ルカの福音書(89)カエサルへの納税に関する質問 -クリスチャンが税金を納める理由-20:19~26

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カエサルへの納税に関する質問について学ぶ。

ルカの福音書 89回

カエサルへの納税に関する質問 -クリスチャンが税金を納める理由-

20 :19~26

1.はじめに

(1)エルサレムでの奉仕が始まった(19:28~21:38)。

  ①勝利の入城(19:28~44)

  ②諸々の教え(19:45~21:4)

  ③神殿崩壊の予告(21:5~36)

  ④まとめ(21:37~38)

(2)諸々の教え(19:45~21:4)

  ①宮きよめ(19:45~46)

  ②イエスの教えの要約(19:47~48)

  ③権威に関する論争(20:1~8)

  ④ぶどう園の農夫のたとえ話(20:9~18)

  ⑤カエサルへの納税に関する質問(20:19~26)

  ⑥復活に関する質問(20:27~40)

  ⑦ダビデの子に関する質問(20:41~44)

  ⑧律法学者の偽善(20:45~47)

  ⑨やもめの献金(21:1~4)

(3)挑戦の目的は2つある。

  ①群衆を誘導し、イエスに敵対させること

  ②イエスがローマ法に違反しているという口実を見つけること

2.アウトライン

(1)質問の背景(19~20節)

(2)質問の内容(21~22節)

(3)イエスの回答(23~25節)

(4)回答の結果(26節)

3. 結論

(1)2種類の権威

(2)神への従順

カエサルへの納税に関する質問について学ぶ。

Ⅰ.質問の背景(19~20節)

1.19節

Luk 20:19

律法学者たちと祭司長たちは、このたとえ話が自分たちを指して語られたことに気づいた。それでそのとき、イエスに手をかけて捕らえようとしたが、民を恐れた。

(1)「このたとえ話」とは、「ぶどう園の農夫のたとえ話」である。

  ①結論は、20章16節である。

Luk 20:16
主人はやって来て農夫たちを殺し、ぶどう園をほかの人たちに与えるでしょう。」/これを聞いた人たちは、「そんなことが起こってはなりません」と言った。

  ②神の国は、今の指導者たちから取り去られ、将来の忠実な世代に与えられる。

  ③律法学者たちと祭司長たちは、自分のことが言われていることに気づいた。

(2)彼らは、イエスに対する敵対心を募らせた。

  ①そこで、イエスに手をかけて捕えようとした。

  ②しかし、民衆を恐れたので、それができなかった。

2.20節

Luk 20:20

さて、機会を狙っていた彼らは、義人を装った回し者を遣わした。イエスのことばじりをとらえて、総督の支配と権威に引き渡すためであった。

(1)彼らは、イエスを罠にかける機会をうかがっていた。

  ①義人を装った回し者を遣わした。

  ②「回し者」とは、動機を隠して義人のように振舞うスパイである。

(2)マタ22:16によれば、首謀者はパリサイ人たちである。

  ①彼らは、弟子たちをヘロデ党の者たちといっしょに、イエスのもとに送った。

(3)パリサイ人の特徴

  ①政治的には、ローマの支配を認めない。反体制派である。

  ②カエサルを認めることは、【主】を否定することであると教えていた。

  ③カエサルに税を納めるのは、ローマの権威を認めることである。

(4)ヘロデ党の者の特徴

  ①彼らは、政治的グループである。

  ②彼らは、ヘロデ大王の統治を積極的に支持した人たちである。

  ③彼らは、ヘロデ・アンティパスを初めとするヘロデの家系を支持していた。

  ④彼らは、ヘロデ家の中からユダヤの王になる者が出ることを期待していた。

  ⑤彼らは、ローマの支配を受け入れている現実主義者たちであった。

  ⑥しかし、ポンティオ・ピラトがユダヤの総督であることを喜んでいない。

  ⑦民衆の暴動が原因で、ローマがより強力な統治体制を取ることを恐れていた。

Ⅱ.質問の内容(21~22節)

1.21節

Luk 20:21

彼らはイエスにこう質問した。「先生。私たちは、あなたがお話しになること、お教えになることが正しく、またあなたが人を分け隔てせず、真理に基づいて神の道を教えておられることを知っています。

(1)最初の語りかけのことば

  ①彼らは、イエスを信じていなかったが、口では別のことを言っている。

  ②誰かが、ほめことばをもって近づいてくるときは、注意が必要である。

(2)彼らは、律法に関するイエスの教え受け入れているかのように振舞った。

  ①その上で、律法のある点について説明を求めた。

2.22節

Luk 20:22ところで、私たちがカエサルに税金を納めることは、律法にかなっているでしょうか、いないでしょうか。」

(1)これは、イエスを罠にかけるための質問である。

  ①カエサルに税金を納めるべきか否かを問うている。

(2)「イエス」と答えれば、どうなるか。

  ①パリサイ人たちの教えとは反対の答えである。

  ②イエスは、民衆の支持を失う。

  ③熱心党の者たちは、強く反発する。

(3)「ノー」と答えれば、どうなるか。

  ①親ローマのヘロデ党の者たちを怒らせる。

  ②パリサイ人たちに、ポンティオ・ピラトの前でイエスを訴える口実を得る。

  ③ルカ23:2

Luk 23:2
そしてイエスを訴え始めて、こう言った。「この者はわが民を惑わし、カエサルに税金を納めることを禁じ、自分は王キリストだと言っていることが分かりました。」

Ⅲ.イエスの回答(23~25節)

1.23~24節

Luk 20:23 イエスは彼らの悪巧みを見抜いて言われた。

Luk 20:24

「デナリ銀貨をわたしに見せなさい。だれの肖像と銘がありますか。」彼らは、「カエサルのです」と言った。

(1)イエスは、彼らの悪巧みを見抜いておられた。

  ①その上で、彼らに視聴覚教育を施された。

(2)イエスは、納税のためのコインを要求した。

  ①神殿内では、ローマのコインは使用できない。

  ②神殿税のために使用する貨幣は、ユダヤの銅貨である。

  ③両替商は、高い手数料を取っていた。大祭司のファミリービジネスであった。

  ④イエスが宮清めの際に倒したのは、両替人の台である(ヨハ2:15)。

(3)ローマに税を納めるための貨幣は、デナリ銀貨である。

  ①そこには、神格化されたカエサルの肖像と銘が刻まれていた。

    *おそらく皇帝ティベリウス(14~37年)であろう。

    *「Tiberius Caesar Augustus, son of the Divine Augustus」

  ②これは、ユダヤ人を支配しているのがローマであることを示していた。

  ③また、ユダヤ人はローマの徴税制の下にいることを示していた。

(4)彼らは、「カエサルのです」と言わざるを得なかった。

  ①彼らは、日々、ローマの支配下にあることを痛感していた。

2.25節

Luk 20:25

すると、イエスは彼らに言われた。「では、カエサルのものはカエサルに、神のものは神に返しなさい。」

(1)「カエサルのものはカエサルに」

  ①ローマから行政サービスを受けているので、徴税は合法的なことである。

  ②彼らは、ローマの統治による恩恵を被っていた。

  ③ローマのコインを用いている、道路を使用している、平和を享受している。

  ④彼らには、ローマに税を支払う十分な理由があった。

(2)「神のものは神に返しなさい」

  ①すべての人は、その身に「神のかたち」を帯びている。

  ②すべての人は、神の支配の下にある。

  ③それゆえ、神に返すべきものを返す必要がある。

Ⅳ.回答の結果(26節)

1.26節

Luk 20:26

彼らは、民の前でイエスのことばじりをとらえることができず、答えに驚嘆して黙ってしまった。

(1)イエスのことばは、今では広く知られている。

  ①初めてこれを聞いた人たちは、驚嘆した。

  ②論理的にも、律法解釈においても、矛盾はなかった。

(2)彼らは、正しい判断を下した。

  ①彼らは、黙ってしまった。

結論

1.2種類の権威

(1)旧約聖書には、2種類の権威が啓示されている。

  ①神の権威

  ②神から権限が委譲された地上の権威

(2)神はご自身の主権によって、地上の支配者を立てる。

  ①ダニ4:17

Dan 4:17

この宣言は見張りの者たちの決定によるもの、/この要請は聖なる者たちのことばによるもの。/これは、いと高き方が人間の国を支配し、これをみこころにかなう者に与え、また人間の中の最も低い者をその上に立てることを、いのちある者たちが知るためである。』

  ②それゆえ、人間は地上の支配者に従う必要がある。

  ③イエスは、政教分離を教えたのではない。

  ④地上の権威に従うことは、神に従うことの中に含まれる。

  ⑤この観点に立てば、ローマの支配を拒否するパリサイ人の立場は誤りである。

  ⑥1ペテ2:17

1Pe 2:17 すべての人を敬い、兄弟たちを愛し、神を恐れ、王を敬いなさい。

(3)ただし、神の権威と地上の権威が対立する場合は、神の権威に従う。

  ①使5:29

Act 5:29

しかし、ペテロと使徒たちは答えた。「人に従うより、神に従うべきです。

2.神への従順

(1)パリサイ人たちは、ローマの支配に抵抗しつつも、税は納めていた。

(2)しかし、神の権威には従っていなかった。

  ①神から受けている多くの祝福を忘れていた。

  ②神に対する義務を忘れていた。

  ③何よりも、神の「像」そのものであるイエスを信じなかった。

  ④ヘブ1:3

Heb 1:3

御子は神の栄光の輝き、また神の本質の完全な現れであり、その力あるみことばによって万物を保っておられます。御子は罪のきよめを成し遂げ、いと高き所で、大いなる方の右の座に着かれました。

(3)すべての人は、神の摂理の中で生かされている。

  ①その神に、返すべきものを返さないのは、罪である。

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