使徒の働き(33)―ペテロの奉仕―

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ペテロの奉仕について学ぶ。

「ペテロの奉仕」

使徒9:32~43

1.はじめに

(1)サウロの物語は、一次中断する。

①ここから、ペテロの奉仕の記録に入って行く。

②この記録は、異邦人の使徒サウロが活躍する舞台を用意するためのものである。

③前回ペテロが登場したのは、使8:25である。

Act8:25 このようにして、使徒たちはおごそかにあかしをし、また主のことばを語って後、エルサレムへの帰途につき、サマリヤ人の多くの村でも福音を宣べ伝えた。

 

(2)ペテロの巡回伝道

①サウロがエルサレムを出てタルソに移住して以降、平和な時期が数年間続いた。

②その状態が、使9:31で描かれている。

Act9:31 こうして教会は、ユダヤ、ガリラヤ、サマリヤの全地にわたり築き上げられて平安を保ち、主を恐れかしこみ、聖霊に励まされて前進し続けたので、信者の数がふえて行った。

③その間、ペテロは巡回伝道を行った。

*ユダヤ、ガリラヤ、サマリヤの町々を巡り、教会を建て上げていった。

 

2.アウトライン

(1)ペテロの巡回伝道(32節a)

(2)ルダでの奉仕(32b~35節)

(3)ヨッパでの奉仕(36~43節)

 

結論

(1)使徒職の証明としての「しるし」

(2)皮なめしのシモンの家に滞在することの意味

 

ペテロの奉仕について学ぶ。

Ⅰ.ペテロの巡回伝道(32節a)

1.32節a

Act9:32a さて、ペテロはあらゆる所を巡回したが、

(1)平和な時期に、ペテロは各地を巡りながら巡回伝道を行った。

①これは、あくまでもユダヤ人伝道であった。

②ルカは、2つの町でのペテロの奉仕について記録している。

*奉仕の内容は、主イエスの奉仕を思い出させるものである。

*ペテロの奉仕とパウロの奉仕との間に類似性がある。

 

(2)この出来事以降も、ペテロは広範囲にわたり巡回伝道を行った。

①1コリ9:5

1Co9:5 私たちには、ほかの使徒、主の兄弟たち、ケパなどと違って、信者である妻を連れて歩く権利がないのでしょうか。

②1ペテ1:1

1Pe1:1 イエス・キリストの使徒ペテロから、ポント、ガラテヤ、カパドキヤ、アジヤ、ビテニヤに散って寄留している、選ばれた人々、すなわち、

 

(3)ここで取り上げる地区での伝道は、ピリポが先駆者である。

①使8:40

Act8:40 それからピリポはアゾトに現れ、すべての町々を通って福音を宣べ伝え、カイザリヤに行った。

②ルカは、ペテロの奉仕の場として、2つの町を特記する。

*ルダとヨッパにおいて大いなるしるしが行われた。

*そのしるしは、主イエスの働きを思い出させるものである。

 

Ⅱ.ルダでの奉仕(32b~35節)

1.32b

Act9:32b ルダに住む聖徒たちのところへも下って行った。

(1)ルダという町

①ヘブル語聖書では、ロデ(ロッド)という名で知られていた。

*1歴8:12

1Ch8:12 エルパアルの子は、エベル、ミシュアム、シェメデ、──彼はオノとロデおよびそれに属する村落を建てた──

②エルサレムの北西40キロのところにある町である。

*エルサレムから地中海に至る道の3分の2くらいのところに位置する。

*シャロン平原の南端に位置する町であった。

③多くの異邦人が住んでいたが、それでもここは重要なユダヤ人の町であった。

 

(2)ルダにはユダヤ人信者の群れがあった。

①恐らく、ピリポの伝道の実であろう。

②使8:40

Act8:40 それからピリポはアゾトに現れ、すべての町々を通って福音を宣べ伝え、カイザリヤに行った。

 

(3)ロッド空港乱射事件

①1972年5月30日、「日本赤軍」によるテロ事件が起こった。

②英語では、「LodAirportmassacre(ロッド空港での虐殺)」と呼ばれる。

③26人が殺害され、73人が重軽傷を負った。

④実行犯

*幹部の奥平剛士(おくだいら・つよし)

*京都大学の学生だった安田安之

*鹿児島大学の学生だった岡本公三

⑤現在のベングリオン国際空港は、新空港である。

 

2.33節

Act9:33 彼はそこで、八年の間も床に着いているアイネヤという人に出会った。彼は中風であった。

(1)ペテロは、アイネヤという人に出会った。

①中風で8年間も床に着いていた。

②主イエスの奉仕の中に似たような事例があった。

 

(2)カペナウムでの出来事

①中風の人が4人の人に担がれて屋根から降ろされた。

②マタ9:5~6

Mat9:5 『あなたの罪は赦された』と言うのと、『起きて歩け』と言うのと、どちらがやさしいか。

Mat9:6 人の子が地上で罪を赦す権威を持っていることを、あなたがたに知らせるために。」こう言って、それから中風の人に、「起きなさい。寝床をたたんで、家に帰りなさい」と言われた。

 

(3)ベテスダの池での出来事

①38年もの間、病気にかかっている人がいた。

②ヨハ5:8

Joh5:8 イエスは彼に言われた。「起きて、床を取り上げて歩きなさい。」

 

3.34節

Act9:34 ペテロは彼にこう言った。「アイネヤ。イエス・キリストがあなたをいやしてくださるのです。 立ち上がりなさい。そして自分で床を整えなさい。」すると彼はただちに立ち上がった。

(1)ペテロは、アイネヤに命じた。

①癒しの言葉の比較

*「起きなさい。寝床をたたんで、家に帰りなさい」(イエス)

*「起きて、床を取り上げて歩きなさい」(イエス)

「立ち上がりなさい。そして自分で床を整えなさい」(ペテロ)

②ペテロは、イエス・キリストが癒し主であることを明確に宣言している。

「アイネヤ。イエス・キリストがあなたをいやしてくださるのです」

③ペテロの使徒としての権威は、証明された。

「すると彼はただちに立ち上がった」

 

4.35節

Act9:35 ルダとサロンに住む人々はみな、アイネヤを見て、主に立ち返った。

(1)このしるしは、ルダとシャロンに住む多くの人々を信仰に導いた。

「主に立ち返った」とは、主を信じて救われたという意味である。

②使11:21、15:19

 

Ⅲ.ヨッパでの奉仕(36~43節)

1.36節

Act9:36 ヨッパにタビタ(ギリシヤ語に訳せば、ドルカス)という女の弟子がいた。この女は、多くの良いわざと施しをしていた。

(1)ヨッパという町

①ヘブル語でヤフォ

②現在は、テル・アビブと隣接している。

③ルダから約18キロ北西に位置する町である。

④ヨッパの聖徒たちは、ペテロがルダにいると聞いて、彼を呼び寄せる。

 

(2)タビタという女性の信者

①ギリシア語でドルカス(カモシカという意味)という名で知られていた。

*異邦人が多い地域である。

②彼女は、善行と施しで有名であった。

 

2.37~38節

Act9:37 ところが、そのころ彼女は病気になって死に、人々はその遺体を洗って、屋上の間に置いた。

Act9:38 ルダはヨッパに近かったので、弟子たちは、ペテロがそこにいると聞いて、人をふたり彼のところへ送って、「すぐに来てください」と頼んだ。

(1)彼女は死に、埋葬の準備が整った。

①人々は、その遺体を洗った。

②それを屋上の間に置いた。

 

(2)信者の群れは、ペテロがルダにいると聞いて、2人の使者を派遣した。

①エルサレム以外の場所では、遺体は最長3日3晩置いておくことが許された。

②ペテロを迎えにルダに行くのに半日、ヨッパに戻るのに半日かかった。

③ペテロは、時間内にヨッパに着く必要があった。

「すぐに来てください」

 

3.39節

Act9:39 そこでペテロは立って、いっしょに出かけた。ペテロが到着すると、彼らは屋上の間に案内した。やもめたちはみな泣きながら、彼のそばに来て、ドルカスがいっしょにいたころ作ってくれた下着や上着の数々を見せるのであった。

(1)ヨッパに到着したペテロは、屋上の間に案内された。

①そこには、弔問客が多数集まっていた。

②特に、ドルカスから良くしてもらっていたやもめたちがいて、泣いていた。

③彼女たちは、ドルカスが作ってくれた下着や上着の数々を見せた。

④もし生き返ることが可能なら、ドルカスこそ相応しいと訴えているのである。

 

(2)主イエスの奉仕にも似たような事例があった。

①ヤイロの娘の癒し

②マコ5:40~41

Mar5:40 人々はイエスをあざ笑った。しかし、イエスはみんなを外に出し、ただその子どもの父と母、それにご自分の供の者たちだけを伴って、子どものいる所へ入って行かれた。

Mar5:41 そして、その子どもの手を取って、「タリタ、クミ」と言われた。(訳して言えば、「少女よ。あなたに言う。起きなさい」という意味である。)

 

4.40~41節

Act9:40 ペテロはみなの者を外に出し、ひざまずいて祈った。そしてその遺体のほうを向いて、「タビタ。起きなさい」と言った。すると彼女は目をあけ、ペテロを見て起き上がった。

Act9:41 そこで、ペテロは手を貸して彼女を立たせた。そして聖徒たちとやもめたちとを呼んで、生きている彼女を見せた。

(1)ペテロは、主イエスを見習っている。

①人々を部屋の外に出した。

②死体に命じた。

*「タリタ、クミ」(イエス)

*「タビタ、クミ」(ペテロ)

 

(2)ペテロは、彼女が生き返るまで、彼女に触れていない。

①儀式的汚れを避けるためである。

 

5.42節

Act9:42 このことがヨッパ中に知れ渡り、多くの人々が主を信じた。

(1)ペテロは、数々のしるしを行ったが、死者をよみがえらせたのは初めてである。

①このしるしは、ヨッパの人々が信仰に入る原動力となった。

「主を信じた」と「主に立ち返った」は、同じ意味である。

 

6.43節

Act9:43 そして、ペテロはしばらくの間、ヨッパで、皮なめしのシモンという人の家に泊まっていた。

(1)ペテロはしばらくの間、皮なめしのシモンの家に滞在した。

①これは、次の奉仕にペテロを導くための神の方法であった。

 

結論

1 .使徒職の証明としての「しるし」

(1)紀元1世紀の教会では、「しるし」は使徒たちとその同労者たちだけが行った。

①ヨッパの聖徒たちには、その権威が与えられていなかった。

②彼らに信仰がなかったわけではない。

③ペテロを呼んだのは、彼らの信仰表現である。

④この時まで、死者が生き返ったという事例はなかった。

⑤彼らは、もしそれが可能だとしたら、使徒に来てもらう必要があると思った。

 

(2)奇跡や「しるし」を行う能力は、真の使徒であることの証明である。

①2コリ12:12

2Co12:12 使徒としてのしるしは、忍耐を尽くしてあなたがたの間で行われた、しるしと不思議と力あるわざです。

 

(3)使徒の使命は、普遍的教会の建て上げである。

①エペ4:11~13

Eph4:11 こうして、キリストご自身が、ある人を使徒、ある人を預言者、ある人を伝道者、ある人を牧師また教師として、お立てになったのです。

Eph4:12 それは、聖徒たちを整えて奉仕の働きをさせ、キリストのからだを建て上げるためであり、

Eph4:13 ついに、私たちがみな、信仰の一致と神の御子に関する知識の一致とに達し、完全におとなになって、キリストの満ち満ちた身たけにまで達するためです。

 

2 .皮なめしのシモンの家に滞在することの意味

(1)宗教的なユダヤ人なら、皮なめしの家に滞在することはない。

①レビ11:40

Lev11:40 その死体のいくらかでも食べる者は、その衣服を洗わなければならない。その人は夕方まで汚れる。また、その死体を運ぶ者も、その衣服を洗わなければならない。その人は夕方まで汚れる。

②皮なめしは、汚れた職業と見なされた。

*娼婦、糞尿収集、賭け事、ロバ使いなどと同等と見なされた。

③町の境界線から、少なくとも25ヤード(22.5メートル)離れて住む。

*悪臭が漂った。

 

(2)ペテロが皮なめしのシモンの家にしばらく滞在したことには、意味がある。

①彼の信仰は、ユダヤ教の厳格な戒律から解放されつつある。

*ペテロは、汚れた食事をすでに食べていたのである。

②ルダとヨッパは、異邦人人口の多い地域である。

③異邦人を受け入れるための準備が神によって為されている。

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