ローマ人への手紙(41)—拒否の解決(2)—

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異邦人の救いの目的について学ぶ。
チャート「神の義の啓示」

「拒否の解決(2)―異邦人の救い―」

1.はじめに

  (1)末日聖徒イエス・キリスト教会のこと

    ①今では「モルモン教」とは言わない。

    ②Church of Jesus Christ of Latter-day Saints(LDS)

    ②異端や新興宗教を信じることは、「ばくち」の世界に似ている。

    ③聖書的信仰は、文脈の中で捉える必要がある。

      *日本の伝道における人間関係の文脈

      *キリスト教を歴史観として捉えることの重要性

  (2)ロマ書9~11章の文脈

    ①拒否の現実:イスラエル人の一部しか救われていないのは、神の計画である。

    ②拒否の理由:イスラエルの拒否の理由は、彼らの頑なさにある。

      *イスラエルの頑なさは、神の義についての無知から来ている。

    ③拒否の解決:神の計画通りに進んでいる。

*レムナントの存在がある。イスラエル全体が拒否したのではない。

    (3)きょうの箇所

      ①イスラエルの拒否は一時的である。

      ②やがてイスラエルは民族的救いを経験する。

      ③終末論は、イスラエルの救いを土台にして考えなければ、開かれてこない。

  2.アウトライン

    (1)異邦人の救いの目的(11~12節)

    (2)パウロの異邦人伝道の目的(13~16節)

    (3)異邦人への警告(17~21節)

    (4)まとめ(22~24節)

  3.メッセージのゴール(適用)

    (1)異邦人信者の使命

(2)置換神学からの脱却

このメッセージは、異邦人の救いの目的について学ぼうとするものである。

Ⅰ.
異邦人の救いの目的(11~12節)

  1.11a

  「では、尋ねましょう。彼らがつまずいたのは倒れるためなのでしょうか」(新改訳)

  「では、尋ねよう。ユダヤ人がつまずいたとは、倒れてしまったということなのか」

(新共同訳)

  (1)訳の違い

    ①新改訳は、「目的」という意味で訳している。

    ②新共同訳は、「結果」という意味で訳している。こちらの方がよい。

  (2)「彼ら」とは、大半のユダヤ人のこと。

    ①レムナントではない、不信仰なユダヤ人。

    ②ロマ9:30~33

  (3)「つまずいた」とは、メシアを拒否したということ。

  (4)「倒れる」とは、決定的な失敗のこと。

    ①ギリシア語で「ピプトウ」という。

    ②再び立ち上がることのできない、修復不可能な倒れ方のこと。

2.11b

「絶対にそんなことはありません。かえって、彼らの違反によって、救いが異邦人に及ん

だのです。それは、イスラエルにねたみを起こさせるためです」

  (1)「絶対にそんなことはありません」

    ①ギリシア語で「メイ・ゲノイト」。

    ②英語で「God forbid」。

    ③神の忠実な性質から考えて、あり得ないこと。

    ④新約聖書に15回出てくる。

      *14回がパウロによる使用

      *11回がロマ書に出てくる。

      *3回がガラテヤ書に出てくる。

      *修辞疑問文が多い箇所では、これは当然である。

    (2)神の人類救済計画のステップ

      ①イスラエルの大半がメシアを拒否する。

      ②その結果、救いが異邦人に行く。

      ③イスラエルがねたみを起こし、やがて民族的救いを経験する。

      (例話)放蕩息子のたとえ話

  (3)「それは、イスラエルにねたみを起こさせるためです」

    ①すでにロマ10:19に出ていた。

      「でも、私はこう言いましょう。『はたしてイスラエルは知らなかったのでしょう

か。』まず、モーセがこう言っています。『わたしは、民でない者のことで、あな

たがたのねたみを起こさせ、無知な国民のことで、あなたがたを怒らせる。』

  ②申32:21からの引用

  ③ギリシア語で「パラゼイロタイ」という動詞。

    *パラ(そばにいる)

    *ゼイロタイ(嫉妬させる)

  3.12節

  「もし彼らの違反が世界の富となり、彼らの失敗が異邦人の富となるのなら、彼らの完成

は、それ以上の、どんなにかすばらしいものを、もたらすことでしょう」

  (1)小から大への議論がある。

  (2)小とは、「彼らの違反が世界の富となり、彼らの失敗が異邦人の富となる」。

    ①「彼らの違反」、「彼らの失敗」とは、メシアを拒否したこと。

    ②「世界の富となる」とは、人類にとって益となるということ。

    ③「異邦人の富となる」とは、異邦人が救われるということ。

  (3)大とは、「彼らの完成」と、それがもたらす祝福のこと。

    ①「彼らが全部救われたなら」(口語訳)

    ②「彼らが皆救いにあずかる」(新共同訳)

    ③ギリシア語で「プレイロウマ」。

    ④英語で「their fulness」。

    ⑤それがもたらす祝福とは、メシアの再臨、千年王国の成就。

Ⅱ.パウロの異邦人伝道の目的(13~16節)

  1.13節

  「そこで、異邦人の方々に言いますが、私は異邦人の使徒ですから、自分の務めを重んじ

ています」(新改訳)

「では、あなたがた異邦人に言います。わたしは異邦人のための使徒であるので、自分の

務めを光栄に思います」(新共同訳)

    (1)「あなたがた」という言葉に強調点がある。

      ①ロマ9~11章は、イスラエルの救いについて論じている箇所である。

      ②突然パウロは、このテーマが異邦人にも関係していることを思い出させている。

    (2)「異邦人の使徒」

      ①定冠詞がないので、「an apostle of Gentiles」である。

      ②つまり、他にも異邦人伝道をしている人がいたということ。

    (3)「自分の務めを重んじています」

      ①ギリシア語では「ドクサゾウ」。

      ②英語では、「glorify」「praise」。

      ③彼はこの務めを、光栄に思っている。

  2.14節

  「そして、それによって何とか私の同国人にねたみを引き起こさせて、その中の幾人でも

救おうと願っているのです」

  (1)異邦人の救いは、イスラエル人にねたみを起こさせる。

    ①11節と同じこと

  (2)「幾人でも」

    ①今は、少数のイスラエル人しか救われない。

②イスラエルの民族的救いは、終末的出来事である。

  3.15節

  「もし彼らの捨てられることが世界の和解であるとしたら、彼らの受け入れられることは、

死者の中から生き返ることでなくて何でしょう」

  (1)12節と対句になっている。小から大への議論。

  (2)小とは

    ①「彼らの捨てられること」

    ②これは、「世界の和解」につながる。つまり、異邦人の救いのこと。

  (3)大とは

    ①「彼らの受け入れられること」

    ②これは、「死者の中から生き返ること」につながる。

      *ユダヤ人の霊的覚醒の素晴らしさを表現している。

  4.16節

  「初物が聖ければ、粉の全部が聖いのです。根が聖ければ、枝も聖いのです」

    (1)民15:17~21 初物奉献の規定

    (2)「初物」と「根」

      ①アブラハム、イサク、ヤコブ(族長たち)

      ②神のために選び分けられたという意味で、聖い。

    (3)「粉の全部」と「枝」

      ①イスラエル全体のこと

      ②民族的救いの根拠

Ⅲ.異邦人への警告(17~21節)

  1.17~18節

  「もしも、枝の中のあるものが折られて、野生種のオリーブであるあなたがその枝に混じ

ってつがれ、そしてオリーブの根の豊かな養分をともに受けているのだとしたら、あなた

はその枝に対して誇ってはいけません。誇ったとしても、あなたが根をささえているので

はなく、根があなたをささえているのです」

  (1)不自然な接ぎ木

    ①通常は、野生種の木に栽培種の枝を接ぐ(粘土をかぶせ、布で覆う)。

    ②パウロの例話は、あり得ない接ぎ木である。

    ③異邦人の救いは、あり得ないことが起こったのだというのがパウロの論点。

    ④24節 「もとの性質に反して」

  (2)例話の内容

   ①折られた枝とは、レムナントでないイスラエル人。

②接ぎ木された野生種の枝とは、異邦人信者。

③「ともに受けている」とは、レムナントとともにという意味。

   ④オリーブの木はイスラエルのことではない。イスラエルはこの木の所有者。

   ⑤この木(根の豊かな養分)は霊的祝福の源である。

    *アブラハム契約のこと

    *神がイスラエルと結んだ契約

    *異邦人は、アブラハム契約の祝福に接ぎ木されたのである。

 (3)例話の適用

   ①誇ってはならない。

   ②異邦人信者は、根によって支えられている。

  2.19~21節

  「枝が折られたのは、私がつぎ合わされるためだ、とあなたは言うでしょう。そのとおり

です。彼らは不信仰によって折られ、あなたは信仰によって立っています。高ぶらないで、

かえって恐れなさい。もし神が台木の枝を惜しまれなかったとすれば、あなたをも惜しま

れないでしょう」

  (1)これは、一度救われても、その救いを失う可能性があるという教えではない。

①これは、イスラエル人と異邦人の対比である。

②個人の救いを論じているのではない。

    (2)この聖句から、誤った結論を出してはならない。

      ①これは、「霊的祝福の源」から切り離されるという意味。

      ②神の矯正的裁きが来る。

      ③頑なな状態に放置される。

Ⅳ.まとめ(22~24節)

  1.22節

  「見てごらんなさい。神のいつくしみときびしさを。倒れた者の上にあるのは、きびしさ

です。あなたの上にあるのは、神のいつくしみです。ただし、あなたがそのいつくしみの

中にとどまっていればであって、そうでなければ、あなたも切り落とされるのです」

  (1)神の性質:いつくしみときびしさのバランス

    ①いつくしみを強調すると、普遍的救いに流れやすい。

    ②きびしさを強調すると、喜びのないクリスチャン生活になる。

  (2)イスラエルの上にある「きびしさ」を見ると、信仰に留まることの必要性を学ぶ。

  2.23~24節

  「彼らであっても、もし不信仰を続けなければ、つぎ合わされるのです。神は、彼らを再

びつぎ合わすことができるのです。もしあなたが、野生種であるオリーブの木から切り取

られ、もとの性質に反して、栽培されたオリーブの木につがれたのであれば、これらの栽

培種のものは、もっとたやすく自分の台木につがれるはずです」

  (1)大から小の議論

    ①大は、異邦人の接ぎ木。

    ②小は、イスラエル人の接ぎ木。

  (2)「自分の台木」

    ①神がイスラエルと結んだ4つの無条件契約

      *アブラハム契約

      *土地の契約

      *ダビデ契約

      *新しい契約

    ②彼らを押しとどめているのは、不信仰だけである。

結論

  1.異邦人信者の使命

    (1)ユダヤ人に「ねたみ」を起こさせること

      ①クリスチャンという名称は、「メシア」と関係がある。

      ②異邦人信者は、ユダヤ人のメシア待望を先に体験した人々である。

      ③私たちは、メシアニック・ジャパニーズである。

      ④米国の調査では、メシアニック・ジューの大半が異邦人の伝道で救われている。

     (例話)フルクテンバウム師の救い:Ruth Wardellの導き

    (2)教会は、ユダヤ人に「ねたみ」ではなく、「怒り」を起こさせてきた。

  2.置換神学からの脱却

    (1)きょうの箇所には、傲慢な異邦人信者へのパウロの怒りが見える。

      ①イスラエルが不信仰に陥ったので、イスラエルを見下す異邦人がいた。

     ②彼らは、異邦人の救いこそ神の計画のクライマックスであると考えた。

     ③聖書のクライマックスは、神の計画がすべて成就し、神の栄光が現れること。

  (2)置換神学の内容

      ①イスラエルは不信仰のゆえに、契約の民としての特権を失った。

      ②旧約聖書でイスラエルに約束されていた祝福の預言は、教会が引き継いだ。

        *「イスラエル」という言葉を、異邦人教会に適用する。

        *当然、教会を「新しいイスラエル」、「霊的イスラエル」と呼ぶようになる。

      ③基本的には、反ユダヤ的神学である。

      ④もしイスラエルと結んだ契約が破棄されたとするなら、私たちの救いも破棄さ

れる可能性がある。

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