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メシアの生涯(149)—ザアカイの救い—
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ザアカイの体験を通して、イエスが罪人を救う方法について学ぶ。
「ザアカイの救い」
ルカ19:1~10
1.はじめに
(1)文脈の確認
①イエスは、エルサレムへの途上で、さまざまなテーマについて教えた。
②弟子たちが乗っている文脈と、イエスが語っている文脈とが異なる。
*イエスは十字架に向かって進んでいる。
*弟子たちの認識では、戴冠式に向かう王の行列に参加している。
(2)A.T.ロバートソンの調和表
§127 ザアカイの家を訪問し、「ミナのたとえ」を語り、エルサレムに向う。
ルカ19:1~28
(3)§127の2区分
①1~10節 ザアカイの救い
②11~28節 ミナのたとえ
2.アウトライン
(1)状況説明(1~2節)
(2)ザアカイの行動(3~4節)
(3)イエスの行動(5節)
(4)人々の応答とザアカイの応答(6~10節)
3.結論:3つのコメンタリー(注解、解説、例証)
(1)ルカ18:17
(2)ルカ18:27
(3)ルカ19:10
ザアカイの体験を通して、イエスが罪人を救う方法について学ぶ。
Ⅰ.状況説明(1~2節)
1.1節
Luk 19:1 それからイエスは、エリコに入って、町をお通りになった。
(1)2つのエリコがあった。
①旧約のエリコ
②新約のエリコ
*ヘロデの冬の宮殿があった。
*当時のリゾート地であった。
*冬季には多くの訪問者があった。
(2)イエスは、エリコを通過された。
①エリコの町には少なくとも3人の罪人がいた。
*バルテマイとその仲間
*ザアカイ
②イエスは、脇道ではなく、エリコを通過された。
2.2節
Luk 19:2 ここには、ザアカイという人がいたが、彼は取税人のかしらで、金持ちであった。
(1)エリコは取税人がいる町であった。
①国境の町で、通行税を徴収する収税所があった。
②パレスチナで最も裕福な町で、物品税の徴収額も多かった。
(2)ザアカイは、取税人のかしらであった。
①彼は、通行税や物品税を徴収する権利をローマから委託されていた。
②その仕事のために、他の取税人たちを雇っていた。
③普通にやっていれば金持ちになるはずだが、彼はごまかしを行っていた。
④その結果、裕福になっていた。
⑤彼は、ユダヤ人社会では罪人と見なされていた。
Ⅱ.ザアカイの行動(3~4節)
1.3節
Luk 19:3 彼は、イエスがどんな方か見ようとしたが、背が低かったので、群衆のために見ることができなかった。
(1)背が低かった。
①当時の平均身長から判断すると、彼は150センチくらいの男である。
②群衆がいるので、イエスを見ることができないと判断した。
(2)イエスに興味があった。
①ザアカイ(ザカイオス)とは、「pure」(清い、純粋)という意味である。
②彼の両親は我が子を見て、「pure」と名づけた。
③その後、ある時点で、魂をローマに売る決心をした。
④裕福になったが、心は渇きを覚えていた。
⑤イスラエルの神に立ち帰りたいと願っていた。
2.4節
Luk 19:4 それで、イエスを見るために、前方に走り出て、いちじく桑の木に登った。ちょうどイエスがそこを通り過ぎようとしておられたからである。
(1)彼は、前方に走り出て、いちじく桑の木に登った。
①亜熱帯気候の中で多くの木が育っていた。ナツメヤシ、いちじく桑の木。
②いちじく桑は、枝が幹の低い所から出ているので、登りやすい。
③彼は、「ボックス席」に座って、イエスの一行を眺めようとした。
Ⅲ.イエスの行動(5節)
1.5節
Luk 19:5 イエスは、ちょうどそこに来られて、上を見上げて彼に言われた。「ザアカイ。急いで降りて来なさい。きょうは、あなたの家に泊まることにしてあるから。」
(1)イエスは、ザアカイを見上げた。
①神を認識する最初のステップ
(2)イエスは、ザアカイの名を呼んだ。
①神に知られている。
②ユダヤ人にとっては、会ったことのない人の名を知っているのは預言者である。
(3)イエスは、ザアカイを招いた。
①取税人は、ユダヤ社会では罪人であり、排除されるべき人間である。
(4)イエスは、彼の家に泊まることにしてあると言われた。
①いかに高貴な人物であっても、自分から宿泊を申し出ることはなかった。
②イエスは、自らそれを申し出た。福音書の中で、ここだけである。
「ザアカイ。急いで降りて来なさい。きょうは、あなたの家に泊まることにしてある
から」(新改訳)
「ザアカイ、急いで降りて来なさい。今日は、ぜひあなたの家に泊まりたい」(新共同
訳)
「ザアカイよ、急いで下りてきなさい。きょう、あなたの家に泊まることにしている
から」(口語訳)
「ザアカイ、急ぎおりよ、今日われ汝の家に宿るべし」
「ザアカイさん。 早く降りてきなさい。 今晩はあなたの家に泊めてもらうつもりで
いますから」(リビングバイブル)
①「dei」 It is necessary for me to stay at your house.
②I must abide at thy house.
③しかも、「きょう」(セイメロン)という言葉が強調されている。
Ⅳ.人々の応答とザアカイの応答(6~10節)
1.6節
Luk 19:6 ザアカイは、急いで降りて来て、そして大喜びでイエスを迎えた。
(1)イエスの招きは、ザアカイが予想もしなかったことである。
①時間をかけて木に登ったであろう彼が、急いで降りてきた。
(2)大喜びでイエスを家に迎えた。
①喜ぶ(カイロウ)という言葉(名詞はカラ)は、ルカの福音書で9回出て来る。
②信仰と救いに関連した喜びの状態を表現する言葉である。
③この時点で、ザアカイは新生した。
*新生は瞬間的であり、聖化はプロセスである。
2.7節
Luk 19:7 これを見て、みなは、「あの方は罪人のところに行って客となられた」と言ってつぶやいた。
(1)エリコの町には、イエスが泊まるのにふさわしい場所がいくつもあった。
①伝統的に、エリコは祭司たちの町でもある。
(2)しかも、イエスが選んだ場所は、罪人の家である。
①ラビたちは、取税人の家には泊まらなかった。
②取税人は、什一献金を捧げていない可能性が大であるとの推定があった。
3.8節
Luk 19:8 ところがザアカイは立って、主に言った。「主よ。ご覧ください。私の財産の半分を貧しい人たちに施します。また、だれからでも、私がだまし取った物は、四倍にして返します。」
(1)ザアカイの公の宣言
①財産の半分を貧しい人たちに施す。
②だまし取った物は、4倍にして返す。
(2)これは、モーセの律法の要求以上のものである。
①物をだまし取った場合は、120%の返済(レビ6:5、民5:7)。
②家畜や物を盗んだ場合は、200%の返済(出22:4、22:7)。
③罪を赦されることと、弁済すべきこと、別問題である。
4.9節
Luk 19:9 イエスは、彼に言われた。「きょう、救いがこの家に来ました。この人もアブラハムの子なのですから。
(1)ザアカイの変化は、彼が救われたことを証明している。
①ザアカイの救いは、「きょう」起こったことである。
(2)「この人もアブラハムの子なのですから」
①パリサイ人たちは、アブラハムの子孫であれば神の国に入ると教えていた。
②しかし、取税人はその特権から外されている。
③ザアカイは、アブラハムの子孫であり、アブラハムの信仰に倣う者となった。
④ザアカイは、信仰によって救われたのである。
5.10節
Luk 19:10 人の子は、失われた人を捜して救うために来たのです。」
(1)これは、イエスが受肉された目的である。
結論:3つのコメンタリー(注解、解説、例証)
1.ルカ18:17
「まことに、あなたがたに告げます。子どものように神の国を受け入れる者でなければ、
決してそこに、入ることはできません。」
(1)ザアカイの行動は子どものようである。
(2)ザアカイの応答も、子どものようである。
2.ルカ18:27
「イエスは言われた。『人にはできないことが、神にはできるのです』」
(1)富める若者は、宗教的な人物であった。
(2)しかし彼は、富に支配されていた。
(3)金持ちが神の国に入るのは難しい。
(4)ザアカイも金持ちであった。
(5)しかしザアカイは、富の支配から解放された。
3.ルカ19:10
「人の子は、失われた人を捜して救うために来たのです」
(1)イエスは、地上に留まるためではなく、通り過ぎるために来られた。
①イエスの使命は、失われた人を捜して救うことである。
(2)イエスは、エリコを通り過ぎた。
①しかしイエスは、通り過ぎなかった。
②十字架に向かっていく途上で、ザアカイの家に留まられた。
③ザアカイを救うためであった。
④ザアカイは、恵みの座に近づくことができない人物となっていた。
⑤イエスは彼を、真の恵みの座に招かれた。
(3)イエスは、私の前を通り過ぎなかった。
①私を見上げた。
②私の名を呼んだ。
③私を招いた。
④私が必要だと言われた。
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