ルカの福音書(90)復活に関する質問 -子羊の吟味の終了-20:27~40

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復活はあるのかについて考える。

ルカの福音書 90回

復活に関する質問 -子羊の吟味の終了-

20:27~40

1.文脈の確認

(1)エルサレムでの奉仕が始まった(19:28~21:38)。

  ①勝利の入城(19:28~44)

  ②諸々の教え(19:45~21:4)

  ③神殿崩壊の予告(21:5~36)

  ④まとめ(21:37~38)

(2)諸々の教え(19:45~21:4)

  ①宮きよめ(19:45~46)

  ②イエスの教えの要約(19:47~48)

  ③権威に関する論争(20:1~8)

  ④ぶどう園の農夫のたとえ話(20:9~18)

  ⑤カエサルへの納税に関する質問(20:19~26)

  ⑥復活に関する質問(20:27~40)

  ⑦ダビデの子に関する質問(20:41~44)

  ⑧律法学者の偽善(20:45~47)

  ⑨やもめの献金(21:1~4)

(3)注目点

  ①ルカの読者(異邦人)にとって、復活は関心のあるテーマである。

  ②ギリシア哲学は、肉体の復活を否定した。

    *霊魂は、不滅である。

    *霊魂は善であり、肉体は悪である。

    *霊魂は、肉体の中に閉じ込められているが、死によって解放される。

  ③この箇所は、神殿での論争のクライマックスになっている。

    *小羊イエスの吟味が終わったということである。

2.アウトライン

(1)サドカイ人たちの質問(27~33節)

(2)イエスの回答(34~38節)

(3)論敵たちの沈黙(39~40節)

3.結論:復活の教理

(1)旧約聖書

(2)アブラハム契約

復活はあるのかについて考える。

Ⅰ.サドカイ人たちの質問(27~33節)

1.27節

Luk 20:27復活があることを否定しているサドカイ人たちが何人か、イエスのところに来て質問した。

(1)ルカは、イエスの論敵が誰であるかを明示してこなかった。

  ①マタイとマルコは、パリサイ人とヘロデ党の者たちを挙げている。

  ②ルカの読者には、それは不要な情報である。

  ③しかし、この箇所ではサドカイ人の名が書かれている。

  ④テーマが死者の復活なので、サドカイ人の名を紹介する必要があった。

(2)大祭司や祭司長は、サドカイ人である。

  ①紀元1世紀のユダヤ社会で、大きな権力を持っていた。

    *紀元70年の神殿崩壊により、サドカイ派は消滅する。

  ②彼らは、サンヘドリンの議席(70席+議長)の過半数を占めていた。

    *しかし、少数派のパリサイ人たちの意見を無視することができなかった。

    *民衆は、パリサイ人たちを支持していた。

  ③彼らは、宗教よりも政治に関心を抱いていた。

    *彼らは、ローマの支配を受け入れていた。

    *彼らは、イエスの活動にさほどの関心を示さなかった。

    *ローマが介入してくる危険性を感じたために、イエスに関心を示した。

(3)神学的にパリサイ人と異なる点がいくつかあった。

  ①口伝律法を認めず、書かれたものだけを権威ある教えとする。

  ②教理を導き出すためには、モーセの五書だけを利用する。

    *それ以外の書は、教訓を学ぶためのものである。

  ③神は日常生活には介入しない。

    *自己満足とうぬぼれが特徴である。

  ④死後のいのちも、死者の復活も、認めない。

    *肉体の死とともに霊魂も滅びる。

    *死後の裁きや褒賞はない。

  ⑤天使や悪霊の存在を否定する。

(4)彼らは、復活に関する質問をイエスに投げかけた。

  ①サドカイ人たちは、この質問によって、パリサイ人たちを悩ませていた。

  ②サドカイ人たちは、同じ質問によって、イエスを困らせようとした。

2.28~33節

Luk 20:28「先生、モーセは私たちのためにこう書いています。『もし、ある人の兄が妻を迎えて死に、子がいなかった場合、その弟が兄嫁を妻にして、兄のために子孫を起こさなければならない。』

Luk 20:29ところで、七人の兄弟がいました。長男が妻を迎え、子がないままで死にました。

Luk 20:30次男も、

Luk 20:31三男もその兄嫁を妻とし、七人とも同じように、子を残さずに死にました。

Luk 20:32最後に、その妻も死にました。

Luk 20:33では復活の際、彼女は彼らのうちのだれの妻になるのでしょうか。七人とも彼女を妻にしたのですが。」

(1)この質問の背景(申25:5~6)

Deu 25:5
兄弟が一緒に住んでいて、そのうちの一人が死に、彼に息子がいない場合、死んだ者の妻は家族以外のほかの男に嫁いではならない。その夫の兄弟がその女のところに入り、これを妻とし、夫の兄弟としての義務を果たさなければならない。

Deu 25:6 そして彼女が産む最初の男子が、死んだ兄弟の名を継ぎ、その名がイスラエルから消し去られないようにしなければならない。

  ①これは、レビラート婚の規定である。

  ②これは、寡婦の経済的地位と社会的地位を守るためのものである。

(2)彼らの質問は、極端な状況を想定したものである。

  ①ある女が7人の兄弟たちと結婚した。

  ②彼ら全員が、子を残すことなく死んだ。

  ③それゆえ、この女のことを自分の妻だと主張できる男がいなかった。

  ④では、復活の際、その女は誰の妻になるのか。

  ⑤サドカイ人たちは、得意げにこの質問をしたのである。

Ⅱ.イエスの回答(34~38節)

1.34~36節

Luk 20:34イエスは彼らに言われた。「この世の子らは、めとったり嫁いだりするが、

Luk 20:35次の世に入るのにふさわしく、死んだ者の中から復活するのにふさわしいと認められた人たちは、めとることも嫁ぐこともありません。

Luk 20:36彼らが死ぬことは、もうあり得ないからです。彼らは御使いのようであり、復活の子として神の子なのです。

(1)マタ22:29

Mat 22:29 イエスは彼らに答えられた。「あなたがたは聖書も神の力も知らないので、思い違いをしています。

(2)イエスは、今の時代と御国の時代を対比させた。

  ①復活のからだは、地上のからだの延長線上にあるのではない。

  ②それは、質的に新しくされたからだである。

  ③それは、永遠に存続するからだである。

  ④復活したからだは、天にいる天使のようである。

(3)復活のからだは不滅なので、結婚する必要がなくなる。

  ①夫婦がお互いの顔を認識できないということではない。

  ②両者の関係は、まったく新しいものとなる。

(4)「死んだ者の中から復活するのにふさわしいと認められた人たち」

  ①ここでは、信者の復活がテーマとなっている。

  ②信仰によって義とされた人たちが、復活に与るのである。

(5)「復活の子として神の子なのです」

  ①信者はすでに神の子である。

  ②復活のからだは、信者が神の子であることの実質的な表れである。

  ③御国においては、復活した人たちと、地上の肉体を持った人たちがいる。

    *「復活の子」とは、復活した人たちである。

  ④ギリシア人たちは、立派な人たちが神になると考えていた。

  ⑤イエスは、信者は神の子であり、復活によってそれが証明されると教えた。

2.37~38節

Luk 20:37モーセも柴の箇所で、主を『アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神』と呼んで、死んだ者がよみがえることを明らかにしました。

Luk 20:38神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神です。神にとっては、すべての者が生きているのです。」

(1)出3:6~7

Exo 3:6
さらに仰せられた。「わたしはあなたの父祖の神、アブラハムの神、イサクの神、ヤコブの神である。」モーセは顔を隠した。神を仰ぎ見るのを恐れたからである。

Exo 3:7
【主】は言われた。「わたしは、エジプトにいるわたしの民の苦しみを確かに見、追い立てる者たちの前での彼らの叫びを聞いた。わたしは彼らの痛みを確かに知っている。

(2)イエスは、トーラー(モーセの五書)から引用された。

  ①サドカイ人たちは、教理を導き出す書として、トーラーだけを認めていた。

  ②彼らは、トーラーには復活の教えがないと信じていた。

(3)イエスは、トーラーの中に復活の証明があることを示した。

  ①神は死んだ者の神ではなく、生きている者の神である。

  ②神がモーセに語りかけた時には、アブラハム、イサク、ヤコブは死んでいた。

  ③しかし、神は生きている者の神である。

  ④つまり、アブラハム、イサク、ヤコブは生きているということである。

  ⑤そして彼らは、将来復活する。

  ⑥もしそうでなければ、「わたしは、〇〇の神であった」という表現になる。

Ⅲ.論敵たちの沈黙(39~40節)

1.39~40節

Luk 20:39律法学者たちの何人かが、「先生、立派なお答えです」と答えた。

Luk 20:40 彼らはそれ以上、何もあえて質問しようとはしなかった。

(1)律法学者たち(パリサイ人たち)は、感動した。

  ①彼らは、復活に関して、サドカイ人たちを論破する方法を得た。

(2)彼らとは、パリサイ人、ヘロデ党の者たち、サドカイ人である。

  ①パリサイ人たちは、イエスの権威がどこからきたかを問うた。

  ②ヘロデ党の者たちは、カイサルに税を納めることの是非を問うた。

  ③サドカイ人たちは、復活の可能性について問うた。

結論:復活の教理

1.旧約聖書

(1)ヨブ19:25~26

Job 19:25私は知っている。/私を贖う方は生きておられ、/ついには、土のちりの上に立たれることを。

Job 19:26私の皮がこのように剥ぎ取られた後に、/私は私の肉から神を見る。

  ①ヨブは、復活の希望を告白している。

(2)イザ26:19

Isa 26:19

あなたの死人は生き返り、/私の屍は、よみがえります。/覚めよ、喜び歌え。土のちりの中にとどまる者よ。/まことに、あなたの露は光の露。/地は死者の霊を生き返らせます。

  ①メシアの再臨の時に起こる旧約時代の聖徒の復活

(3)ダニ12:2

Dan 12:2ちりの大地の中に眠っている者のうち、/多くの者が目を覚ます。/ある者は永遠のいのちに、/ある者は恥辱と、永遠の嫌悪に。

  ①信者の復活(第一の復活)

  ②不信者の復活(第二の復活)

2.アブラハム契約

(1)創17:8

Gen 17:8わたしは、あなたの寄留の地、カナンの全土を、あなたとあなたの後の子孫に永遠の所有として与える。わたしは彼らの神となる。」

  ①カナンの地は、アブラハムとその子孫に与えられた。

  ②神はこの約束をアブラハム、イサク、ヤコブに個人的に与えた。

  ③しかし彼らは、その土地を手に入れることなくして死んでいった。

  ④神がこの約束を果たすためには、彼らを復活させなければならない。

  ⑤アブラハムがイサクを犠牲にする決心をしたのは、復活を信じたからである。

(2)置換神学の問題点

  ①イスラエルは見捨てられ、教会が新しいイスラエルとなった。

  ②イスラエルに与えられていた約束は、教会が引き継いだ。

  ③もしそうなら、神の約束は果たされないままで終わることになる。

  ④族長たちに与えられた土地の約束が成就するのは、御国においてである。

(3)マタ8:11

Mat 8:11あなたがたに言いますが、多くの人が東からも西からも来て、天の御国でアブラハム、イサク、ヤコブと一緒に食卓に着きます。

  ①これは、御国の祝福を描写したものである。

  ②アブラハム、イサク、ヤコブは復活して、そこにいる。

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