ルカの福音書(99)イエスの裁判(2)―その男を殺せ。バラバを釈放しろ。-23:1~25

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イエスの裁判(2)について学ぶ。

ルカの福音書 99回

イエスの裁判(2)

―その男を殺せ。バラバを釈放しろ。-

23 :1~25

1.文脈の確認

(1)イエスの受難(22~23章)

  ①宗教的指導者たちの陰謀(22:1~6)

  ②過越の食事の準備(22:7~13)

  ③二階の大広間での出来事(22:14~38)

  ④イエスの逮捕(22:39~53)

  ⑤イエスの裁判(22:54~23:25)

  ⑥イエスの死(23:26~49)

(2)イエスの裁判(22:54~23:25)

  ①ペテロのつまずき(22:54~62)

  ②兵士たちのあざけり(22:63~65)

  ③最高法院による裁判(22:66~71)

  ④ピラトの前に立つイエス(23:1~7)

  ⑤ヘロデの前に立つイエス(23:8~12)

  ⑥2度目にピラトの前に立つイエス(23:13~25)

2.アウトライン

(1)ピラトの前に立つイエス(23:1~7)

(2)ヘロデの前に立つイエス(23:8~12)

(3)2度目にピラトの前に立つイエス(23:13~25)

3.結論

(1)ヘロデの悲劇

(2)ピラトの悲劇

イエスの裁判(2)について学ぶ。

Ⅰ.ピラトの前に立つイエス(23:1~7)

1.1~2節

Luk 23:1

集まっていた彼ら全員は立ち上がり、イエスをピラトのもとに連れて行った。

Luk 23:2

そしてイエスを訴え始めて、こう言った。「この者はわが民を惑わし、カエサルに税金を納めることを禁じ、自分は王キリストだと言っていることが分かりました。」

(1)「彼ら全員」とは、最高法院のことである。

  ①最高法院が主導して、イエスをローマの法廷に訴えた。

(2)3つの訴え

  ①イエスは偽預言者であり、ユダヤの民を惑わしている。

    *民を惑わしているのは、指導者たちのほうである。

  ②カエサルに税金を納めることを禁じている。

    *これは偽りの訴えである。イエスはそれとは逆のことを教えていた。

  ③自分は王キリストだと言っている。

    *これは、事実である。

    *ピラトが関心を払ったのは、この点だけである。

2.3~4節

Luk 23:3

そこでピラトはイエスに尋ねた。「あなたはユダヤ人の王なのか。」イエスは答えられた。「あなたがそう言っています。」

Luk 23:4

ピラトは祭司長たちや群衆に、「この人には、訴える理由が何も見つからない」と言った。

(1)ピラトは、イエスの証言を引き出した。

  ①「あなたがそう言っています」とは、「そのとおり」という意味である。

(2)ピラトは、イエスの無罪を宣言した。

  ①3節と4節の間に、尋問が入る(ヨハ18:35~38)。

  ②ピラトは、イエスは政治的な脅威ではないことを認めた。

  ③ルカは、その部分を省略し、結論に飛んでいる(ルカだけの記録)。

    *キリスト教は脅威ではないことを強調している。

3.5~7節

Luk 23:5

しかし彼らは、「この者は、ガリラヤから始めてここまで、ユダヤ全土で教えながら民衆を扇動しているのです」と言い張った。

Luk 23:6 それを聞いたピラトは、この人はガリラヤ人かと尋ね、

Luk 23:7

ヘロデの支配下にあると分かると、イエスをヘロデのところに送った。ヘロデもそのころ、エルサレムにいたのである。

(1)彼らは、イエスはガリラヤから始めて、エルサレムまで来たと言い張った。

  ①イエスの犯罪行為は、ガリラヤから始まった。

(2)これが、政治裁判が第1段階から第2段階に移行する「きっかけ」となった。

  ①ローマ法では、ガリラヤの支配者がガリラヤ人を裁くことは許される。

  ②ピラトがイエスはガリラヤ人かと尋ねたのは、そういう理由からである。

  ③もしそうなら、イエスはガリラヤの領主ヘロデの支配下にあることになる。

  ④そこでピラトは、イエスを裁く権利をヘロデに譲ることにした。

    *彼は、イエスの裁判から手を引きたかったのである。

(3)このヘロデは、ヘロデ大王の息子のヘロデ・アンティパスである。

  ①彼は、ガリラヤの領主(王よりも低いタイトル)であった。

  ②彼は、兄弟の妻ヘロデヤとの結婚を、バプテスマのヨハネから批判された。

    *そこで彼は、バプテスマのヨハネを逮捕し、幽閉した。

    *ヘロデヤの娘サロメとの約束を守るために、ヨハネの首をはねた。

    *イエスのことを復活したヨハネかもしれないと思っていたことがある。

  ③このヘロデが、過越の祭りのためにエルサレムに滞在していた。

  ④彼は、神殿の西側にある王宮に滞在していた。

    *これは、ハスモン王朝時代の豪華な王宮である。

(4)ピラトとヘロデは、互いを牽制し合う仲であった。

  ①ピラトは、イエスをヘロデのところに送った。

  ②法廷が変更になったのである。

  ③当然、イエスを訴えているユダヤ人の指導者たちもそこに移動した。

Ⅱ.ヘロデの前に立つイエス(23:8~12)

1.8節

Luk 23:8ヘロデはイエスを見ると、非常に喜んだ。イエスのことを聞いていて、ずっと前から会いたいと思い、またイエスが行うしるしを何か見たいと望んでいたからである。

(1)ヘロデはイエスを見ると非常に喜んだ。

  ①ずっと前からイエスの噂を聞いていた。

  ②イエスに会いたいと思っていた(イエスに対する恐れは消えていた)。

  ③その理由は、イエスが行う奇跡を見たいと思ったからである。

2.9~10節

Luk 23:9 それで、いろいろと質問したが、イエスは何もお答えにならなかった。

Luk 23:10

祭司長たちと律法学者たちはその場にいて、イエスを激しく訴えていた。

(1)ヘロデはいろいろ質問した。

  ①質問し続けた。

(2)イエスの応答は、沈黙であった。

  ①イエスはすでにピラトの前で証言していた。

  ②イエスは、ヘロデ・アンティパスを救う努力はしなかった。

    *イエスは彼を「あの狐」と呼んでいた(ルカ13:32)。

    *ヘロデは狡猾な老狐であり、悪名高いヘロデ一家の一員である。

    *ヘロデの動機が間違っている。イエスを「見世物」としか考えていない。

(3)ユダヤ人の指導者たちはイエスを激しく訴え続けた。

  ①彼らは、暴言を吐き、大騒ぎしていた。

  ②ヘロデは、このままでは何も起こらないと判断した。

3.11~12節

Luk 23:11

ヘロデもまた、自分の兵士たちと一緒にイエスを侮辱したり、からかったりしてから、はでな衣を着せてピラトに送り返した。

Luk 23:12

この日、ヘロデとピラトは親しくなった。それまでは互いに敵対していたのである。

(1)ヘロデは、イエスを文字どおり「見世物」扱いした。

  ①兵士たちだけでなく、ヘロデもイエスを侮辱した。

  ②「はでな衣」とは、ユダヤ人の王が着る白い王服であろう。

    *自分は王だというイエスの主張をあざけったのである。

(2)ヘロデは、イエスを無罪だと認めて、ピラトのもとに送り返した。

  ①この日、敵対していた者同士が、親しくなった。

Ⅲ.2度目にピラトの前に立つイエス(23:13~25)

1.13~14節

Luk 23:13 ピラトは、祭司長たちと議員たち、そして民衆を呼び集め、

Luk 23:14

こう言った。「おまえたちはこの人を、民衆を惑わす者として私のところに連れて来た。私がおまえたちの前で取り調べたところ、おまえたちが訴えているような罪は何も見つからなかった。

(1)ピラトはイエスの無罪を宣言する。

  ①ヘロデの意見を参考にした上での宣言である。

  ②この宣言を、祭司長たちと議員たち、それに民衆の前で行った。

  ③民衆はラオス、群衆はオクロスである。

    *ルカはこの2つの用語を区別して用いている。

    *前者は、イエスに敵対しなった人たち、信じる者が出た人たちである。

    *後者は、イエスから何かもらうことを期待して付いてきた人たちである。

  ④ピラトは、民衆の中にイエスを支持する者がいることを期待したのである。

(2)ピラトは、法律用語を用いて、判決を下した。

  ①彼にとっては、イエスを有罪にするのは困難なことであった。

2.15~16節

Luk 23:15

ヘロデも同様だった。私たちにこの人を送り返して来たのだから。見なさい。この人は死に値することを何もしていない。

Luk 23:16 だから私は、むちで懲らしめたうえで釈放する。」

(1)ピラトは、ヘロデの意見を引用した。

  ①ヘロデは、ユダヤ人の係争に関しては、ローマ人の自分よりも知識がある。

  ②ピラトとヘロデは、意見の一致を見た。

(2)ピラトは、無罪の人間を罰することにした。

  ①訴える者たちをなだめるために。ピラトは妥協している。

  ②自分を煩わせたことに対して罰を与えるために。

  ③イエスが受けたむち打ちは、非常に厳しいものであった。

  ④次の17節は、信頼できる写本には出てこない。

3.18~19節

Luk 23:18 しかし彼らは一斉に叫んだ。「その男を殺せ。バラバを釈放しろ。」

Luk 23:19

バラバは、都に起こった暴動と人殺しのかどで、牢に入れられていた者であった。

(1)「彼ら」とは、祭司長たちと議員たち、それに民衆である。

  ①民衆は、指導者たちから影響を受けた。

  ②ここに、この場面の悲劇がある。

(2)彼らは、バラバの釈放を要求した。

  ①イエスとは対極にある人物である。

  ②彼らは、救い主を拒否し、暴動と人殺しの犯人を支持した。

4.20~23節

Luk 23:20 ピラトはイエスを釈放しようと思って、再び彼らに呼びかけた。

Luk 23:21 しかし彼らは、「十字架だ。十字架につけろ」と叫び続けた。

Luk 23:22

ピラトは彼らに三度目に言った。「この人がどんな悪いことをしたというのか。彼には、死に値する罪が何も見つからなかった。だから私は、むちで懲らしめたうえで釈放する。」

Luk 23:23

けれども、彼らはイエスを十字架につけるように、しつこく大声で要求し続けた。そして、その声がいよいよ強くなっていった。

(1)ピラトは、イエスを釈放しようとして、理性に訴えかけた。

  ①彼らは、最高刑である十字架刑を要求した。

(2)ピラトは、イエスが無罪であることを3度も口にした。

  ①彼らの声は、その度に大きくなっていった。

  ②イエスを有罪にしたのは、ピラトではなく、ユダヤ人の指導者と民衆である。

5.24~25

Luk 23:24 それでピラトは、彼らの要求どおりにすることに決めた。

Luk 23:25すなわち、暴動と人殺しのかどで牢に入れられていた男を願いどおりに釈放し、他方イエスを彼らに引き渡して好きなようにさせた。

(1)ピラトは、彼らの要求に屈服した。

  ①彼は、平和の維持を優先させた。

  ②彼は、自分の地位を守ることを優先させた。

(2)これは神の計画の成就であるが、ルカはそのことに言及しない。

  ①ルカは、ユダヤ人の中の特定のグループの責任を強調している。

  ②この出来事を、反ユダヤ主義の根拠にしてはならない。

結論

1.ヘロデの悲劇

(1)ルカ23:8

Luk 23:8

ヘロデはイエスを見ると、非常に喜んだ。イエスのことを聞いていて、ずっと前から会いたいと思い、またイエスが行うしるしを何か見たいと望んでいたからである。

  ①「喜んだ」は、「カイロウ」という動詞である。

  ②ヘロデは非常に喜んだが、それは的外れの喜びであった。

  ③彼は、本当の喜びを体験したことがなかった。

(2)本当の喜び(カイロウ、スンカイロウ)

  ①羊飼いの喜び(ルカ15:5~6)

  ②婦人の喜び(ルカ15:8~9)

  ③父の喜び(ルカ15:32)

  ④ザアカイの喜び(ルカ19:6)

(3)ヘロデのその後

  ①妻のヘロデヤが野心を抱いた。

  ②夫婦でローマ皇帝カリギュラに近づき、王と女王のタイトルを願い出た。

  ③結果的に、彼らは今のフランスのリオンに追放され、極貧の中で死を迎えた。

2.ピラトの悲劇

(1)彼は、イエスが無罪であることを知りながら、十字架刑を宣言した。

(2)紀元36年、シリア総督がローマ本国に対してピラトを激しく訴えた。

  ①ピラトは皇帝の前で釈明するために帰国したが、成功しなかった。

  ②ある伝承では、彼はフランスに追放されたとされる。

  ③別の伝承では、ルツェルン湖(スイス中央部)の近くにある山(ピラトゥス

山)に追放されたとされる。

  ④歴史家エウセビオスは、ピラトは自殺したと伝えている。

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