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ルカの福音書(88)ぶどう園の農夫のたとえ話 -神の国の延期-20:9~18
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ぶどう園の農夫のたとえ話について学ぶ。
ルカの福音書 88回
ぶどう園の農夫のたとえ話 -神の国の延期-
20 :9~18
1.はじめに
(1)エルサレムでの奉仕が始まった(19:28~21:38)。
①勝利の入城(19:28~44)
②諸々の教え(19:45~21:4)
③神殿崩壊の予告(21:5~36)
④まとめ(21:37~38)
(2)諸々の教え(19:45~21:4)
①宮きよめ(19:45~46)
②イエスの教えの要約(19:47~48)
③権威に関する論争(20:1~8)
④ぶどう園の農夫のたとえ話(20:9~18)
⑤カエサルへの納税に関する質問(20:19~26)
⑥復活に関する質問(20:27~40)
⑦ダビデの子に関する質問(20:41~44)
⑧律法学者の偽善(20:45~47)
⑨やもめの献金(21:1~4)
2.アウトライン
(1)農夫たちへの委託(9節)
(2)3人のしもべたちの派遣(10~12節)
(3)愛する息子の派遣(13~15節a)
(4)適用(15b~18節)
3. 結論
(1)「彼をぶどう園の外に放り出して、殺してしまった」(15節)
(2)「ぶどう園をほかの人たちに与えるでしょう」(16節)
(3)「石」(18節)
ぶどう園の農夫のたとえ話について学ぶ。
Ⅰ.農夫たちへの委託(9節)
1.9節
Luk 20:9
また、イエスは人々に対してこのようなたとえを話し始められた。「ある人がぶどう園を造り、それを農夫たちに貸して、長い旅に出た。
(1)イエスは、このたとえ話を、イエスの教えに好意的な人々に語られた。
①神のことばに積極的に応答するなら、より深い霊的真理を知るようになる。
②イエスを信じない者には、このたとえ話は意味不明であろう。
③このたとえ話の要点
*宗教的指導者たちは、権威を誤用している。
*イエスは預言者よりも権威を持ったお方、神の子である。
*イエスは、殺される。
*イエスの弟子には、忠実な管理者としての責務がある。
(2)当時の主人と農夫の関係
①ローマ帝国の郊外の地(田舎)は、そのほとんどが地主の所有地であった。
②地主は都市生活をし、畑は農夫に委ね、その収穫で裕福な生活をしていた。
*奴隷を使って、農業を営むこともあった。
*畑を貸す場合の相手は、小作農(自由人)であった。
③寛大な地主は人々から尊敬されたが、そのような地主は稀であった。
④このたとえ話に登場する地主は、非常に寛大である。
*こういう地主は、下層階級からは尊敬され、貴族階級からは軽蔑された。
⑤地主は、苦労してぶどう畑を開墾した(マタ21:33)。
(3)このたとえ話の背景には、イザ5:1~2がある。
Isa 5:1
「さあ、わたしは歌おう。/わが愛する者のために。/そのぶどう畑についての、わが愛の歌を。/わが愛する者は、よく肥えた山腹に/ぶどう畑を持っていた。
Isa 5:2
彼はそこを掘り起こして、石を除き、/そこに良いぶどうを植え、/その中にやぐらを立て、/その中にぶどうの踏み場まで掘り、/ぶどうがなるのを心待ちにしていた。/ところが、酸いぶどうができてしまった。
(4)このたとえ話に出てくる用語の意味
①主人は、父なる神。
②ぶどう園は、イスラエル。
③農夫は、イスラエルの指導者たち。
④収穫の時は、御国の開始。
⑤収穫は、神が神の民に期待する霊的実。
⑥しもべたちは、預言者たち。
⑦愛する息子は、イエス。
Ⅱ.3人のしもべたちの派遣(10~12節)
1.10節
Luk 20:10収穫の時になったので、彼は農夫たちのところに一人のしもべを遣わした。ぶどう園の収穫の一部を納めさせるためであった。ところが農夫たちは、そのしもべを打ちたたき、何も持たせないで帰らせた。
(1)収穫の時の小作料の徴収
①小作農は、収穫の時に主人に対して、あらかじめ決められているものを支払う。
②収穫量であったり、率であったりした(最低25%以上)。
③力があるのは小作農ではなく、主人の方である。
④問題のある小作農に対応するために、私兵集団を擁していた主人もいた。
(2)農夫の反抗
①ここでは、農夫たちは、力のある者のように振る舞っている。
②これは、寛大な主人に対する反抗である。
③農夫たちは、主人が遣わしたしもべを苦しめた。
(3)最初のしもべは、捕囚期前の預言者たちである。
①農夫たちは、最初のしもべを打ちたたき、何も持たせないで帰らせた。
2.11節
Luk 20:11そこで別のしもべを遣わしたが、彼らはそのしもべも打ちたたき、辱めたうえで、何も持たせないで帰らせた。
(2)次のしもべは、捕囚期後の預言者たちである。
①「辱めたうえで」ということばが追加されている。
3.12節
Luk 20:12
彼はさらに三人目のしもべを遣わしたが、彼らはこのしもべにも傷を負わせて追い出した。
(1)3人目のしもべは、バプテスマのヨハネとイエスの弟子たちである。
①農夫たちは、このしもべにも傷を負わせて追い出した。
Ⅲ.愛する息子の派遣(13~15節a)
1.13節
Luk 20:13
ぶどう園の主人は言った。『どうしようか。そうだ、私の愛する息子を送ろう。この子なら、きっと敬ってくれるだろう。』
(1)ルカは、この部分を主人の独白として紹介する。
①この文学形式は、内容伝達に「情感」を加えることができる。
②「私の愛する息子」とは、イエスのことである。
③神は、そのひとり子をこの世に遣わされた。
④神は、イスラエルの指導者たちがイエスを受け入れることを期待された。
2.14~15節a
Luk 20:14
ところが、農夫たちはその息子を見ると、互いに議論して『あれは跡取りだ。あれを殺してしまおう。そうすれば、相続財産は自分たちのものになる』と言った。
Luk 20:15a そして、彼をぶどう園の外に放り出して、殺してしまった。
(1)農夫たちは、その息子が跡取りであることを認識したうえで、殺した。
①彼らは、主人の財産を自分のものにしようとした。
②民衆は神の所有物であり、神から指導者たちに委ねられていた。
③指導者たちは、民衆を自分の所有物にしようとした。
④これは、管理者としては最悪の姿である。
⑤彼らは、息子をぶどう園の外に放り出し、殺した。
(2)指導者たちは、イエスが神の子であることを知っていた。
①しかし、彼らはそれを公に認めなかった。
Ⅳ.適用(15b~18節)
1.15b~16節
Luk 20:15b こうなったら、ぶどう園の主人は彼らをどうするでしょうか。
Luk 20:16
主人はやって来て農夫たちを殺し、ぶどう園をほかの人たちに与えるでしょう。」/これを聞いた人たちは、「そんなことが起こってはなりません」と言った。
(1)イエスの質問は、聴衆(指導者たち)に考えさせるためのものである。
①主人はその農夫たちをどうするだろうかというのは、当然の質問である。
②ルカの記録では、イエス自身が答えている。
③主人は農夫たちを殺し、ぶどう園をほかの人に与えるでしょう。
(2)人々は、「そんなことが起こってはなりません」と言った。
①彼らは、イスラエルという国の消滅を予感した。
②彼らは、ユダヤ教の終わりを予感した。
2.17~18節
Luk 20:17
イエスは彼らを見つめて言われた。「では、/『家を建てる者たちが捨てた石、/それが要の石となった』/と書いてあるのは、どういうことなのですか。
Luk 20:18
だれでもこの石の上に落ちれば、粉々に砕かれ、またこの石が人の上に落ちれば、その人を押しつぶします。」
(1)イエスは、彼らを見つめて言われた。
①イエスの教えの厳しさが表現されている。
(2)イエスは、人々の拒否反応に答えるために、詩118:22を引用された。
Psa 118:22 家を建てる者たちが捨てた石/それが要の石となった。
①人々が最も評価しないものが、最も大切なものとなる。
②メシアは拒否されるが、最後には重要な役割を果たすようになる。
(3)この石は、裁きの手段ともなる。
①初臨のメシアにつまずく者は、不信仰のゆえに粉々に砕かれる。
*これは、紀元70年のエルサレム崩壊の預言である。
②再臨のメシアは、諸国を裁くために来られる。
*ダニエル書2章の預言どおりである。
結論
1
.「彼をぶどう園の外に放り出して、殺してしまった」(15節)
(1)イエスが門の外で苦しみを受けることの預言である。
(2)ヘブ13:11~12
Heb 13:11
動物の血は、罪のきよめのささげ物として、大祭司によって聖所の中に持って行かれますが、からだは宿営の外で焼かれるのです。
Heb 13:12
それでイエスも、ご自分の血によって民を聖なるものとするために、門の外で苦しみを受けられました。
①贖罪の日に、罪のきよめのささげ物が献げられる。
②血は、罪を清める供え物である。
③しかし、からだは宿営の外(汚れた地)で焼かれる。
④イエスの犠牲もこれと同じである。
*イエスは、門の外(汚れた地)で苦しまれた。
*イエスの血は、私たちの罪を清める。
⑤それゆえ、イエスが苦しまれたように門の外で苦しみを受けようではないか。
2.「ぶどう園をほかの人たちに与えるでしょう」(16節)
(1)この聖句は、置換神学の根拠とされることが多い。
①神の国は、ユダヤ人から取り去られ教会に与えられる。
(2)文脈を考慮した正しい解釈とは何か。
①神の国は、イエス時代の指導者たちから取り去られる。
②神の国は、将来の世代(大患難時代)の信仰ある指導者たちに与えられる。
*マタ21:43では、「神の国の実を結ぶ民に与えられます」となっている。
*ここでの「民」(エスノス)は、将来の世代の意味である。
3 「石」(18節)
(1)「だれでもこの石の上に落ちれば」
①初臨のメシアにつまずく者は、滅びる。
②イザ8:13~15
*イスラエルにとっては、イエスは妨げの石、つまずきの岩となる。
*多くの者がつまずき、倒れて打ち砕かれ、罠にかかって捕らえられる。
(2)「この石が人の上に落ちれば」
①再臨のメシアは、諸国を裁く。
②ダニ2:35、44
*バビロンの王ネブカドネツァルは、巨大な像の夢を見た。
*像は世界の王国の変遷を示している。
*最後に、1つの石が人手によらずに切り出され、像を打ち砕いた。
*その石は、大きな山となって全地に満ちた。
*その石は、世界の王国を滅ぼす神の国(メシア的王国)である。
*神の国は永遠に立ち続ける。
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