メシアの生涯(84)—嵐の海での弟子訓練—

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嵐の海での弟子訓練を通して、自らのクリスチャン生活を吟味する。

「嵐の海での弟子訓練」

§074 マタ14:24~33

§075 マコ6:53~56

1.はじめに

  (1)文脈の確認

    ①5,000千人のパンの奇跡の目的は、弟子訓練であった。

    ②きょうの箇所も、中心テーマは弟子訓練である。

    ③弟子訓練のテーマは、私たちへの適用を多く含む。

    ④前回の箇所は、以下の内容で終わった。

      *群衆がイエスを王にしようとした。

      *イエスは弟子たちを強いて舟に乗り込ませて、向こう岸へ行かせた。

      *イエス自身は、祈るために、ひとりで山に登られた。

  (2)A.T.ロバートソンの調和表

      「嵐の海で苦闘する弟子たち」(§74)

マコ6:47~52、マタ14:24~33、ヨハ6:16~21

「ゲネサレでの歓迎」(§75)

マコ6:53~56、マタ14:34~36

2.アウトライン

  (1)弟子たち全員の訓練

  (2)ペテロの訓練

  (3)訓練の結果

  (4)群衆と弟子たちの対比

  3.結論:

    (1)弟子訓練の内容

    (2)私たちへの適用

嵐の海での弟子訓練を通して、自らのクリスチャン生活を吟味する。

Ⅰ.弟子たち全員の訓練

  1.訓練に入る前の状況

(1)イエスが弟子たちを強いて舟に乗り込ませた理由

      ①彼らを群衆から遠ざけるため。

      ②5,000人のパンの奇跡の意味を考えさせるため。

      ③イエス自身は、祈るために山に登られた。

    (2)そして、「夕方になった」。

      ①日没になったということ。

      ②これは、ガリラヤ湖に西風が吹く時間帯である。

  2.24節

「しかし、舟は、陸からもう何キロメートルも離れていたが、風が向かい風なので、波に

悩まされていた」

(1)最初は順調な船出であったのだろう。

①陸からは何キロも離れた。

(2)次に逆風が吹いてきた。

①弟子たちは湖上を西に向かっていた。

        *ベツサイダ・ユリアス(ガリラヤ湖の東側)

        *ギノサレ(ガリラヤ湖の西側)

      ②逆風は、弟子訓練にとって不可欠の要素である。

   (3)舟は、波に悩まされていた。

    ①「バサニゾウ」という動詞。内面的な動揺、葛藤、痛みなどを指す。

    ②舟が悩まされていたとは、舟の中の弟子たちのことである。

    ③ここでは、死への恐れが問題なのではない。

*長時間の格闘から来る疲れ

*思い通りにならないこと

*意気消沈

  3.25節

「すると、夜中の三時ごろ、イエスは湖の上を歩いて、彼らのところに行かれた」

   (1)「夜中の三時ごろ」

    ①「第4の見張り時間」(the fourth watch of the night)

    ②午後6時から午前6時を4区分するのがローマ式(ユダヤ式は3区分)

    ③「第4の見張り時間」は、午前3時から6時の間である。

    ④弟子たちは、6~9時間、湖の上で格闘していたことになる。

    ⑤神の助けはすぐに来なくても、そこには意味がある。

  (2)イエスは見ておられる。

  「イエスは、弟子たちが、向かい風のために漕ぎあぐねているのをご覧になり、夜中

の三時ごろ、湖の上を歩いて、彼らに近づいて行かれたが、そのままそばを通り過ぎ

ようとのおつもりであった」(マコ6:48)

  (3)「イエスは湖の上を歩いて、彼らのところに行かれた」

     ①旧約聖書で水に関する奇跡を行った人物が4人いる。

*モーセ、ヨシュア、エリヤ、エリシャ

      ②しかし、水の上を歩いた者はいない。

      ③イエスには、自然界を支配する権威がある。

  4.26~27節

  「弟子たちは、イエスが湖の上を歩いておられるのを見て、『あれは幽霊だ』と言って、

おびえてしまい、恐ろしさのあまり、叫び声を上げた。しかし、イエスはすぐに彼らに話

しかけ、『しっかりしなさい。わたしだ。恐れることはない』と言われた」

     (1)「あれは幽霊だ」と言った理由

      ①月明かりだけが頼りの湖面

      ②人のような姿をした者が、湖の上を歩いて近づいてくる。

      ③人は湖の上を歩けない。

      ④それゆえ、その者は「霊」である。

        *「ファンタスマ」

        *ユダヤ教の教えの中にはないが、古代世界の民間信仰にはある。

        *漁師の迷信の影響も見られる。

      ⑤ここでは、彼らは本気で恐れている。

    (2)「しっかりしなさい。わたしだ。恐れることはない」

       ①イエスはすぐに彼らに話しかけている。近くにおられた。

      ②「わたしだ」は、「It is I.」とも、「I am.」とも取れる。

      ③後者の場合は、イエスの神性宣言である(出3:14、イザ43:10、13)。

Ⅱ.ペテロの訓練

   はじめに

①マタ14:28~31は、マタイの福音書にだけ出てくる情報である。

      ②予期せぬ形でペテロの信仰訓練が始まった。

  1.28節

  「すると、ペテロが答えて言った。『主よ。もし、あなたでしたら、私に、水の上を歩い

てここまで来い、とお命じになってください』」

   (1)ペテロはイエスの力を試しているのではない。

    ①彼は、イエスに対する信頼を告白しているのである。

    ②彼は、旧約聖書の聖人たちでさえもしなかったことを願っている。

    ③さらに言うならば、彼は奇跡を求めているのではなく、イエスに近づくことを

求めているのである。

  (2)イエスの弟子は、イエスが行うのと同じことを行うようになる。

    ①ペテロは、この真理を理解し始めていた。

   2.29節

  「イエスは『来なさい』と言われた。そこで、ペテロは舟から出て、水の上を歩いてイエ

スのほうに行った」

   (1)信仰に「本音と建て前」はない。

    ①イエスは、ペテロの願いを叱責していない。

    ②ただ単に、「来なさい」と命じられただけである。

  (2)著者の強調点は、イエスのほうに行ったという点である。

    ①舟から出たのは、そのためである。

    ②水の上を歩いたのも、そのためである。

3.30節

「ところが、風を見て、こわくなり、沈みかけたので叫び出し、『主よ。助けてください』

と言った」

   (1)風を見た。

    ①大きな船のデッキから風を見るのと、海の中で風を見るのとは大違いである。

    (例話)鳥かごの中のハブ、サイに追われた経験

    ②信仰が働いていた時は、イエスの力によって重力の法則に逆らうことができた。

    ③風を見たとたんに、普段通り重力の法則に支配されるようになった。

  (2)漁師である彼が、恐れた。

    ①「主よ。助けてください」は「主よ。すぐに助けてください」という意味。

    ②これは、祈りである。

  4.31節

  「そこで、イエスはすぐに手を伸ばして、彼をつかんで言われた。『信仰の薄い人だな。

なぜ疑うのか』」

   (1)マタ8:26

  「イエスは言われた。『なぜこわがるのか、信仰の薄い者たちだ。』それから、起き上

がって、風と湖をしかりつけられると、大なぎになった」

  ①先ず、弟子たちの不信仰を叱責した。

  ②次に、嵐を静めた。

(2)ここでは順序が逆である。

  ①先ず、ペテロを助けた。

  ②次に、叱責した。

Ⅲ.訓練の結果

   1.32~33節

  「そして、ふたりが舟に乗り移ると、風がやんだ。そこで、舟の中にいた者たちは、イエ

スを拝んで、『確かにあなたは神の子です』と言った」

   (1)ペテロは、イエスに抱えられて、嵐の湖の上を歩きながら舟に戻った。

    ①その瞬間、風がやんだ。

    ②これは、偶然ではない。

  (2)マコ6:51~52

  「そして舟に乗り込まれると、風がやんだ。彼らの心中の驚きは非常なものであった。

というのは、彼らはまだパンのことから悟るところがなく、その心は堅く閉じていた

からである」

(3)舟の中で礼拝が始まった。

    ①「確かにあなたは神の子です」

     ②彼らは、イエスの神性を認めた。

  

(4)ヨハ6:21によれば、イエスが舟に乗ると、舟はすぐに目的地に着いた。

Ⅳ.群衆と弟子たちの対比

  1.マコ6:53~55

  「彼らは湖を渡って、ゲネサレの地に着き、舟をつないだ。そして、彼らが舟から上がる

と、人々はすぐにイエスだと気がついて、そのあたりをくまなく走り回り、イエスがおら

れると聞いた場所へ、病人を床に載せて運んで来た」

    (1)ゲネサレの地(ギノサレ)

      ①ガリラヤ湖の北西に広がる横3キロ、縦10キロほどの肥沃な地。

      ②「神の園」、「パラダイス」などと称せられた。

      ③今は、ノフ・ギノサレという場所がある(イエスの舟の展示場)。

    (2)イエスは人々から大いに歓迎された。

  2.マコ6:56

  「イエスが入って行かれると、村でも町でも部落でも、人々は病人たちを広場に寝かせ、

そして、せめて、イエスの着物の端にでもさわらせてくださるようにと願った。そして、

さわった人々はみな、いやされた」

   (1)彼らの信仰が表面的なものであることは、すぐに明らかになる。

  (2)それに対して、弟子たちの信仰は、質の異なる段階へと成長していった。

結論:

  1.弟子訓練の内容

    (1)前回の嵐の中の舟の場面

      ①イエスは舟の中で眠っていた。

      ②弟子たちは嵐を恐れた。ここには誤解はない。

      ③イエスは、彼らの不信仰を叱責された。

    (2)今回の状況

      ①イエスは舟の中にはいなかった。

      ②弟子たちは、嵐ではなくイエスを恐れた。ここには、誤解がある。

      ③これは私たちの体験でもある。

      ④創42:36

      「父ヤコブは彼らに言った。『あなたがたはもう、私に子を失わせている。ヨセ

フはいなくなった。シメオンもいなくなった。そして今、ベニヤミンをも取ろう

としている。こんなことがみな、私にふりかかって来るのだ』」

    (3)嵐は、弟子訓練のために必要不可欠なものである。

      ①弟子たちは、困難な状況の中でもイエスに信頼するように訓練を受けた。

  2.私たちへの適用(ペテロの体験)

    (1)衝動的信仰

      ①決して悪いことではない。

      ②しかし、これだけでは不十分である。

  

    (2)力ある信仰

      ①実際に、水の上を歩いてイエスのもとに行けた。

    (3)途切れ途切れの信仰

      ①イエスから目が離れた。

      ②その時、ペテロは普通の人に戻ってしまった。

      ③ヘブ12:2

      「信仰の創始者であり、完成者であるイエスから目を離さないでいなさい。イエ

スは、ご自分の前に置かれた喜びのゆえに、はずかしめをものともせずに十字架

を忍び、神の御座の右に着座されました」

    (4)回復された信仰

      ①祈りによる回復

    ②リビングバイブル訳は、問題がある。

「ところが、高波を見てこわくなり、沈みかけたので、大声で、『助けてくれー

っ』と叫びました」(マタ14:30)

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