私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
ローマ人への手紙(57)—キリストにある同労者たち—
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パウロの人脈について学ぶ。
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「キリストにある同労者たち」
1.はじめに
(1)文脈の確認
①15:14~16:27は、「結論」の部分である。
②「執筆の目的」(15:14~21)
③「パウロの将来の計画」(15:22~33)
(2)きょうの箇所は、知人たちへの挨拶である。
①一見、無味乾燥に見える。
②しかし、この箇所が持っているインパクトに驚かされた。
2.アウトライン
(1)フィベ(1~2節)
(2)プリスカとアクラ(3~5節a)
(3)名の知られていない人たち(5b~16節)
3.メッセージのゴール
(1)初代教会における女性の地位
(2)家の教会
(3)人的ネットワーク
このメッセージは、パウロの人脈について学ぼうとするものである。
Ⅰ.フィベ(1~2節)
1.1節
「ケンクレヤにある教会の執事で、私たちの姉妹であるフィベを、あなたがたに推薦しま
す」
(1)ギリシア・ローマ世界においては、推薦状は珍しいものではなかった。
①フィベは、この手紙をローマに運んだ人である。
「彼女は、キリスト教神学の未来のすべてを、コートの下に入れて運んだこ
とになる」
②それゆえ、パウロは彼女をローマの信徒たちに推薦(紹介)している。
③「フィベ」という名は、神話によく登場する名である。異邦人である。
(2)ケンクレヤにある教会に属していた。
①コリントの南東11キロのところにある港町。
②コリントの東の港としての役割を果たした。アジア方面の交易のための港。
*西の港は、カイオン。両港の間の距離は8キロ。
③パウロは、第2回伝道旅行でここを訪れている。
④誓願が成就したのを記念して、そこで髪をそっている(使18:18)。
⑤パウロは、コリント滞在中にこの手紙を書いた。
⑥ケンクレヤの信頼できる信徒にそれを託すことは、自然なことである。
(3)「ケンクレヤにある教会の執事」
「ケンクレアイの教会の奉仕者」(新共同訳)
①ギリシア語で「ディアコノス」。男性名詞であり、女性名詞でもある。
②英語では、「deacon」、「deaconess」、となる。
③訳としては、「執事」も「奉仕者」も正しい。
④「執事」とした場合は、役職を意味する。
⑤教会史のこの段階で、役職としての「執事」があったかどうかは疑問である。
*執事は、長老を援助するための奉仕をする。
⑥役職でない場合は、忠実に主に仕える人を指す。
2.2節
「どうぞ、聖徒にふさわしいしかたで、主にあってこの人を歓迎し、あなたがたの助けを
必要とすることは、どんなことでも助けてあげてください。この人は、多くの人を助け、
また私自身をも助けてくれた人です」
(1)「多くの人を助け」
①多くの人の「プロスタティス」となった。
②女性のパロトンのことである(patroness)。
③卓越した女性のことである。
④パウロもまた、彼女に助けられた。
(2)それゆえ、彼女は歓迎に値する。
①ローマの信徒は、聖徒にふわさしい歓迎の仕方を示すべきである。
②「どんなことでも助けてあげてください」
*ギリシア語で「パラステイミ」である。
*法律用語で、そばに立つ、そばに寄り添うという意味である。
③彼女は、法的理由でローマに行く必要があったのだろう。
④そこでパウロは、奉仕の賜物のある彼女に、この手紙を委ねたと推測される。
Ⅱ.プリスカとアクラ(3~5節a)
1.3節
「キリスト・イエスにあって私の同労者であるプリスカとアクラによろしく伝えてくださ
い」
(1)1番目と2番目の名前
①パウロの「同労者」である。
②神の国のために、パウロと苦楽をともにした。
(2)使18:1~3
「その後、パウロはアテネを去って、コリントへ行った。ここで、アクラというポン
ト生まれのユダヤ人およびその妻プリスキラに出会った。クラウデオ帝が、すべての
ユダヤ人をローマから退去させるように命令したため、近ごろイタリヤから来ていた
のである。パウロはふたりのところに行き、自分も同業者であったので、その家に住
んでいっしょに仕事をした。彼らの職業は天幕作りであった」
①ルカは、プリスキラという名を使用している。
②この夫婦は、クラウデオ帝によってローマを追い出されたユダヤ人である。
③パウロと同業の天幕作りであった。
④ロマ書執筆時には、ローマに帰還していた。
(3)使18:18~19
「パウロは、なお長らく滞在してから、兄弟たちに別れを告げて、シリヤへ向けて出
帆した。プリスキラとアクラも同行した。パウロは一つの誓願を立てていたので、ケ
ンクレヤで髪をそった。彼らがエペソに着くと、パウロはふたりをそこに残し、自分
だけ会堂に入って、ユダヤ人たちと論じた」
①この夫婦は、パウロに付いてエペソに行った。
(4)使18:24~26
「さて、アレキサンドリヤの生まれで、雄弁なアポロというユダヤ人がエペソに来た。
彼は聖書に通じていた。この人は、主の道の教えを受け、霊に燃えて、イエスのこと
を正確に語り、また教えていたが、ただヨハネのバプテスマしか知らなかった。彼は
会堂で大胆に話し始めた。それを聞いていたプリスキラとアクラは、彼を招き入れて、
神の道をもっと正確に彼に説明した」
①アポロの伝道の援助をした。
2.4節
「この人たちは、自分のいのちの危険を冒して私のいのちを守ってくれたのです。この人
たちには、私だけでなく、異邦人のすべての教会も感謝しています」
(1)「自分のいのちの危険を冒して」
①直訳は、「自分たちの首を差し出した」である。
(2)この記録は、新約聖書の中にはない。
①パウロの活動で、私たちが知らないことは多い。
②恐らく、エペソでの暴動の時のことであろう。
(3)「異邦人のすべての教会」
①多くの異邦人教会のことである。
3.5節a
「またその家の教会によろしく伝えてください」
(1)彼らの家を解放して、信徒たちが集まっていた。
①コリントでも、家の教会を主催していた(1コリ16:19)。
②皮なめしの職業なので、広い家があったと思われる。
Ⅲ.名の知られていない人たち(5b~16節)
1.3番目は、エパネト(5節b)。
「私の愛するエパネトによろしく。この人はアジヤでキリストを信じた最初の人です」
(1)異邦人で、アジヤでの初穂である。
(2)「私の愛するエパネト」と呼ばれている。
2.4番目は、マリヤ(6節)。
「あなたがたのために非常に労苦したマリヤによろしく」
(1)ユダヤ人である。ミリアム。
(2)新約聖書には6人のマリヤが登場するが、このマリヤは誰だか分からない。
①「非常に労苦した」とある。
3.5番目と6番目は、アンドロニコとユニアス(7節)。
「私の同国人で私といっしょに投獄されたことのある、アンドロニコとユニアスにもよろ
しく。この人々は使徒たちの間によく知られている人々で、また私より先にキリストにあ
る者となったのです」
(1)「私の同国人」とあるので、ユダヤ人である。
①恐らく、夫婦であろう。
②パウロといっしょに投獄されたことがある(情報はない)。
(2)「使徒たちの間によく知られている人々」
①エルサレム出身
(3)「私より先にキリストにある者となった」
①使徒たちの伝道によって回心した最も初期の信者であろう。
②ペンテコステの日に回心した可能性もある。
③信仰歴25年の信者である。
④パウロは、羨望の思いをもって彼らに敬意を表している。
4.7番目は、アムプリアト(8節)。
「主にあって私の愛するアムプリアトによろしく」
(1)奴隷によくある名前である。
①「主にあって愛する」とある。
5.8番目と9番目は、ウルバノとスタキス(9節)。
「キリストにあって私たちの同労者であるウルバノと、私の愛するスタキスとによろしく」
(1)ローマ出身の異邦人信者であろう。
①「私たちの同労者」とあるので、一般的な意味での同労者であろう。
6.10番目は、アペレ(10節a)。
「キリストにあって練達したアペレによろしく」
(1)「練達した」とは、信仰歴が長いことをいう。
①さまざまな試練を通過して、信仰が純化していく。
②信仰は、長距離走である。
7.11番目は、アリストブロの家の教会(10節b)。
「アリストブロの家の人たちによろしく」
(1)ヘロデ大王の孫に、同名の人物がいる。
①必ずしも、彼が信者であったということではない。
②その家の奴隷たちを中心に、群れができていたと考えられる。
8.12番目は、ヘロデオン(11節a)。
「私の同国人ヘロデオンによろしく」
(1)ヘロデ家につながるユダヤ人である。
①高貴な身分の者も、信者の中にいた。
9.13番目は、ナルキソの家の教会(11節b)。
「ナルキソの家の主にある人たちによろしく」
(1)テベリウス・クラウデオ・ナルキソという大金持ちがいた。
①もし彼がそうなら、経済的に貢献したと思われる。
10.14番目と15番目は、ツルパナとツルポサ(12節a)。
「主にあって労している、ツルパナとツルポサによろしく」
(1)ともに、ギリシア語の「ツルフェイ」(繊細、温厚)から来た名である。
①異邦人の姉妹であろう。
②双子の可能性もある。
11.16番目は、ペルシス(12節b)。
「主にあって非常に労苦した愛するペルシスによろしく」
(1)ペルシヤの婦人という意味。
①「非常に労苦した」と言われている。
12.17番目と18番目は、ルポスとその母(13節)
「主にあって選ばれた人ルポスによろしく。また彼と私との母によろしく」
(1)マコ15:21
「そこへ、アレキサンデルとルポスとの父で、シモンというクレネ人が、いなかから
出て来て通りかかったので、彼らはイエスの十字架を、むりやりに彼に背負わせた」
①クレネ人シモンの息子である。ユダヤ人。
②「主にあって選ばれた」とは、豊かな賜物が用いられているという意味。
(2)シモンの妻(ルポスの母)もまた、信者になっている。
①パウロは、彼女のことを母のように慕っている。
13.19番目~23番目(14節)
「アスンクリト、フレゴン、ヘルメス、パトロバ、ヘルマスおよびその人たちといっしょ
にいる兄弟たちによろしく」
(1)5人の人物が連なっている。
14.24番目~28番目(15節)
「フィロロゴとユリヤ、ネレオとその姉妹、オルンパおよびその人たちといっしょにいる
すべての聖徒たちによろしく」
(1)5人の人物が連なっている。
15.締めくくり(16節)
「あなたがたは聖なる口づけをもって互いのあいさつをかわしなさい。キリストの教会は
みな、あなたがたによろしくと言っています」
(1)「聖なる口づけ」とは、何か。
①恐らく、文化的なものであろう。
(2)「キリストの教会はみな」とは、パウロが関係している教会の意味。
結論:
1.初代教会における女性の地位
(1)キリスト教は、女性の尊厳を認める宗教である。
(2)パウロは、女性を蔑視していない。
①フィベを含めて、9人までが女性である。
②4人の女性に関して、「非常に労苦した」、「労している」と言われている。
(3)新約中、プリスカとアクラは連名で6回登場するが、4回まで妻が先。
①ルカは、プリスキラと呼ぶ。
②パウロは、プリスカと正式名で呼ぶ。
2.家の教会(13の家の教会が確認できる)
(1)プリスカとアクラの家の教会
(2)アリストブロの家の教会
(3)ナルキソの家の教会
(4)19番目~23番目(14節)
「アスンクリト、フレゴン、ヘルメス、パトロバ、ヘルマスおよびその人たちといっ
しょにいる兄弟たちによろしく」
①5人は、家の教会のリーダーたちであろう。
(5)24番目~28番目(15節)
「フィロロゴとユリヤ、ネレオとその姉妹、オルンパおよびその人たちといっしょに
いるすべての聖徒たちによろしく」
①この5人もまた、家の教会のリーダーたちであろう。
(6)私たちへの教訓
①家の教会は、非聖書的なものではない。
②しかし、家の教会だけが聖書的とは言えない。
③組織化された教会もまた、聖書的である。
④当時の信者が家の教会を中心に活動したのは、現実的な理由からである。
⑤家の教会運動で留意すべき2つの点
*神学教育
*説明責任
3.人的ネットワーク
(1)ロマ書16章は、退屈な章ではない。
①パウロの活動を有機的に観察するための情報がある。
②ローマ帝国内に張り巡らされた人的ネットワークである。
③わずか25年の間に、このネットワークができている。
(2)「C世代 (Generation C)」の台頭
①2011年10月19日、インドネシアで開催されたニールセンのカンファレンス
②シドニーのDan Pankraz氏が「C世代 (ジェネレーションC」の定義を発表。
③ソーシャルメディアを活用したユース(C世代)向けのマーケティング
④ Y世代(79-85年生まれ)やZ世代(85-91年生まれ)のような年代別グループ
ではなく、ソーシャルメディアが生んだティーンから20代の集団グループ。
⑤「C = Connected Collective Consumer」
⑥面白いアイデアや社会的な話題・運動・動向でつながっていたいと望む集団に
参加し共感することで、自分を形成する。
⑦情報発信や、社会貢献によって、自分を形成する。
⑧複数の集団に参加する。
(3)キリスト教界の将来は、「C世代」が担う。
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