メシアの生涯(141)—第一のヨナのしるしの拒否—

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指導者の責任について考えてみる。

「第一のヨナのしるしの拒否」

ヨハ11:45~54

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①イエスはベタニヤで、ラザロを復活させた。

②これは、公生涯最後の大いなる奇跡であった。

③ラザロの復活は、「ヨナのしるし」である。

        *イエスのメシア性を証明する奇跡

        *マタ12:39~40

Mat 12:39 しかし、イエスは答えて言われた。「悪い、姦淫の時代はしるしを求めています。だが預言者ヨナのしるしのほかには、しるしは与えられません。

Mat 12:40 ヨナは三日三晩大魚の腹の中にいましたが、同様に、人の子も三日三晩、地の中にいるからです」

      ④ヨナのしるしは、3つある。

        *ラザロの復活

        *イエス自身の復活

        *2人の証人の復活(黙11章)

      ⑤第一のヨナのしるしは、信仰による応答を要求する。

  (2)A.T.ロバートソンの調和表

    §119 ラザロの復活がもたらした結果(ヨハ11:45~54)

  2.アウトライン

    (1)信じたユダヤ人たち(45節)

    (2)パリサイ人に報告したユダヤ人たち(46節)

    (3)祭司長とパリサイ人たち(47~48節)

    (4)大祭司カヤパ(49~53節)

    (5)イエス(54節)

  3.結論

    (1)メシア的奇跡に対する指導者たちの応答

    (2)当時の指導者たちの問題点

    (3)誤った指導者たちがもたらす悲劇

指導者の責任について考えてみる。

Ⅰ.信じたユダヤ人たち(45節)

  1.45節

Joh 11:45 そこで、マリヤのところに来ていて、イエスがなさったことを見た多くのユダヤ人が、イエスを信じた。

    (1)イエスの自己啓示は、常に2つの反応を引き起こす。

      ①信仰と不信仰である。

    (2)ラザロの復活は、メシア的奇跡である。

      ①民衆は、パリサイ人からそのように教えられていた。

      ②ラザロの復活を目撃した多くの者が、イエスはメシアであると理解した。

      ③偏見なしにこの「しるし」(証拠)を検証すれば、当然信仰に導かれる。

    (3)単純な民衆は、正しい回答を出すことができた。

      ①その数は、多かった。

Ⅱ.パリサイ人に報告したユダヤ人たち(46節)

   1.46節

Joh 11:46 しかし、そのうちの幾人かは、パリサイ人たちのところへ行って、イエスのなさったことを告げた。

    (1)幾人かのユダヤ人たちはエルサレムに戻り、パリサイ人たちに報告した。

      ①彼らは、メシア的奇跡を目撃しながらも、イエスをメシアと認めなかった。

    (2)信仰への最大の障がいは、その人の道徳的状態である。

      ①内面にある邪悪な心、反抗心、不信仰な心

      ②人は、「信じたくない」から「信じない」のである。

      ③心の入り口に「墓石」を置いた状態である。

    (3)彼らは、パリサイ人たちの手先である。

      ①最大の危機的状況が訪れた。

      ②早く手を打つ必要がある。

Ⅲ.祭司長とパリサイ人たち(47~48節)

   1.47節

Joh 11:47 そこで、祭司長とパリサイ人たちは議会を召集して言った。「われわれは何をしているのか。あの人が多くのしるしを行っているというのに。

    (1)祭司長とパリサイ人たちは、議会を召集した。

      ①サンヘドリンのことである。

      ②議長、副議長、69人の議員、合計71人。

      ②急きょ招集したようなので、人数は不足していたと思われる。

    (2)「われわれは何をしているのか」

      ①なぜこの男の活動を阻止できないのか。

      ②なぜ行動に移すのが遅いのか。

      ③この箇所から、祭司長たち(サドカイ派)がイエス殺害の主導権を握る。

      ④パリサイ派は、それを支持する。

    (3)「あの人が多くのしるしを行っているというのに」

      ①彼らは、イエスが「しるし」を行っていることを認めている。

      ②その中には、ラザロの復活も含まれる。

      ③彼らは、なぜ「しるし」を否定しなかったのか。

        *公に行われている。

        *数が多い。

        *目撃情報が多い。

  2.48節

Joh 11:48 もしあの人をこのまま放っておくなら、すべての人があの人を信じるようになる。そうなると、ローマ人がやって来て、われわれの土地も国民も奪い取ることになる。」

    (1)彼らが恐れた理由

      ①このまま放置すれば、イエスをメシアと信じる人が多く出る。

      ②彼らは、イエスを王として擁立するだろう。

      ③そうなると、ローマが介入してくるだろう。

      「このままにしておけば、皆が彼を信じるようになる。そして、ローマ人が来て、

我々の神殿も国民も滅ぼしてしまうだろう」(新共同訳)

④「トポス」→「土地」か「神殿」か。「神殿」が正解である。

⑤祭司長たちの優先順位は、職場、そして、国民である。

Ⅳ.大祭司カヤパ(49~53節)

   1.49~50節

Joh 11:49 しかし、彼らのうちのひとりで、その年の大祭司であったカヤパが、彼らに言った。「あなたがたは全然何もわかっていない。

Joh 11:50 ひとりの人が民の代わりに死んで、国民全体が滅びないほうが、あなたがたにとって得策だということも、考えに入れていない。」

     (1)大祭司は、生涯その職責に就く。

      ①ローマは、ひとりの人が巨大な権力を握ることを恐れた。

      ②そのため、自分に都合のよい時に、都合のよい人物を大祭司に任命した。

      ③「その年の大祭司であったカヤパ」は、ローマの支配を表現した言葉である。

      ④カヤパは、紀元18~36年に大祭司であった(18年間)。

      ⑤もちろん、親ローマである。

      ⑥イエスの裁判の席にいた。

      ⑦ペテロとヨハネが議会に連れて来られた時も、そこにいた(使4:6)。

    (2)「あなたがたは全然何もわかっていない」

      ①その通りである。イエスに関する解決策はまだ出されてない。

      ②これは、軽蔑の言葉でもある。

      ③これは、ヨハネによるアイロニー(皮肉)である。

    (3)彼は、解決策を提案した。

      ①イエスを放置すれば、ローマ軍によって国全体が滅ぼされることになる。

      ②ひとりの人(イエス)が死ねば、国全体は滅びないので、得策である。

      ③イエスが人として来られた目的は、まさにこれである。

      ④しかし、彼はそのことを理解しないままで、この言葉を口にしている。

   2.51~52節

Joh 11:51 ところで、このことは彼が自分から言ったのではなくて、その年の大祭司であったので、イエスが国民のために死のうとしておられること、

Joh 11:52 また、ただ国民のためだけでなく、散らされている神の子たちを一つに集めるためにも死のうとしておられることを、預言したのである。

     (1)これは、ヨハネによるアイロニー(皮肉)である。

①カヤパの言葉を預言として解釈する方法もある。

②彼は、イエスの贖罪の死を預言したのである。

③大祭司という職責のゆえに、神は彼に預言を与えた。

    (2)「散らされている神の子たち」

      ①異邦人信者のことである。

      ②イエスに死は、新しい時代をもたらす。教会時代。

   3.53節

Joh 11:53 そこで彼らは、その日から、イエスを殺すための計画を立てた。

     (1)第一のヨナのしるしは、神の意図とは異なる結果をもたらした。

      ①サドカイ人とパリサイ人たちは、第一のヨナのしるしに応答しなかった。

      ②それどころか、彼らはイエスに対してより敵対的になった。

      ③イエスを殺す計画が現実化した。

Ⅴ.イエス(54節)

Joh 11:54 そのために、イエスはもはやユダヤ人たちの間を公然と歩くことをしないで、そこから荒野に近い地方に去り、エフライムという町に入り、弟子たちとともにそこに滞在された。

    (1)イエスの時はまだ来ていない。

      ①イエスはユダヤを去り、エフライムという町に入られた。

      ②ベタニヤの北約25キロの町であろう。

      ③ユダの荒野に近い地方。危険が迫れば逃げることができる。

    (2)次にイエスがユダヤに入るのは、十字架にかかる時である。

結論:

1.メシア的奇跡に対する指導者たちの応答

  (1)ユダヤ人のツァラアト患者の癒し(ルカ5章)

    ①メシアに対する尋問が強化された。

  (2)口をきけなくする悪霊の追い出し(マタ12章)

    ①イエスは悪霊の頭によって悪霊を追い出していると主張した。

  (3)生まれつきの盲人の癒し(ヨハ9章)

    ①イエスを信じる者を会堂から追放するという決定を下した。

  (4)ラザロの復活。第1のヨナのしるし

    ①サンヘドリンは、イエス殺害を決定した。

2.当時の指導者たちの問題点

  (1)イエスをメシアとして信じるよりも、自らの地位を守ることの方が大切。

  (2)彼らにとっての神とは、彼ら自身である。

  (3)今も、同じ問題点が存在する。

    ①神の御心よりも、自分の計画を優先する。

    ②神の羊よりも、自分を守ろうとする。

3.誤った指導者たちがもたらす悲劇

  (1)カヤパの言葉

  「ひとりの人が民の代わりに死んで、国民全体が滅びないほうが、あなたがたにとっ

て得策だ」(50節)

(2)紀元70年に、エルサレムは崩壊し、ユダヤ人たちは世界に離散していった。

(3)これが起こったのは、イエスを受け入れたからではなく、拒否したからである。

 追記:①ヨハネの福音書は、90年代に書かれた。

    ②彼の視点は、復活、ペンテコステ、40年間の恵みの時代、エルサレム崩壊の後のも

のである。

③リーダーの責任とフォロワーの責任

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