コリント人への手紙第二(15)パウロと偽使徒の違い(2)-苦難に満ちた奉仕-11:16~33

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パウロが使徒として経験した苦難について学ぶ。

コリント人への手紙第二 15回

パウロと偽使徒の違い(2)

-苦難に満ちた奉仕-

11 :16~33

はじめに

1.文脈の確認

(1)イントロダクション(1:1~11)

(2)パウロを疑う者たちへの回答(1:12~7:16)

(3)エルサレム教会への献金(8:1~9:15)

(4)使徒職を疑う者たちへの反論(10:1~13:10)

  ①批判する者たちへの反論(10:1~18)

  ②パウロと偽使徒の違い(11:1~12:18)

    *コリントの信者たちへの愛(11:1~6)

    *無給で仕える特権(11:7~15)

    *苦難に満ちた奉仕(11:16~33)

    *主からの特別な啓示(12:1~10)

    *霊の子に対する愛(12:11~18)

  ③訪問を前提とした勧告(12:19~13:10)

(5)最後のあいさつ(13:11~13)

2.注目すべき点

(1)パウロは、コリント教会を訪問するという前提で、この手紙を書いている。

(2)コリント教会には、パウロの使徒職を疑う者たちがいた。

(3)訪問する前に、彼らの口を封じておく必要があった。

(4)彼は、使徒として体験した苦難に言及する。

3.アウトライン

(1)苦難に満ちた奉仕(11:16~33)

4.結論:苦難の内容

パウロが使徒として経験した苦難について学ぶ。

Ⅰ.苦難に満ちた奉仕(11:16~33)

1.16節

2Co 11:16

もう一度言いますが、だれも私を愚かだと思わないでください。もし愚かだと思うなら、愚か者として受け入れてください。そうすれば、私も少しばかり誇ることができます。

  「もう一度くり返しますが、こんなことを言う私が、理性を失ったなどとは思わないでください。しかしまた、それならそれで、『理性を失った愚か者』のことばに、とにかく耳を傾けてください。あの人たちみたいに、私も少しばかり誇ってみせます」(リビングバイブル)

(1)この聖句は、偽使徒たちに対抗するものである。

  ①偽使徒たちは、自慢話をしていた。

  ②パウロは、コリントの信者たちから「愚か者」だと思われたくはなかった。

  ③しかし、「愚か者」だと思われるなら、少しばかり誇ることにする。

2.17~18節

2Co 11:17

これから話すことは、主によって話すのではなく、愚か者として、自慢できると確信して話します。

2Co 11:18 多くの人が肉によって誇っているので、私も誇ることにします。

(1)自慢話をする理由

  ①これは主の導きによるものではない。

  ②主イエスは、常に謙遜で、自分を誇ったことはない。

  ③パウロは、嫌々ながら愚か者として、自分のことを自慢する。

  ④目的は、パウロが使徒であることをコリントの信者たちに教えるためである。

(2)偽使徒たちは、肉(堕落した性質)によって誇っている。

  ①それゆえ、パウロもまた誇ることにする。

  ②彼は、自分を誇るのは愚かであり、主イエスのようでないことを知っている。

3.19~20節

2Co 11:19

あなたがたは賢いので、喜んで愚か者たちを我慢してくれるからです。

2Co 11:20実際あなたがたは、だれかに奴隷にされても、食い尽くされても、強奪されても、いばられても、顔をたたかれても、我慢しています。

(1)皮肉(アイロニー)が用いられる。

  ①あなたがたは賢い(本当は愚か)。

  ②あなたがたは、喜んで愚か者たちの自慢話に耳を傾けている。

  ③それなら、愚か者になって語る私の自慢話にも耳を傾けてくれるはずである。

(2)彼らは、偽使徒やユダヤ主義者の仕打ちを我慢している。

  ①奴隷にされている(律法の束縛)。

    *使15:10

Act 15:10
そうであるなら、なぜ今あなたがたは、私たちの先祖たちも私たちも負いきれなかったくびきを、あの弟子たちの首に掛けて、神を試みるのですか。

  ②食い尽くされている。

    *偽使徒たちの奉仕の目的は、利得である。

  ③強奪されている。

    *英語で「one takes from you」は、狩りや漁の比ゆである。

  ④いばり散らされている。

    *疑問や反論は許されない。

  ⑤顔をたたかれる(字義どおりの解釈)。

    *侮辱的行為のクライマックスである。

4.21節

2Co 11:21

 言うのも恥ずかしいことですが、私たちは弱かったのです。何であれ、だれかがあえて誇るのなら、私は愚かになって言いますが、私もあえて誇りましょう。

(1)パウロは、「私たちは弱かったのです」と告白する。

  ①つまり、偽使徒たちのように強気に振る舞うことはなかったということ。

  ②しかし、愚かになる決心をした今は、自分のことを多いに誇ることにする。

(2)パウロは、使徒の証明を列挙する。

  ①神学校の卒業証書ではない。

  ②他の使徒たちからの推薦状でもない。

  ③自分の能力や成果でもない。

  ④証拠とは、彼が経験した試練の数々である。

  ⑤これ以降の箇所は、コリント人への手紙第二だけに見られる特徴である。

  ⑥この箇所は、涙なしには読めないものである。

5.22節

2Co 11:22

彼らはヘブル人ですか。私もそうです。彼らはイスラエル人ですか。私もそうです。彼らはアブラハムの子孫ですか。私もそうです。

(1)偽使徒たちは自らの家系を誇っていた。

  ①ヘブル人である。

    *ヘブル語を母国語とするパレスチナ出身のユダヤ人

  ②イスラエル人である。

    *契約の民の一員

  ③アブラハムの子孫である。

    *アブラハムと血のつながりがある。

(2)これに関しては、パウロに劣っている点はなかった。

  ①パウロは、人は家系によって救われるのではないことを知っていた。

6.23~25節

2Co 11:23

彼らはキリストのしもべですか。私は狂気したように言いますが、私は彼ら以上にそうです。労苦したことはずっと多く、牢に入れられたこともずっと多く、むち打たれたことははるかに多く、死に直面したこともたびたびありました。

2Co 11:24 ユダヤ人から四十に一つ足りないむちを受けたことが五度、

2Co 11:25

ローマ人にむちで打たれたことが三度、石で打たれたことが一度、難船したことが三度、一昼夜、海上を漂ったこともあります。

(1)パウロにとっては、苦難が使徒の証拠である。

  ①使徒は、受難のしもべである主イエスの弟子である。

  ②弟子は、師以上にはならない。

  ③主イエスに仕えれば仕えるほど、人からの攻撃に遭う。

  ④偽使徒たちは苦難の道ではなく、安易な道を選んでいる。

(2)苦難の内容は結論で確認する。

7.26~27節

2Co 11:26

何度も旅をし、川の難、盗賊の難、同胞から受ける難、異邦人から受ける難、町での難、荒野での難、海上の難、偽兄弟による難にあい、

2Co 11:27

労し苦しみ、たびたび眠らずに過ごし、飢え渇き、しばしば食べ物もなく、寒さの中に裸でいたこともありました。

(1)パウロの3度にわたる宣教旅行は、広範囲の地域をカバーした。

8.28~29節

2Co 11:28

ほかにもいろいろなことがありますが、さらに、日々私に重荷となっている、すべての教会への心づかいがあります。

2Co 11:29

だれかが弱くなっているときに、私は弱くならないでしょうか。だれかがつまずいていて、私は心が激しく痛まないでしょうか。

(1)パウロの苦難のリストの最後

  ①すべての教会への心づかい

  ②日々パウロに重荷となっている。

  ③パウロは、真の牧会者である。

(2)重荷の内容

  ①兄弟が弱くなっていると聞いたなら、自分も弱くなる。

  ②誰かがつまずいたなら、心が激しく痛む。

9.30~31節

2Co 11:30 もし誇る必要があるなら、私は自分の弱さのことを誇ります。

2Co 11:31

主イエスの父である神、とこしえにほめたたえられる方は、私が偽りを言っていないことをご存じです。

(1)パウロが誇りとするもの

  ①成功、能力、賜物などではない。

  ②自分の弱さ、苦難、屈辱などを誇る。

(2)主イエスの父である神は、パウロが偽りを言っていないことをご存じである。

  ①ここでパウロは、自分が経験した屈辱的なエピソードを紹介する。

10.32~33節

2Co 11:32

ダマスコでアレタ王の代官が、私を捕らえようとしてダマスコの人たちの町を見張りましたが、

2Co 11:33

私は窓からかごで城壁伝いにつり降ろされ、彼の手を逃れたのでした。

(1)使9:19~25

  ①パウロは、回心直後からダマスコで伝道を開始した。

  ②ユダヤ人たちはアレタ王の代官を説き伏せて、パウロを逮捕しようとした。

  ③パウロは、兄弟たちによって窓から町の外につり降ろされた。

  ④この出来事は、パウロが使徒として召された証拠である。

結論:苦難の内容

1.パウロは第3次伝道旅行の途上にある。

(1)パウロの苦難はまだ続いている。

(2)パウロは、苦難が使徒であることの証拠だと主張する。

(3)この箇所は、成功したミニストリーの定義の変更を迫る。

2.苦難の内容

(1)6つの苦難(23~26節)

  ①労苦

    *キリストを伝えるために地中海地区を旅行した。

  ②投獄

    *ピリピでの投獄(使16:23)

    *投獄は1度だけではなかった。

  ③むち打ち

    *ユダヤ人から四十に一つ足りないむちを5度受けた。

      ・申25:3は40回まで打つことを許可していた。

      ・パウロは、重大な罪人とみなされた。

    *ローマ人から3度むちを受けた。

      ・ピリピでの出来事(使16:22)以外に、2度むちを受けた。

  ④石打

    *リステラでの出来事(使14:19)

      ・パウロは死んだと判断され、その体は町から運び出された。

  ⑤難船

    *自然の脅威にも襲われた。

    *3度の難船を経験した。

    *ローマに上る途上の難船は、まだ起こっていない(使27)。

  ⑥一昼夜海上を漂う。

    *聖書に記録がない。

(2)13の苦難(26~27節)

  ①川の難

    *川の氾濫

  ②盗賊の難

    *彼が移動したルートには、無法者たちが潜んでいた。

  ③同胞から受ける難

    *ユダヤ人から受ける迫害

  ④異邦人から受ける難

    *福音に敵対する者から受ける迫害

  ⑤町での難

    *リステラ、ピリピ、コリント、エペソ

  ⑥荒野での難

    *小アジアやヨーロッパの人口の少ない地域

  ⑦海上での難

    *嵐、暗礁、海賊

  ⑧偽兄弟による難

    *異なった福音を伝えるユダヤ主義者たち

  ⑨労し苦しみ

    *休む間もない奉仕とそれに伴う苦難

  ⑩眠らずに過ごし

    *野宿の際には眠ることができなかった。

  ⑪飢え渇き

    *食物と水不足

  ⑫食べ物もなく

    *自発的な断食ではなく、強制された断食である。

  ⑬寒さの中で裸でいた。

    *急激な気候の変化に対応できなかった。

(3)クライマックスとなる苦難

  ①2コリ11:28

2Co 11:28

ほかにもいろいろなことがありますが、さらに、日々私に重荷となっている、すべての教会への心づかいがあります。

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