ルカの福音書(46)悪霊につかれた少年の癒し9:37~45

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悪霊につかれた少年の癒しと受難の予告について学ぶ。

ルカの福音書 46回

悪霊につかれた少年の癒し

ルカ9:37~45

1.はじめに

(1)文脈の確認

  ①イエスのガリラヤ地方での奉仕(ルカ4:14~9:50)

  ②ルカ9:1~50は、そのクライマックスである。

  ③エルサレムへの旅(ルカ9:51~19:10)へのブリッジである。

  ④ルカ9:1~50の中心テーマは、弟子訓練である。

    *教会時代への準備が始まる。

(2)ルカ9:1~45の内容

  ①12人の派遣(1~6節)

  ②挿入句的エピソード(ヘロデの心理状態)(7~9節)

  ③12人の帰還(10~17節)

  ④ペテロの信仰告白(18~27節)

  ⑤イエスの変貌(28~36節)

    *教会時代に向けた弟子訓練である。

  ⑥悪霊につかれた少年の癒し(37~43節a)

    *山頂で栄光の姿を現わしたイエスが、山麓で悪霊につかれた少年を癒す。

    *イエスは、弟子たちにできないことを行われる。

  ⑦受難の予告(43b~45節)

    *群衆は驚嘆したが、最終的には、彼らはイエスを拒否する。

    *それがイエスの十字架の死につながる。

2.アウトライン

(1)悪霊につかれた少年の癒し(37~43節a)

(2)受難の予告(43b~45節)

3.結論:弟子訓練の内容

(1)信仰の欠如

(2)学ぶ力の欠如

(3)謙遜の欠如

(4)寛容の欠如

悪霊につかれた少年の癒しと受難の予告について学ぶ。

Ⅰ.悪霊につかれた少年の癒し(37~43節a)

1.37節

Luk 9:37
次の日、一行が山から下りて来ると、大勢の群衆がイエスを迎えた。

(1)ルカだけが「次の日」と書いている。

  ①変貌の出来事は、夜間起こったと考えられる。

    *「ペテロと仲間たちは眠くてたまらなかったが、」(32節)とあった。

  ②山頂での栄光の現れと山麓での問題(罪と不信仰)との対比がある。

  ③私たちの人生においても、似たようなことが起こる。

    *山頂の体験と麓の体験のくり返し

    *イエスは、私たちが直面する現実の問題に介入してくださる。

(2)4人が山から下りて来ると、大勢の群衆がイエスを迎えた。

  ①彼らはイエスを待ちわびていた。彼らは、多くの必要を抱えていた。

  ②イエスの下山を一番待ちわびていた一人の人が登場する。

2.38~40節

Luk 9:38

すると見よ、群衆の中から、一人の人が叫んで言った。「先生、お願いします。息子を見てやってください。私の一人息子です。

Luk 9:39

ご覧ください。霊がこの子に取りつくと、突然叫びます。そして、引きつけを起こさせて泡を吹かせ、打ちのめして、なかなか離れようとしません。

Luk 9:40
あなたのお弟子たちに、霊を追い出してくださいとお願いしたのですが、できませんでした。」

(1)群衆の中から、一人の父親が叫んで言った。

  ①彼の一人息子が苦しんでいた。

  ②ルカだけが、「一人息子」と書いている。

(2)ルカは、この少年が「てんかん」持ちだとは書いていない。

  ①マタ17:15

Mat 17:15
こう言った。「主よ、私の息子をあわれんでください。てんかんで、たいへん苦しんでいます。何度も火の中に倒れ、また何度も水の中に倒れました。

  ②ルカは、少年の苦しみの原因は悪霊にあることを読者に示している。

  ③悪霊は、てんかんに似た症状を作り出していた。

  ④歴史上、「てんかん=悪霊つき」とされた時期があった。

  ⑤この少年の症状は、明らかに悪霊の攻撃によるものであった。

  ⑥悪霊が取りつくと、少年はてんかんのような症状を示した。

(3)弟子たちは無力であった。

  ①弟子たちは、長血の女を治すことができなった医者たちのようである。

  ②ルカ8:43

Luk 8:43 そこに、十二年の間、長血をわずらい、医者たちに財産すべてを費やしたのに、だれにも治してもらえなかった女の人がいた。

  ③これで、イエスの力と権威が発揮される舞台が整った。

  ④イエスは、弟子たちにできなかったことをされる。

3.41~42節

Luk 9:41

イエスは答えられた。「ああ、不信仰な曲がった時代だ。いつまで、わたしはあなたがたと一緒にいて、あなたがたに我慢しなければならないのか。あなたの子をここに連れて来なさい。」

Luk 9:42

その子が来る途中でも、悪霊は彼を倒して引きつけを起こさせた。しかし、イエスは汚れた霊を叱り、その子を癒やして父親に渡された。

(1)イエスが語ったことばは、申32:20を想起させる。

  ①神は、荒野を旅するイスラエルの民の不信仰を叱責された。

  ②申32:20

Deu 32:20
主は言われた。/「わたしの顔を彼らから隠し、/彼らの終わりがどうなるかを見よう。/彼らは、ねじれた世代、/真実のない子らであるから。

(2)イエスは、人々の信仰の欠如を嘆かれた。

  ①ルカは、イエスと父親の対話を省略している。

  ②マコ9:23~24

Mar 9:23 イエスは言われた。「できるなら、と言うのですか。信じる者には、どんなことでもできるのです。」

Mar 9:24 するとすぐに、その子の父親は叫んで言った。「信じます。不信仰な私をお助けください。」

  ③ルカは、イエスの力と権威に焦点を合わせている。

(3)イエスは汚れた霊を叱り、その子を癒やして父親に渡された。

  ①イエスは、ことばを発するだけで悪霊を追い出された。

  ②イエスは、その子を父親に渡された。

  ③ルカは、イエスのあわれみを強調している。

4.43節a

Luk 9:43a
人々はみな、神の偉大さに驚嘆した。

(1)この箇所の結論として、群衆の反応が取り上げられる。

  ①人々はみな、神の偉大さに驚嘆した。

  ②彼らは、イエスは神だという結論を出すべきであった。

  ③しかし彼らは、最終的にはイエスを拒否する。

  ④群衆の反応は、次のテーマである受難の予告へとつながっていく。

Ⅱ.受難の予告(43b~45節)

1.43b~44節

Luk 9:43b
 イエスがなさったすべてのことに人々がみな驚いていると、イエスは弟子たちにこう言われた。

Luk 9:44

「あなたがたは、これらのことばを自分の耳に入れておきなさい。人の子は、人々の手に渡されようとしています。」

(1)悪霊に対する権威を持つイエスと、人々の手に渡される人の子の対比がある。

  ①イエスは、十字架への道を歩み始めておられた。

  ②イエスは、父なる神から与えられた運命を受けとめておられた。

  ③ルカ9:35

Luk 9:35 すると雲の中から言う声がした。「これはわたしの選んだ子。彼の言うことを聞け。」

  ④しかし弟子たちは、イエスの言うことに耳を傾けなかった。

(2)群衆は感銘を受けたが、イエスは、この状態は長続きしないことを知っていた。

  ①イエスは、弟子たちの注意を喚起した。

  ②「これらのことばを自分の耳に入れておきなさい」

  ③「人の子は、人々の手に渡されようとしています」

  ④これは、2度目の受難の予告である。

2.45節

Luk 9:45

しかし、弟子たちには、このことばが理解できなかった。 彼らには分からないように、彼らから隠されていたのであった。
彼らは、このことばについてイエスに尋ねるのを恐れていた。

(1)弟子たちには、このことばが理解できなかった。

  ①当時のユダヤ人たちが抱いていたメシア像の影響を受けていた。

    *メシアは、栄光の王として地上に来られる。

    *メシアが死ねば、神の計画は失敗に終わる。

  ②群衆の支持を受けているのだから、拒否されることはないという思い込み。

  ③イエスのことばを聞いていたが、その意味を理解することができなかった。

(2)「彼らには分からないように、彼らから隠されていたのであった」

  ①イエスのことばを理解できなかった理由は、不信仰と思い込みである。

  ②弟子たちがこの預言の意味を理解するのは、復活以降のことである。

  ③神の計画は、弟子たちの無理解にもかかわらず前進していく。

(3)「彼らは、このことばについてイエスに尋ねるのを恐れていた」

  ①彼らは、極めて人間的な理由で、イエスに質問するのを恐れた。

  ②聞きたくないことを聞かされるのを恐れた。

  ③彼らは、イエスが間もなく死ぬかもしれないということを恐れた。

結論:弟子訓練の内容

1.信仰の欠如(37~43節a)

(1)弟子たちは、少年から悪霊を追い出せなかった。

(2)イエスは、「ああ、不信仰な曲がった時代だ」と言われた。

2.学ぶ力の欠如(43b~45節)

(1)不信仰と思い込みが、弟子たちの理解力の妨げとなっていた。

(2)イエスの公生涯には、2つの秘密があった。

  ①メシア的秘密

    *イエスは神が人となられたメシアである。

    *民衆の表面的な信仰を避けるために、このことが秘密にされた。

    *この真理は、徐々に明らかにされていく。

    *勝利の入城の際に、この真理が全面的に啓示される。

  ②メシア受難の秘密

    *弟子たちにのみ、メシア受難の予告が徐々に与えられた。

    *復活によって、その予告の意味が明らかにされる。

3.謙遜の欠如(46~48節)

(1)弟子たちは、誰が一番偉いかという議論を始める。

4.寛容の欠如(49~50節)

(1)ヨハネは、外部の人間を排除し始める。

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