ルカの福音書(68)神の国の延期13:31~35

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神の国の延期について学ぶ。

ルカの福音書 68回

神の国の延期

13:31~35

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①ルカは、エルサレムへの旅という枠組みの中に、種々の教えを配置している。

  ②ルカ13:18から、中心テーマが「神の国」に変わった。

  ③神の国とは、メシア的王国(千年王国)のことである。

(2)ルカ13:18~14:35の内容

  ①神の国のたとえ話(13:18~21)

  ②神の国への入国(13:22~30)

  ③神の国の延期(13:31~35)

  ④食卓での諸々の教え(14:1~24)

  ⑤弟子の代価(14:25~35)

(3)注目すべき点

  ①5つのポイントは、すべて神の国に関連した教えである。

  ②群衆は、神の国がすぐにでも到来すると思った。

  ③しかし、指導者たちがメシアを拒否したので、神の国は延期された。

  ④イエスは、メシア拒否と再臨の間の期間に起こることについて話された。

2.アウトライン

(1)パリサイ人たちの助言(31節)

(2)イエスの決意(32~33節)

(3)イエスの嘆き(34~35節)

3.結論

(1)めんどりの翼の下

(2)再臨のタイミング

神の国の延期について学ぶ。

Ⅰ.パリサイ人たちの助言(31節)

1.31節

Luk 13:31

ちょうどそのとき、パリサイ人たちが何人か近寄って来て、イエスに言った。「ここから立ち去りなさい。ヘロデがあなたを殺そうとしています。」

(1)「ちょうどそのとき」

  ①文脈を意識する必要がある。

    *パリサイ人たちは、イエスの教えを聴いていた。

  ②イエスの教えのテーマは、「神の国への入国」であった。

    *内容は「ユダヤ人は排除され、異邦人は入国が許可される」であった。

  ③この教えを聴いて、パリサイ人たちは、憤りを覚えたはずである。

    *ルカは一貫して、パリサイ人たちを敵対者として描いている。

  ④彼らの忠告には隠された意図があった。

    *これは、イエスを排除するための新しい戦略である。

(2)「ここから立ち去りなさい。ヘロデがあなたを殺そうとしています」

  ①ヘロデとは、ヘロデ・アンティパスのことである。

    *ヘロデは、ガリラヤの領主(国主)である。

  ②当時イエスは、ガリラヤの域内にいた。

    *つまり、ヘロデの統治下にあったということである。

  ③忠告内容は、ガリラヤから早く立ち去るべきであるということである。

    *これは、バプテスマのヨハネの二の舞になるという警告である。

  ④つまり、一刻も早くエルサレムに行けという忠告である。

    *ヘロデは、イエスがガリラヤの民衆の間で人気があるのを恐れていた。

    *彼は、バプテスマのヨハネのような事件をくり返したくないと思っていた。

    *イエスのことを、復活したバプテスマのヨハネかもしれないと考えていた。

    *エルサレムに行けば、すぐに逮捕されるに違いないと思っていた。

(3)ヘロデは本当にイエスを殺そうとしていたのか。

  ①ルカ9:9

Luk 9:9
ヘロデは言った。「ヨハネは私が首をはねた。このようなうわさがあるこの人は、いったいだれなのだろうか。」ヘロデはイエスに会ってみたいと思った。

  ②ルカ23:8

Luk 23:8
ヘロデはイエスを見ると、非常に喜んだ。イエスのことを聞いていて、ずっと前から会いたいと思い、またイエスが行うしるしを何か見たいと望んでいたからである。

  ③ルカ23:11

Luk 23:11 ヘロデもまた、自分の兵士たちと一緒にイエスを侮辱したり、からかったりしてから、はでな衣を着せてピラトに送り返した。

  ④以上の聖句から、パリサイ人たちはヘロデの敵意を誇張していたことが分かる。

(4)この機会を利用して、イエスは重要な真理を教える。

  ①ご自身の奉仕のゴール

  ②エルサレム崩壊の預言

  ③メシアの再臨

Ⅱ.イエスの決意(32~33節)

1.32節

Luk 13:32

イエスは彼らに言われた。「行って、あの狐にこう言いなさい。
『見なさい。わたしは今日と明日、悪霊どもを追い出し、癒やしを行い、三日目に働きを完了する。

(1)イエスは、これがヘロデの陰謀であることに気づいた。

  ①イエスは、パリサイ人たちがヘロデの使いであることを見抜いた。

  ②そこで、彼らをヘロデのもとに送り返すことにした。

(2)「行って、あの狐にこう言いなさい」

  ①ヘロデは狐のような人物である。

  ②これは悪口ではなく、事実である。

    *狐は、狡猾で臆病な動物である。

    *狐は、危険な動物である。隙があれば、めんどりを襲う。

    *雅2:15

Son 2:15 私たちのために、/あなたがたは狐を捕らえてください。/ぶどう畑を荒らす小狐を。/私たちのぶどう畑は花盛りですから。

    *イエスは光の中を歩まれたが、狐は夜に行動する。

(3)「わたしは今日と明日、悪霊どもを追い出し、癒やしを行い、三日目に働きを完

了する」

  ①イエスは、ご自分の計画に従って、予定どおりにエルサレムに向かう。

  ②「今日と明日」「三日目に」

    *短時間を意味する格言的表現である。

  ③残された時間は短いが、いつものように奉仕を続けるという意味である。

    *いくつかの悪霊どもの追い出し

    *いくつかの癒やし

  ④「三日目に働きを完了する」

    *短時間の最後の日に、公生涯における奉仕を完了する。

2.33節

Luk 13:33

しかし、わたしは今日も明日も、その次の日も進んで行かなければならない。預言者がエルサレム以外のところで死ぬことはあり得ないのだ。』

(1)イエスの旅は、父なる神に従順に歩む旅である。

  ①イエスは、一貫して忠実なしもべとして歩まれた。

(2)この旅の目的地は、エルサレムである。

  ①イエスは、エルサレムでの受難を奉仕の総仕上げと見ていた。

  ②イエスは、多くの預言者がエルサレムで殺されたことに言及する。

  ③自分がその伝統から外れることはあり得ないと宣言する。

Ⅲ.イエスの嘆き(34~35節)

1.34節

Luk 13:34

エルサレム、エルサレム。預言者たちを殺し、自分に遣わされた人たちを石で打つ者よ。わたしは何度、めんどりがひなを翼の下に集めるように、おまえの子らを集めようとしたことか。それなのに、おまえたちはそれを望まなかった。

(1)エルサレムに関心が向けられる。

  ①33節にエルサレムということばが出ていた。

  ②ここでは、「エルサレム、エルサレム」と2度出ている。

  ③エルサレムは、神の救済計画が進展するための中心地である。

(2)エルサレムは神の愛を拒否し続ける。

  ①エルサレムは、イスラエルの民全体を象徴することばである。

  ②彼らは、預言者たちを殺す。

  ③彼らは、自分に遣わされた人たちを石で打つ。

(3)しかしイエスは、エルサレムを愛した。

  ①めんどりがひなを翼の下に集めるように、イスラエルの民を集めようとした。

    *イエスは優しく民に語りかけた。

  ②しかし彼らは、それを望まなかった。

  ③これまでイエスは、彼らに神の国を提供し続けて来たが、それが終わる。

2.35節

Luk 13:35
見よ、おまえたちの家は見捨てられる。

わたしはおまえたちに言う。おまえたちが/『祝福あれ、主の御名によって来られる方に』/と言う時が来るまで、決しておまえたちがわたしを見ることはない。」

(1)「見よ、おまえたちの家は見捨てられる」

  ①これは、エルサレム崩壊の預言である。

    *「家」とは神殿、エルサレム、イスラエルという国などのことである。

  ②頑なな心のゆえに、ユダヤ人たちは離散の民となる。

  ③離散の歴史は、今も続いている。

(2)イエスの嘆きは、バビロン捕囚を預言したエレミヤの嘆きに似ている。

  ①エレ12:7

Jer 12:7 わたしは、わたしの家を捨て、/わたしのゆずりの地を見放し、/わたしが心から愛するものを、/敵の手中に渡した。

  ②エレ22:5

Jer 22:5 しかし、もしこのことばを聞かなければ、わたしは自分にかけて誓うが──【主】のことば──この家は必ず廃墟となる。』」

(3)最後に、希望のメッセージが語られる。

  ①「おまえたちが『祝福あれ、主の御名によって来られる方に』と言う時が来る

まで、決しておまえたちがわたしを見ることはない」

  ②ユダヤ人たちがイエスを迎える時に、イエスは来られる。

  ③この預言は、再臨の直前に成就する。

結論

1.めんどりの翼の下

(1)ユダヤの伝統では、ユダヤ人は神の翼の下に置かれている。

(2)異邦人伝道は、異邦人を神の翼の下に置くことである。

(3)申32:10~11

Deu 32:10
主は荒野の地で、/荒涼とした荒れ地で彼を見つけ、/これを抱き、世話をし、/ご自分の瞳のように守られた。

Deu 32:11
鷲が巣のひなを呼び覚まし、/そのひなの上を舞い、/翼を広げてこれを取り、/羽に乗せて行くように。

(4)詩17:8

Psa 17:8
瞳のように私を守り/御翼の陰にかくまってください。

(5)詩36:7

Psa 36:7
神よ あなたの恵みはなんと尊いことでしょう。/人の子らは 御翼の陰に身を避けます。

(6)エレ49:22

Jer 49:22

見よ。彼は鷲のように舞い上がっては襲いかかり、ボツラに敵対して翼を広げる。その日、エドムの勇士の心も、産みの苦しみにある女の心のようになる。

(7)イエスは、神の役割に関する伝統的な比ゆを、ご自身に適用された。

  ①イエスは神である。

  ②イエスは、イスラエルの民をローマの圧政から救おうとされた。

  ③イエスに信頼するとは、イエスの臨在という翼の下に逃げ込むことである。

2.再臨のタイミング

(1)ユダヤ人たちは、勝利の入城までイエスを見ることはない。

  ①「祝福あれ、主の御名によって来られる方に」は、メシアを歓迎する祈り。

  ②1回目の勝利の入城は終わったが、この預言が成就したわけではない。

(2)マタ23:39

Mat 23:39

わたしはおまえたちに言う。今から後、『祝福あれ、主の御名によって来られる方に』とおまえたちが言う時が来るまで、決しておまえたちがわたしを見ることはない。」

  ①この預言は、勝利の入城(マタ21章)の後で語られたものである。

  ②これは、終わりの日のおける勝利の入城である。

(3)メシア再臨の条件

  ①ユダヤ人たちがイエスをメシアとして受け入れることである。

  ②ユダヤ人たちが回心するためには、患難期を通過する必要がある。

  ③患難期→ユダヤ人たちの救い→メシアの再臨→メシア的王国の設立

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