ルカの福音書(63)苦難の日の予告12:49~59

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苦難の日に備えることの重要性について学ぶ。

ルカの福音書 63回

苦難の日の予告

12:49~59

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①ルカは、エルサレムへの旅という枠組みの中に、種々の教えを配置している。

  ②パリサイ人や律法学者によるイエスの拒否が、決定的になった。

  ③拒否という現実の中で、弟子としていかに生きるべきかが教えられる。

  ④クリスチャンは、霊的戦いに巻き込まれているのである。

(2)ルカ12:1~13:17の内容

  ①恐れなき信仰告白(12:1~12)

  ②永遠の視点(12:13~21)

  ③神の備え(12:22~34)

  ④人の子の来臨(12:35~48)

  ⑤苦難の日の予告(12:49~59)

  ⑥悔い改めの勧め(13:1~9)

  ⑦教えの正しさを証明するしるし(13:10~17)

(3)注目すべき点

  ①7つのポイントは、拒否の現実の中でいかに生きるべきかを教えたものである。

  ②前回の箇所(人の子の来臨)

    *来臨に備える重要性を教えるために、2つのたとえ話が語られた。

  ③今回の箇所(苦難の日の予告)

    *苦難の日がくることを前提に、忠実な弟子として生きる。

2.アウトライン

(1)イエスをめぐる分裂(49~53節)

(2)時のしるし(54~56節)

(3)裁判の例話(57~59節)

3.結論

(1)家族分裂の可能性

(2)時代の風についての無関心

(3)負債者の投獄

苦難の日に備えることの重要性について学ぶ。

Ⅰ.イエスをめぐる分裂(49~53節)

  
1.49節

Luk 12:49
わたしは、地上に火を投げ込むために来ました。火がすでに燃えていたらと、どんなに願っていることでしょう。

(1)イエスは依然として弟子たちに語っている。

  ①ペテロの質問に対して、イエスは2つ目のたとえ話を語られた(41~42節)。

  ②この箇所は、その続きである。

(2)「わたしは、地上に火を投げ込むために来ました」

  ①イエスは、自らの奉仕の目的は地上に火を投げ込むことであると言われた。

  ②火には2つの象徴的意味がある。

    *清めと裁き

    *この文脈では、火は裁きの象徴である。

  ③ルカ3:16

Luk 3:16
そこでヨハネは皆に向かって言った。「私は水であなたがたにバプテスマを授けています。しかし、私よりも力のある方が来られます。私はその方の履き物のひもを解く資格もありません。その方は聖霊と火で、あなたがたにバプテスマを授けられます。

    *聖霊によるバプテスマは、聖霊による教会との一体化を指す。

    *火によるバプテスマは、再臨のキリストによる裁きを指す。

(3)イエスは、裁きのプロセスがすでに始まっていることを願われた。

  ①なぜなら、裁きは神の民を清めるからである。

  ②なぜなら、裁きは神の国の到来をもたらすからである。

2.50節

Luk 12:50
わたしには受けるべきバプテスマがあります。それが成し遂げられるまで、わたしはどれほど苦しむことでしょう。

(1)しかし、裁きの奉仕の時はまだきていない。

  ①その前に、イエス自身が裁きを通過する必要がある。

  ②それは、罪人の罪を赦すために、神の怒りを一身に負うことである。

  ③そのことを思うと、イエスの心は打ちひしがれる。

    *肉体の苦しみだけでなく、神との断絶からくる霊的苦しみがあった。

  ④受難は、イエスに与えられた使命である。

(2)イエスは、ご自身の受難を「バプテスマ」と表現された。

  ①水のバプテスマを受けた人は、次に水から上がる。

  ②これは、イエスの死と復活を象徴している。

  ③水のバプテスマを受けた人のように、イエスは死んで復活する。

(3)ヨハ3:17

Joh 3:17 神が御子を世に遣わされたのは、世をさばくためではなく、御子によって世が救われるためである。

  ①初臨のメシアの使命は、世を裁くことではなく、世を救うことである。

  ②再臨のメシアの使命は、世を裁くことである。

3.51節

Luk 12:51

あなたがたは、わたしが地上に平和をもたらすために来たと思っていますか。そうではありません。あなたがたに言いますが、むしろ分裂です。

(1)イエスは、地上に平和をもたらすだけでなく、分裂をもたすために来られた。

  ①イエスの公生涯によって、分裂が始まった。

3.52~53節

Luk 12:52
今から後、一つの家の中で五人が二つに分かれ、三人が二人に、二人が三人に対立するようになります。

Luk 12:53
父は息子に、息子は父に対立し、母は娘に、娘は母に対立し、姑は嫁に、嫁は姑に対立して分かれるようになります。」

(1)分裂の例として、最も絆が強固な家族関係が取り上げられる。

  ①5人家族が、2人と3人に分かれて、対立するようになる。

  ②父と息子、母と娘、姑と嫁が対立して分かれるようになる。

(2)分裂の原因は、イエスに関する評価の違いである。

  ①イエスはメシアなのか。

  ②イエスの教えや奇跡は、信頼できるか。

  ③イエスが原因となって起こる分裂状況は、今も続いている。

  ④イエスの弟子が家族関係で苦しむのは、普通のことである。

Ⅱ.時のしるし(54~56節)

  
1.54~55節

Luk 12:54

イエスは群衆にもこう言われた。「あなたがたは、西に雲が出るのを見るとすぐに、『にわか雨になる』と言います。そしてそのとおりになります。

Luk 12:55
また南風が吹くと、『暑くなるぞ』と言います。そしてそのとおりになります。

(1)ここから群衆に対する教えに戻る。

  ①教えの中心は、時を見分けることの重要性である。

(2)彼らは、自然界の風の読み方を知っていた。

  ①西に雲が出るのを見るとすぐに、「にわか雨になる」と言う。

    *地中海から雨雲が出ると、イスラエルの地に雨が降る。

    *風が西から東に吹く。

  ②南風が吹くと、「暑くなるぞ」と言う。

    *砂漠から吹く風は、熱風をもたらす。

    *3月に吹く風である。

2.56節

Luk 12:56

偽善者たちよ。あなたがたは地と空の様子を見分けることを知っていながら、どうして今の時代を見分けようとしないのですか。

(1)しかし彼らは、時代の風を見分けることができない。

  ①彼らは、イエスが神の国をもたらすメシアとして来られたことを信じない。

(2)彼らは、「偽善者たち」である。

  ①時代の風を見分ける能力がないということではない。

  ②彼らは、時代の風に無関心である。あるいは、見分けたくないのである。

  ②その結果、イスラエルの中に分裂が起こり、裁きが行われるようになる。

Ⅲ.裁判の例話(57~59節)

1.57節

Luk 12:57
あなたがたは、何が正しいか、どうして自分で判断しないのですか。

(1)イエスは、手遅れになる前に忠実な弟子たちの群れに加わるように勧める。

  ①裁判の例話は、それを教えるために語られたものである。

  ②この例話は、判決が下る前に、紛争を解決せよという教えである。

2.58~59節

Luk 12:58

あなたを訴える人と一緒に役人のところに行くときは、途中でその人と和解するように努めなさい。そうでないと、その人はあなたを裁判官のもとにひっぱって行き、裁判官はあなたを看守に引き渡し、看守はあなたを牢に投げ込みます。

Luk 12:59
あなたに言います。最後の一レプタを支払うまで、そこから出ることは決してできません。」

(1)法廷に出る前に、訴える人と和解するように努めるのは知恵である。

  ①そうしないと、厳しい判決が下ることになる。

  ②ローマ法により負債者として投獄されると、なかなか釈放されない。

(2)例話の意味

  ①あなたを訴える人とは、イエスである。

  ②裁判官とは、父なる神である。

  ③牢とは、地獄である。

  ④教訓は、父なる神の裁きを受ける前に、イエスと和解せよということである。

結論

1.家族分裂の可能性

(1)イエスと福音のメッセージに関しては、信じるか信じないか、しかない。

(2)中間の道はない。

(3)弟子たちは、家族の分裂に直面しても、忠実であるようにと教えられた。

(4)今も、多くのクリスチャンがこの問題で苦しんでいる。

(5)メシアニックジューの苦しみは、今も続いている。

(6)イエスを知ることは、それほど価値があることである。

2.時代の風に対する無関心

(1)当時の人口の約半数が、農夫であった。

(2)農業を営むためには、適量の光と、適量の雨を必要とした。

(3)彼らは、風を読み、翌日の天候を予想することができた。

(4)しかし、時代の風を読むことに関しては、無関心であった。

(5)イエスが行なっておられた「しるし」は、時代の風であった。

(6)それを読むなら、メシア的王国が近いことが分かったはずである。

(7)しかし彼らは、時代の風には無関心であった。

(8)今の時代の人々も同じである。

  ①為替、株価、経済指標には関心があるが、霊的事項については無関心である。

  ②今という時に良き決断をしなければ、取り返しのつかないことになる。

3.負債者の投獄

(1)私たちは神の前では負債者である。

(2)神の裁きにより投獄される(地獄に投げ込まれる)運命にある。

(3)自分自身で負債を払うことは不可能である。

(4)神の裁きを受ける前に、神と和解する必要がある。

(5)和解する方法は、イエス・キリストを信じることである。

  ①イエスは、私たちのために負債を払ってくださった。

  ②1ヨハ2:2

1Jn 2:2
この方こそ、私たちの罪のための、いや、私たちの罪だけでなく、世全体の罪のための宥めのささげ物です。

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