ルカの福音書(49)弟子となるための犠牲9:57~62

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弟子となるための犠牲について学ぶ。

ルカの福音書 49回

弟子となるための犠牲

ルカ9:57~62

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①イエスのガリラヤ地方での奉仕(ルカ4:14~9:50)

  ②ルカ9:51からエルサレムへの旅が始まった(ルカ9:51~19:27)。

    *ルカは、エルサレム途上におけるイエスの奉仕を記録している。

    *この部分は、ルカ独特のものである。

    *一部、他の福音書と重複している箇所がある(マタ19~20、マコ10)。

      ③ルカは、旅の行程や地理的情報に関しては、さほど興味を持っていない。

  ④イエスは、種々の機会を用いて弟子たちへの教えをくり返す。

    *イエスの教えをくり返し強調するのは、ルカの視点である。

(2)直近の文脈

  ①サマリア人たちは、イエスを拒否した。

  ②ルカは、イエスを拒否した人たちから、3人の志願者に視点を移す。

  ③1番目と2番目の志願者の出来事は、ガリラヤで起こった(マタ8:18)。

  ④3番目の志願者の場合も同じであろう(これはルカだけの情報)。

  ⑤ルカは、弟子訓練というテーマのもとに、3人1組で紹介している。

(3)予備知識

  ①人は、信仰と恵みによって救われる。

    *神の愛は、無条件の愛である。

    *神はなんでも受容してくださるということではない。

    *私たちは、アダム以来、罪を宿して生まれてくるようになった。

    *しかし、イエス・キリストを信じるなら、どんな罪人でも救われる。

  ②「福音の三要素」

    *キリストは私たちの罪のために死なれた。

    *キリストは死んで墓に葬られた。

    *キリストは三日目に復活された。

  ③救いは、神からの贈り物である。

    *イエス・キリストを信じる以外に救いの方法はない。

    *救いは、恵みと信仰によって与えられる。

  ④救われることと、イエスの弟子になることは違う。

    *弟子になることには、大きな犠牲が伴う。

    *この箇所は、そういう前提で読む必要がある。

2.アウトライン

(1)1番目の志願者(57~58節)

(2)2番目の志願者(59~60節)

(3)3番目の志願者(61~62節)

3.結論

(1)1番目の志願者の問題点

(2)2番目の志願者の問題点

(3)3番目の志願者の問題点

(4)まとめ

弟子となるための犠牲について学ぶ。

Ⅰ.1番目の志願者(57~58節)

1.57節

Luk 9:57
彼らが道を進んで行くと、ある人がイエスに言った。「あなたがどこに行かれても、私はついて行きます。」

(1)最初の人がイエスに近づいてきて、こう言った。

  ①「あなたがどこに行かれても、私はついて行きます」

  ②マタ8:19によれば、彼は律法学者である。

  ③ルカは、読者への適用を考えて、一般化して書いている。

  ④この人は、真実にそう考えて、ことばを発している。

  ⑤「follow」(ついて行く、従う)が3度出てくる(57、59、61節)。

  ⑥ユダヤ的文脈では、これは弟子になることを意味する。

2.58節

Luk 9:58
イエスは彼に言われた。「狐には穴があり、空の鳥には巣があるが、人の子には枕するところもありません。」

(1)イエスは、彼を叱責していない。

  ①弟子となることの犠牲について考えるように教えた。

(2)師であるイエスは、種々の欠乏を甘受される。

  ①「人の子」というタイトルは、栄光のメシアを表現している。

  ②そのお方が、貧しい姿になっておられる。ここには、大いなる皮肉がある。

  ③イエスよりも、狐や空の鳥のほうが自然界で恵まれた生活をしている。

  ④イエスの犠牲

    *住む家がない

    *不自由な生活

    *種々の欠乏

    *人々から受ける拒否

(3)弟子たちは、師であるイエスの後に従う。

  ①イエスの弟子たちは、サマリアの村を通過するときに、拒否される体験をした。

  ②すべての志願者は、弟子となることの犠牲を冷静に計算する必要がある。

Ⅱ.2番目の志願者(59~60節)

1.59節

Luk 9:59

イエスは別の人に、「わたしに従って来なさい」と言われた。しかし、その人は言った。 「まず行って、父を葬ることをお許しください。」

(1)1番目の人は自ら申し出たが、2番目の人はイエスに招かれた。

  ①「わたしに従って来なさい」とは、弟子になりなさいという招きである。

  ②ルカ5:27(レビの招き)

Luk 5:27 その後、イエスは出て行き、収税所に座っているレビという取税人に目を留められた。そして「わたしについて来なさい」と言われた。

(2)その人は、「まず行って、父を葬ることをお許しください」と応じた。

  ①この人の父親は、死んでいるのか、生きているのか。

  ②当時のことば使いから判断すると、恐らく生きていたと思われる。

    *当時は、死ぬとその日のうちに遺体を埋葬した。

  ③ユダヤ人たちは、丁寧な埋葬を最も重要なことと認識していた。

    *律法の学びよりも優先させる。

    *神殿での奉仕よりも優先させる。

    *過越の子羊を屠ることよりも優先させる。

    *割礼の儀式よりも優先させる。

  ④彼は、子どもとしての義務を優先させ、弟子になることを先延ばしにした。

  ⑤彼は、イエスがこの判断に同意してくれることを期待した。

(3)エリヤとエリシャの先例がある。

  ①1列19:19~21

1Ki 19:19
エリヤはそこを去って、シャファテの子エリシャを見つけた。エリシャは、十二くびきの牛を先に立て、その十二番目のくびきのそばで耕していた。エリヤが彼のところを通り過ぎるとき自分の外套を彼に掛けたので、

1Ki 19:20
エリシャは牛を放って、エリヤの後を追いかけて言った。「私の父と母に口づけさせてください。それから、あなたに従って行きますから。」エリヤは彼に言った。「行って来なさい。私があなたに何をしたか。」

1Ki 19:21
エリシャは引き返して、一くびきの牛を取り、それを殺して、牛の用具でその肉を調理し、人々に与えてそれを食べさせた。それから彼は立ってエリヤについて行き、彼に仕えた。

2.60節

Luk 9:60

イエスは彼に言われた。「死人たちに、彼ら自身の死人たちを葬らせなさい。
あなたは出て行って、神の国を言い広めなさい。」

(1)イエスは、その人の申し出を拒否した。

  ①エリヤの場合とは、状況が異なる。

  ②イエスの奉仕は、エリヤの奉仕よりも重要である。

  ③イエスの奉仕は、エリヤの奉仕よりも緊急性を帯びている。

(2)「死人たちに、彼ら自身の死人たちを葬らせなさい」

  ①「死人たち」とは、霊的に死んだ人たち、つまり、未信者のことである。

(3)「あなたは出て行って、神の国を言い広めなさい」

  ①弟子としての奉仕は、伝統的な親に対する責務よりも重要である。

  ②イエスに従うことと、親への奉仕は、調和する場合が多い。

  ③もし対立する場合は、イエスに従うことを優先させる。

  ④イエスは、緊急性をもってこの命令を与えておられる。

  ⑤今の時代においても、同じような緊急性の認識が必要である。

Ⅲ.3番目の志願者(61~62節)

  
1.61節

Luk 9:61
また、別の人が言った。「主よ、あなたに従います。ただ、まず自分の家の者たちに、別れを告げることをお許しください。」

(1)3番目の人は、家族に別れのあいさつをすることを願い出た。

  ①2番目の人の願いより、はるかに小さな願いである。

  ②別れを告げるだけなら、短時間で終わる。

  ③背景には、エリヤとエリシャの物語がある。

(2)イエスは、この願いも拒否された。

  ①イエスの奉仕は、エリヤの奉仕よりも重要である。

2.62節

Luk 9:62

すると、イエスは彼に言われた。 「鋤に手をかけてからうしろを見る者はだれも、神の国にふさわしくありません。」

(1)イエスは、格言的答えを語られた。

  ①ルカ9:50

Luk 9:50 しかし、イエスは彼に言われた。「やめさせてはいけません。あなたがたに反対しない人は、あなたがたの味方です。」

(2)「鋤に手をかけてからうしろを見る者はだれも、神の国にふさわしくありません」

  ①弟子の奉仕は、鋤で畑に畝を作るのに似ている。

  ②前方をしっかりと見ていないと、曲がった畝ができる。

  ③イエスに従うことを第一優先にしない弟子は、神の国にふさわしくない。

  ④「神の国にふさわしくありません」。神の国に入れないということではない。

  ⑤神の国に入った後の奉仕のことである。

結論

1.1番目の志願者の問題点(物質的快適さ)

(1)彼は、自信家で、衝動的に行動する若者である。

(2)彼は、弟子が払う犠牲について深く考えたことがない。

(3)彼は、自分が何を言っているか分かっていない。

(4)イエスに従うことは、繁栄の道ではなく、十字架の道を歩むことである。

    (ILL)9月6日(火) 「3分でわかる聖書」316回 「裕福になるための祈り」

2.2番目の志願者の問題点(仕事や義務)

(1)彼は、イエスに従おうと決めている。

(2)その前に、生きている父親の面倒を見ようとしている。

(3)「〇〇が終わったら、イエスの弟子になろう」と考えるのは、人の常である。

(4)霊的に死んでいる人は、肉体的に死んでいる人を葬ることができる。

(5)しかし、霊的に死んでいる人は、福音を宣べ伝えることができない。

(4)神への愛と人間への愛は、多くの場合合致する。

(5)もし選択を迫られたなら、神への愛を優先させる。

3.3番目の志願者の問題点(家族愛や友情)

(1)彼は、心が定まっていない人である。

(2)彼は、イエスの奉仕の重要性と緊急性を理解していない。

(3)イエスは、すでにエルサレムに顔を向けて進んでおられた。

(4)「神の国にふさわしくありません」は、神の国に入れないということではない。

(5)神の国に入った後の奉仕のことである。

4.まとめ

(1)ルカは、3人がどのように応答したかに関しては、何も書いていない。

  ①彼らは良き選びをしたと思いたい。

(2)ルカは、読者一人ひとりに決断を迫っている。

(3)ピリ3:13~14

Php 3:13

兄弟たち。私は、自分がすでに捕らえたなどと考えてはいません。ただ一つのこと、すなわち、うしろのものを忘れ、前のものに向かって身を伸ばし、

Php 3:14
キリスト・イエスにあって神が上に召してくださるという、その賞をいただくために、目標を目指して走っているのです。

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