ルカの福音書(54)主の祈り11:1~4

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主の祈りについて学ぶ。

ルカの福音書 54回

主の祈り

ルカ11:1~4

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①イエスのガリラヤ地方での奉仕(ルカ4:14~9:50)

  ②ルカ9:51からエルサレムへの旅が始まった(ルカ9:51~19:27)。

    *エルサレムへの旅という枠組みの中に、種々の教えを配置している。

(2)直近の文脈

  ①派遣された70人が帰還した。

  ②イエスは、弟子としていかに生きるべきかを教えた。

(3)ルカ10:25~11:13は、1つのブロックである(ルカだけの情報)。

  ①隣人との関係-良きサマリア人のたとえ(10:25~37)

  ②イエスとの関係-マルタとマリア(10:38~42)

  ③父なる神との関係-主の祈り(11:1~13)

    *①は隣人愛に関する教えである。

    *②と③は神への愛に関する教えである。

(4)注目すべき点

  ①この箇所では、ルカは祈りというテーマに焦点を合わせている。

  ②マタイの福音書の「主の祈り」とルカの福音書のそれは、相当違っている。

  ③イエスは、祈りの重要性を何度も教えたのであろう。

2.アウトライン

(1)状況説明(1節)

(2)第1区分(2節)

(3)第2区分(3~4節)

3.結論:主の祈りのまとめ

主の祈りについて学ぶ。

Ⅰ.状況説明(1節)

1.1節

Luk 11:1

さて、イエスはある場所で祈っておられた。祈りが終わると、弟子の一人がイエスに言った。「主よ。ヨハネが弟子たちに教えたように、私たちにも祈りを教えてください。」

(1)ルカがイエスの祈りに言及するのは、これで5回目である。

  ①3:21、5:16、6:12、9:18

  ②イエスは、弟子たちに手本を示した。

(2)弟子たちは、自分たちの祈りの生活が不十分であることを認識した。

  ①弟子の一人が、イエスに祈りを教えてほしいと願った。

    *弟子の一人が願い、イエスがそれに答えているのは、ここだけである。

    *ルカは、祈りの重要性を伝えようとしている。

  ②弟子の一人は、祈りに関する教理的教えを求めたのではない。

  ③彼は、具体的な祈りのことばを求めたのである。

  ④イエスの弟子として、父なる神にどう祈れば良いのかを尋ねた。

(3)他のユダヤ人のグループは、それぞれに独特の祈りのことばを持っていた。

  ①バプテスマのヨハネの弟子グループも、独特の祈りを献げていた。

  ②イエスの弟子たちの多くが、かつてはバプテスマのヨハネの弟子であった。

  ③彼らは、その時代のことを思い出したのであろう。

  ④そこでイエスは、彼らに祈りのことばを教えた。

  ⑤第1区分には2つの祈り、第2区分には3つの祈りがある。

Ⅱ.第1区分(2節)

1.2節

Luk 11:2

そこでイエスは彼らに言われた。「祈るときには、こう言いなさい。/『父よ、御名が聖なるものとされますように。/御国が来ますように。

(1)イエスの意図は、このことばどおりに、くり返し祈ることである。

  ①マタ6:9

Mat 6:9 ですから、あなたがたはこう祈りなさい。/『天にいます私たちの父よ。/御名が聖なるものとされますように。

  ②マタイでは、祈りの型が挙げられている。

  ③ルカでは、祈りのことばが挙げられいる。

(2)「父よ」という呼びかけ

  ①まず、父なる神に関心を向ける。

  ②ギリシア語の「パテーラ」、アラム語の「アバ」。

  ③これは、尊敬と親密さを表現する呼び名である。

  ④イエスは、神に対して「父よ」と呼びかけておられた(10:21)。

  ⑤弟子たちは、イエスとの関係のゆえに、「父よ」と呼びかけることができる。

  ⑥イエスと父の関係は、弟子たちと父の関係と同じではない。

(3)祈りの内容は2つの部分に分かれる。

  ①第1の区分には、2つの祈りが含まれる(被造世界に対する神の計画)。

  ②第2の区分には、3つの祈りが含まれる(弟子たちの必要)。

(4)第1区分の第1の祈り

  ①「御名が聖なるものとされますように」

    *誰もが、あなたの御名を聖なるものと認めますように。

  ②神の御名とは、神のご性質の総体である。

  ③神の評判が、すべての人の間で良いものとなりますように。

  ④これは、偉大な御業を行ってくださいという祈りである。

(5)第1区分の第2の祈り

  ①「御国が来ますように」

    *御国が来たなら、神の御名は人々の間で聖なるものとされる。

  ②普遍的神の国は、常に存在している。

  ③御国とは、メシア的王国(千年王国)のことである。

    *旧約聖書に預言されている地上の王国である。

  ③御国はまだ来ていないので、今もこの祈りは有効である。

Ⅲ.第2区分(3~4節)

1.3節

Luk 11:3
私たちの日ごとの糧を、毎日お与えください。

(1)第2区分の第1の祈り

  ①これは、弟子の必要が満たされるようにという祈りである。

  ②マタ6:11は、「今日」を強調している。

Mat 6:11 私たちの日ごとの糧を、今日もお与えください。

  ②ルカ11:3では、「毎日」となっている。

  ③これは矛盾ではなく、補完的なものである。

  ④当時の人たちには、意味のある祈りであった。

  ⑤出16:4

Exo 16:4
【主】はモーセに言われた。「見よ、わたしはあなたがたのために天からパンを降らせる。民は外に出て行って、毎日、その日の分を集めなければならない。これは、彼らがわたしのおしえに従って歩むかどうかを試みるためである。

  ⑥イエス時代の人たちは、日当によって生活するのが普通であった。

  ⑦現代人にとっては、自分が完全に神に依存していることを思い出す機会となる。

2.4節

Luk 11:4

私たちの罪をお赦しください。/私たちも私たちに負い目のある者をみな赦します。/私たちを試みにあわせないでください。』」

(1)第2区分の第2の祈り

  ①これは、神の赦しを求めるものである。

  ②ルカは、単純に「罪」(ハマルティア)ということばを用いている。

  ③マタイでは「負い目」(オフェイレマタ)ということばである(マタ6:12)。

  ④イエスの弟子たちは、信仰と恵みによって罪が赦された。

  ⑤ここでの祈りは、父との関係を維持するためのものである。

  ⑥1ヨハ1:9

1Jn 1:9 もし私たちが自分の罪を告白するなら、神は真実で正しい方ですから、その罪を赦し、私たちをすべての不義からきよめてくださいます。

  ⑦他人の罪を赦すことができる人は、神の赦しを体験している人である。

  ⑧他人の罪を赦せない人は、神の赦しの意味を理解していない人である。

(2)第2区分の第3の祈り

  ①「私たちと試みにあわせないでください」

  ②これは、神の守りを求める祈りである。

  ③これは、神が私たちを誘惑すると教えているわけではない。

    *神は、私たちを訓練するために、私たちを試みに遭わせることがある。

  ④これは、自分の弱さを認め、神の助けを求める祈りである。

  ⑤これは、緩叙法という修辞的的表現である。

    *否定的なことばを用いることによって、積極的な概念を表現している。

    *「良い」の代わりに「悪くない」というようなものである。

結論:主の祈りのまとめ

1.祈りの土台

(1)信者と父なる神の関係

  ①私たちは、キリストにあって父なる神を「父」と呼ぶことができる。

  ②キリストと父なる神の関係に似たものが、私たちに与えられている。

(2)聖句

  ①ヨハ20:17

Joh 20:17

イエスは彼女に言われた。「わたしにすがりついていてはいけません。わたしはまだ父のもとに上っていないのです。わたしの兄弟たちのところに行って、『わたしは、わたしの父であり、あなたがたの父である方、わたしの神であり、あなたがたの神である方のもとに上る』と伝えなさい。」

  ②ロマ8:14~17

Rom 8:14
神の御霊に導かれる人はみな、神の子どもです。

Rom 8:15

あなたがたは、人を再び恐怖に陥れる、奴隷の霊を受けたのではなく、子とする御霊を受けたのです。この御霊によって、私たちは「アバ、父」と叫びます。

Rom 8:16
御霊ご自身が、私たちの霊とともに、私たちが神の子どもであることを証ししてくださいます。

Rom 8:17

子どもであるなら、相続人でもあります。私たちはキリストと、栄光をともに受けるために苦難をともにしているのですから、神の相続人であり、キリストとともに共同相続人なのです。

  ③ガラ4:6~7

Gal 4:6
そして、あなたがたが子であるので、神は「アバ、父よ」と叫ぶ御子の御霊を、私たちの心に遣わされました。

Gal 4:7
ですから、あなたはもはや奴隷ではなく、子です。子であれば、神による相続人です。

2.第1の区分

(1)第1の区分の2つの祈りは、極めてユダヤ的なものである。

(2)「御名が聖なるものとされますように」

  ①これは、神の栄光が現れるようにという祈りである。

  ②聖書が書かれた目的は、神の栄光である。

(3)「御国が来ますように」

  ①御国とは、メシア的王国(千年王国)のことである。

  ②御国とは、旧約聖書に預言されている地上の王国である。

  ③御国はまだ来ていないので、今もこの祈りは有効である。

3.第2の区分

(1)「私たちの日ごとの糧を、毎日お与えください」

  ①これは、現在の必要を求める祈りである。

  ②私たちには、自分が完全に神に依存していることを思い出す機会となる。

(2)「私たちの罪をお赦しください。私たちも私たちに負い目のある者をみな赦し

ます」

  ①これは、過去の必要を求める祈りである。

  ②私たちは、信仰と恵みによって罪が赦された。

  ③父との関係を維持するために、信じてから犯した罪も赦される。

(3)「私たちと試みにあわせないでください」

  ①これは、将来の守りを求める祈りである。

  ②これは、自分の弱さを認め、神の助けを求める祈りである。

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