私たちはプロテスタントのキリスト教福音団体です。『1. 聖書のことばを字義どおりに解釈する 2. 文脈を重視する 3. 当時の人たちが理解した方法で聖書を読む 4. イスラエルと教会を区別する』この4点を大切に、ヘブル的聖書解釈を重視しています。詳しくは私たちの理念をご確認ください。
メシアの生涯(76)—長血の女とヤイロの娘(1)—
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イエスの弟子訓練から学ぶ
「長血の女とヤイロの娘(1)」
§067 マコ5:21~34
1.はじめに
(1)文脈の確認
①イエスの奇跡は、弟子訓練を目的としたものとなった。
②この箇所の奇跡も、弟子訓練という文脈の中で読まねばならない。
③イエスの行い(奇跡)が、イエスのことば(教え)の真実性を証明する。
(2)連続して起こる奇跡
①自然界の支配
②悪霊の追い出し
③不治の病の癒し
④死者の蘇生
(3)A.T.ロバートソンの調和表
「ヤイロの娘と、イエスの着物を触った女の癒し」(§67)
マコ5:21~43、マタ9:18~26、ルカ8:40~56
(4)サンドイッチ構造
①ヤイロの懇願 → 長血の女の癒し → ヤイロの娘の蘇生
②今回は、長血の女の癒しを取り上げる。
2.アウトライン
(1)会堂管理者ヤイロ(21~24節)
(2)長血の女(25~34節)
3.結論:
(1)弟子訓練の内容
(2)中断(妨害)への対処
イエスの弟子訓練から学ぶ。
Ⅰ.会堂管理者ヤイロ(21~24節)
1.21節
「イエスが舟でまた向こう岸へ渡られると、大ぜいの人の群れがみもとに集まった。イエ
スは岸べにとどまっておられた」
(1)イエスは、ユダヤ人地区に戻られた。
①恐らくカペナウム近辺であろう。
②いつものように、大ぜいの人が集まって来た。
2.22~23節
「すると、会堂管理者のひとりでヤイロという者が来て、イエスを見て、その足もとにひ
れ伏し、いっしょうけんめい願ってこう言った。『私の小さい娘が死にかけています。ど
うか、おいでくださって、娘の上に御手を置いてやってください。娘が直って、助かるよ
うにしてください』」
(1)ヤイロという名の会堂管理者
①建物の管理、礼拝の秩序の維持
②巻物を渡す「係りの者」とは別である(ルカ4:20)。
③その共同体の長老のひとりである。
④カペナウムには会堂の遺跡があるが、その会堂の管理者かどうかは分からない。
⑤会堂管理者全員がイエスに敵対していたわけではない。
(2)ヤイロの信仰
①彼は、イエスの足元にひれ伏した。
②彼は、イエスに対する信仰を持った。
③イエスは、新しい方針を採用しておられた。
④イエスに対する信仰を持った者だけを癒される。
(3)ヤイロの娘
①瀕死の状態であった。
②「12歳ぐらいのひとり娘」(ルカ8:42)
③「娘の上に御手を置いてやってください」
*当時の癒しの方法
*癒し手から力が流れ出すという認識があった。
④マコ6:4~5
「イエスは彼らに言われた。『預言者が尊敬されないのは、自分の郷里、親族、家
族の間だけです。』それで、そこでは何一つ力あるわざを行うことができず、少数
の病人に手を置いていやされただけであった」
3.24節
「そこで、イエスは彼といっしょに出かけられたが、多くの群衆がイエスについて来て、
イエスに押し迫った」
(1)イエスは、群衆に取り囲まれて、身動きの取れない状態になった。
Ⅱ.長血の女(25~34節)
1.25~26節
「ところで、十二年の間長血をわずらっている女がいた。この女は多くの医者からひどい
めに会わされて、自分の持ち物をみな使い果たしてしまったが、何のかいもなく、かえっ
て悪くなる一方であった」
(1)モーセの律法が教える儀式的汚れ
①レビ15:25~27
「もし女に、月のさわりの間ではないのに、長い日数にわたって血の漏出がある
場合、あるいは月のさわりの間が過ぎても漏出がある場合、その汚れた漏出のあ
る間中、彼女は、月のさわりの間と同じく汚れる。彼女がその漏出の間中に寝る
床はすべて、月のさわりのときの床のようになる。その女のすわるすべての物は、
その月のさわりの間の汚れのように汚れる。これらの物にさわる者はだれでも汚
れる。その者は衣服を洗い、水を浴びる。その者は夕方まで汚れる」
②民19:11
「どのような人の死体にでも触れる者は、七日間、汚れる」
(2)12年の間、長血をわずらっている女
①肉体的苦痛
*当時は平均年齢が40歳前後
*思春期からこの病に苦しみ出したと思われる。
*彼女の、成人女性としての生活の半分を苦しみの中で過ごした。
②社会的・霊的苦痛
*イスラエル共同体の行事や礼拝に参加できない。
*未婚か、離婚した女性であろう。
*孤独な人生
*ラビたちは、汚れに触れることを恐れて、女性そのものに触れなかった。
(3)医者からひどいめに会された。
①ルカには、この表現はない。
②財産を使い果たしたが、病気の癒しはなかった。
2.27~29節
「彼女は、イエスのことを耳にして、群衆の中に紛れ込み、うしろから、イエスの着物に
さわった。『お着物にさわることでもできれば、きっと直る』と考えていたからである。
すると、すぐに、血の源がかれて、ひどい痛みが直ったことを、からだに感じた」
(1)彼女にはイエスに対する信仰があった。
①イエスの噂を聞いていた。
②群衆の中に紛れ込んだ。
*本来はあり得ない行動である。
(2)「イエスの着物にさわった」
①彼女がさわったのは、着物のふさである。
②申 22:12
「身にまとう着物の四隅に、ふさを作らなければならない」
③ルカ8:44a
「イエスのうしろに近寄って、イエスの着物のふさにさわった。すると、たちど
ころに出血が止まった」
④彼女は密かに癒しを受け取ろうとした。
(3)彼女は、ただちに癒しが起こったことを自覚した。
①イエスは何も行動を起こしていない。
②彼女の信仰と、弟子たちの信仰の対比
3.30~31節
「イエスも、すぐに、自分のうちから力が外に出て行ったことに気づいて、群衆の中を振
り向いて、『だれがわたしの着物にさわったのですか』と言われた。そこで弟子たちはイ
エスに言った。『群衆があなたに押し迫っているのをご覧になっていて、それでも「だれ
がわたしにさわったのか」とおっしゃるのですか』」
(1)イエスの認識
①イエスが自覚しないままで、力が外に出て行くことはない。
②イエスは、だれが着物にさわったかを知っておられた。
③物理的に触れることと、信仰によって触れることとは、大いに異なる。
*そこには、力の流れと、癒しがある。
④イエスは、この女に信仰について教えようとされた。
⑤また、公の信仰告白を引き出し、彼女を正常な生活に戻そうとされた。
(2)弟子たちの認識
①誰もかれもがイエスに押し迫っているのに、その質問はおかしいと考えた。
②彼らには、何が起こったかを知る力がなかった。
4.32~34節
「イエスは、それをした人を知ろうとして、見回しておられた。女は恐れおののき、自分
の身に起こった事を知り、イエスの前に出てひれ伏し、イエスに真実を余すところなく打
ち明けた。そこで、イエスは彼女にこう言われた。『娘よ。あなたの信仰があなたを直し
たのです。安心して帰りなさい。病気にかからず、すこやかでいなさい』」
(1)女は、公に証しをした。
①彼女は密かに去ろうとしていたが、これによって平安を得た。
(2)イエスは彼女の神学を正された。
①「あなたの信仰があなたを直したのです」
②「安心して帰りなさい。病気にかからず、すこやかでいなさい」
③イエスの優しさが溢れている言葉である。
5.35節
「イエスが、まだ話しておられるときに、会堂管理者の家から人がやって来て言った。『あ
なたのお嬢さんはなくなりました。なぜ、このうえ先生を煩わすことがありましょう』」
(1)娘は亡くなった。
①もう死んだのだから、イエスに来てもらう必要はなくなった。
②さあ、イエスはどうするのか。
③ヤイロは、どうするのか。
結論:
1.弟子訓練の内容
(1)長血の女が受けた信仰の訓練
①迷信的信仰、儀式的信仰から、イエスに信頼する信仰への移行
(2)ヤイロが受けた信仰の訓練
①イエスには、不治の病をいやす力があるという信仰
②さらに、死者を甦らせる力があるという信仰への飛躍
(3)弟子たちが受けた信仰の訓練
①イエスの権威の再発見
②弟子集団外の者たちが発揮する信仰からの教訓
2.中断(妨害)への対処
(1)ヤイロの視点から見ると、長血の女は「妨害」である。
①早くイエスに自分の家に来てほしい。
②娘のことを考えると、一刻の猶予もならない。
③彼は、娘が死んだという知らせを受け取った。
(2)イエスの視点から見ると、「妨害」は祝福である。
①長血の女の癒しは、ヤイロの信仰に励ましを与えた。
②娘が死んだので、イエスの力がより鮮明に表れることになる。
(3)私たちの人生における計画の中断
(例話)土曜日にカウンセリングを求めてきた女性信者
①自分の計画を妨害することが起こったなら、それを神の使いと考えよ。
②それは、私たちの自己中心性を粉砕する。
③自分の計画ではなく、神の御心だけが成るという信仰へ私たちを導く。
④計画が中断された時、私たちは、神に捧げる時間を与えられたのである。
(例話)マケドニヤの幻
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