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メシアの生涯(123)—弟子たちへの教え(2)—
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弟子たちへの教えを通して、イエスから警告と励ましを受ける。
「弟子たちへの教え(2)」
ルカ12:13~21
1.はじめに
(1)文脈の確認
①パリサイ人の家の食卓で、イエスはパリサイ人たちの儀式主義を糾弾した。
②その直後に、イエスの回りにおびただしい数の人たちが集まって来た。
③イエスは、弟子たちに、そして、群衆に霊的真理を語った。
④前回は、弟子たちへの教え①を学んだ(恐れずに証しせよ)。
(2)A.T.ロバートソンの調和表
§108~110は、ひとかたまりと考えるべきである。
①§108 ルカ12:1~59
②§109 ルカ13:1~9
③§110 ルカ13:10~21
(3)内容
①ルカ12:1~53 弟子たちへの教え 5つのテーマ
②ルカ12:54~13:21 群衆への教え 4つのテーマ
(4)アウトライン(12:1~53)
①恐れずに証しせよ(12:1~12)
②貪欲に注意せよ(12:13~21)
③心配するな(12:22~34)
④その日に備えよ(12:35~48)
⑤誤解されることを恐れるな(12:49~53)
(今回は②を取り上げる)
3.結論:
(1)本当の豊かさ
(2)裁き主イエス
弟子たちへの教えを通して、イエスから警告と励ましを受ける。
Ⅱ.貪欲に注意せよ(12:13~21)
1.13節
Luk 12:13 群衆の中のひとりが、「先生。私と遺産を分けるように私の兄弟に話してください」と言った。
(1)人々は、法的争いが起こると、ラビに裁定を依頼した。
①相続の場合は、兄は弟たちの取り分の2倍を受け取った。
②このように、ユダヤの律法によって各人の相続額は決まっていた。
③それでも、争いは起こった。長子の証明、息子であることの証明。
(2)さて、群衆の中のひとりが、遺産相続の問題の解決をイエスに依頼した。
①彼の権利が奪われたのか。
②自分の取り分以上のものを欲したのか。
③イエスには、法的に裁定を下す権威はない。
④なぜこの男がイエスに裁定を依頼したかは、結論のところで解説する。
2.14~15節
Luk 12:14 すると彼に言われた。「いったいだれが、わたしをあなたがたの裁判官や調停者に任命したのですか。」
Luk 12:15 そして人々に言われた。「どんな貪欲にも注意して、よく警戒しなさい。なぜなら、いくら豊かな人でも、その人のいのちは財産にあるのではないからです。」
(1)イエスが地上に来られた目的は、罪人を救うためである。
①その目的以外の些細なことに関わるべきではない。
②イエスの目は、十字架に向かっていた。
(2)イエスは、この問題は、物質的なものではなく霊的なものであることを指摘した。
①命の質(quality of life)を決めるのは、財産ではなく、存在そのものである。
②命の質を破壊する最大の要因は、「貪欲」である。
③紀元1世紀のユダヤ人たちにとっては、驚くべき内容であった。
*農地を持たない小作人も多くいた。
*農夫たちは、自己所有の農地を増やすことが夢であった。
④21世紀の物質文明の中で生きる私たちにも、驚くべき内容である。
(3)私たちの人生の物差しは、イエスのそれと同じか。
①この世の物差しでは、富が増せば増すほど偉くなったように感じる。
②イエスの物差しでは、その人の偉大さは存在そのものの内にある。
(例話)イスラエル旅行で、キング・デイビッドホテルに宿泊した話
3.16~19節
Luk 12:16 それから人々にたとえを話された。/「ある金持ちの畑が豊作であった。
Luk 12:17 そこで彼は、心の中でこう言いながら考えた。『どうしよう。作物をたくわえておく場所がない。』
Luk 12:18 そして言った。『こうしよう。あの倉を取りこわして、もっと大きいのを建て、穀物や財産はみなそこにしまっておこう。
Luk 12:19 そして、自分のたましいにこう言おう。「たましいよ。これから先何年分もいっぱい物がためられた。さあ、安心して、食べて、飲んで、楽しめ。」』
(1)群衆が周りにいるので、イエスの教えはたとえ話を用いたものとなる。
①たとえ話は、実際生活で体験できることである。
(2)セフォリスの町の発掘で分かったこと
①ナザレの北西6キロに位置する、ガリラヤ地方最大のギリシア風の町である。
②特に、ビザンチン時代に栄えた裕福な町である。
③裕福な不在地主が住む農地に、巨大なサイロ(塔状の倉庫)が建っていた。
④このたとえ話に登場する金持ちは、少数の富豪である。
*当時は、このようは富豪は人口の1%以下であろう。
⑤彼は、自分で労働する必要がない。
⑥自営農も小作農も、このような富豪のライフスタイルにあこがれていた。
(例話)英語の「celebrity」と日本語の「セレブ」
*英語では、有名人、著名人。
*日本語では、金持ち、優雅な、高級な、などの意味。
(3)セレブの農夫の畑が豊作になった。
①彼は、贅沢な悩みを抱えるようになった。
②作物をどう扱っていいのか分からなくなった。
③考えたすえに、穀物倉の改築を考えた。
④そして、こう言った。
「たましいよ。これから先何年分もいっぱい物がためられた。さあ、安心して、
食べて、飲んで、楽しめ」
⑤誰もが憧れるセレブの生き方
⑥ユダヤ的には、死を考慮に入れないで自己充足している人は、愚か者である。
⑦「今まで楽しく生きてきた。なぜ神を信じる必要があるのか」と問う人がいる。
4.20~21節
Luk 12:20 しかし神は彼に言われた。『愚か者。おまえのたましいは、今夜おまえから取り去られる。そうしたら、おまえが用意した物は、いったいだれのものになるのか。』
Luk 12:21 自分のためにたくわえても、神の前に富まない者はこのとおりです。」
(1)彼は愚か者である。
①時間を自分の所有物のように考えていた。
②富を得たことや、将来のために計画することは、罪ではない。
③その富をどう用いるかが問題である。
(例話)紀元4世紀の聖アンブローズ(ミラノの大司教)
「貧しい人々の懐、やもめの家、子どもたちの口、これらこそが永遠に残る倉である」
(2)愚か者の悲劇
①地上では富を貯める。
②しかし、彼の計画は墓の中で終わる。
③その人は、神の前に富まない者である。
④詩14:1
「愚か者は心の中で、『神はいない』と言っている。彼らは腐っており、忌まわし
い事を行っている。善を行う者はいない」
結論:
1.本当の豊かさ
(1)今日、「貪欲」が危険であることを認識している人は、ほとんどいない。
①「どんな貪欲にも注意して、よく警戒しなさい」
②金持ちになることは、危険なことである。
(2)十戒の規定を思い出そう。
第6戒:殺してはならない。
第7戒:姦淫してはならない。
第8戒:盗んではならない。
第9戒:偽りの証言をしてはならない。
第10戒:あなたの隣人の家を欲しがってはならない。
(3)第10戒は、貪欲を戒めている。
①第10戒を破っても、罪人と呼ばれることはまずない。
②その人は、起業家、意欲的な人、積極的な人、などと呼ばれたりする。
(4)本当の豊かさは、所有している富にではなく、存在そのものにある。
(例話)ビル・ゲイツの回答(マイクロソフトのCEOで、世界一の富豪)
①1997年、シアトルでの科学者の会議で、1,500人の聴衆を前に講演した。
②講演の後で、ジョン・キレイ博士(医師で哲学博士)が立って質問した。
③もし失明したら、全財産を払ってでも視力を回復したいか。
④ビル・ゲイツは、そうすると答えた。
(5)財産がなにもなくても、神に感謝すべきことは多くある。
2.裁き主イエス
(1)ひとりの男が、相続問題をイエスに持ち込んだ理由は、詩72:1~2にある。
Psa 72:1 神よ。あなたの公正を王に、/あなたの義を王の子に授けてください。
Psa 72:2 彼があなたの民を義をもって、/あなたの、悩む者たちを/公正をもってさばきますように。
①これは、メシア的詩篇である。
②これによれば、メシアの役割のひとつは、紛争を公正に裁くことである。
③メシアは王として、メシア的王国を統治される。
(2)イエスの回答は、出2:14からの引用である。
Exo 2:14 するとその男は、「だれがあなたを私たちのつかさやさばきつかさにしたのか。あなたはエジプト人を殺したように、私も殺そうと言うのか」と言った。そこでモーセは恐れて、きっとあのことが知れたのだと思った。
①ある日モーセは、ひとりのヘブル人を救うためにエジプト人を打ち殺した。
②翌日、ふたりのヘブル人が争っているのを見て、モーセは悪い方を糾弾した。
③するとその男は、モーセを裁き司と認めることを拒否した。
④これ以降、モーセは40年間ヘブル人たちの前から姿を消した。
(3)モーセとイエスの類似性
①イエスはユダヤ人たちから拒否された。
②それゆえ、裁き主としての役割を果たすことができない。
③しかし、イエスはやがて王として再臨される。
④その時には、公正をもって裁かれる。
(4)貪欲の解決策は、イエスを心に迎えること。
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