メシアの生涯(76)—長血の女とヤイロの娘(1)—

  • 2013.09.09
  • マルコ5章:21〜34、マタイ9章:18〜26、ルカ8章:40〜56
  • スピーカー 中川健一
  • ハーベスト定例会
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イエスの弟子訓練から学ぶ

「長血の女とヤイロの娘(1)」

§067 マコ5:21~34

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①イエスの奇跡は、弟子訓練を目的としたものとなった。

    ②この箇所の奇跡も、弟子訓練という文脈の中で読まねばならない。

    ③イエスの行い(奇跡)が、イエスのことば(教え)の真実性を証明する。

  (2)連続して起こる奇跡

    ①自然界の支配

    ②悪霊の追い出し

    ③不治の病の癒し

    ④死者の蘇生

  (3)A.T.ロバートソンの調和表

      「ヤイロの娘と、イエスの着物を触った女の癒し」(§67)

  マコ5:21~43、マタ9:18~26、ルカ8:40~56

  (4)サンドイッチ構造

    ①ヤイロの懇願 → 長血の女の癒し → ヤイロの娘の蘇生

    ②今回は、長血の女の癒しを取り上げる。

2.アウトライン

  (1)会堂管理者ヤイロ(21~24節)

  (2)長血の女(25~34節)

  3.結論:

    (1)弟子訓練の内容

    (2)中断(妨害)への対処

イエスの弟子訓練から学ぶ。

Ⅰ.会堂管理者ヤイロ(21~24節)

   1.21節

  「イエスが舟でまた向こう岸へ渡られると、大ぜいの人の群れがみもとに集まった。イエ

スは岸べにとどまっておられた」

  (1)イエスは、ユダヤ人地区に戻られた。

    ①恐らくカペナウム近辺であろう。

    ②いつものように、大ぜいの人が集まって来た。

2.22~23節

「すると、会堂管理者のひとりでヤイロという者が来て、イエスを見て、その足もとにひ

れ伏し、いっしょうけんめい願ってこう言った。『私の小さい娘が死にかけています。ど

うか、おいでくださって、娘の上に御手を置いてやってください。娘が直って、助かるよ

うにしてください』」

  (1)ヤイロという名の会堂管理者

    ①建物の管理、礼拝の秩序の維持

    ②巻物を渡す「係りの者」とは別である(ルカ4:20)。

    ③その共同体の長老のひとりである。

    ④カペナウムには会堂の遺跡があるが、その会堂の管理者かどうかは分からない。

    ⑤会堂管理者全員がイエスに敵対していたわけではない。

  (2)ヤイロの信仰

    ①彼は、イエスの足元にひれ伏した。

    ②彼は、イエスに対する信仰を持った。

    ③イエスは、新しい方針を採用しておられた。

    ④イエスに対する信仰を持った者だけを癒される。

  (3)ヤイロの娘

    ①瀕死の状態であった。

    ②「12歳ぐらいのひとり娘」(ルカ8:42)

    ③「娘の上に御手を置いてやってください」

      *当時の癒しの方法

      *癒し手から力が流れ出すという認識があった。

    ④マコ6:4~5

    「イエスは彼らに言われた。『預言者が尊敬されないのは、自分の郷里、親族、家

族の間だけです。』それで、そこでは何一つ力あるわざを行うことができず、少数

の病人に手を置いていやされただけであった」

3.24節

「そこで、イエスは彼といっしょに出かけられたが、多くの群衆がイエスについて来て、

イエスに押し迫った」

  (1)イエスは、群衆に取り囲まれて、身動きの取れない状態になった。

Ⅱ.長血の女(25~34節)

  1.25~26節

  「ところで、十二年の間長血をわずらっている女がいた。この女は多くの医者からひどい

めに会わされて、自分の持ち物をみな使い果たしてしまったが、何のかいもなく、かえっ

て悪くなる一方であった」

    (1)モーセの律法が教える儀式的汚れ

    ①レビ15:25~27

    「もし女に、月のさわりの間ではないのに、長い日数にわたって血の漏出がある

場合、あるいは月のさわりの間が過ぎても漏出がある場合、その汚れた漏出のあ

る間中、彼女は、月のさわりの間と同じく汚れる。彼女がその漏出の間中に寝る

床はすべて、月のさわりのときの床のようになる。その女のすわるすべての物は、

その月のさわりの間の汚れのように汚れる。これらの物にさわる者はだれでも汚

れる。その者は衣服を洗い、水を浴びる。その者は夕方まで汚れる」

②民19:11

「どのような人の死体にでも触れる者は、七日間、汚れる」

    (2)12年の間、長血をわずらっている女

      ①肉体的苦痛

        *当時は平均年齢が40歳前後

        *思春期からこの病に苦しみ出したと思われる。

        *彼女の、成人女性としての生活の半分を苦しみの中で過ごした。

      ②社会的・霊的苦痛

        *イスラエル共同体の行事や礼拝に参加できない。

        *未婚か、離婚した女性であろう。

        *孤独な人生

        *ラビたちは、汚れに触れることを恐れて、女性そのものに触れなかった。

    (3)医者からひどいめに会された。

      ①ルカには、この表現はない。

      ②財産を使い果たしたが、病気の癒しはなかった。

  2.27~29節

  「彼女は、イエスのことを耳にして、群衆の中に紛れ込み、うしろから、イエスの着物に

さわった。『お着物にさわることでもできれば、きっと直る』と考えていたからである。

すると、すぐに、血の源がかれて、ひどい痛みが直ったことを、からだに感じた」

    (1)彼女にはイエスに対する信仰があった。

      ①イエスの噂を聞いていた。

      ②群衆の中に紛れ込んだ。

        *本来はあり得ない行動である。

    (2)「イエスの着物にさわった」

       ①彼女がさわったのは、着物のふさである。

②申 22:12

「身にまとう着物の四隅に、ふさを作らなければならない」

③ルカ8:44a

「イエスのうしろに近寄って、イエスの着物のふさにさわった。すると、たちど

ころに出血が止まった」

      ④彼女は密かに癒しを受け取ろうとした。

    (3)彼女は、ただちに癒しが起こったことを自覚した。

      ①イエスは何も行動を起こしていない。

      ②彼女の信仰と、弟子たちの信仰の対比

  3.30~31節

  「イエスも、すぐに、自分のうちから力が外に出て行ったことに気づいて、群衆の中を振

り向いて、『だれがわたしの着物にさわったのですか』と言われた。そこで弟子たちはイ

エスに言った。『群衆があなたに押し迫っているのをご覧になっていて、それでも「だれ

がわたしにさわったのか」とおっしゃるのですか』」

   (1)イエスの認識

①イエスが自覚しないままで、力が外に出て行くことはない。

②イエスは、だれが着物にさわったかを知っておられた。

③物理的に触れることと、信仰によって触れることとは、大いに異なる。

  *そこには、力の流れと、癒しがある。

④イエスは、この女に信仰について教えようとされた。

⑤また、公の信仰告白を引き出し、彼女を正常な生活に戻そうとされた。

    (2)弟子たちの認識

      ①誰もかれもがイエスに押し迫っているのに、その質問はおかしいと考えた。

      ②彼らには、何が起こったかを知る力がなかった。

  4.32~34節

  「イエスは、それをした人を知ろうとして、見回しておられた。女は恐れおののき、自分

の身に起こった事を知り、イエスの前に出てひれ伏し、イエスに真実を余すところなく打

ち明けた。そこで、イエスは彼女にこう言われた。『娘よ。あなたの信仰があなたを直し

たのです。安心して帰りなさい。病気にかからず、すこやかでいなさい』」

   (1)女は、公に証しをした。

    ①彼女は密かに去ろうとしていたが、これによって平安を得た。

  (2)イエスは彼女の神学を正された。

    ①「あなたの信仰があなたを直したのです」

    「安心して帰りなさい。病気にかからず、すこやかでいなさい」

     ③イエスの優しさが溢れている言葉である。

   5.35節

  「イエスが、まだ話しておられるときに、会堂管理者の家から人がやって来て言った。『あ

なたのお嬢さんはなくなりました。なぜ、このうえ先生を煩わすことがありましょう』」

   (1)娘は亡くなった。

    ①もう死んだのだから、イエスに来てもらう必要はなくなった。

    ②さあ、イエスはどうするのか。

    ③ヤイロは、どうするのか。

結論:

  1.弟子訓練の内容

    (1)長血の女が受けた信仰の訓練

      ①迷信的信仰、儀式的信仰から、イエスに信頼する信仰への移行

    (2)ヤイロが受けた信仰の訓練

      ①イエスには、不治の病をいやす力があるという信仰

      ②さらに、死者を甦らせる力があるという信仰への飛躍

    (3)弟子たちが受けた信仰の訓練

      ①イエスの権威の再発見

      ②弟子集団外の者たちが発揮する信仰からの教訓      

2.中断(妨害)への対処

  (1)ヤイロの視点から見ると、長血の女は「妨害」である。

    ①早くイエスに自分の家に来てほしい。

    ②娘のことを考えると、一刻の猶予もならない。

    ③彼は、娘が死んだという知らせを受け取った。

  (2)イエスの視点から見ると、「妨害」は祝福である。

    ①長血の女の癒しは、ヤイロの信仰に励ましを与えた。

    ②娘が死んだので、イエスの力がより鮮明に表れることになる。

  (3)私たちの人生における計画の中断

  (例話)土曜日にカウンセリングを求めてきた女性信者

    ①自分の計画を妨害することが起こったなら、それを神の使いと考えよ。

    ②それは、私たちの自己中心性を粉砕する。

    ③自分の計画ではなく、神の御心だけが成るという信仰へ私たちを導く。

    ④計画が中断された時、私たちは、神に捧げる時間を与えられたのである。

  (例話)マケドニヤの幻

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