メシアの生涯(53)—メシアの義とパリサイ人の義—

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このメッセージは、メシアの義とパリサイ人の義について学ぼうとするものである。

「メシアの義とパリサイ人の義」

§054 マタ5:13~20

1.はじめに

    (1)山上の垂訓の本質

      ①山上の垂訓は、「メシアによる律法解釈」である。

        *パリサイ人は、律法の外面的な服従にこだわった。

        *イエスは、内面的服従と、外面的服従の両方を強調した。

      ②山上の垂訓は、救いの道を示したものではない。

      ③山上の垂訓は、現代のクリスチャンに適用すべきものではない。

    (2)山上の垂訓の構成

        *ATロバートソンは、8つに区分している。

      ①八福の教え(5:3~12)

      ②メシアの義とパリサイ人の義(5:13~20)

      ③メシアの義の6つの例(5:21~48)

      ④義の実行の3つの例(6:1~18)

      ⑤神への献身(6:19~34)

      ⑥他者を裁くこと(7:1~6)

      ⑦祈りと黄金律(7:7~12)

      ⑧たとえ話による結論(7:13~8:1)

  2.アウトライン

    (1)真の信仰者の特徴(5:13~16)

      ①地の塩

      ②世界の光

    (2)メシア来臨の目的(5:17~20)

      ①NOT

      ②BUT

  3.結論

    (1)モーセの律法とメシアニックジュー

    (2)モーセの律法と異邦人信者

このメッセージは、メシアの義とパリサイ人の義について学ぼうとするものである。

Ⅰ.真の信仰者の特徴(5:13~16)

  1.地の塩(13節)

  「あなたがたは、地の塩です。もし塩が塩けをなくしたら、何によって塩けをつけるので

しょう。もう何の役にも立たず、外に捨てられて、人々に踏みつけられるだけです」

     (1)この教えは、八福の教えの延長線上にある。

①信仰による義を獲得した人たちの8つの特徴(すでに得た)。

      ②信仰による義を獲得した人たちが目指すべき目標(完成への途上にある)。

      ③信仰による義は、外面のみを強調するパリサイ的義とは異なる。

       ④真の信仰者は、地の塩となる。

     (2)塩の役割

      ①味付けに役立つ

        *憐み、励まし、祝福

        *生きることが楽しくなる。

        *信者同志の交わり(コイノニア)

      ②腐敗を防止する。

        *塩は食物保存のために用いられた。

        *イスラエルは、真の信仰者の存在のゆえに破壊から守られた。

        *エリヤの時代の7000人

        *レムナント(イスラエルの残れる者)

        *常に社会の中の少数者である。

*現代のメシアニックジューもまた、レムナントである。

(3)塩が塩けをなくすことはあるのか。

      (1)当時の塩は、さまざまな不純物を含んだ塊であった。

        ①塩分が抜けて、不純物だけが残ることがあった。

        ②その場合は、塩味を回復する方法はない。

        ③塩けをなくした不純物の塊は、別の用途に用いるしかない。

        ④それは、道路を舗装するための材料となる。

      (2)私たちへの適用は多い。

        ①妥協的なクリスチャンは、迫害に合わないが、軽蔑される。

  2.世界の光(14~16節)

  「あなたがたは、世界の光です。山の上にある町は隠れる事ができません。また、あかり

をつけて、それを枡の下に置く者はありません。燭台の上に置きます。そうすれば、家に

いる人々全部を照らします。このように、あなたがたの光を人々の前で輝かせ、人々があ

なたがたの良い行いを見て、天におられるあなたがたの父をあがめるようにしなさい」

  (1)光は、暗やみで方向性を示してくれる。

    ①真の信者は、人々に霊的方向性を示す存在となる。

    ②「山の上にある町」

       *エルサレムへの言及か。

      *ガリラヤ湖畔の町々への言及か。

  (2)真の信者は、良い行いによって方向性を示す。

    ①良い行いは、救いの条件ではなく、救いの結果である。

  (3)「天におられるあなたがたの父をあがめるようにしなさい」

     ①神を「父」と呼ぶのは、山上の垂訓で15回ある(ここが最初)。

    ②真の信者は、天の父に似てくる。

  (4)ヨハ8:12

  「イエスはまた彼らに語って言われた。『わたしは、世の光です。わたしに従う者は、

決してやみの中を歩むことがなく、いのちの光を持つのです』」

  ①イエスが真の光である。

  ②私たちは、イエスの光を反射させる存在である。

  ③ヨハ12:35~36、12:46

Ⅱ.メシア来臨の目的(5:17~20)

  1.NOT

  「わたしが来たのは律法や預言者を廃棄するためだと思ってはなりません」 (17節a)

    (1)「律法や預言者」とは、旧約聖書全体のことである。

      ①イエスが公生涯を送っておられた頃は、まだモーセの律法は有効であった。

      ②イエスは、モーセの律法に完全に従われた。

      ③イエスは、革命児ではない。

    (2)パリサイ人たちは、モーセの律法を破壊していた。

      ①口伝律法(ミシュナ)を付加することは、モーセの律法の破壊につながる。

      ②当時、口伝律法はまだ成文化に至っていない。

  2.BUT

「廃棄するためにではなく、成就するために来たのです。まことに、あなたがたに告げま

す。天地が滅びうせない限り、律法の中の一点一画でも決してすたれることはありません。

全部が成就されます。だから、戒めのうち最も小さいものの一つでも、これを破ったり、

また破るように人に教えたりする者は、天の御国で、最も小さい者と呼ばれます。しかし、

それを守り、また守るように教える者は、天の御国で、偉大な者と呼ばれます」

(17b~19節)

  (1)メシア来臨の目的のひとつは、モーセの律法の成就である。

    ①イエスの死が有効である理由は、イエスが律法を完全に守ったことにある。

  (2)イエスは、モーセの律法に最高の価値を置かれた。

    ①「まことに」は、「アーメン」である。

      *マタイの福音書では、31回出て来る。

      *ヨハネの福音書では、「アーメン、アーメン」と2回繰り返される。

      *これから述べることが重要であることを示している。

    ②「律法の中の一点一画でも決してすたれることはありません」

       *「一点」とは、ヘブル語アルファベットの「ユッド」。4分の1のサイズ。

      *「一画」とは、角ばった角のこと。丸くなると別の文字になる。

    ③口伝律法は成文化されていないので、律法の中には含まれない。

  (3)この聖句は、モーセの律法の永続性を教えているのではない(訳文の比較)。

  「天地が滅びうせない限り、律法の中の一点一画でも決してすたれることはありませ

ん。全部が成就されます」 (新改訳)

「すべてのことが実現し、天地が消えうせるまで、律法の文字から一点一画も消え去

ることはない」(新共同訳)

    ①メシアはモーセの律法を完ぺきに実行した。

    ②それゆえ、メシアの死は、罪の贖いの死として有効であった。

    ③メシアの死によって、モーセの律法は成就し、廃棄された。

  (4)山上の垂訓の中心聖句

  「まことに、あなたがたに告げます。もしあなたがたの義が、律法学者やパリサイ人

の義にまさるものでないなら、あなたがたは決して天の御国に、入れません」 (20節)

  ①律法学者やパリサイ人の義とは、口伝律法を行うことによって得る義である。

  ②それよりも勝る義とは、信仰による義である。

  ②どちらの義を採用するかで、倫理的、道徳的生活が違ってくる(次回の学び)。

結論:

  1.モーセの律法とメシアニックジュー

    (1)メシアニックジューは、イスラエル社会ではアウトサイダー扱いをされている。

      ①物理的迫害(放火、傷害、脅迫など)。

      ②精神的迫害(職業上うける差別、交流の断絶など)

    (2)しかし彼らは、現代のレムナントである。

      ①彼らの存在のゆえに、神はイスラエルを守られる。

      ②このことを信仰的に確信することは、内的にエネルギーとなる。

    (3)メシアニックジューには、律法を守る自由も、守らない自由もある。

      ①この場合の律法とは、多くの場合、ユダヤ教の伝統である。

        *つまり、口伝律法である。

        *ユダヤ教の食物規定の中心は、肉と乳製品の区別である。

      ②もし律法を守ることが救いの条件になっているなら、それは間違っている。

      ③律法を守ることが救いの条件でないなら、それはそのユダヤ人の自由である。

    (4)一般的傾向

      ①救われる前に厳格に律法を守っていたユダヤ人は、守らなくなる。

      ②救われる前に無関心であったユダヤ人は、律法を守るようになる。

  2.モーセの律法と異邦人信者

  「しかし私たちは知っています。律法は、もし次のことを知っていて正しく用いるならば、

良いものです。すなわち、律法は、正しい人のためにあるのではなく、律法を無視する不

従順な者、不敬虔な罪人、汚らわしい俗物、父や母を殺す者、人を殺す者、不品行な者、

男色をする者、人を誘拐する者、うそをつく者、偽証をする者などのため、またそのほか

健全な教えにそむく事のためにあるのです」(1テモ1:8~10)

    (1)「律法は、もし次のことを知っていて正しく用いるならば、良いものです」

      ①2つのことを知る必要がある。

    (2)モーセの律法は、未信者には効果を発揮する。

      ①律法を実行しようとする人は、必ず失敗する。

        *私たちは、こうすべきである。

        *私たちは、そうしなかった。

        *私たちには、できない。

        *We ought, we haven ’t, we can ’t.

      ②律法は、私たちをメシアに導く家庭教師(養育係)である。

    (3)モーセの律法は、信者にとっては無効になった。

      ①「律法は、正しい人のためにあるのではなく」

      ②メシアを信じた私たちは、家庭教師から独立した。

      ③しかし、新約時代の信者が無法な生活に入ったということではない。

      ④私たちは、「キリストの律法」の下にある。

        *1コリ9:21

        *ガラ6:2

      ⑤モーセの律法には、罰が伴っていた。

        *メシアの死は、その罰を身に受けた死であった。

        *その結果、私たちはその罰から解放された。

      ⑤キリストの律法には、罰は伴っていない。

*罪の種を蒔けば、自ら刈り取りをすることになるのは事実である。

*キリストの律法は、信者の霊的成長のために与えられている。

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