなのです。私の労苦は彼らよりも多く、牢に入れられたことも多く、また、むち

打たれたことは数えきれず、死に直面したこともしばしばでした。ユダヤ人から三十

九のむちを受けたことが五度、むちで打たれたことが三度、石で打たれたことが一度、

難船したことが三度あり、一昼夜、海上を漂ったこともあります。幾度も旅をし、川

の難、盗賊の難、同国民から受ける難、異邦人から受ける難、都市の難、荒野の難、

海上の難、にせ兄弟の難に会い、労し苦しみ、たびたび眠られぬ夜を過ごし、飢え渇

き、しばしば食べ物もなく、寒さに凍え、裸でいたこともありました。このような外

から来ることのほかに、日々私に押しかかるすべての教会への心づかいがあります」

Ⅱ.被造物のうめきの原因(19~20節)

  1.19~20節

  「被造物も、切実な思いで神の子どもたちの現れを待ち望んでいるのです。それは、被造

物が虚無に服したのが自分の意志ではなく、服従させた方によるのであって、望みがある

からです」

    (1)被造物の擬人化はヘブル的手法

      ①詩98:8

      「もろもろの川よ。手を打ち鳴らせ。山々も、こぞって【主】の御前で喜び歌え」

      ②イザ55:12

      「まことに、あなたがたは喜びをもって出て行き、安らかに導かれて行く。山と

丘は、あなたがたの前で喜びの歌声をあげ、野の木々もみな、手を打ち鳴らす」

    (2)被造物に責任はない。

      ①自分の意志で虚無に服したのではない。

      ②服従させた方がおられる。

      ③だから希望がある。

    (3)責任はアダムにある。

      ①創3:17~18

      「また、人に仰せられた。『あなたが、妻の声に聞き従い、食べてはならないとわ

たしが命じておいた木から食べたので、土地は、あなたのゆえにのろわれてしま

った。あなたは、一生、苦しんで食を得なければならない。土地は、あなたのた

めに、いばらとあざみを生えさせ、あなたは、野の草を食べなければならない」

      ②アダムの罪の影響が被造世界に及んだ。

    (4)被造物には望みがある。

      ①神の子どもたちの現れを待ち望んでいる。

②アダムの罪による呪いが栄光に変えられることを待ち望んでいる。

Ⅲ.被造物のうめきの解決(21~22節)

  1.21節

  「被造物自体も、滅びの束縛から解放され、神の子どもたちの栄光の自由の中に入れられ

ます」

  (1)キリストの再臨との関係

    ①復活の体を持った神の子たちが出現する。

  ②これは栄光の体である。栄化の成就である。

    (2)次に地上に千年王国が成就する。

      ①エデンの園の状態が回復するということである。

      ②これは、被造物が滅びの束縛から解放されることである。

  2.22節

  「私たちは、被造物全体が今に至るまで、ともにうめきともに産みの苦しみをしているこ

とを知っています」

  (1)アダムの堕落以来、今に至るまで、自然界は崩壊しつつある。

    ①「ともに」とは、私たちとともに、という意味である。

  (2)「産みの苦しみ」

    ①意味のない苦しみではない。新しい世界が現れるための苦しみである。

②ヨハ16:20~21

    「まことに、まことに、あなたがたに告げます。あなたがたは泣き、嘆き悲しむ

が、世は喜ぶのです。あなたがたは悲しむが、しかし、あなたがたの悲しみは喜

びに変わります。女が子を産むときには、その時が来たので苦しみます。しかし、

子を産んでしまうと、ひとりの人が世に生まれた喜びのために、もはやその激し

い苦痛を忘れてしまいます」

結論:

  1.被造物はどこに向かっているのか。

    (1)神は天と地を創造した。

      ①これが最初の理想的な状態である。

    (2)創1:1と1:2の間で、サタンの堕落が起こった。

      ①被造世界は混沌とした状態になった。

    (3)再創造によって、秩序ある世界が出現した。

      ①人類はエデンの園に置かれた。

    (4)アダムの堕落によって、世界は呪いを受けた。

      ①今の世界は崩壊しつつある。

      ②それは、新しい世界を産み出すための苦しみである。

    (5)千年王国(メシア的王国)

      ①キリストの再臨

      ②神の子たちの出現(栄化の成就)

      ③これはエデンの園の状態の回復である。

      ④2ペテ3:10~13

      「しかし、主の日は、盗人のようにやって来ます。その日には、天は大きな響き

をたてて消えうせ、天の万象は焼けてくずれ去り、地と地のいろいろなわざは焼

き尽くされます。このように、これらのものはみな、くずれ落ちるものだとすれ

ば、あなたがたは、どれほど聖い生き方をする敬虔な人でなければならないこと

でしょう。そのようにして、神の日の来るのを待ち望み、その日の来るのを早め

なければなりません。その日が来れば、そのために、天は燃えてくずれ、天の万

象は焼け溶けてしまいます。しかし、私たちは、神の約束に従って、正義の住む

新しい天と新しい地を待ち望んでいます」

    (6)新天新地

      ①旧約聖書の預言のピークは千年王国(メシア的王国)である。

      ②その先を預言しているのが、ヨハネの黙示録である。

      ③新天新地は、永遠の秩序である。

      ④これは、サタンの堕落が起こる前の状態の回復である。

      ④黙21:1~2

      「また私は、新しい天と新しい地とを見た。以前の天と、以前の地は過ぎ去り、

もはや海もない。私はまた、聖なる都、新しいエルサレムが、夫のために飾られ

た花嫁のように整えられて、神のみもとを出て、天から下って来るのを見た」

  2.それでは、私たちはいかに生きるべきか。

    (1)終末的視点で生きる。

①地上での生活は一時的なものである。

②質的に異なった世界が実現する。

③富であれ苦難であれ、地上のものに目を注ぐならそれによって束縛される。

④上のものに目を注ぐ生き方をする。

    (2)2コリ4:16~18

    「ですから、私たちは勇気を失いません。たとい私たちの外なる人は衰えても、内な

る人は日々新たにされています。今の時の軽い患難は、私たちのうちに働いて、測り

知れない、重い永遠の栄光をもたらすからです。私たちは、見えるものにではなく、

見えないものにこそ目を留めます。見えるものは一時的であり、見えないものはいつ

までも続くからです」

(3)ピリ3:18~21

「というのは、私はしばしばあなたがたに言って来たし、今も涙をもって言うのです

が、多くの人々がキリストの十字架の敵として歩んでいるからです。彼らの最後は滅

びです。彼らの神は彼らの欲望であり、彼らの栄光は彼ら自身の恥なのです。彼らの

思いは地上のことだけです。けれども、私たちの国籍は天にあります。そこから主イ

エス・キリストが救い主としておいでになるのを、私たちは待ち望んでいます。キリ

ストは、万物をご自身に従わせることのできる御力によって、私たちの卑しいからだ

を、ご自身の栄光のからだと同じ姿に変えてくださるのです」

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