メシアの生涯(77)—長血の女とヤイロの娘(2)—

  • 2013.09.16
  • マルコ5章:35〜43、マタイ9章:18〜26、ルカ8章:40〜56
  • スピーカー 中川健一
  • ハーベスト定例会
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ヤイロの娘の蘇生から学ぶ

「長血の女とヤイロの娘(2)」

§067 マコ5:35~43

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①イエスの奇跡は、弟子訓練を目的としたものとなった。

    ②この箇所の奇跡も、弟子訓練という文脈の中で読まねばならない。

  (2)連続して起こる奇跡

    ①自然界の支配

    ②悪霊の追い出し

    ③不治の病の癒し

    ④死者の蘇生

  (3)A.T.ロバートソンの調和表

      「ヤイロの娘と、イエスの着物を触った女の癒し」(§67)

  マコ5:21~43、マタ9:18~26、ルカ8:40~56

  (4)サンドイッチ構造

    ①ヤイロの懇願 → 長血の女の癒し → ヤイロの娘の蘇生

    ②長血の女の登場は、ヤイロにとっては妨害(中断)であった。

    ③しかし、その妨害に意味がある。

2.アウトライン

  (1)落胆したヤイロへのことば(35~36節)

  (2)泣き叫ぶ人々へのことば(37~40節)

  (3)死んだ少女へのことば(41~43節)

  3.結論:

    (1)イエスの弟子訓練の総まとめ

    (2)3人の弟子たちの訓練

ヤイロの娘の蘇生から学ぶ。

Ⅰ.落胆したヤイロへのことば(35~37節)

1.35節

  「イエスが、まだ話しておられるときに、会堂管理者の家から人がやって来て言った。『あ

なたのお嬢さんはなくなりました。なぜ、このうえ先生を煩わすことがありましょう』」

(1)娘は亡くなった。

    ①気温の高いパレスチナでは、葬儀の準備はただちに行われた。

    ②親に情報を伝える前に、すでに泣き女たちを集める作業を始めていた。

    ③もう死んだのだから、イエスに来てもらう必要はなくなった。

   (2)会堂管理者ヤイロの心配が現実のものとなった。

2.36節

「イエスは、その話のことばをそばで聞いて、会堂管理者に言われた。『恐れないで、た

だ信じていなさい』」

   (1)訳文の比較

    「イエスは、その話のことばをそばで聞いて」(新改訳)

    「イエスはその話をそばで聞いて」(新共同訳)

    「イエスはその話している言葉を聞き流して」(口語訳)

    ①写本の違いが訳文の違いになっている。口語訳の写本が一番よい。

    ②「Ignoring what they said,」(NIV)

    ③無視するとは、聞こえてきたが、関心を示さないということ。

  (2)無視することについて

    ①箴4:14~15

    「悪者どもの道に入るな。悪人たちの道を歩むな。それを無視せよ。そこを通る

な。それを避けて通れ」

②箴8:33

「訓戒を聞いて知恵を得よ。これを無視してはならない」

  (3)「恐れないで、ただ信じていなさい」

    ①これは、会堂管理者へのことばである。

②会堂管理者は、長血の女の癒しを目撃した。

    ③それによって、イエスに対する信仰が強められた。

    ④イエスは、彼の信仰を励ましたのである。

    ⑤彼もまた、信仰の訓練を受けている。

  2.37節

  「そして、ペテロとヤコブとヤコブの兄弟ヨハネのほかは、だれも自分といっしょに行く

のをお許しにならなかった」

  (1)3人の弟子だけが同行を許された。

    ①ペテロ、ヤコブ、ヨハネ

    ②3人の証人を立てている。

  (2)その場に残された人たち

    ①弟子たち9人

    ②群衆

Ⅱ.泣き叫ぶ人々へのことば(38~40節)

  1.38~39節

  「彼らはその会堂管理者の家に着いた。イエスは、人々が、取り乱し、大声で泣いたり、

わめいたりしているのをご覧になり、中に入って、彼らにこう言われた。『なぜ取り乱し

て、泣くのですか。子どもは死んだのではない。眠っているのです』」

   (1)ヤイロの家は喧噪で満ちていた。

    ①泣き女たちが仕事をしていた。

    ②裕福な人の家では、大ぜいの泣き女を雇っていた。

    ③交互に泣き声を上げることもあった。

  (2)「なぜ取り乱して、泣くのですか。子どもは死んだのではない。眠っているので

す」

①これは、泣き叫ぶ人々へのことばである。

②イエスは、少女がこん睡状態にあると言っているのではない。

③また、肉体の死と復活の間、魂は眠りの状態にあると教えているわけでもない。

④観察者の目から見て、彼女は蘇生するので、眠りから覚めたような状態になる。

  2.40節

  「人々はイエスをあざ笑った。しかし、イエスはみんなを外に出し、ただその子どもの父

と母、それにご自分の供の者たちだけを伴って、子どものいる所へ入って行かれた」

   (1)少女のいる部屋に入ったのは、少数の者であった。

    ①父と母

    ②3人の弟子たち

  (2)この癒しは私的な空間で行われる。

    ①イエスのメシア性を証明する奇跡は、公の空間で行われた。

    ②ここでは、イエスは個人の信仰に答える形で奇跡を行っておられる。

Ⅲ.死んだ少女へのことば(41~43節)

   1.41節

  「そして、その子どもの手を取って、『タリタ、クミ』と言われた。(訳して言えば、「少

女よ。あなたに言う。起きなさい」という意味である)」

   (1)イエスは、死体に触れている。

    ①儀式的汚れの問題を解決している。

    ②死の問題も解決している。

  (2)「タリタ、クミ」

     ①これは、アラム語である。

    ②紀元1世紀の中東では、アラム語とギリシア語は、共通語であった。

    ③ヘブル語は、ユダヤ人の日常語であった(紀元3世紀頃まで)。

    ④それ以降、ヘブル語は日常語としての機能を失い、祈りの言葉となった。

    ⑤19世紀になって、エリエゼル・ベン・イェフダがヘブル語を復活させた。

    ⑥この時代のユダヤ人は、ヘブル語とアラム語を流暢に話せた。ギリシア語は、

個人差があった。

    ⑦イエスと弟子たちはアラム語を話したとされてきた。

    ⑧しかし、当時の状況から判断すると、ヘブル語を中心に話したと考えられる。

  (3)少女の状態は、絶望でも、変更不可能でもない。

2.42~43節

「すると、少女はすぐさま起き上がり、歩き始めた。十二歳にもなっていたからである。

彼らはたちまち非常な驚きに包まれた。イエスは、このことをだれにも知らせないように

と、きびしくお命じになり、さらに、少女に食事をさせるように言われた」

   (1)12歳の少女

    ①結婚前の処女であろう。許嫁がいた可能性が高い。

    ②希望に満ちた将来が待っているだけに、その死はより一層悲劇的である。

(2)癒しは即座に行われた。

  ①少女はすぐさま起き上がり、歩き始めた。

  ②彼らは仰天した。

    *3人の弟子たち

    *父と母

    (3)イエスの2つの命令

      ①沈黙せよとの命令

        *誤った動機で人々がイエスに近づかないように。

      ②少女に食事をさせよとの命令

        *少女は死から健康体に戻った。

        *これは復活の体とは異なる。

        *食事によって維持される必要のある体である。

結論:

  1.イエスの弟子訓練の総まとめ

    (1)しるし

      ①イスラエルへのしるしから、弟子たちへのしるしへの変化

    (2)奇跡

      ①信仰のない大衆から、信仰のある個人への変化

      ②宣伝から、沈黙への変化

    (3)メッセージ

      ①会堂や町々での宣言から、沈黙への変化

    (4)教え

      ①明白な教えから、たとえ話による教えへの変化

  2.3人の弟子たちの訓練

    (1)ペテロ、ヤコブ、ヨハネの3人は特別な訓練を受けた。

    (2)マコ9:2

    「それから六日たって、イエスは、ペテロとヤコブとヨハネだけを連れて、高い山に

導いて行かれた。そして彼らの目の前で御姿が変わった」

(3)マコ14:32~33

「ゲツセマネという所に来て、イエスは弟子たちに言われた。『わたしが祈る間、こ

こにすわっていなさい。』そして、ペテロ、ヤコブ、ヨハネをいっしょに連れて行か

れた。イエスは深く恐れもだえ始められた」

(4)十字架と復活の意味についての訓練

(5)私的聖書解釈は無視すべきであるが、使徒たちの教えは無視すべきでない。

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