ルカの福音書(81)富の弊害-金持ちも神の国に入れるか-18:18~30

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富の弊害について学ぶ。

ルカの福音書 81回

富の弊害

-金持ちも神の国に入れるか-

18 :18~30

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①ルカは、エルサレムへの旅という枠組みの中に、種々の教えを配置している。

  ②ルカ18:9~19:27は、「エルサレムへの旅」の結論部分である。

  ③ルカ18:8

Luk 18:8
あなたがたに言いますが、神は彼らのため、速やかにさばきを行ってくださいます。だが、人の子が来るとき、はたして地上に信仰が見られるでしょうか。」

  ④ルカは、「地上に信仰が見られるでしょうか」というテーマを展開する。

    *救いは、恵みと信仰による。

    *ルカの強調点は、救われるのはどういう人かという点にある。

(2)ルカ18:9~19:27の内容

  ①パリサイ人と取税人のたとえ話(18:9~14)

  ②謙遜に関する教え(18:15~17)

  ③富の弊害(18:18~30)

  ④受難の予告(18:31~34)

  ⑤盲人の癒やし(18:35~43)

  ⑥ザアカイの救い(19:1~10)

  ⑦ミナのたとえ話(19:11~27)

2.アウトライン

(1)富める青年との対話(18~23節)

(2)富に関する教え(24~30節)

3.結論

(1)唯一の救いの方法

(2)クリスチャンと富の関係

富の弊害について学ぶ。

Ⅰ.富める青年との対話(18~23節)

1.18節

Luk 18:18

また、ある指導者がイエスに質問した。「良い先生。何をしたら、私は永遠のいのちを受け継ぐことができるでしょうか。」

(1)マタ19:20によれば、この指導者は青年である。

  ①「ネアニスコス」は、20~40歳くらいの男性である。

  ②マタ19:22によれば、彼は資産家である。

  ③彼は、指導者である(サンヘドリンの議員か、会堂管理者)。

  ④前回登場した幼子たちとこの青年は、好対照をなしている。

(2)当時のユダヤ教によれば、彼はすでに神の恵みを得ている。裕福であるから。

  ①しかし彼は、永遠のいのちを受け継ぐという確信を得たいと願っている。

    *永遠のいのちを受け継ぐとは、神の国に入ることである。

  ②彼は、永遠のいのちは行いによって得られると考えている。

(3)彼は、「良い先生」と呼びかけている。

  ①「アガソス」ということばを使用している(本質的に善)。

  ②「良い」とは、ラビに呼びかける際に使用することばではない。

  ③彼は、イエスをラビ以上の霊的指導者として尊敬している。

    *イエスを神と見ているかどうかは、会話の内容で明らかになる。

2.19節

Luk 18:19

イエスは彼に言われた。「なぜ、わたしを『良い』と言うのですか。良い方は神おひとりのほか、だれもいません。

(1)イエスのことばは、正しい神学を提示している。

  ①人は堕落しており、神だけが良い方である。

  ②ユダヤ人たちは、このことを強調した。「the Good」は神のことである。

(2)イエスは、自らの神性を否定しているのではない。

  ①ここでイエスは、この青年の信仰を試しているのである。

  ②イエスは、「あなたこそ良い方、神です」という告白を期待された。

  ③そうすれば、「あなたは永遠のいのちを得ている」と宣告されたはずである。

(3)この青年は、イエスを神とは信じていなかった。

  ①彼の応答(23節)から、そのことが明らかになる。

3.20~21節

Luk 18:20

戒めはあなたも知っているはずです。『姦淫してはならない。殺してはならない。盗んではならない。偽りの証言をしてはならない。あなたの父と母を敬え。』」

Luk 18:21

するとその人は言った。「私は少年のころから、それらすべてを守ってきました。」

(1)青年が答えないので、イエスは彼の質問に戻られた。

  ①ラビたちは、律法の全体を守ることは可能であると教えていた。

(2)イエスは、十戒の第5戒~第9戒を引用された。

  ①姦淫してはならない(第7戒)。

  ②殺してはならない(第6戒)。

  ③盗んではならない(第8戒)。

  ④偽りの証言をしてはならない(第9戒)。

  ⑤あなたの父と母を敬え(第5戒)。

(3)イエスは、業による救いは不可能であることを示そうとされた。

  ①第1戒~第4戒(神に対する責務)は引用しなかった。

  ②第10戒(むさぼりの罪)も引用しなかった。

  ③律法の役割は、人に罪の認識を与えることである。

  ④この青年は、律法の本来の目的を理解しなかった。

4.22節

Luk 18:22

イエスはこれを聞いて、彼に言われた。「まだ一つ、あなたに欠けていることがあります。あなたが持っている物をすべて売り払い、貧しい人たちに分けてやりなさい。そうすれば、あなたは天に宝を持つことになります。そのうえで、わたしに従って来なさい。」

(1)次にイエスは、さらなるテストを課された。

  ①第10戒(むさぼりの罪)を指摘された。

  ②富が、彼の心を支配していた。

  ③富を第1とするのは、第1戒の違反である(神を第1としない罪)。

(2)もし彼が、富の束縛から離れるなら、永遠のいのちを得ることになる。

  ①「天に宝を持つ」とは、永遠のいのちを持つことである。

  ②イエスに従うとは、自己義認の態度を捨てて、イエスに信頼することである。

5.23節

Luk 18:23 彼はこれを聞いて、非常に悲しんだ。大変な金持ちだったからである。

(1)青年は、非常に悲しんだ。大変な金持ちだったからである。

  ①彼は、隣人を自分自身のように愛していなかった。

  ②また、神第1の生活をしていなかった。

「あなたには、わたしのほかに、ほかの神々があってはならない」(出20:3)

(2)彼は救われていなかった。

  ①この青年がその後どうなったかは、記されていない。

Ⅱ.富に関する教え(24~30節)

1.24~25節

Luk 18:24

イエスは彼が非常に悲しんだのを見て、こう言われた。「富を持つ者が神の国に入るのは、なんと難しいことでしょう。

Luk 18:25

金持ちが神の国に入るよりは、らくだが針の穴を通るほうが易しいのです。」

(1)弟子たちへの教え

  ①金持ちが神の国に入るのは、非常に難しい。

  ②「金持ちが神の国に入るよりは、らくだが針の穴を通るほうが易しい」

    *これは、誇張法による格言である。

    *針の穴とは、そういう名称の門ではない。

    *「針の穴」という門は、中世になってから出現したものである。

    *「針の穴」とは、縫い針の穴である。ルカでは、手術用の針の穴である。

2.26~27節

Luk 18:26

それを聞いた人々は言った。「それでは、だれが救われることができるでしょう。」

Luk 18:27 イエスは言われた。「人にはできないことが、神にはできるのです。」

(1)弟子たちもパリサイ派の神学の影響を受けていた(マタイ19:25)。

  ①ルカは、「人々」という主語を使っている。

    *この教えには、普遍的な適用があることを示している。

  ②パリサイ派の神学では、金持ちは神の祝福を受けているとの教えがあった。

  ③金持ちでも救われないとしたら、誰が救われるというのか。

(2)人間には不可能なことを、神はなさる。

  ①金持ちが救われるのは、難しい。

    *見える物に信頼しているので、見えない神を信頼することができない。

    *貧しい人たちに対する優越感を持っている。

  ②神だけが、金持ちの救いを可能にしてくださる。

  ③金持ちにも、貧しい人にも、救いの可能性は備えられている。

    *神は、人の心に罪の意識と悔い改めを与えてくださる。

3.28節

Luk 18:28

すると、ペテロが言った。「ご覧ください。私たちは自分のものを捨てて、あなたに従って来ました。」

(1)ペテロのことばの意味

  ①自分たちは、この青年ができなかったことをしました。

  ②それゆえ、永遠のいのちを得ているとの保証を与えてください。

(2)イエスは、ペテロの問いかけに答えた。

  ①神の国のために犠牲を払った者は、祝福を受けるという約束を与えた。

4.29~30節

Luk 18:29

イエスは彼らに言われた。「まことに、あなたがたに言います。だれでも、神の国のために、家、妻、兄弟、両親、子どもを捨てた者は、

Luk 18:30

必ずこの世で、その何倍も受け、来たるべき世で、永遠のいのちを受けます。」

(1)イエスは、3種類の報賞を約束された。

  ①12弟子が受ける報賞

  ②信者一般が受ける報賞

  ③永遠の報賞

(2)12弟子が受ける報賞

  ①「来たるべき世で」とは、神の国(千年王国)のことである。

  ②信者が受ける報賞は、千年王国での地位や責務に関係している。

    *キリストの御座の裁きで報賞は決まる。それが可視化されるのは千年王国。

  ③12弟子は、12の座に着いて、イスラエルの12部族をさばく。

(3)信者一般が受ける報賞

  ①イエスのために家族や畑を捨てた者は、今の時代において、その幾倍も受ける。

  ②信者は、世界に広がる神の家族との交流を持つようになる。

  ③富を犠牲にした者は、その幾倍もの霊的富を得るようになる。

(4)永遠の報賞

  ①永遠のいのちのことである。

  ②すべてを捨てることによって永遠のいのちを得るのではない。

  ③永遠のいのちは、賜物である。

  ④神を第1にする者は、永遠のいのちをフルに味わい、楽しむようになる。

    *クリスチャン生活をフルに楽しむ人は幸いである。

結論

1.唯一の救いの方法

(1)持っている物をすべて売れば、救われるというのではない。

(2)救いの道は、たった1つである。主イエスに対する信仰がそれである。

  ①自分は罪人で、神の律法を行うことができないとの認識が必要である。

(3)この青年は、持ち物を売って隣人愛を実践することができなかった。

(4)この青年は、こう告白すべきであった。

「もしそれば救いの条件なら、私にはできません。自分の努力によって自分を救う

ことはできません。それゆえ、あなたの恵みによって私を救ってください」

2.クリスチャンと富の関係

(1)この箇所は、信者は金持ちになってはいけないと教えているのではない。

  ①神は私たちに物質的祝福も与えてくださる。

  ②クリスチャンは、富の管理者としても召されている。

  ③将来に備えて、賢く富を管理する責任がある。

(2)信者は、富の管理者としての使命を再認識すべきである。

  ①富に縛られる人は、良き管理者ではない。

  ②今の世界には、助けを必要とする人たちが満ちている。

  ③今は、主の再臨が近い時代である。

  ④主は、地上に宝を積むよりも、天に宝を積むように教えておられる。

  ⑤マタ6:19~21

Mat 6:19

自分のために、地上に宝を蓄えるのはやめなさい。そこでは虫やさびで傷物になり、盗人が壁に穴を開けて盗みます。

Mat 6:20

自分のために、天に宝を蓄えなさい。そこでは虫やさびで傷物になることはなく、盗人が壁に穴を開けて盗むこともありません。

Mat 6:21 あなたの宝のあるところ、そこにあなたの心もあるのです。

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