メシアの生涯(88)—カナン人の女の信仰—

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カナン人の女の信仰から正しい神学を学ぶ。

「カナン人の女の信仰」

§078 マコ7:24~30、マタ15:21~28

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①弟子訓練が続いている。

②イエスはユダヤには上らず、ガリラヤに留まっていた(ヨハ7:1)。

③きょうの箇所では、ツロとシドンの地方に立ち退かれた。異邦人の地。

  (2)A.T.ロバートソンの調和表

    「第2回目の退修でツロとシドン地区へ:スロ・フェニキアの女の娘の癒し」(§78)

マコ7:24~30、マタ15:21~28

2.アウトライン

  前置き:歴史的文脈(21節)

  (1)起:カナン人の女の登場(22節)

  (2)承:イエスの沈黙(23~24節)

  (3)転:カナン人の女の信仰(25~27節)

  (4)結:女の娘の癒し(28節)

  3.結論: この女の信仰

カナン人の女の信仰から正しい神学を学ぶ。

前置き:歴史的文脈(21節)

   1.21節

  「それから、イエスはそこを去って、ツロとシドンの地方に立ちのかれた」(21節)

    (1)ツロとシドンの地方は、今のレバノンである。

      ①この地方は約束の地の一部であるが、イスラエルはここを所有したことがない。

      ②イエスはユダヤ人の地域を去って、異邦人の地域に行かれた。

      ③イエスの評判は、この地方にも伝わっていた。

      「だれにも知られたくないと思われたが、隠れていることはできなかった」

(マコ7:24)

  2.旧約聖書に登場するこの地方の2人の女性に注目しよう。

    (1)イゼベル

    「彼にとっては、ネバテの子ヤロブアムの罪のうちを歩むことは軽いことであった。

それどころか彼は、シドン人の王エテバアルの娘イゼベルを妻にめとり、行ってバア

ルに仕え、それを拝んだ」 (1列16:31)

  ①オムリの子アハブは、イゼベルと結婚し、バアル礼拝をイスラエルに導入した。

  ②預言者エリヤは、カルメル山頂でバアルの預言者450人と戦った。

  ③カルメル山は、フェニキアと北王国の国境にある。

「アハブは、エリヤがしたすべての事と、預言者たちを剣で皆殺しにしたこととを残

らずイゼベルに告げた。すると、イゼベルは使者をエリヤのところに遣わして言った。

『もしも私が、あすの今ごろまでに、あなたのいのちをあの人たちのひとりのいのち

のようにしなかったなら、神々がこの私を幾重にも罰せられるように。』彼は恐れて

立ち、自分のいのちを救うため立ち去った」 (1列19:1~3a)

  ①エリヤは、イゼベルを非常に恐れた。

  ②イスラエル最南端の町ベエル・シェバまで逃れた。

    (2)ツァレファテのやもめ

    「しかし、しばらくすると、その川がかれた。その地方に雨が降らなかったからであ

る。すると、彼に次のような【主】のことばがあった。『さあ、シドンのツァレファ

テに行き、そこに住め。見よ。わたしは、そこのひとりのやもめに命じて、あなたを

養うようにしている』」 (1列17:7~9)

  ①エリヤは、このやもめによって養われた。

  3.これから登場する女がどちらに似ているかを考えながら、読み進もう。

Ⅰ.起:カナン人の女の登場(22節)

   1.22節

  「すると、その地方のカナン人の女が出て来て、叫び声をあげて言った。『主よ。ダビデ

の子よ。私をあわれんでください。娘が、ひどく悪霊に取りつかれているのです』」 (22

節)

    (1)カナン人の女

      ①「この女はギリシヤ人で、スロ・フェニキヤの生まれであった」(マコ7:26)

      ②カナン人には少なくとも10種類の区分があった。

      ③スロ・フェニキア人は、その中のひとつである。

    (2)マタイの福音書の読者に与える印象

      ①カナン人は、旧約時代のイスラエルの敵の中で最も道徳的に堕落した民。

      ②ヨシュアの軍勢は、神がカナン人を裁く器として用いられた。

③カナン人の中には、北方に移動してツロ、シドンに定住する者が多くいた。

④イエス時代のユダヤ人たちは、サマリヤ人に対するのと同様に、カナン人に対

しても偏見を持っていたであろう。

    (3)この女の叫び

「主よ。ダビデの子よ。私をあわれんでください。娘が、ひどく悪霊に取りつかれて

いるのです」

  ①「ダビデの子よ」とは、メシアの称号である。

  ②彼女は、イエスをイスラエルのメシアと認めて、娘の癒しを求めている。

Ⅱ.承:イエスの沈黙(23~24節)

   1.23節

  「しかし、イエスは彼女に一言もお答えにならなかった。そこで、弟子たちはみもとに来

て、『あの女を帰してやってください。叫びながらあとについて来るのです』と言ってイ

エスに願った」 (23節)

  (1)イエスは沈黙しておられる。

    ①その理由は、後で明らかになる。

  (2)弟子たちの願い。

    ①女の願いを聞き届けてやってほしい。

    ②そうでないと、いつまでも叫びながらあとについて来るから。

2.24節

「しかし、イエスは答えて、『わたしは、イスラエルの家の失われた羊以外のところには

遣わされていません』と言われた」 (24節)

(1)この女は異邦人である。

①彼女は、イエスがイスラエルのメシアであるという信仰によってイエスに近づ

いている。

②しかし、異邦人の彼女は、イスラエルに与えられている約束の受け手ではない。

      ③イエスは彼女の信仰をテストしている。

    (2)イエスの奉仕の原則は、エゼキエル書の預言に基づいたものである。

  「わたしは失われたものを捜し、迷い出たものを連れ戻し、傷ついたものを包み、病

気のものを力づける。わたしは、肥えたものと強いものを滅ぼす。わたしは正しいさ

ばきをもって彼らを養う」(エゼ34:16)

「【主】であるわたしが彼らの神となり、わたしのしもべダビデはあなたがたの間で君

主となる。【主】であるわたしがこう告げる」(エゼ34:24)

  ①パリサイ人たちはイエスを拒否したが、ユダヤ人たちは依然として「イスラエ

ルの家の失われた羊」 なのである。

Ⅲ.転:カナン人の女の信仰(25~27節)

1.25節

「しかし、その女は来て、イエスの前にひれ伏して、「主よ。私をお助けください」と言

った」 (25節)

   (1)女の呼びかけが、「主よ。私をお助けください」に変わった。

    ①「ダビデの子よ」という呼びかけがふさわしくないことを理解した。

    ②今度は、創造主である方に、被造物として願っている。

2.26節

「すると、イエスは答えて、『子どもたちのパンを取り上げて、小犬に投げてやるのはよ

くないことです』と言われた」 (26節)

  (1)比喩的言葉の意味

    ①子どもたちとは、イスラエル人のことである。

    ②子犬とは、異邦人のことである。

    ③イスラエル人のために用意されている祝福を、異邦人に与えるのはよくない。

  (2)異邦人を軽蔑したことばではない。

    ①犬とは、ギリシア語でクオンである。

    ②子犬とは、ギリシア語でクナリオンである。ペットのことである。

  (3)ここでイエスは、この女の信仰を引き出そうとしておられる。

    ①公生涯のこの段階では、信仰があることが癒しの条件である。

3.27節

「しかし、女は言った。『主よ。そのとおりです。ただ、小犬でも主人の食卓から落ちる

パンくずはいただきます』」 (27節)

  (1)女は信仰を発揮した。

    ①イエスのことばに反発せずに、その神学に同意した。

    ②また、機智に富んだ言葉を発した。

*子犬という言葉を自分に有利なように用いた。

*神の恵みに信頼した。

Ⅳ.結:女の娘の癒し(28節)

  1.28節

  「そのとき、イエスは彼女に答えて言われた。『ああ、あなたの信仰はりっぱです。その

願いどおりになるように。』すると、彼女の娘はその時から直った」 (28節)

  (1)イエスは彼女の信仰を称賛された。

    ①弟子たちでさえ理解していない真理を、彼女は理解した。

(2)イエスの権威が表れている。

    ①瞬時の癒し

    ②距離を乗り越えた癒し

    ③今、神の右の座に着座しておられるイエスは、大祭司として奉仕しておられる。

結論:この女の信仰

  1.彼女は、イゼベル型ではなく、ツァレファテのやもめ型である。

  「彼女は答えた。『あなたの神、【主】は生きておられます。私は焼いたパンを持っており

ません。ただ、かめの中に一握りの粉と、つぼにほんの少しの油があるだけです。ご覧の

とおり、二、三本のたきぎを集め、帰って行って、私と私の息子のためにそれを調理し、

それを食べて、死のうとしているのです。』エリヤは彼女に言った。『恐れてはいけません。

行って、あなたが言ったようにしなさい。しかし、まず、私のためにそれで小さなパン菓

子を作り、私のところに持って来なさい。それから後に、あなたとあなたの子どものため

に作りなさい。イスラエルの神、【主】が、こう仰せられるからです。「【主】が地の上に

雨を降らせる日までは、そのかめの粉は尽きず、そのつぼの油はなくならない。」』」(1列

17:12~14)

  (1)イゼベルはイスラエル人を思いのままに操ろうとしたが、滅びた。

 (2)ツァレファテのやもめは、先ずエリヤにパンを与え、自分もパンを得た。

  2.彼女は、イエスの神学を理解し、それに同意した。

    (1)「ダビデの子」というタイトルは、ダビデ契約を基にしたものである。

    (2)イエスは、ダビデ契約に基づいて王国をイスラエル人たちに提供された。

    (3)これは、イスラエル人に差し出された祝福であり、異邦のものではない。

3.彼女は、神の恵みに信頼した。無意識的に、ダビデ契約よりも前に結ばれた契約に基

づいてイエスに懇願した。

    (1)アブラハム契約

    「【主】はアブラムに仰せられた。『あなたは、あなたの生まれ故郷、あなたの父の家

を出て、わたしが示す地へ行きなさい。そうすれば、わたしはあなたを大いなる国民

とし、あなたを祝福し、あなたの名を大いなるものとしよう。あなたの名は祝福とな

る。あなたを祝福する者をわたしは祝福し、あなたをのろう者をわたしはのろう。地

上のすべての民族は、あなたによって祝福される』」(創12:1~3)

    (2)イザヤの預言

    「主は仰せられる。『ただ、あなたがわたしのしもべとなって、ヤコブの諸部族を立

たせ、イスラエルのとどめられている者たちを帰らせるだけではない。わたしはあな

たを諸国の民の光とし、地の果てにまでわたしの救いをもたらす者とする』」(イザ

49:6)

 

  4.3種類の誤解

    (1)弟子たちの誤解

      ①サマリヤ人伝道への壁

      ②異邦人伝道への壁

    (2)ユダヤ人たちの誤解

      ①自分たちにはユダヤ教がある(口伝律法の体系)。

      ②イエス・キリストは異邦人の神である。

    (3)異邦人の誤解

      ①ユダヤ人は見捨てられて、自分たちが霊的イスラエルになった。

      (例話)子犬が食卓の椅子に座っている姿

      ②この女の信仰は、理想的な異邦人の信仰の型である。

      ③ロマ11:17~18

      「もしも、枝の中のあるものが折られて、野生種のオリーブであるあなたがその

枝に混じってつがれ、そしてオリーブの根の豊かな養分をともに受けているのだ

としたら、あなたはその枝に対して誇ってはいけません。誇ったとしても、あな

たが根をささえているのではなく、根があなたをささえているのです」

      (例話)昭和28年3月の赤子取り違え事件。60年後に発覚。

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