私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
メシアの生涯(2)—ヨハネによる序言(1)—
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ヨハネの福音書の序言を3回に分けて学ぶその1回目です。
「ヨハネによる序言(1)」
ヨハ1:1~5
1.はじめに
(1)4つの福音書を並べ、時間順にメシアの生涯を追って行く。
①前回は、ルカによる献呈の辞を取り上げた。
②今回は、ヨハネによる序言を取り上げる(ヨハ1:1~18)。
*時間的に最も早い。
(2)ヨハネの序言の3つの特徴
①最も崇高なキリスト論である。
*これに匹敵する箇所は、新約聖書に2ヶ所しかない。
*コロ1:15~17
*ヘブ1:1~3
②詩的文書である。
③神学的文書である。
*神学校の1学期をかけて学ぶほどの内容である。
*内容が豊富なので、3回に分けて解説する。
(3)文書の構造
①階段を一つずつ上るように、ゴールに向かっている。
②イエスの受肉がゴールである(14節)。
「ことばは人となって、私たちの間に住まわれた。私たちはこの方の栄光を見た。
父のみもとから来られたひとり子としての栄光である。この方は恵みとまことに
満ちておられた」
2.アウトライン(1~5節)
(1)メシアの本質(1~2節)
(2)メシアによる創造の業(3節)
(3)光と闇の戦い(4~5節)
3.メッセージのゴール
(1)ユダヤ人にとってのロゴス
(2)共同体としての証し
(3)復活後に書かれたことの意味
このメッセージは、ヨハネの序言からメシアについて学ぼうとするものである。
Ⅰ.メシアの本質(1~2節)
「初めに、ことばがあった。ことばは神とともにあった。ことばは神であった。この方は、
初めに神とともにおられた」
1.「初めに」
(1)ヨハネは、創世記1:1以前に遡って、そこからこの福音書を書き始める。
①マルコは、バプテスマのヨハネの活動から書き始める。
②マタイは、アブラハムの系図から書き始める。
③ルカは、献呈の辞から書き始める。
④ヨハネは、共観福音書の書き始めよりもさらに遡って、書き始める。
(2)「初めに」という言葉は、キリスト教信仰の土台となる神学的概念を示している。
①ヨハネは、神しか存在していなかった時に、戻っている。
②キリスト教では、神以前には戻れない。
③異教の神話には、神々が造られる話が出てくる。
(3)「初めに」存在したお方として、神ではなく、「ことば」を紹介している。
①驚くべきことである。
②では、「ことば」とは誰か。
2.「ことば」
(1)ギリシア語の「ロゴス」である。
①ギリシア哲学では、ロゴスに2つの意味がある。
*理性(メシアは神のイデア-理想的な形-である)
*言葉(メシアは神の表現である)
②しかし、ヨハネはギリシア哲学者ではなく、ユダヤ人の漁師である。
*紀元1世紀のユダヤ教の用語をギリシア語に訳した。
*ヨハネだけがメシアを示す言葉として「ロゴス」を使用している。
*しかも、「序言」にしか出てこない。
(2)ヘブル語では「ダバール」である。
①旧約聖書では、「ダバール」が擬人法で用いられている。
②つまり、「ことば」が人格的存在であるかのように行動しているということ。
*創15:1、詩33:4~6、147:15、イザ9:8、55:10~11、エゼ1:3
③イザ55:10~11
「雨や雪が天から降ってもとに戻らず、必ず地を潤し、それに物を生えさせ、芽
を出させ、種蒔く者には種を与え、食べる者にはパンを与える。そのように、わ
たしの口から出るわたしのことばも、むなしく、わたしのところに帰っては来な
い。必ず、わたしの望む事を成し遂げ、わたしの言い送った事を成功させる」
④ユダヤ教のラビたちは、アラム語で「メムラ」という概念を作り出した。
*これもまた、「ことば」という意味である。
*「メムラ」に関して、6つの基本的教えを確立した。
*「メムラ」は、神とは区別されるが神である。
⑤ヨハネは、「メムラ」を「ロゴス」と訳した。
*ここには、同時代のユダヤ人に対するメッセージがある。
*メシアは、「メムラ」である。
3.「ことば」の3つの特徴
(1)天地創造の前から、「ことば」は存在していた。
①「ことば」と神とは別の存在である。
(2)「ことば」は、神と親密な交流関係にあった。
「ことばは神とともにあった」
①「ともに」(with)は、ギリシア語で「pros」である。
②この前置詞は、親密な交流関係を表している。
(3)「ことば」は、神と一体であった。
「ことばは神であった」
①エホバの証人の解釈
*「ことば」の前に定冠詞が付いていないので、「a god」と訳す。
*この解釈は、イエスの神性の否定か、多神教に行き着く。
②正しい解釈は、「神」を形容詞と取ることである。
4. 1節の内容の再確認(2節)
「この方は、初めに神とともにおられた」
(1)ユダヤ人との論争で、この点が特に重要になる。
①ヨハ5:18
「このためユダヤ人たちは、ますますイエスを殺そうとするようになった。イエ
スが安息日を破っておられただけでなく、ご自身を神と等しくして、神を自分の
父と呼んでおられたからである」
②ヨハ19:7
「ユダヤ人たちは彼に答えた。『私たちには律法があります。この人は自分を神
の子としたのですから、律法によれば、死に当たります』」
Ⅱ.メシアによる創造の業(3節)
「すべてのものは、この方によって造られた。造られたもので、この方によらずにできた
ものは一つもない」
1.創造物語が記されている。
(1)「すべてのもの」
①神以外のすべてのもの
②天使も含む。
(2)「この方によって」
①ギリシア語の前置詞「dia」
②英語で、「by Him」、あるいは、「through Him」である。
2.「ことば」が神よりも劣るということではない。
(1)神と同時に、創造の業に参加したということ。
Ⅲ.光と闇の戦い(4~5節)
「この方にいのちがあった。このいのちは人の光であった。光はやみの中に輝いている。
やみはこれに打ち勝たなかった」
1.「いのち」と「光」が関連付けられている。
(1)「いのち」はギリシア語で「zoe」である。
①ヨハネの福音書で36回出てくる。
②メシアはいのちの源である。
*創造主として、肉体のいのちを与えてくださった。
*贖い主として、霊的いのちを与えてくださった。
*救い主として、永遠のいのちを与えてくださった。
2.光とやみの戦いは、ヨハネの福音書のテーマのひとつである。
(1)光が闇の世界に侵入し、輝いている。
①動詞は現在形。継続した動作。
(2)「やみはこれに打ち勝たなかった」
「暗闇は光を理解しなかった」(新共同訳)
①動詞は、「カタランバノウ」である。
②光と闇の二元論ではないので、「理解しなかった」がよい。
③聖書は、闇にそれほどの力を認めていない。
結論:
1.ユダヤ人にとってのロゴス
(1)メムラは神とは別の存在であるが、神と同じお方でもある。
①1節は、メムラの1番目の特徴を表現している。
②ラビたちは、このパラドックスを説明しようとはしなかった。
③三位一体の教理によって、初めて説明可能となる。
④ここでは、唯一の神が複数の位格をもって存在していることが示されている。
(2)メムラは天地創造に参加されたお方である。
①3節は、メムラの2番目の特徴を表現している。
2.共同体としての証し
(1)14節
「ことばは人となって、私たちの間に住まわれた。私たちはこの方の栄光を見た。父
のみもとから来られたひとり子としての栄光である。この方は恵みとまことに満ちて
おられた」
①「私たち」という主語
②16節にも、「私たち」と出てくる。
(2)メシアの生涯の証しは、個人的なものではなく、信者の共同体が共有する。
①ヨハ21:24
「これらのことについてあかしした者、またこれらのことを書いた者は、その弟
子である。そして、私たちは、彼のあかしが真実であることを、知っている」
3.復活後に書かれたことの意味
(1)光と闇の戦いは二元論の反映ではないが、それでも現実的なものである。
①ヨハネの福音書の中で、闇の力が最高潮に達するのは、ユダの裏切りの箇所。
②ヨハ13:30
「ユダは、パン切れを受けるとすぐ、外に出て行った。すでに夜であった」
③復活において、光が闇を追い出した。
(2)ヨハ20:19~20
「その日、すなわち週の初めの日の夕方のことであった。弟子たちがいた所では、ユ
ダヤ人を恐れて戸がしめてあったが、イエスが来られ、彼らの中に立って言われた。
『平安があなたがたにあるように。』こう言ってイエスは、その手とわき腹を彼らに
示された。弟子たちは、主を見て喜んだ」
(3)ヨハ3:16の重要性
「神は、実に、そのひとり子をお与えになったほどに、世を愛された。それは御子を
信じる者が、ひとりとして滅びることなく、永遠のいのちを持つためである」
①神の愛の業は完了した。
②私たちが、その愛に応答する番である。
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