メシアの生涯(42)—片手のなえた人の癒し—

  • 2013.01.07
  • マタイ12章:9〜14、マルコ3章:1〜6、ルカ6章:6〜11
  • スピーカー 中川健一
  • ハーベスト定例会
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人間の価値について考えます。

「片手のなえた人の癒し」

§051 マコ3:1~6、マタ12:9~14、ルカ6:6~11

1.はじめに

  (1)口伝律法の中の安息日に関する論争が続いている。

      ①ベテスダの池での癒し(38年間病気だった人)

②麦の穂を摘んで食べた出来事

③片手のなえた人の癒し

      *これ以降、迫害が殺意に変わる。

    (2)安息日に関する最近のニュース

■2012年 6月

*世俗派の夫と正統派の妻が離婚した。妻は、元夫が子どもを預かる際に、子どもに

安息日を守らせていないと裁判所に提訴したが、却下された。理由は、安息日に探偵

を雇って証拠集めをしたのは安息日違反であると判断されたこと。

*安息日の車の運転の禁止を求めて、超正統派のユダヤ人たちが、エルサレムでデモ

行った。道路を封鎖しようとして警官隊と衝突した彼らは、警察官に向かって「ナチ

ス」と罵倒した。

■2012年 7月

*ペレス大統領がロンドン五輪の開会式への出席を中止した。開会式は金曜の夜に行

われたが、この時間帯は安息日と重なっていた。会場から「安息日の道のり」で行け

る範囲に適切な宿泊施設がなかったため、この決断となった。「安息日の道のり」と

は、2000キュービット(900m弱)である。

■2012年 9月

*超正統派に対抗して、世俗的ユダヤ人たちがエルサレムでデモ行進をした。彼らは、

安息日の公共交通機関運行を求め、「自由のある安息日を!」と叫んだ。左派政党の

メレツがこれを支援した。

■2012年 11月

*アッコにあるホームセンターが安息日の営業を決めたところ、それに反対する超正

統派や正統派のユダヤ人たち数百人が、店の前で抗議活動を行った。

■ユダヤ教を土台に、民主主義国家を建設しようとしていることから来る葛藤

    (3)A.T.ロバートソンの調和表

3度目の安息日論争:片手の萎えた人を安息日に癒したことについて(§51)

マコ3:1~6、マタ12:9~14、ルカ6:6~11

2.アウトライン(マタ12:9~14)

  (1)パリサイ人たちの質問(9~10節)

  (2)イエスの回答(11~12節)

  (3)イエスの命令(13節)

  (4)パリサイ人たちの応答(14節)

3.メッセージのゴール

(1)「self-esteem」(自尊心、自負心、自己尊重)について

(2)「神のかたち」について

このメッセージは、人間の価値について考えようとするものである。

Ⅰ.パリサイ人たちの質問(9~10節)

   1.9節

  「イエスはそこを去って、会堂に入られた」

    (1)マタイは「their synagogue」としている。日本語訳には訳出されていない。

      ①会堂には、神の支配ではなく、パリサイ派の支配があった。

      ②イエスにとっては、アウェイの戦いである。

    (2)マタ23:38~39

    「見なさい。あなたがたの家は荒れ果てたままに残される。あなたがたに告げます。

『祝福あれ。主の御名によって来られる方に』とあなたがたが言うときまで、あなた

がたは今後決してわたしを見ることはありません」

  ①神殿は「わたしの父の家」と呼ばれたが、ここでは「あなたがたの家」である。

  ②ユダヤ人たちがイエスをメシアとして歓迎するまでは再臨はない。

(3)適用:私たちの集まりは、イエスにとってはホームかアウェイか。

  2.10節

  「そこに片手のなえた人がいた。そこで彼らはイエスに質問して『安息日にいやすのは正

しいことでしょうか』と言った。イエスを訴えるためであった」

    (1)彼らは、イエスを訴えるために「片手のなえた人」をそこに置いた。

      ①ルカは、「右手のなえた人がいた」と書いている。

      ②監視の段階から、積極的に罠をしかける段階に進んでいる。

    (2)パリサイ人たちは、2つの前提のもとに策略を練っている。

      ①イエスには、癒しを行う力がある。

        *2000年後の私たちが、イエスの奇跡を否定するのは理に叶っているか。

      ②イエスには、安息日の律法を破ってでも癒しを行う憐みの心がある。

    (3)「安息日にいやすのは正しいことでしょうか」

      ①「安息日に病気を治すのは、律法で許されていますか」(新共同訳)

      ②現代のハラハー

        *安息日に命を救うのは、義務である。

        *重病の人を治療するのは、制限付きで許可される。

        *その他の病気は、治療してはならない(薬を用意するのは労働である)。

      ③イエス時代でも、命にかかわる場合は治療してもよいとされていた。

      ④この病人の癒しは、昔の口伝律法でも現代のハラハーでも、許可されない。

Ⅱ.イエスの回答(11~12節)

  1.11節

  「イエスは彼らに言われた。『あなたがたのうち、だれかが一匹の羊を持っていて、もし

  その羊が安息日に穴に落ちたら、それを引き上げてやらないでしょうか』」

     (1)ラビ的教授法

      ①質問に対して質問で答える。

    (2)パリサイ人たちは、安息日に羊を助けることを許可した。

      ①羊を襲ってくる獣を捕らえるために、穴が掘られていた。

      ②その穴に、家畜が落ちることがよくあった。

      ③この解釈は、モーセの律法の精神にも合致している(出23:4~5、申22:4)。

  2.12節

  「人間は羊より、はるかに値うちのあるものでしょう。それなら、安息日に良いことをす

ることは、正しいのです」

   (1)ユダヤ的議論の方法(qal vahomerとは「軽いと重い」という意味)

    ①「軽い」方は、羊の命である。

    ②「重い」方は、人間の命である。

  (2)安息日に人間を癒すのは良いことであり、律法に叶っている(許されている)。

    ①パリサイ人たちは、自分で掘った穴に落ち込んだ。

Ⅲ.イエスの命令(13節)

   1.13節

  「それから、イエスはその人に、『手を伸ばしなさい』と言われた。彼が手を伸ばすと、

手は直って、もう一方の手と同じようになった」

  (1)メッセージにおいて、メインテーマ以外の点から祝福を受けることがある。

    ①神の約束と人間の責務の関係

    ②38年間病気だった人:責任転嫁の姿勢から、自己責任の姿勢に変化した。

    ③彼は、床を取り上げて、歩き始めた。

  (例話)「ヘブル人による福音」

  「俺は石工でした。この両手で生活の糧を得ていました。イエス様、お願いです。

2度と、恥を忍んで物乞いをしなくてもいいように、健康を回復させてください」

    (2)ここでも、病人はイエスの命令に従った。

      ①質問や反論はなかった。

      ②従順と信仰が見える。

      ③パリサイ人に向かって手を伸ばしたと思いたい。

    (3)彼の右手は直り、左手と同じようになった。

Ⅳ.パリサイ人たちの応答(14節)

1.14節

「パリサイ人は出て行って、どのようにしてイエスを滅ぼそうかと相談した」

  (1)彼らは、イエスの論理に対して、また、イエスの恵みに対して心を閉ざした。

    ①怒りに満たされた。

  (2)イエスに対する殺意を抱き始めた。

    ①マコ3:6

    「そこでパリサイ人たちは出て行って、すぐにヘロデ党の者たちといっしょにな

って、イエスをどのようにして葬り去ろうかと相談を始めた」

②パリサイ派は、政治的力を持っていなかった。

③政治的立場の違うヘロデ党の者たちと共闘の協議に入った。

  *ヘロデ党は親ローマ、パリサイ派は反ローマである。

  *「敵の敵は、友である」

結論:

  1.「self-esteem」(自尊心、自負心、自己尊重)について

    (1)「self-esteem」は大切な概念である。

      ①自らの存在意義を失っている時代

    (2)危険性は、他人が持っていないものを自分が持っていると考えること。

      ①誰が一番かを競うことになる。

      ②人間同士が孤立するようになる。

    (例話)その危険性に警鐘を鳴らしたのが「世界にひとつだけの花」

      花屋の店先に並んだ、いろんな花をみていた

      ひとそれぞれ好みはあるけど、どれもみんなきれいだね

      この中で誰が一番だなんて、争う事もしないで

バケツの中誇らしげに、しゃんと胸を張っている

それなのに僕ら人間は、どうしてこうも比べたがる?

一人一人違うのにその中で、一番になりたがる?

そうさ 僕らは、世界に一つだけの花

一人一人違う種を持つ、その花を咲かせることだけに

一生懸命になればいい

  2.「神のかたち」について

    (1)「self-esteem」から「God ’s esteem」への飛躍

      ①人間である限り、共通して持っているものに目をやる。

      ②人は、「神のかたち」に造られている。

      ③これは、人間同士のつながりを強くする。

    (例話)ハンディを負った人に生きる権利はあるか(月刊紙 12/12月)

      *ノース・フロリダ大学のクリス・ガバード博士の確信

*現代哲学者のピーター・シンガーの影響を多分に受けた。

*彼の息子は、出産の際に、脳に回復不可能な傷を負った。

*今も、脳性麻痺のために盲目で、肢体不自由の状態にある。

「誕生した息子を見て、私の心は揺れた。…それまでは、このような状態の新生児は、

生かしておかない方がいいと考えていた。しかし、今目の前にいるのは、私の息子で

ある。彼は、最先端の医療用保育器の中で眠っていた。…私を一番驚かせたのは、そ

の子が私に似ていることであった。予想だにしなかった衝撃が、私を襲った。彼は、

私が子ども時代の写真から抜け出て、そこにいるかのような顔をしていた」

  *ガバード博士は、ハンディを負った新生児の尊厳を擁護する論客となった。

*2010年のギャラップ調査では、米国人の46%が、幇助自殺を容認している。

「そのような善良な市民の多くが、私の息子の苦難を終わらせてあげたいと思ってい

る。しかし彼らは、私の息子が本当に苦しんでいるのかどうか、立ち止まって考えよ

うとはしない。もちろん、彼が不快感を覚えることはたびたびあるが、唯一の痛みと

いうのは、彼ではなく、周りの人たちが感じているものだ。彼らは、私の息子のよう

な人間が存在しているという現実に、耐えられないのだ」

  *創造主である神は、「天の父」として「出来の悪い」私たちを愛しておられる。

    (2)旧約時代の「神のかたち」

      ①創1:26

      「神は仰せられた。『さあ人を造ろう。われわれのかたちとして、われわれに似

せて。彼らが、海の魚、空の鳥、家畜、地のすべてのもの、地をはうすべてのも

のを支配するように』」

②「かたち(image)」とは、ヘブル語で「ツェレム」である。

③他の動物にはない特徴

  *善悪を選び取る能力(道徳的存在である)

  *被造世界を管理する能力(被造世界の冠である)

  *神を認識し、神を礼拝する能力(霊的存在である)

④ペットブームによって、動物と人間の差が縮まってはならない。

⑤創造時の「神のかたち」は、完成形ではなく、その可能性を秘めたものである。

⑥堕落後は、「神のかたち」は曇ったが、破壊されたわけではない。

      ⑦詩8:3~5

      「あなたの指のわざである天を見、あなたが整えられた月や星を見ますのに、人

とは、何者なのでしょう。あなたがこれを心に留められるとは。人の子とは、何

者なのでしょう。あなたがこれを顧みられるとは。あなたは、人を、神よりいく

らか劣るものとし、これに栄光と誉れの冠をかぶらせました」

    (3)新約時代の「神のかたち」

      ①単に、堕落によって失われたものを回復することではない。

      ②それ以上のものが与えられる。

      ③新生と聖化によって、信者は「キリストと同じかたち」に変えられていく。

      ④ロマ8:29~30

      「なぜなら、神は、あらかじめ知っておられる人々を、御子のかたちと同じ姿に

あらかじめ定められたからです。それは、御子が多くの兄弟たちの中で長子とな

られるためです。神はあらかじめ定めた人々をさらに召し、召した人々をさらに

義と認め、義と認めた人々にはさらに栄光をお与えになりました」

⑤2コリ3:18

「私たちはみな、顔のおおいを取りのけられて、鏡のように主の栄光を反映させ

ながら、栄光から栄光へと、主と同じかたちに姿を変えられて行きます。これは

まさに、御霊なる主の働きによるのです」

    (4)安息日と「神のかたち」

      ①彼の右手は左手と同じようになった。

      ②彼は、他の人たちと同じようになった。

      ③50年目はヨベルの年と呼ばれた。

      「あなたがたは第五十年目を聖別し、国中のすべての住民に解放を宣言する。こ

れはあなたがたのヨベルの年である。あなたがたはそれぞれ自分の所有地に帰り、

それぞれ自分の家族のもとに帰らなければならない」(レビ25:10)

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